同居している義母が大の動物嫌いなので、
今飼っているのは金魚とメダカだけ。

実家にいる時は犬を飼っていた。
名前はペロ。
子どもたちに石を投げられていじめられて
いたのを、弟が「可哀想だ。うちで飼う!」
と言って連れてきたのが最初。
当時弟はまだ小学校の2年生ぐらい。
「ぼくが面倒を見る!」と言ったものの、
もちろん最初だけで、中学生になる頃には
見向きもしていなかった。

もともとは誰かに飼われていた犬らしく、
人懐こく、トイレのしつけもできていて、
どんなに散歩の時間が遅くなっても
ちゃんと我慢している賢い奴だった。

焦げ茶の体毛と、その鋭い目つき(?)
で、よその子からは「狼!」と言われたり、
もっと小さい子には「熊!」と怖がられ
たりしていた。
わが家ではペロは「甲斐犬系の雑種」だと
勝手に思っていたが、何せ拾った犬だから
本当のところはわからない。
ともかくあまり目にしないタイプの犬で、
あんな男前は後にも先にもペロしかいない
と思っている。

私が小学校の高学年の時に家に来て、
確か結婚した年の冬に死んだ。
家で飼ってたのが17年
拾った時には既に成犬だったから、
20年近く生きたことになる。
近所の犬がみんなフィラリアにやられた
時も、一人元気に生き延びた。

晩年は足腰が弱り、ちょっとした段差
にもつまずくようになり、我慢できずに
おしっこをもらすようにもなった。
犬も人間と同じなんだなぁ。




ペロが死んだ日、結婚して実家を離れて
いた私のところに、母が号泣しながら
電話をかけてきた。
電話のこっちと向こうで泣き合った。
「もう二度と生き物は飼わない!」
と母は言った。

父はよく、家族とけんかして機嫌が
悪くなるとぷいとペロを連れて散歩に
行った。

足の悪い祖母でさえも、みんなの帰り
が遅い時には、ペロを散歩に連れて
いった。
祖母が綱を握っている時は、決して
駆け出したりしなかったらしい。

高校3年生の冬、母が体調を崩して、
夜に宿題しながら洗濯機を回すのが
私の日課になっていた。
洗濯機は裏の、ペロの小屋のすぐそば
にある。
「星がきれいやねぇ」なんて話しかけ
ながら、洗濯を干した。

みんな、それぞれに
ペロに癒されていた


「今度は人間に生まれてきぃや」って
母は言っていたけど、
やっぱり犬のペロでいてほしい気もする。

また逢おうね、ペロ。