朝美絢さん主演の雪組バウホール公演、5月30日15時公演のLIVE配信を楽しみました♪
どのみち買えっこないだろうと前売りチャレンジもしませんでしたが、一般発売日、開始時刻の10時に繋がったのに買えなかったという話も見て……。

まぁね、そうですよね(^^;)

朝美さん主演、会期も短くチケット数も少ないバウ公演、取れるわけないですよね。昔(ン十年前)、バウ公演年間制覇とかしていた頃が懐かしいなぁ。よくチケット取れてたもんだ。

LIVE配信という形であれ、リアルタイムに観られて良かったです。ありがとう歌劇団。

ポール・ギャリコさんの『ほんものの魔法使』、1月に原作小説を読んで、「これどういうふうに宝塚ナイズするんだろう」と楽しみにしていました。
とりわけ「モプシー」をどうするのか
「ものいう犬」モプシー、ぬいぐるみでも使って声だけ裏から当てるのか、などと拙い予想をしていたら。

「モプシー:縣千」とのキャスト発表。

え。
縣さんが?
犬!?

縣さんって、次の大劇場公演『CITY HUNTER』では海坊主にキャスティングされてますよね? 何なの、そーゆー枠?(どーゆー枠だよ)
普通に格好いいイケメン男役さんなのに……と思っていたら。

普通じゃなく格好いいイケメン犬キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!

ちょっと、ごめん、朝美さんのアダムよりモプシーの方により視線が行っちゃってたわ。ずるくない? あの犬ずるくない???

もともと原作でもアダムとモプシーの会話でお話が進んでいく感じで、モプシーが色々突っ込んでくるからアダムも喋ってくれる、みたいな、こう、ほんとに「主人公の相棒」だし、さしてお喋りではない主人公の代わりにお話を引っ張っていってくれて、なるほどこれは「2番手の美味しい役」!!!

また縣さんがとても巧くて、吠え声も完璧。あれ、リアルタイムで縣さんが吠えてたんだよね? 録音???
モフモフの上着、飛行帽にゴーグルという、「犬」と言われれば犬っぽいような、全然そんなことはないような衣裳、原作以上に上から目線で偉そうでありながら、手の仕草は犬、ジェインになつくところなどは可愛らしく。

すごいな、この演出考えた人天才だな。

演出、木村信司先生
古典の翻案、宝塚化がお上手な印象があって、樹里ちゃんの男女逆転「カルメン」(バウ公演『FREEDOM』)とか最高だったんですけど。

さすがです。

マジェイアの魔術師の面々の衣裳や、ファンタジーな感じもとっても良かったし、蜂や牛、鶏といった生き物の擬人化、何より「マシン(機械)」の擬人化
アダムが市長ロバートの家の機械仕掛けに驚くシーン、ああいうふうに具現化するとはなぁ(あのコントロールマシン、すごくジュークボックスっぽかったw)。

ジェインの兄ピーターが蜂に刺されるシーンも、原作だと数行だった気がするけど、しっかりミュージカルになっててびっくり。蜂のお姉様方怖い(笑)。

あのピクニックのシーン、原作ではジェイン、アダム、ニニアンだけで、こっそりピーターが待ち伏せ、だったと思うけど(何しろ読んだのが5か月前なので断言できない)、宝塚版ではアレキサンダー教授とえーっと、ダンテかな?が一緒で、教授がアダムに警告するくだりが追加されてた。

教授というか、いかにも「村の長老」とか「仙人」みたいな雰囲気のキャラクターになってたけど、アダムの使う「魔術」とマジェイアの「魔術」がまったく別のものだということ、種も仕掛けもない「ほんものの魔法」を前に、マジェイアの人々がどういう反応を示すのか、アダムに対して諭すように警告する。

「わけのわからないもの、自分たちの理解を超えたもの」に対して、人は恐れ、忌み嫌い、排除しようとする。

これ、原作読んだ時に「マジェイアの人々、そういう恐怖よりも、“ほんものの魔法なんか出てきた日にゃ俺たち商売あがったり”の方を気にしててすごい」と思ってたんですよね。原作ではアダムを化け物扱いする感じは希薄だったから、「あ、宝塚では異質なものへの恐怖心を強く出してきた」って思いました。

まぁ最後には「僕を排斥するもう一つの理由」としてちゃんと「お金の話」が出てきて、それならとアダムが「金貨の雨を降らす」んですけども。

アレキサンダー教授に「君の魔術はわけのわからないものとして怖れられる」と言われたアダムはショックを受けて「僕はひとりだ…」みたいな歌を歌った気がする。
原作のアダムはずっと飄々として、周囲の喧噪など意に介さない印象だったから、「あれ、苦悩するんだ」と思っちゃいました。

原作読んでるとどうしても「間違い探し」みたいに観てしまいますが、小説と舞台では見せ方も違うし、「ここはこうするのか」というのがまた面白い。

アダムってほんとに「自分でどんどん行動を起こす」タイプの主人公ではなく、宝塚の男役がやるには地味なキャラクターだけど、朝美さんはさすがの存在感で、温和で優しい、無垢だけど芯の強い青年アダムを好演。「女性陣に囲まれてキメ顔」するシーンもしっかりあったし、最後のシルクハットでのマジックショー衣裳も美しく。

スーツや軍服でない、ファンタジックな衣裳、アダムも他の面々も、皆さん素敵でした。特にメフィスト(星加梨杏さん)
、美しかった
マルヴォーリオ(桜路薫さん)はパトレン2号咲也くんに見えて仕方なかったんだけど、「似てるよね!」と言い合える人がいなくて残念(笑)。

ヒロインのジェインは原作では11歳半、宝塚版では16歳。でも中身は割と11歳半そのままの感じだったな。ピーターとケンカして引っ掻いたりつねったり、糸電話で喋ったり……。ジェインが16歳ならピーターは少なくとも17歳以上のはずだけど、マジェイアでは成人年齢が25歳くらいなのかもしれない。ファンタジーな世界観なので、2人が年齢よりも幼いイメージなのはそんなに気にならなかったけど、ジェイン役の野々花ひまりさんは……うーん、可もなく不可もなくというか……顔があんまりタイプじゃなかった……すいません。

たぶん客席で生で観てるんだったらあんまり気にならないと思うんだけど、配信だとアップでしっかり顔が見えちゃうから、「頭の中で描いてたジェインより可愛くない」と思ってしまって……。変にキンキンした声でなく、台詞も聞きやすかったし、好演だったとは思うんだけど。

ジェインの親友の女の子ワン・メイ役は彩みちるさん。チャイナドレスがよく似合って可愛かった。

そしてニニアン役、華世京さん。なんと昨年入団したばかりの研2さんということで。
大抜擢ですよね。
モプシーに次ぐ、三番手と言っていい役どころ。
台詞には少しもちゃっとした感じがあるかなぁと思ったけど、歌は見事で。
音楽学校首席卒業もなるほどという感じ。
見た目も可愛らしく、あの大きな丸眼鏡と、全体に「ボサボサした」衣裳がよく似合ってました。

最後、3年後のシーンではジェインは「もうすぐ二十歳」。ニニアンももうメガネをしていなくて……。原作では確かニニアンがジェインに「彼がいたことを君がちゃんと伝えていかなきゃ」みたいに言ってたと思うんだけど、そこはカットされてたなぁ。あのくだり好きだったのでちょっと残念。

「僕を排斥する理由がお金だというなら」と金貨の雨を降らして去って行ったアダム。その金貨のおかげでマジェイアの人々は働かなくてもよくなり、「がんばって魔術を磨く必要もない」ようになってしまった。
……って、一体どれだけの金貨が降ったの??? タマゴを元通りにすることはできてもタマゴ自体を生むことはできないアダムの魔法、降って来た金貨もどこかのものを「横取り」して降らせたのではないのか……どこかで代わりにすっからかんになってる町があるのでは。

アダムを探しにストレーン山脈の向こうへ行くというニニアン。一緒に行くというジェインに、「君はアダムに魔法を教えてもらったんだろ」と言い残す。
「いつでも会える」と言っていたアダム。ジェインが心の中の魔法の箱を開けると、アダムとモプシーの姿が――というところで幕。

原作を読んだ時もそうだったけど、宝塚版も最後、じーんと来ました。派手な「感動」じゃなくて、じわぁぁぁっとこみ上げてくる感じ。こういう作品もできる、宝塚ってほんと奥が深い、幅が広い。

再び幕が上がってフィナーレ。あれ、こういうバウ公演にフィナーレってあったっけ?主題歌に乗せてキャストが出てくるだけじゃなかった???
長いことバウ公演観てないので今どきの「普通」がわからないけど、ちょっとびっくりしました。
朝美さんも縣さんもばっちり燕尾(だったよね?タキシード???)で決めてダンス! はぁぁぁぁ、お2人とも格好いい、美しい~~~~~。特に縣さんは「犬」だった人とは。

やっぱり本編だけでは「格好いい男役成分」が足りないからフィナーレ付けたのかな?と思ってしまいました。本編もいつもと違う魅力が楽しめたけど、やっぱりバリバリのキザな男役姿もね、観たいよね、うん。

カーテンコールの挨拶でDVD&Blu-rayの発売が決定、とお知らせしてくれた朝美さん。「魔法の箱だけじゃなくBlu-rayのパッケージも開けて、いつでも会えるよ」と。
ふふふ。
「いつでも会える」のとこ、お芝居本編の通り、こちらの頬に手を添える仕草で言ってくれて、「ぎゃあぁぁぁぁ朝美様ぁ……!」ってなりましたよね。

大劇場『CITY HUNTER』、彩風さんの冴羽獠はもちろん朝美さんのミックも楽しみ、縣さんの海坊主は超楽しみ。
問題はチケットが手に入るかどうかということで……。歌劇団、お願い、公演期間をもうちょっと長くして、公演数を増やして、一般人もチケットGetできるように、なんとか……。