映画
『レイン・フォール 雨の牙』/バリー・アイスラー
この間、映画『レイン・フォール』を見終わった後、その足で書店に駆け込み買ってしまった原作本。
椎名桔平さん演ずる主人公ジョン・レインがかっこよくて、もう一度彼に会いたい、彼の活躍をもっと見ていたい!という思いだったのだけど。
映画と原作、かなり違う。
原作のジョン・レインは、椎名さんよりだいぶ年上。
ヴェトナム戦争に従軍してるの。「35年経った今も」ってセリフが出てきて、35年前に20歳だったらもう55歳。ティーンエージャーで入隊してても50歳そこそこ。
え~~~~~~。
ちょっとがっかりしました(笑)。
もちろん、50歳でも60歳でもかっこいい人はかっこいいので、原作のジョン・レインも魅力的な男性には違いないんだけどね。
でもヒロインみどりとできちゃうし。
ダメだよ、手ぇ出しちゃ! もっとストイックでいなきゃ!!!(笑)
お話の展開自体もかなり違って、映画では重要な役割を果たす「街中に張り巡らされた監視カメラ」も出てこないし、憎き仇役CIA支局長のホルツァーが姿を現すのもかなり後になってから。
映画では最初っからテンション高く怒鳴りまくってたのにねぇ。
もっとも、この「展開の違い」のせいで、最後までハラハラどきどき、楽しく読めた。
うん、ほんとに、映画とは別物。
いや、順番から行ったら映画が「原作とは別物」で、原作ファンにしてみればあの映画は「なんだこれ、全然違う!」って怒っちゃうぐらいの代物かも。
原作は2002年の発表。
ジョン・レインシリーズは現在6作目まで書かれていて、アメリカのみならず各国語に翻訳されて人気を博しているのだとか。
この『雨の牙』、映画の感想でもちらっと書いたとおり、「政治と建設業界の癒着」というのがポイントになっているのね。ヒロインみどりの父親は国交省の官僚で、汚職やら癒着やらといった「腐敗の実態」を暴こうとしたがゆえに殺されてしまう。
みどりのセリフには
「日本の国土面積はアメリカの4パーセント、人口は半分にすぎないのに、公共事業費は1.3倍も使ってるのよ。知ってた? 過去10年間で、政府予算の10兆円が公共事業を通じてやくざに流れたと言う人もいるわ」
なんてのもあって、さらには裏で日本を操っている右翼党の党首なんてのも出てきて、「こんな話がよその国で広く読まれてるのか……」と思うと日本人としてちょっと恥ずかしいような、なさけないような。
もちろんこれはフィクションで、ドキュメンタリー作品ではないんだけど、でもこれを読む外国の人は「へぇ、日本ってこーゆー国なんだ」ってやっぱり思うでしょ。
実際、「無駄な公共事業」「土建屋体質」ってのはホントのことだと思うしなぁ。
「日本の選挙では、候補者の議会での投票履歴よりも、どれだけ地元に金を落とせるかで当落選が決まる」なんてセリフを読んで、「わはは」と笑ってる場合じゃないよな[E:sweat02]
もともと別の出版社から出ていたこの作品、映画化を機に1作目と2作目をハヤカワが文庫化。1作目の最後には別の作品『フォールト・ライン』の冒頭部まで収録するという力の入れよう。
いやぁ、すごいね。「続きは単行本を買ってね」っていうコマーシャルが小説にくっついてるなんて。
それだけ本が売れない時代なんだろうな……。
私としては著者の新作『フォールト・ライン』よりジョン・レインシリーズをちゃんと最後までハヤカワで出してくれるのかどうか、そっちの方が気になるんだけど。
3作目以降の刊行予定、まだわからない。2作目までの売れ行き次第なのかなぁ。
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