※以下ネタバレしまくりです。これからご覧になる方はご注意ください。記憶違い等多々あると思いますがご容赦を。映画公式サイトはこちらです



公開3日目、6月22日に観てまいりました。舘さんの笑って泣けるコメディ映画、楽しかったし、なんか、色々と感慨深くて……。『帰ってきたあぶない刑事』の時もそうだったけど、劇中でさんざんネタにされる「あれから45年」という月日、「もう若くない(どころか年寄り)」主人公南条弘に流れた時間が、観ているこちらの実人生にも流れているから、本当にこう、たまらない気持ちになっちゃうんですよねぇ。

しかも「南条弘」、ほぼほぼ「舘ひろし」まんまなんだもん。

舘プロならぬ南条プロの事務所には普通に『あぶない刑事』のポスターが貼られ、『帰ってきた』のやつっぽいサングラス姿の人型パネルも飾られ、PC画面に映し出されている「南条弘出演作品」一覧には『あぶ刑事』はじめ『薔薇の標的』等がずらずらと。

いや、それ、舘さんやん! 舘さんの映画やん!!!

劇中ナンノちゃんとカラオケデュエットする『泣かないで』も「よっ!ご本人登場!」で「南条弘の歌」ということになってて、いっそ役名も「舘ひろし」で良かったのではw

「南条弘」という役名は、1994年2月公開の舘さん主演映画『免許がない!』から来ていて、「実は運転免許を持っていないスター俳優南条弘が正体を隠して教習所に通い、頑張って免許を取得する」というお話から32年、今度は「バイクアクションで一世を風靡した大御所アクション俳優が免許を返納する」という物語。

『免許がない!』ももちろん劇場に見に行ったんだけど、あんまり印象に残ってないというか、どっちかというと「面白くなかった」気が(^^;) 当時はまだ「格好いい鷹山刑事」以外の舘さんに慣れてなかったんだよね。こっちはアクション俳優の舘さんを見たいんだよ!!!って。

そして今作の「南条弘」も、「芸術映画なんかよりアクション映画がやりたいんだよ!!!」って言ってる。紫のちゃんちゃんこで古希(70歳)のお祝いをされ、『老人家族』というゲージツ映画で日本アカデミー賞総なめしても、「俺はアクション映画がやりたいんだ」と。

劇中映画『老人家族』の映像がまたなんとも……ほんとに舘さん、大御所俳優にならはったよね……。吉田鋼太郎さん扮する事務所社長に「おまえはもう演技派俳優なんだよ!その路線で行くんだよ!」って言われてるのも現実の舘さんにリンクしすぎてて。

『あぶ刑事』見てる頃は本当に、舘さんがこんなにも「大御所“俳優”」になられるとは思ってもいなかったから(←超失礼)。

宇崎竜童さん扮する盟友尾崎誠のバイク事故を受け、「優等生な発言」をしたことで「免許返納」へと追い込まれていく南条弘。「免許を返納する」とは一言も言っていないのに、切り抜き動画が拡散され、まとめサイトが作られ、ワイドショーでは「いや~、素晴らしいですね、南条さんが免許を返納するなら俺も」みたいな街の声が。

この、「そんなことは言ってない」のにネットやワイドショーで勝手に話が盛り上がっていく描写、現実に対する皮肉がめちゃくちゃ効いててうまい。

で、南条は「免許返納」を推進する政府広報CMに出演する羽目に。でも南条はそれを知らずに撮影現場に来て、「えー、そんなの聞いてないよ!マイナンバーカードのCMじゃないの!?着ぐるみ着る気満々なのに!」と。ちゃんとバスローブ姿でロケバスから降りてくるところも芸が細かいし、「マイナンバーカードの着ぐるみCM」も実際舘さんがやってらっしゃるんですよね。

いや、だからもう役名も「舘ひろし」で良かっただろ!(数行ぶり2回目)


「絶対嫌だ!」と言う南条を説得するため社長が用意したのは往年の大ヒットアクション映画、南条の思い出の作品『ハーレーライダー』を撮ったスタッフたち。「また一緒に仕事ができるなんて」と喜ぶ彼らを南条もむげにはできない、とんだ知恵者であるよ、吉田鋼太郎社長。

そのスタッフの中にしれっとベンガルさんいるし(ナカさん、ナカさんじゃないかっ!!!!!)、車椅子に乗って出てくる往年の名監督は御年90歳の品川徹さん。確かにこれは断れない。

そうしてできあがった政府広報CMがこちらなんですが。


BGMが!
『もっともあぶない刑事』の!!
「THERE OUGHTA BE A LAW」じゃないか!!!
しかも金のレパードって!!!!!


東映やりたい放題すぎるだろ(いいぞ、もっとやれ)。

ちなみにこの映画、いきなり『ハーレーライダー』の映像から始まるんですが、『ハーレーライダー』の制作会社は東映じゃなくて日活になっていました。なんでなんだろ。舘さんと宇崎さんが若いのは、『帰ってきたあぶない刑事』の回想シーン同様、CG合成なのかな。


この映画に影響を受けたらしいハリウッドの謎監督がまず尾崎誠にオファーをかけ、尾崎が事故ったので今度は南条弘に「ラスボス役をやってほしい」と言ってくるんですが、このハリウッド監督が超うさんくさい。詐欺を疑うレベル。

「あなたの映画を観て」と言いながら映画のタイトルは全然覚えてないし、最後に思い出すのが「この決め台詞のやつだよ、“ハンコ押してやるぜ!!!”」

ハンコ……???

映画館では何のことやらさっぱりわからなかったんだけど、もしかして「反抗してやるぜ!」ってこと? 『暴力教室』とかあの辺の映画のことなの……???

ともあれ南条はハリウッドよりも尾崎の願いを叶える方にシフトチェンジ。免許を返納する前に、やりたいことがある――。

黒川想矢くん演じる尾崎の息子、亮。彼は尾崎の三番目の妻の息子。尾崎が彼に会いたがっていると、南条は俳優仲間である麗子から聞くんですね。麗子は尾崎の最初の妻、扮するは大地真央さん。劇中で「60はそうでもなかったけど、70になるとさすがにこたえる」って言ってて、実際大地さん今年の2月に70歳になってらっしゃるんだけど、めちゃめちゃ綺麗でびっくりする。最近アイフルの変なCMでしか拝見してなかったけど、本気の大地真央すごい。

麗子主演の『極道の妻たち』ポスターも気合い入ってるし。(ほんとに東映やりたい放題)

で、南条は尾崎の三番目の妻ありさ(演:MEGUMI)に会いに行くんだけど、ありさはヤクザの親分の愛人になってて、「亮に何の用だ」とヤクザに囲まれすごまれてしまう。鷹山さんなら一笑に付すところだけど、南条弘はアクション俳優ではあってもあぶない刑事ではないのでちょっとビビりながら事情説明。

ヤクザの親分役を内藤剛志さん。『あぶない刑事』TVシリーズで2回犯人役を務めてらっしゃる内藤さんが舘さんを脅す役なの面白い。

もらった手掛かりをもとに亮の行方を捜す南条。実は亮は、自分をヤクザにしようとする母親と親分から逃げ、身を隠してたんですね。全体としてはコメディな作品なのに、亮の生い立ちだけ不憫すぎる。幼稚園の時に両親が離婚、母親は育児放棄、母の愛人のヤクザは「尾崎誠というスターの息子」である亮を広告塔にしようと、逃げても逃げても追ってくる。

まだ16歳なのに、中学もろくに通えずに、友人のツテで牧場で働いている亮。南条が居所を突きとめたことで、ヤクザたちにも所在がバレてさぁ大変。南条は鷹山さんではないので(しつこい)拳銃も持ってないし相手を殴り倒したりもできないけど、しかし南条はハーレーには乗れるのだ! そしてそこにはちゃんとハーレーがあるのだ!!!

亮の友人、鈴木が「逃げろ!」つってハーレー貸してくれるんですよね。伊能昌幸さん演じるこの鈴木くん、すんごいいい人。亮と同じく不幸な生い立ち、亮の哀しみ苦しみ怒りを理解して、手助けしてくれる。

しかしハーレー、ガソリンが入ってない。すぐにヤクザに追いつかれてしまう。そこに通りかかるデコトラ、「え?南条さん!?」――こういう時有名人は得だよ、大の南条弘ファン運転手・康太のおかげで窮地を脱する南条&亮。『トラック野郎』も東映だよね~。そんで康太を演じる八嶋智人さんが超良い! 無駄に元気な、人のいいお調子者、この役八嶋さんしかあり得ないっしょ!感がすごい。

そして一行は康太の姉、しずえが経営するスナックへ。そこでしずえ役ナンノちゃん(南野陽子)と舘さんの「泣かないで」デュエット!


ナンノちゃん、歌声が変わらず可愛いし、舘さんに肩を抱かれて「ひゅうううう」ってなる表情も最高で、でもこの大盛り上がりデュエットを「なんだこれ」って言う亮の気持ちもわかりすぎて。

いや、おっさん、カラオケ楽しんでんじゃねーぞw

ほんとは南条の大ファンだけど最初は気を遣って控えめにしてるしずえのキャラクターも良いし、しずえが語る映画の話がとっても良いんだよね。『ハーレーライダー』の内容聞いて「馬鹿馬鹿しい」「ありえない」って言う亮に対して、「でも、映画でしょ?」って。

「でも、映画でしょ?」

そうそう、そうなんだよ、映画なんだもん、フィクションなんだもん、現実にはありえない馬鹿馬鹿しい夢を売ってこそじゃん。理屈とか説教とか、「考えさせられました」とかじゃなく、見終わって、「あー、面白かった!明日もがんばろ」って思える、それが一番。

子どものしずえと康太が地元の映画館で映画を楽しんでる回想シーンが差し挟まれて、そこで康太が現在と同じ赤い腹巻き姿なのがまた。「これは康太です」という記号として同じ衣装なのはわかるけど、どんな小学生なんだよ!(しかしこれも「でも、映画でしょ?」なんだよなぁ。ツッコミ待ちすぎる)

そこで上映されてるのが『二百三高地』というのもすごい。小学生で『二百三高地』見る??? 『二百三高地』の前に一瞬『トラック野郎』ぽい映像も流れた気がするけど、クレジット確認できなかった。気のせいかもしれない。(『二百三高地』の映像、一瞬『え?金カム?』って思ってしまった、もしかして制作側もそこを狙ってるんだろか)

ともあれこのしずえのシーン、本当に良かった。

しずえに見送られ、タクシーで尾崎の入院する病院へと向かう南条と亮。そこへ併走してくる赤いフェラーリ。

運転しているのは南条のマネージャー、川奈。演じる西野七瀬さんは『帰ってきたあぶない刑事』でも舘さんと共演してましたね。もともとフェラーリは南条の愛車なんだけど、「免許返納」騒動で南条は「運転禁止!」になっているので、川奈が運転して南条を福島まで連れてきていた。ところが南条は川奈を残し、一人で亮を探しに行ってデコトラで逃避行。

「何やってるんですか💢」と追っかけてきたわけです。

川奈は元天才子役で、『おさん』という国民的ドラマで薄幸の少女を演じ大ブレイク――って、それはもしや小林○子さんのことでは? 天才子役だったけど「高校生ぐらいでぱったり仕事なくなりましたよ」と自嘲気味に言う川奈、マネージャーの仕事自体「好きでやってるわけじゃない」感じで、西野さんのちょっと鬱屈したぞんざいなお芝居が巧い。

南条に置いてきぼりにされ、ホテルの部屋で缶チューハイぐびぐびしながら『おさん』のビデオ見て、「あ~、もう、ほんと天才っ!!!」って泣いてるの、たまんないよね。川奈の「心の裡」、そんなに細かく説明されてはいないんだけど、言葉や態度のはしばしに彼女の複雑な想いが滲んで、最後に少し吹っ切れるところまで、とてもうまく描けてた。

南条と亮を追ってくるのは川奈だけではなく、もちろんヤクザ連中も追ってくる。そして鈴木くんもハーレーで駆けつけ、「今度はガソリン満タンです!」と再びハーレー貸してくれるんだけど。(鈴木くんいい人すぎん???)

「運転しちゃダメぇぇぇぇぇ!!!!!」

いや、でも川奈ちゃん、今そんなこと言ってる場合じゃないじゃん、とにかく逃げないとさ。

と、そこへ、颯爽と現れる真矢ミキちゃん! 諦めないで!!――じゃなくて「乗って!!!」

ミキちゃん扮する暁子は弁護士で、尾崎の二番目の妻。実は彼女も尾崎から亮のことを頼まれていたんですね。彼女の車でヤクザたちを振り切り、南条と亮は無事病院へ。暁子の運転がなかなか荒っぽくあぶなくて良い。

父、尾崎と対面する亮の――想矢くんの表情がまたなんともねぇ。そんなに簡単に、許せるもんじゃない。そんなに簡単に、「親子」にはなれない。亮が『ハーレーライダー』のことを「ありえない」って言ったのも、彼の境遇を思えば詮ないことで。現実はそんなうまいことは行かないんだものね。

ほんと大人たち、動き出すのが遅いよ!!!

一年後、尾崎の一周忌で顔を会わせる南条と亮、麗子と暁子。麗子(大地真央)と暁子(真矢ミキ)のアドリブっぽい会話が良いよね~~。かたや1980年代の月組トップスター、かたや1990年代の花組トップスター。宝塚ファンとして、このお二人が並び立っているだけでも楽しいのに、同じ男を愛したもの同士、絆が感じられるのが良い。

ずっとつらい人生だった亮だけど、いきなりこんな麗しい「母親」が二人もできるのめでたすぎというか、それはそれで大変そうというかw

南条はハリウッド映画でなく、自分の企画で『ハーレーライダー2』を撮影。映画館にしずえや康太も勢揃いしているのが胸熱。たとえ免許を返納しても、南条の「ハーレーでショットガン」は不滅! 爆発バックからバイクが出てくる映像はさすが東映、気合い入ってる。

トオル君が「あの役、俺、やりたかった」ってコメントしてるんだけど ↓
 

ほんとどうしてトオル君にオファーしなかったんですか!!! こんなに『あぶ刑事』要素てんこもり、ナカさんまで出てるのに!!! 舘さんと対峙する、眼帯着けた悪そうなイケオジ日本刀ライダー・トオル、観たかったよ!!!

まぁトオル君も今やベテラン人気俳優の立ち位置、あれっぽっちの出番にオファーかけるわけに行かないんでしょうねぇ。もし実現してたらすんごいサプライズだったけどなぁ。

あの役、どなたが演じてらしたのかな。くまどりメイクのお顔がちょっと潮健児さんに似て見えた。

『免許がない!』で教官役だった西岡徳馬さんも同じキャラで出てらっしゃるし、トオル君のコメントにもあるようにほんとに「東映、持ち玉、大放出!」。『免許がない!』は東映じゃなくて東宝だったのに、よくもまぁ。

南条弘は古希(70歳)だけど、実際の舘さんは今年の3月で76歳。2024年公開の『帰ってきたあぶない刑事』で「70歳超えてのハーレー&ショットガン」を吹き替えなしで演じてらして本当にすごい。『ゴールデンカムイ』では騎馬でライフル撃つシーンもありましたよね。70代でショットガンやライフル構えてあんなに様になる人、そうそういないでしょ。

『老人家族』でのしんみりした“演技派”芝居、本当はアクションがやりたいし免許返納なんか絶対嫌だし、「なんで俺じゃなく尾崎にハリウッドから声がかかるんだよ!」とぐちぐち言うコミカルなお芝居もとてもチャーミング。亡き妻を思って一人思い出の場所に佇む姿は実に絵になるし……。

笑って泣けて格好良くて、最後は「あー、面白かった!」と幸せな気分になれる映画でした。


舘さんがお元気なうちに実写『ゴールデンカムイ』最後まで撮ってほしいし、東映さんは『またまた帰ってきたあぶない刑事』も作ってくれていいのよ。何なら『ハーレーライダー2』を本格的に撮ってくれても……。もちろんあの役はトオル君でね!