橋本治
『ひらがな日本美術史』4巻/橋本治
『ひらがな日本美術史』、4巻目は、俵屋宗達の『風神雷神図屏風』に始まり、本阿弥光悦、尾形光琳、桂離宮に大津絵、円空仏ときて、浮世絵の誕生までです。
『風神雷神図』といえば、つい「風邪の神さん、風邪ひいてまんねん」という「風邪にカイゲン」のCMを思い出してしまいますが。
これ、京都の建仁寺にあるのですね。
以前、「枯山水の庭」の話でも、建仁寺は登場しましたが(建仁寺の庭)、去年のお正月、私は「風神雷神図」の看板に引かれて建仁寺に足を踏み入れたのでした。
入ってみたら、見られるのはレプリカだったんだけど。
ちょっとがっかり。
でもまぁ、庭も良かったし。
あの風神様と雷神様は有名で、よく知ってたけど、それと「俵屋宗達」の名は結び付いていなかった。
「俵屋宗達」だって、もちろん「聞いたことのある名」ではある。でも名前と作品名がさっぱり結び付かないところが素人の哀しさ。
宗達さんって、生没年もわからない「謎の画家」らしいんだけど、この本で紹介されているその作品を見れば、橋本さんが「彼は天才だ」というのもよくわかる。
狩野派のような本派絵師ではなく、宗達さんは「扇」なんかに絵を描く「絵屋」の人だったらしく。
どんな絵でも描くし、描けちゃって、画風だって物に合わせて自由自在。
デザイン感覚も素晴らしい。
宗達に限らず、日本の美術って「デザイン」だなぁ、とこの本を読んでいると思うけど。
今はアメリカのフリア美術館というところにある、宗達の『雲龍図屏風』というのがまた素晴らしい!!!
それでなくても龍大好きな私だけれど、本当にかっこよく、美しく、何とも言えず生き生きとして艶があって、橋本さんじゃないけど「なんでこんな素晴らしいものをアメリカに持ってっちゃうんだ!」と怒りたくなる。
図版は一部しか載ってないからねぇ。
全部を見たいよね。
日本に里帰りしないかな。
浮世絵誕生の紆余曲折の話も面白かったし、現在滋賀県在住の私としては、「大津絵」の話も面白かった。
でも宗達の次に感銘を受けたのは「桂離宮」の項。
桂離宮、行ったことない。
あすこって、1か月くらい前に予約しないと拝観できないんだよね。
だから、元バスガイドの母に連れられて京都の有名どころにはけっこう足を運んだ私なのだけど、桂離宮は行ったことがない。
すごーく、行ってみたくなった。
橋本さんによると、桂離宮は「体感する美」で、「行って、その場で見る」しかないものなんだそうだ。
「人の視線に応じて姿を変える生き物」だから、「一瞬を切り取る写真」ではそのすごさがわからない。
桂離宮は「もっとも典型的に日本の美意識を語るもの」で、その「日本の美意識」っていうのは、例の、「流れ」なのだ。「静止しない」ということ。
「時間の流れを描くのは日本の絵画の常識だ」って、前に出てきたけど、「建物まで静止しない」ってすごいよねぇ。
日本人ってヤバくね?(笑)
また折良くBSハイビジョンで「桂離宮」特集とかやってるし。
まだ録画しただけで見てはいないんだけど、「どうしてこういちいちタイムリーなんだ!」と感激してしまった。
ただの「偶然」を「必然」だと思い込むのは、人生を楽しくする秘訣です(爆)。
しかしホントにこのシリーズすごいよ。
めちゃめちゃ楽しい。
あと3冊読んだらもう終わりかと思うと、今からさびしいわ。
【関連記事】
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・『ひらがな日本美術史』第2巻/橋本治
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