(※以下ネタバレあります。これからご覧になる方はご注意ください。記憶違い等多々あると思いますがご容赦を)



7月26日15時半公演を観てまいりました。そしてこれを書いている今はもう8月半ばになろうかという時期、色々あって感想を書けないでいるうちにあっという間に2週間。

記憶が!
もうない……。

麗しかったぁという印象だけが残っております、はい。ポスター画像からしてもう朝美さんのエドガーが漫画から抜け出してきたようですし、今回プログラムも気合い入りまくりで朝美エドガーの写真集のよう。



本当にビジュが強い。

私は花組明日海さん版は観ていなくて、宝塚の『ポーの一族』は初見。萩尾望都さんの原作漫画はもちろん読んだことがあり、でもあまりに読んだのが大昔だったので昨年、雪組さんでの上演が決まってから再読。

予習ばっちりのはずなのに、読んで半年も経つとだいぶ忘れますね……。加齢脳つらい。

漫画は必ずしも時系列順に発表されていませんでしたが、宝塚版はちゃんと(?)エドガーがバンパネラになった経緯から語られます。赤ん坊のメリーベルとともに森に捨てられ、老ハンナに拾われるエドガー。まさか自分たちの育ての親がバンパネラだとは夢にも思わず、幸せな幼少期を過ごす二人。

まだ「人間」の頃の無邪気な朝美エドガーがとても可愛い。ジェンヌはいつだって年齢を超越してはいますが、「14歳の少年」を演じて違和感がないのすごいですよね。見た目は変わらないはずなのに、バンパネラになって以後はまたガラッと雰囲気が変わりますし。

アランと出逢って彼を籠絡しようとするエドガーは実に妖しく美しく、謎めいていて。ワインカラーのベルベット衣装がまた素晴らしくお似合いで、ほんとに漫画そのもの。

序盤、メリーベルをバンパネラにするまでの間がけっこう駆け足で、オズワルドとユーシスの出番の短さに笑ってしまいましたが。

キャスト表見た時に「ユーシスの母」までいて、「え~、そんな細かいとこまでやるの???」と思ったんですが、ちょっとびっくりするくらい駆け足なシーンで、「これ、かえってわかりにくくない?」と思ってしまいました。一旦よそに養女にやられたメリーベルがどうして再びエドガーのもとに戻ってくるのか、なぜ彼女もバンパネラになってしまうのか、というのを描くためにはオズワルドとユーシスのくだりは必要かもしれない、必要かもしれないけど、それでなくてもけっこう登場人物多いので原作知らないと「ん?誰?何???」となってしまうのでは。まぁあの2人の名前いちいち覚えなくてもその後の話を理解するのに何の支障もないけど(だからこそわざわざ描かなくても?という気がした)。

一緒に観劇した原作を知らない母も、「最初の方よくわかんなかった」と言っていて、「でも途中からは話が飲み込めて、最後もちゃんとわかったよ」と言ってました。全体として「良かった」と。

全然知らないで観たらどんな印象を持ったのか、むしろ原作読み返さない方が良かったかもしれない。

バイク・ブラウン4世、ドン・マーシャル、ルイス・バード、マルグリッド・ヘッセンの4人が狂言回しとして出てくるのも、「なるほど」と思うと同時に、「この人たちが誰なのかわかりにくい」とも思ったりして。グレンスミスのくだりもあまりにも駆け足だから、「グレンスミスの日記がー」と言われても、あんまりピンと来ないような……。

バイク・ブラウン4世はしれっとお話の中にバイク・ブラウン(4世の曾祖父)として入り込むのがよくできてました。諏訪さきさんのお芝居も安心して観ていられる。諏訪さん、B席からでも見分けがつくのでとてもありがたい。

朝美さんのエドガーがハマり役なのはもちろんだけど、他のキャストもすごく適材適所で、瀬央ゆりあさんのポーツネル男爵、小桜ほのかさんのシーラ、縣千さんのアランという配置がとても良かったです。

瀬央さんの男爵ほんとに格好良くて「大人の男」で、フィナーレ冒頭のソロ歌唱も見事でした。小桜さんは3月の『エリザベート・ガラコン』でヴィンディッシュ嬢をやってらして、お芝居も歌もめちゃくちゃ巧くて「え?この人誰??」とびっくりしたんですが、今回のシーラも素敵でした。最初にエドガーと出会う場面ではまだ普通の人間の女性、男爵と結ばれることを無邪気に喜んでいて可憐、後半、クリフォードやジェインを手に入れようとする場面ではしたたかさと妖しさが。

クリフォードが一目惚れする美しさがないといけないですもんねぇ、シーラ役。最後、瀕死の体(てい)でホテルに戻ってくるところでは鬼気も感じさせ。

花組版ではトップ娘役の仙名さんがシーラを務めてらっしゃいましたが、今回は専科の小桜さん。トップ娘役である音彩唯さんはエドガーの妹メリーベル。『ベルばら』のジャンヌもできる音彩さんだけど、可愛く儚い少女も見事にこなしてらしてすごい。特に幼少期メリーベルの「おにいちゃま」という言い方と声が可愛い。これが大劇場での新トップコンビ披露、いわゆる「恋人同士」ではなく「実の兄妹」だけど、エドガーがもっとも愛した存在――ただ一人心から愛し、守ろうとした存在ですものね。エドガーともども実に絵になるヒロイン。

そして縣さんのアラン! アランも可愛い!!! 可愛い縣さんが見られて嬉しい!!!!!

縣さん、声も高くて顔立ちも可愛らしいと思うんだけど、長身ということもあってか大劇場では『シティハンター』の海坊主とかやらされてて、ここまで意外と「可愛い役」やってないですよね? 『ほんものの魔法使』の喋る犬モプシー、すごく良かったけど、大劇場ではアンドレ以外あんまり目立つ役に当たってないような……。

それが今回はアラン! お話の軸になる重要なキャラクターだし、「中身は百年以上生きてる」エドガーと違って正真正銘14歳(13歳?)の少年役!! ギムナジウムの制服もよく似合ってるし、アランのあの生意気で傷つきやすい、危なっかしい感じがすごくよく出てたと思う。いやー、ほんと可愛かったな。良かった。

最初『ポー』をやると聞いた時は「アランは縣さん?華世さんとダブルキャストあったりしない?」と思ったんですが、華世さんはクリフォード役。ジェインという婚約者がありながら患者の女性に粉かけたり、シーラに色目を使ったりする困った若い医師。

あんなにシーラに熱上げて一線越えようとまでするくせに、シーラに脈がないと知った途端「バケモノ!」っつって手のひら返すの、ほんとこいつ「表面しか好きになってねぇんだな」って思ったし、「この話全部クリフォードが悪いじゃん、全部こいつのせいじゃん」と思ってしまいました。まぁ医者だから、「脈がない」に気づいちゃうし、その意味も即座に理解しちゃうんだろうけども。そんで一応「ジェインが危ない!」って慌てて彼女のもとに駆けつけるんだから、女癖悪かったとはいえジェインのことはちゃんと大事に思ってたんだなぁと感心したけど。

華世さんクリフォードは溌剌としたイケメン、活動的で華やかで、いかにも「若気の至り」というか、「あー、もう、バカなんだから」って感じで良かったです。エドガーたちポーの一族は表立っては事を起こせない「静」のお芝居、アランも屈折した思春期、クリフォードだけ活きのいい「動」の存在、若い華世さんにぴったりでしたね。

とはいえ華世さんのアランも見たかったな~と思っていたら新人公演では華世さんがエドガー!!! そう来たか。これが最後の新公ですよね? すでにバウ主演も務めている中、最後に『ポーの一族』が来るとは、“持って”ますねぇ。

新公アランは前回『ボー・ブランメル』で新公初主演だった律希奏さん。こちらもとても楽しみです。本公演ではユーシスとかギムナジウムの生徒とかやってらっしゃるんだけど、ユーシスは前述の通りチラッとしか出てこないし、最後の場面での生徒しか見分けられませんでした……。

華世クリフォードにやきもきさせられる婚約者ジェインを俺の華純沙那ちゃん♡ 『ブランメル』のデボンシァ公爵夫人とはうって変わって、地味でおとなしい、耐える女性の役です。正直「俺の華純ちゃんがこんな地味な役かよ!!!」って思ってしまいましたが、雷に怯えるメリーベルを優しくあやすシーンなど、母性を感じさせる落ち着いた華純ちゃんもまた良い。女好きなクリフォードがそれでも最後に守ろうとした女性なんですもんね、ジェイン。

アランのいとこで許婚、クリフォードに気があるおませな(何歳設定なんだっけ?)マーゴットを星沢ありささん。おきゃんでいけずなお嬢様、強気なお芝居が良かったです。

『ベルばら』新公アントワネット様以来注目している白綺華さんは狂言回しの一人、マルグリッド・ヘッセン。うーん、これまた地味だ。マーゴットには星沢さんの方が柄が合うとは思うけど、歌劇団的にはここの娘役序列どうなってるのかしら…。

新公では星沢さんがジェイン、白綺さんはシーラ。白綺さんのシーラ、すごく良さそう。新公楽しみすぎる。

華純さんが新公でやる霊能者ブラヴァツキー、本役は専科の美穂圭子お姉様。さすがのお芝居と存在感、途中若い女性の霊を呼びおろしてその声で喋るところも「え?誰か吹き替えてる?」って思うほどの落差で(あそこ美穂さんご本人ですよね???)。残念ながらこれで退団ということでエトワールも美穂さん。美穂さんのエトワールを聞き納めできたのは嬉しい反面、歌の巧い組子にエトワールを経験させてあげてほしい気持ちも。年に1~2回しかない大劇場公演、どんなに歌が巧くても、他との兼ね合いでエトワールを務めることなく終わってしまう人の方が多いでしょうから。

原作漫画には登場しないブラヴァツキー、彼女を用いてキング・ポーに再度出番を与えたり、ポーツネル男爵や観客に「破滅の予感」を与えるの、よくできてる。

キング・ポーは奏乃はるとさん。『ブランメル』を最後に専科に移られた元雪組組長さん! また雪組の舞台でお逢いできて本当に嬉しい。冒頭には見事な歌声も聞かせてくださって耳福。もっともっと出番多くても良かったよぉ。

現在の組長さん透真かずきさんは老ハンナ。初の女役だったそうですが、とても良かったです。いかめしいけれど、それだけではない老女。ポーの村が襲撃され、老ハンナが殺されるところの演出も巧くできてましたね。パッと服だけが残るように。

短いフィナーレ、男役さんのダンスがめちゃくちゃ格好良くて目が足りなかった。一人ずつちゃんと見たいけどそんなことしてるうちにすぐ終わってしまう。もっと、もっと20分ぐらい踊って(無理)。

『ポーの一族』自体は素晴らしかったけど、お芝居一本立てでショーがないのはやっぱり寂しいなぁ。


ただ一人、生きるよすがだったメリーベルを失い、アランという道連れを得て時の旅を続けるエドガー。クリフォードに「どうしておまえは存在しているんだ」「いないはずだ」みたいに言われていましたが、彼はどうして自分自身を終わらせようとはしなかったんでしょう。キング・ポーの血が濃くて、他のバンパネラよりも「消える」のが大変とか、自分で自分に銀の弾丸や十字架を撃ち込むのは大変とかあると思うけど、メリーベルを失って、それでも「終わらせよう」とはしなかった。

もしもアランがいなかったら、あるいは「終わり」を望んだのでしょうか? もしも、アランが一緒に来てくれなかったら……。

宝塚版『ポーの一族』はバンパネラとなったアランがエドガーとともにギムナジウムに転校してくるところで終わります。その先、アランまでも失うことになるエドガー。うっかり原作を読んでしまっているから、なんとも複雑な思いでラストシーンを見てしまいました。

愛するものがいなければ、バンパネラの長い“時”は耐えられない。男爵とシーラがクリフォードとジェインという“カップル”を一族に加えようとしたのは、それを身にしみて知っていたからなのでしょう。一人だけでは耐えられない。

たまたま観劇後に『仮面ライダーアギト』の第28話を見て、「それでも生きていくしかない、終わりが来るまでは」という涼の台詞にエドガーの行く末が重なったのですが……。自分の意志とは関わりなく“ギルス”という怪物になってしまった涼、自分の意志ではなく“バンパネラ”という怪物になってしまったエドガー。それがどれほどの苦しみか、どれほどの孤独か、“怪物”という言葉を簡単に投げて排斥する人間たちにはわからない――わかろうともしないんですよね。(“一緒に生きていけそうな女性”にことごとく死なれてしまうところも涼とエドガーがかぶる……)



【おまけ:妄想あの頃キャスティング】
つい「あの頃宝塚」で妄想キャスティングしたくなる、おまけの与太話です。

『ポーの一族』をやるならもちろんエドガーはカナメさん(涼風真世)! メリーベルによっちゃん(麻乃佳世)、男爵はノンちゃん(久世星佳)!!

シーラはりんりん(朝凪鈴)か、みつえちゃん(若央りさ)の女役でも良いかな。あの頃月組で順当に考えるとアランは天海さんということになるけど、天海さんだとちょっと活きが良すぎるよね? 天海さんはクリフォードにして、アランどうしよう。あの頃月組でアランやるとしたら誰???

惜しまれつつ退団した大海ひろさんとか……真織由季ちゃん?

みつえちゃんシーラバージョンならジェインをりんりんが、りんりんシーラバージョンの場合ジェインは紫ともちゃん、マーゴットを羽根知里ちゃん。シーラじゃない時のみつえちゃんは……どうしよう、バイク・ブラウン?

キング・ポーは汝鳥さんでいいよね。老ハンナは邦なつきさんが良いかな~。邦さんブラヴァツキーでもいいけど。

もはや実現することはない妄想『ポーの一族』、脳内再現だけでもわくわくいたします。