今回の雪組さん、思いがけず2回観劇することができました。1回目は11月中旬、スーパー万代さんの貸切公演。お友だちに誘われ、久しぶりのS席観劇! Sで観るの何年ぶり?とちょっとblog内を検索したところ、おそらく2012年の月組『エドワード8世』以来。13年ぶりでした。
Sって、1階って、こんなに舞台が近かったんだね……近すぎてどこ見ていいかわかんないぐらいだったよ。ありがとう、A様、そしてありがとう万代。
2回目はいつも通り自分で取ったB席。1回目のちょうど2週間後。いったん1階で観たあとの2階席……舞台が遠いねぇぇぇぇぇ、豆粒だねぇぇぇぇぇ。でも全体はよく見えるよ、舞台装置や背景も、「ここ、こんなだったんだ」っていう発見があったよ、遠いけどほぼ中央の席だったし。遠いけど見やすかったよ、うう(負け惜しみ)。
1回目と2回目では「席の見え方の違い」もあり、「もう話がわかっている」こともあり、舞台の印象が少し変わったのですが、基本的には1回目、初観劇での感想を書いていきたいと思います。
まずは「ミュージカル・ロマン」と銘打たれたお芝居、『ボー・ブランメル~美しすぎた男~』。作・演出は生田大和先生。そして作曲をタカコさん(和央ようか)のご主人、フランク・ワイルドホーンさんが手がけてらっしゃいます。
18世紀末イギリスに実在した「ダンディズムの祖」ボー・ブランメルの波乱の生涯を描く作品、副題にある通り、そしてこのポスター通り、朝美さん扮するブランメルがとにかく美しい! なんせ「その美貌とファッションセンスで社交界を駆け上がった」人物、劇中でもプリンス・オブ・ウェールズに顔そのものを「美しい!」と称賛されていますし、高い襟にクラバット(スカーフ?)を合わせたぴったりした衣装も本当によく似合って麗しい。
主役のブランメルだけでなく、全体に衣装にすごく気合いが入っている気がしました。いわゆる「輪っかのドレス」「18世紀王侯貴族」のきらびやかな衣装も、ブランメル風の格好いい衣装も両方楽しめ、地味なはずのトーリー党員でさえとても美しいお洋服。ブランメルを苛む亡霊たち「ロココの夢」の衣装も良かったなぁ。
でもストーリーはちょっと……だいぶ……退屈に感じてしまいました。
特に最初の場面、いきなりブランメルの回想、子ども時代の場面から始まって、これがけっこう長い。少年ブランメルを苦しめる父ウィリアムは諏訪さきさん。諏訪さんは歌も良いし、おどろおどろしいメイクもお芝居もとても良いのだけど、幕が開いていきなり「妄想に取りつかれた父親に苦しめられる」暗くてつらい場面なので、初見ではすごく長く感じました。2回目はもうわかってるから「まだ続くの?」とは思いませんでしたが。
一転華やかな夜会の場面になり、そこでかつての恋人ハリエットと再会するブランメル。有名女優となり、皇太子の愛人ともなっているハリエット、彼女がまだ小さな芝居小屋に立っていた頃、二人は出逢った。
ここでまた回想シーンになるんですが、ハリエットとブランメルの衣装の早変わりが見事でしたね。夜会のきらびやかな衣装から市井の若者の衣装、そしてまた夜会服に。芝居小屋の騒がしい一団の中に華世さんがいて、なぜかウサギ耳をつけて踊る踊る。似合う、可愛い、でもなんでウサギ耳??? 現在時空ではシュッとしたトーリー党員ジェンキンソンを演じている華世さん、ウサギ耳とのギャップ~(だがそれが良い)。
「なぜ私を捨てたの?」と問うハリエットに、「俺は俺を捨てたんだ」と語るブランメル。労働階級の貧しい“ジョージ”であることを捨て、上流社会で頂点に立つことを選んだ彼。ここにいるのはジョージではなく「ボー・ブランメル」。社交界は劇場、ハリエットもブランメルも、それぞれの役を演じきるのだ……。
が、しかし。
当然焼けぼっくいに火はつくわけです。ロンドンを離れ、ウィンダーミア湖畔の森へ狩りにやってくる皇太子他の面々。ブランメルも同行するも、「狩りなんかまっぴらだ。せっかくの服が乱れるじゃないか」と一人森の奥へ。ここ、万代貸切公演の時は「万代!万代!」と言いながら貴族たち(?)が袖へはけていって、ブランメル朝美さんも「あー、俺も狩りよりスーパー万代に行きたい」などとのたまっていました。うぷぷ。
そしてブランメルは森の奥でばったりハリエットと再会。「ここはロンドンじゃないわ」というハリエットの言葉に勢いづいたブランメル、立ち去ろうとするハリエットの手を掴み引き留める。待ってましたとばかり鳴り響く雷鳴、降り出す雨。雷雨来るよね~、こういう場面ねぇ。脳裏に蘇る『珈琲カルナバル』他の名場面……。
ハリエットの言うとおり、「ここはロンドンじゃない」から、二人が仮面を脱ぎ捨て、ただの一人の男と女として、ブランメルではない「ジョージ」として愛し合うのはまぁいいんですけど、ブランメル、別れ際に「ロンドンでも会おう」って言うんですよね。
え? ロンドンじゃないから素に戻れる、ロンドンに帰ったら俺たちはまた他人同士だ、じゃないの???
次の場面、本当にあっさりロンドンでいちゃいちゃしていて、「えー」と思いました。おまえの美学はその程度のものだったんかよーーーーーーーー。
ここでちょっと、かなり、ブランメルという人物にがっかりしてしまって、後半の展開を面白いと思えなかったんですよね。朝美さんはとーっても綺麗で、特徴的なおじぎの仕方も格好良く、ちょっとコミカルな場面も、シリアスな苦悩も素敵だったけど、「ブランメル」というキャラクターには全然共感できなかった……。
ブランメルにはピアポントという悪友がいて、彼が「あの女はやめておけ」「お前が隠し通せるとしても、彼女にそれができるとは限らない」とわざわざ忠告してくれるのに、全然聞く耳持たず、のほほ~んとしてるし。
皇太子に二人の仲がバレた、となった時も、ピアポントに言われるまで「ハリエットがどうなるか」に思い至らない。いやー、ちょっと、美学も覚悟も足りなすぎじゃね? 皇太子の愛人に手を出す覚悟、「すべてを手に入れる」ため、「皇太子の持ち物さえ奪うのだ」という覚悟もなく、単に昔の恋人とよりを戻したいだけだったんかーい。(一応「狩り」の場面で、「私は今はプリンスのもの」「だからこそ」みたいなやりとりはあったし、バレた後に皇太子の前で堂々と「すべてを手に入れたかったんですよ!」と大見得切ってハリエットを救いはするけれども)
ハリエットの方にはデボンシァ公爵夫人との緊張感たっぷりのやりとりがあって、葛藤というか「ドラマ」があるんだけど、ブランメルは基本父親の亡霊とやりあうだけなので、なんかこう物足りないというか……。
皇太子の昔の愛人で、新しい若い愛人ハリエットに「いけず」をするデボンシァ公爵夫人、俺の(俺のじゃない)華純沙那ちゃんが演じてるんですが。
これがめちゃくちゃ良い!
華純さん凄い!!!
発声もセリフ回しも表情も素晴らしくて、社交界の古狸ぽい自信と余裕、公爵夫人としての気品と美貌、研6でこんな役を見事にやってのけるの凄すぎない??? 昔だったらジュンベさん(洲悠花さん)がやるような役じゃん(たとえが古い)。
1回目は舞台が近かったせいもあって、本当に華純さんのいちいちの表情やたたずまいが素敵で、華純さんのデボンシァだけで俺は満足、って感じでした。デボンシァとハリエットの会話劇場面はほんとに面白かった。
しかも華純さん、新人公演ではハリエット役なんですよね。自分と自分で丁々発止するみたいな……。ハリエットの華純さんも見てみたすぎる。
次期娘役トップとなることが決まっている音彩さんは皇太子妃キャロライン。皇太子に振り向いてもらえないことを嘆き、デボンシァやトーリー党員と組んでハリエットを追い落とそうとする「悪役令嬢」みたいな役。『ベルばら』の時のジャンヌにかなり近い役作りでしたね、きれいなジャンヌ()。トップ娘役になったらもうこういう悪役寄りの濃い役はできないだろうから、最後にこういうドスの効いた音彩さんが見られて面白かった。
音彩さん、声と顔の輪郭でB席からでもすぐにそれとわかるの、「スター」として強いですよね~。
キャロラインにとってデボンシァは「恋敵」であり、「敵の敵は味方」で一時的に手を組むけれど、「やっぱりあなたには気を許せそうにないわね」という関係で、この2人のバチバチな感じもまた楽しい。こういう女性陣のドラマに比べて男性陣はなんか今ひとつ盛り上がりが。
皇太子役は瀬央ゆりあさん。豪華な衣装がよく似合って格好いい。でも皇太子には特に興味が……。もっとがっつり朝美さんとバディ組んで欲しいなぁ。トップと準トップがいちゃいちゃするのが好きなんだよ、俺は。
ブランメルの一応のバディ、ピアポントを演じるのは縣さん。1回目の観劇の時、縣さんなかなか出てこなくてやきもきしちゃったんですよね。最初の夜会の場面に出てはいるんだけど、その後ピアポントとして台詞のある場面がなかなか来なくて。
労働階級出身のブランメルと違って、ピアポントは生まれながらの上流階級。「社交界の頂点に立つ」と言ってのけたブランメルを「面白い」と見込んで彼に投資し、彼の行動を友人たちと賭けにして楽しんでいます。「俺たちが降りない以上、おまえもこのテーブルから降りられないんだ」とブランメルを煽る、友人というよりはパトロン的な存在。
ちょいワルなキャラクターの縣さん、なかなか良かったです。「えー、こんな役」と最初は思ったけど、2回観て「なるほど」ってなりました。決して「友」ではないけど、ブランメルが「てっぺんを取る」ことを楽しみにはしていて、「あの女はやめておけ」とちゃんと忠告してくれるし、皇太子にバレたあとは「彼女はどうなるんだ?」と言ってくれる(まぁただの親切ではなくブランメルを皇太子のところに引っ張り出す方便でもあるけど)。最後、ブランメルの国外追放が決まって請求書を突きつけてくるところも、彼なりの“友情”ではあるのでしょう。「おまえがたとえ国外にいても取り立てる」っていうのは、「俺たちの縁は切れない」ってことだもんね。
そして華世さん。トーリー党員ジェンキンソン。台詞も出番も多くはないけど、最後にブランメルに「英国と皇太子殿下のために必要なことだった、あなたのせいではない」と言う重要な(?)役。去りゆくブランメルを目礼で送る姿が格好良い。華世さんと縣さんの役が逆だったらどうだったろう?と思っていたら、新人公演では華世さん、ピアポントなんですよねぇ。新人公演面白そうすぎ。
それまで黒メインの衣装だったブランメルが最後真っ白な衣装になって、白い朝美さんがまたとても美しい。花束を手に銀橋を渡っていくハリエットは夢白さんのサヨナラとかぶる。
朝美さんと夢白さんのこういう感じのお芝居、『仮面のロマネスク』を思い出しましたね。あれは最後の最後まで二人が仮面をはずさない、それこそ互いの美学と誇りを貫いて喜んで破滅していくみたいな話で……。悪くてエロい朝美さんが大変良かった。
あとこれは完全に余談ですが、デボンシァ公爵夫人がジュンベさん(洲悠花)さんなら、ブランメル=ネッシーさん(日向薫)、皇太子=シメさん(紫苑ゆう)、ハリエット=しぎちゃん(毬藻えり)、キャロライン=コケシちゃん(花愛望都)、ピアポント=マリコさん(麻路さき)、ジェンキンソン=ノルさん(稔幸)、ブランメル父=一樹千尋さんでバッチリじゃない? ネッシーさんのブランメル、すごく陽気そうだけど。シメさんがネッシーさんの顎クイってして「噂どおりの美貌だ!」って言うところ見たい。
などというあの頃星組妄想は置いといて。
ショーです! 中村一徳先生です!!! 凄かった! みんなアホほど踊らされてた!!! 観ているこっちまでしんどい!
「プレジャー・ステージ」と銘打たれたショー、『Prayer~祈り~』。最初静かな感じで始まるのかと思ったらすぐにロック調になり、最初からクライマックス! 一徳先生のショーはいつも音楽の趣味が私と合致しすぎてて、群舞の多い構成や「絵面」も全部好みなんですけど、今回はマジで群舞すごくて、ずーっと激しくて、さすがの私も「一場面ぐらいおとなしいとこあってもいいですよ???」と思うぐらいでした。
プロローグのあと、瀬央さんメインの「巡礼路」の場面が比較的おとなしいんですけど、舞台上の人数少ないだけで曲はしっかりビートがきいてそこそこ派手なんですよね。続く第3章「乙女の祈り」も可愛い「乙女」なのは最初だけ、すぐにカラフルスーツの男役さんが登場して格好いいJazzになっちゃう。この「乙女の祈り」のJazzアレンジがまた良いんだよなぁ。朝美さんのマゼンタピンクみたいなスーツもたまらない。
他の場面も全部そうなんですけど、娘役さんもめっちゃ踊らされてて、入れ替わり立ち替わりの群舞がほんとにすごい。
4章「アフリカの祈り」は縣さんメイン、裸足のダンス。縣さんこういうのやらされがちな気がする、獣系のやつ。
そして中詰め、「日本の祈り」。ここがまた!!!!! 真っ赤な衣装でソイヤソイヤっ!それでなくても盛り上がるのに、本っ当に入れ替わり立ち替わり、若手スターさんたちがこれでもかと銀橋で歌い、もちろん客席降りもあり、いつまで続くのってぐらい踊りまくる。プログラムのキャスト表もとんでもないことになってて、「日本の祈り」部分だけで3ページ近くある。どんだけ~~~。
いつもB席で寂しい思いをしていた客席降り、久々の1階で堪能させていただきました。ハイタッチもできました。ああああああああ、ありがとうありがとう。でも今回、ちゃんと2階席にも来てくれるんですよ。4人かな。5人いたかな。1階とは雲泥の差とはいえ、2階の客を置いてきぼりにしないでくれるのほんと嬉しい。ありがとう一徳先生。
中詰めのあと、さすがに静かな場面来るやろ、と思ったら来ない! 「海への祈り」、韓国の舟唄、やっぱり激しい!!! 舞台中央にしつらえられた船、本場で録音された音楽に乗せて「オギヨチャ!オギヨチャ!!」――こんだけ踊って息切れせずしっかり歌えるジェンヌ凄すぎ。
「日本の祈り」の最後の場面が華世さんで、「海への祈り」の前半には華世さんいないんだけど、途中でしっかり合流して踊りまくってて……すごいなぁ、忙しいなぁ。
母はこの「オギヨチャ」場面が一番良かったと言ってました。
諏訪さんの歌(Jazz)からロケットへ。諏訪さんもほんと声量あってうまいですよね。夢白さんのサヨナラっぽい歌(たぶん)があって、男役黒燕尾大階段! この公演で専科に異動となる組長奏乃さん、退団される杏野さん、莉奈さんの銀橋シーンもあり。
ショーの幕開き、最初の歌も奏乃さんだったし、途中男役ダンスもキレキレに踊ってらして、雪組から奏乃さんがいなくなるの寂しすぎる……。
朝美さんと夢白さんのデュエットダンスのカゲソロは音彩さん、そしてエトワールは華純さん♪ 本当に最初から最後まで大満足のショーでした。『ブランメル』も衣装気合い入ってたけど、ショーのお衣装も全場面素敵でした。どの場面も出場者が多いので、衣装の数がとんでもないのでは、とよけいな心配をしてしまいます。何よりジェンヌの体力! これを2回公演、大変すぎる。
梅芸での新トップコンビお披露目をはさんで、次の雪組大劇場公演は『ポーの一族』!!! チケット取れる気がしない――てか、エドガーが朝美さんなのは当然として、アランは誰が……? 瀬央さんはアランのイメージじゃないと思うけど、どういう配役になるんでしょう。キャスト発表が楽しみです。
そして『ブランメル』の新人公演、東京1月29日の新公はきっとライブ配信があるはず。予定を空けておかなければ!

0 Comments
コメントを投稿