(※以下ネタバレあります。これからお読みになる方はご注意ください)


宝塚版『ポーの一族』の予習として、昨年『ポーの一族』本編を読み返し、『ポーの一族 春の夢』も読みました。そして今回、未読だった『ユニコーン』と『秘密の花園』を読了。

アランが消えてしまったあと、エドガーはどうしたのか?

ということで、まずは2019年に刊行された『ポーの一族 ユニコーン』。最初のお話「わたしに触れるな」の舞台はなんと2016年。ついこないだ! たった10年前にエドガーがミュンヘンに姿を現している!!!

1976年、とある火事によりアランを失ったエドガー。エドガー自身も消息を絶ち、40年が過ぎていました。私たち読者の目の前からだけでなく、作品中の登場人物ファルカやアーサー卿の前からも姿を消していたエドガー。

その間エドガーは眠っていたらしい。そうしてグールのような“怪物”に変化してしまっていたと。もうこのままでいいや、と思っていたエドガーの心を動かしたのは、アランの存在。闇の中でずっと抱きしめていた“アランの塊”――しだいに聞こえてくるようになった、“アランの音”。

「ほとんど炭だよ」と言いながら、大事にその“塊”をトランクに入れ、「アランをもとにもどしたい」と訴えるエドガー。

そんなことはできない、無理だ、それはもうアランじゃない、と驚くファルカ。と、そこへ、「俺ならできる」という男が現れる。怪物の“ダイモン”、疫病神の“バリー”と呼ばれる男が。

「アランを取りもどせるなら、ぼくは悪魔とだって契約する」と言ってバリーとともに去って行くエドガー。エドガーにとってアランがどれほど大事な存在だったかがわかるのだけど、このあと、時代は過去に遡って、バリーがアランをもとにもどしてくれたのかどうかは描かれないんですよね。

えー、そんな殺生な。

ともあれこの最初の「2016年」のお話ではファルカがスマホを使っていたり、アーサー卿が通販でエドガーの靴を買ってくれたりして、「現代技術を使いこなすバンパネラの皆さん」が見られます。契約時の本人確認とかどうしてるんだ、と思いますけど。彼らの戸籍とか住民票とかどうなってるんだろ。

2篇目以降は“バリー”とエドガー&アランが過去にどう関わっていたか、というお話。1958年が舞台の「ホフマンの舟唄」で2人は“バリー”と出逢い、アランは“バリー”に誰も知らない彼の“本当の名”を教えてもらっていた。

そして「バリー・ツイストが逃げた」の舞台は1975年。アランが消える前の年、アランはみたび“バリー”と出逢っていました。そしてエドガーはクロエからバリーの正体と、ポーの村の成り立ちを聞きます。

バリーには美しい兄がいた。キング・ポーに逆らって粛清された兄を思い、千年以上もキング・ポーを「敵」としてひとり孤独な戦いを続けるバリー。そんなバリーにとって、自分の歌を褒めてくれたアランは特別な存在で、アランが炎の中に消えたとき、バリーもまた、ひどく傷つき悲しんだ――。

最後の「カタコンベ」は1963年、アランが二度目にバリーと出逢った時のお話。エドガーの知らない、アランとバリーの接点。

「わたしに触れるな」でバリーがエドガーとアランの“塊”を連れていくのは、彼にとってもアランが必要な存在だからなのでしょう。なんとしてもアランを取り戻したいと、きっとバリー自身も思っている。

アランって、生意気でわがままで言うこときかない手のかかる子で、正直「隣にいたら絶対イライラするな」って思うんだけど、でもその手間のかかるところ、「ピュアな人間の子どものまま」なところが、エドガーやバリーの心を惹きつけるんだろうな。

長い時を生きるバンパネラ。愛するものなしに――執着するものなしに、“時”を過ごせないよねぇ。

『秘密の花園』の方の舞台は1888年。アランがバンパネラになったのが1879年らしいので、二人が一緒に時の旅をするようになって100年ほど経った頃。

エドガーとアーサー卿との出逢い、「ランプトン」の絵の秘密、そしてアーサー卿がなぜエドガーたちの後見人となったのか、その経緯が描かれます。

本編を読み返してだいぶ時間が経ってしまったので、アーサー卿がいつからエドガーたちの後見人として登場してきたのか覚えてないんですけど、ポーツネル男爵とシーラを失って、「子どもだけ」で旅を続けなければならなくなったエドガーとアラン。人間界に足場を築ける、頼れる「大人のバンパネラ」がいないと何かと不便――そう、つまりこの『秘密の花園』は、アーサー卿がなぜ「人間をやめるに至ったか」の物語でもあります。

本編「ランプトンは語る」に登場した10枚の肖像画。顔だけをエドガーにして描かれた「ランプトン」シリーズ。その絵を見て、「兄さんに似てる」って女の子が言うんですよね。名前なんだっけ。

昔、まだ『ポーの一族』をちゃんと読んだことがない小学生時代、小学館の『少女漫画の描き方入門』みたいな本にそのページが紹介されていて、すごく印象に残ってた。50年経って、あの「兄さんに似てる絵」が描かれた経緯を知ることになろうとは。

アーサー卿、若くても40代かなと思っていたらなんと33歳だったのでびっくり。ラスト、2000年7月のアーサー卿が描かれていて、もとの自分の屋敷を借り受けて庭を再建しているんですが――やっぱり戸籍とか身分証明とかどうなってるんだろう。お金とか……。人間をやめたあと、人間としては死んで、財産とかももう手を離れてしまったのに、お金はどうしてるのかなぁ。絵を描いてるんだっけ…???

ちょうど100歳のジョン・オービンも登場、元気そうですごい。

アーサー卿に「クラバットタイが古すぎる」と言われたポーの村のシルバーが、最後「最新流行はこのようなリボンタイですよ」とイキってるのも面白かった。シルバー、長く生きてる悲哀が全然ないよね……。「愛するもの」とかなくても全然平気そう。

それでアランは復活するのか?ということで、「わたしに触れるな」の直接的な続き、「青のパンドラ」が描かれています。

不定期連載ということで、途中で止まっているみたい。「俺ならできる」と言うバリーと2人、エドガーは再び姿を消し、どうなったか誰も知らない――そのままの方がロマンチックかもしれませんね。アランは復活したかもしれないし、しなかったかもしれない。

今もエドガーはアランの“塊”を抱いて、「いつかの明日」へと旅を続けているのかも。