昨日の演出篇では、スターさん達の演技についてほとんど何にも書きませんでした。

スターを語らずして宝塚の芝居が語れるか!

というわけで今日はスター篇。

と言っても、雪組を観るのすごく久しぶりで……さっき調べたら、2003年の『Romance de Paris』以来だった……。トップが朝海ひかるさんだった頃だわ……。

でもこの時すでに白羽ゆりちゃんが二番手娘役のような大きな役をもらっていて、「この子いいな」って思うお芝居を見せてくれていたのよね。

その後、白羽さんは星組のトップ娘役になって、『愛するには短すぎる』は観せてもらった。舞台映えする美人さんだし、まだそれほど上級生でもないのに大人の女の色気を醸し出していて、「白城あやかちゃんみたいな女優さんになれるのでは」と期待大だった。

なので今回のグルーシェニカもとっても楽しみだったんだけど。

いやぁ、良かったよ!!!

正直、ミーチャは喰われてたと思う。

グルーシェニカって周りから「淫売!」と呼ばれる女だもんね。「清く正しく美しく」のタカラジェンヌにはかなりハードルの高い難役。色気と毒気で男を翻弄しなくちゃならない。

しかもグルーシェニカに魅力がないと、このお話は崩れてしまうんだもの。

ミーチャとフョードルがグルーシェニカを取り合わなかったから、「父殺し」の悲劇は起こらなかったかもしれないんだから。

白羽ちゃんのグルーシェニカははすっぱで色っぽく、まさに「百戦錬磨の毒婦」という感じで、でも「宝塚」の一線は越えず、下品にはなりすぎず、「本当は昔の男を待ち続けていた」という芯に秘めた可愛い部分もちゃんとあってね。

柄が大きくて、でーんと存在感がすごくて、ミーチャがガキに見える(笑)。

原作でのミーチャとグルーシェニカの年齢って忘れたけど……そもそもミーチャは直情径行でガキっぽい人ではある。

白羽さん、遠目に見るとなんかジュンベ(洲悠花)さんに似てて。

ジュンベさんって、往年の星組の名娘役で、「色の濃い役」が得意な方だったんですよね。すごくこう、パンチの効いた演技をする方で。ジュンベさんなら嬉々としてグルーシェニカをやっただろうなぁ(笑)。その場合ミーチャはやっぱりネッシーさん(日向薫)で、シメさん(紫苑ゆう)はイワンなのかな。カテリーナがあやちゃん(白城あやか)で、アリョーシャはノルさん(稔幸)。スメルジャコフは……うーん、ブンちゃん(絵麻緒ゆう)? おっと、マリコさん(麻路さき)がいないぞ。マリコさんはね……イワンの影! おおっ、完璧や(爆)。

実際には『シチリアの風』という「カラマーゾフ」を下敷きにした作品でグルーシェニカをやったのはジュンベさんじゃなくてシギちゃん(毬藻えり)で、これがまた素晴らしかったんだけどねぇ、うん。

……えーっと、白羽さんの話でしたね。

まだ幕が開いて2公演目だったので、多少「作りすぎ」に思える部分もあったんだけど、これから回数を重ねてこなれていけば、さらに素晴らしいグルーシェニカになるんじゃないかな。

歌も1曲、すごい難しいの歌わされてた。音域が広くて。

大劇場公演に比べれば公演数はずっと少ないとはいえ、毎日2回もグルーシェニカやったら疲れるだろうなぁ。

というのは、まぁミーチャも同じでしょうが。

ミーチャって、ほとんどずっと怒鳴ってる役なんだもん。

ミーチャは雪組トップの水夏希さんがやられたわけですが。私が水さんを観たのはえーっと……花組にいらした頃? 水さんって、初舞台の後、花組じゃなかったっけ……???っていうぐらい、観てないな……。

つまり、ちゃんと観たのはこれが初めてぐらいな感じです。

長身で立ち姿の美しい方なので、非常にかっこいいミーチャではありました。

怒鳴るセリフが多くて、ちょっと聞きづらいところもあったけど、ストレートすぎるミーチャの純情がよく表現されてたんじゃないかな。

って、白羽さんの評に比べたらえらいあっさりやん(笑)。

だって、わかんないよ、ミーチャって。どう評したらいいのか。

白羽さんのグルーシェニカがとっても「大人」だったせいで、ミーチャは「ガキ」に見えて、どっちが主役かと言ったら白羽さんが主役に見えるぐらいだったんだけど、それもまた「ミーチャ」という役では必須の要素かもしれないし。

間違っても「包容力ある大人の男」なんかじゃないもんね、ミーチャは。

一人で興奮して走り回ってる奴だから……。

うーん。

ただ、これを観て「水さんのファンになった!」ということはなかったです……。

イワンは彩吹真央さん。

彩吹さんは花組時代によく拝見してました。

どちらかというと「すっきりさわやかな」タイプの方だと思うんだけど、イワンは「影のある黒い役」。いつもながら滑舌が非常に良く、よく響く声で、「理性的な悪役」を好演。原作以上に「カーチャへの愛」が前面に出て、しかも「革命家」のイワンだったので、意外にはまり役でしたね。

というか、彩吹さんは何でもそつなくこなせすぎる「器用貧乏」なところがあるかもな……。

イワンの影。五峰亜季さん。

五峰さんって、今、専科なのねぇ。

私が一番宝塚に通っていた時代(つまり20年くらい前)、すでに活躍されていました。

なので、懐かしかったです。

ダンスの切れはさすが。

「イワンの影」が男じゃなくて「女」なのって、面白いよね。格好としては男装だけど、でも「男」じゃない。まぁ、「影」に性別があるか、という話もあるので、中性的なイメージかな。

アリョーシャ。沙央くらまさん。

わかんない(笑)。

スメルジャコフ。彩那音さん。

いかがわしい雰囲気がよく出てて良かったです。髪型が『プラハの春』の時の夢輝のあちゃんに似てて……なんとなく好感を持ってしまった。

カテリーナ。大月さゆさん。

お芝居はまだまだ、という気がした。今、研5? グルーシェニカの白羽さんが強烈だから、あれに対抗するのは誰がやってもかなり厳しいね。

そして。

フョードル。未来優希さん!!!

好きやねん、未来さん。初舞台からずっと応援してるねん。そのわりにはずっと雪組観てへんかったけど(笑)。

さすがのうまさでした。

もう、素晴らしいわ!!! フョードルもねぇ、好色で破廉恥で、ものすごーく困ったおじさんでしょ。タカラジェンヌがやりたい役じゃないっていうか、こーゆー役をうまく演じられていいのか?というか。

でもフョードルも、この人が下手くそだと「父殺し」が起こらないもの。

憎たらしくて、でもどこか愛嬌のある「道化」フョードル。

もうセリフの通りが他の人と段違いだし。グルーシェニカに後ろから抱きつくとことかホントに「スケベじじぃ」で(笑)。

うますぎ。

フィナーレでは「黒い瞳」を熱唱。歌もうまいのよねぇ。

音楽学校、主席で卒業した方だもの。

歌もダンスもお芝居も、三拍子揃った実力派!!!

水さんと同期なのよね。

カナメ(涼風真世)さんのサヨナラだった『BROADWAY BOYS』(1993年)が初舞台。

ずっと雪組さんで、今確か、雪組の副組長さん。

とうとう初舞台から知ってる人がそーゆー地位になるか、って感じやねんけど。

新人公演の主役も経験してはるよねぇ。

うますぎて、「トップ」よりも「脇を固める」の方に行っちゃったのかな。行かされたというか……。

でもこういう「うまい人」がいないと、お芝居が成り立たないからね。フョードルなんて、正直専科さんがやってもいいような役じゃない? 組子でこの役ができるってすごいよねぇ。まぁ、組子っていうか、副組長さんやけど……。

今、専科さんもだいぶ高齢になってきて、この先どうなるのかな、とちょっと心配したりする。専科に残れるような役者さんって、少ないでしょう、今。「実力派」と呼ばれる、芝居のしっかりできる人が。

主役だけじゃお芝居は成り立たないのになぁ。

未来さんみたいな「色気のある芝居ができる」人、大事にしてほしい。

フィナーレの最後、当然一番最後にミーチャの水さんが出て来くるんだけど、それまでフョードルの未来さん、グルーシェニカの白羽さんにくっついてるのね。ぎゅって抱きついて、グルーシェニカに「あら、困った人ね」みたいな顔されて、そこへミーチャがやってきて、「こら!」とフョードルを押しのける。

こーゆー細かいとこが、生の舞台の楽しいところです。

というわけで、「スターさん」的には「未来さんが観られて良かった♪」な『カラマーゾフの兄弟』なのでした。