ちょうど一週間ほど前の夜、2階の網戸に
蝉がとまっていた。
あ、そろそろ蝉の季節なんだ、と思った
とたん、蝉の鳴き声に気がつくようになった。

夜で、しかも網戸(つまりは戸外)という
難しい条件の中、夫が一生懸命写真に納めた。
フラッシュの光で羽根がなんだかきらきらして、
意外にきれいに映っている。
夫によると、これはニイニイゼミであるらしい。

今年の4月から環境系の部署に配置替えに
なった夫は、やれ螢だ、やれ魚つかみだ、と
がぜん「男の子の正しい夏休みの過ごし方」
みたいな活動に燃えてしまって、
昨日も蝉を一匹捕まえてきた。

「鳴き声を録音するんだ!」
と言って鳴くのを待っていたけど、狭い
虫かごに閉じこめられた蝉は一向に鳴いて
くれない。
「可哀想やし、放したりぃな」
「鳴くまであかん!」

鳴かぬなら、鳴かしてみよう
ニイニイゼミ


いじって無理矢理鳴かすおじいちゃん……。
それもどうかと思うんですけど(^^;)

結局録音できないまま今日の昼には逃がして
やった。
地上でのたった1週間の人生ならぬ「蝉生」。
気の毒に、貴重な1日をあの蝉は無駄に
されてしまったのだ。

まこと人間というものは迷惑な生き物で
あるなぁ。

それにしても蝉の鳴き声が聞こえるように
なると、ホントに「夏が来た」って感じが
する。
うだるような暑さの中、「みーんみんみん」
とかいう声はより一層暑苦しさを増して
くれるけれど、やっぱりあれが聞こえないと
夏って気がしない。

昼下がり、蝉の声と遠くで遊んでる子どもの
声なんか聞きながら洗濯物を取り込むと、
向こうの空にはもくもくと入道雲が湧いて
たりして、そんでもって夏の太陽をたっぷり
浴びた洗濯物はあったかくて、なんとも
言えないお日様の匂いがしたりする。

世界が美しく感じられるのは、そんな時です。