※ネタバレあります!これからご覧になる方はご注意ください!!!
7月31日11時公演を観てまいりました。
『アルジェの男』は1974年に鳳蘭さん主演で上演された作品だそうです。その後1983年に峰さを理さん主演で再演。今回が再々演となるそう。
1974年…37年も前ですよ。
小学2年の時見に行った『ベルサイユのばらⅢ』で鳳蘭さんがフェルゼン役だったんだよねー。そんなに昔の作品なのか。
もちろん今風に手を加えられているそうなのですが、初演・再演をまったく観たことのない私にはどう変えられたのかはわかりません。ただ昔の作品らしい「香気」があって、なかなか好みでした。
アルジェの男、ジュリアンは街のチンピラ達のリーダー格。生きるために盗みや掏摸はしても“殺し”はしないし、“非道”なことはやらない。そしていつか巴里に行って一旗揚げるんだ!という野心を胸に抱いている。
そんなジュリアンがひょんなことからアルジェの総督と知り合い、その野心と才覚を見込まれて総督のもとで働くようになり、出世の階段を登っていく――。
この、「野心を持った下層の若者」という話型がいかにも「古い作品」な感じですよねー。もはやそういう「物語」が描けなくなったな、古き良き“青春”だなぁ、としみじみしてしまいます。
ジュリアンというと真っ先に『赤と黒』のジュリアン=ソレルを思い出すけど、かつてはそのような「物語」がたくさんあったものね。普遍的なものだと思われてた。
ジュリアン=ソレルは野心のために人妻と令嬢を手玉に取り、結局はその“愛”によって破滅してしまうのだけど。
『アルジェの男』のジュリアンも、巴里に出て二人の女を手玉に取る。総督の娘で気位の高いエリザベートと、公爵夫人の姪で盲目ゆえにひっそりと暮らしているアナベル。
でも、アルジェでのかつての恋人サビーヌと再会し、「俺の胸を今、愛ってやつがどんどとん叩くんだ!」(こんなセリフは宝塚の男役にしか言えん)と「本当に大事なものに気づく」。
アルジェを離れて5年、巴里で成功への道をひた走っていたジュリアンだけれど、過去から現れたのは恋人だけでなく、彼のチンピラ時代を知り、また彼の成功を妬む男で……。
「うむむ、これは一体どういう落とし方になるんだ」とドキドキしながら観ていたら。
最期、「ギャツビー」だった。
『華麗なるギャツビー』。
あれも野心に燃えた青年の話だよねぇ。
「うわぁ、そういうオチかぁ…」と思ったわ。予想できたのにちょっとショックだった。
そしてその終わり方に感動というか感慨というか、「嗚呼……!」と。
いやぁ、なんか、好きだな。
多少テンポが遅く感じられたけど、三人三様のヒロインがじっくり描かれているのも良くて。昔ってこんなふうに、トップさんだけじゃなく2番手3番手の娘役さんも大いに見せ場があったよねぇ。
トップにはならなくても個性派の娘役さん、男役さんがしっかりと輝きを発して芝居を盛り上げてた。
その人達のために座付き作者の演出家の先生方は役を用意して、見せ場を用意して。
今はそういう“脇”がとても弱いと思う。そーゆー生徒がいないからそーゆー作品・役がないのか、役が当たらないから育つものも育たないのか、原因は知らないけれども。
組が4から5に増えたのが大きかったのかなぁ。
「トップになれないスター」をトップにするために組が増えたのかもしれないけど、そのおかげで各組の層が薄くなってしまったという部分はあるよね。
トップだけじゃ成り立たないのに。
で。
その3人のヒロイン。
ジュリアンの恋人サビーヌが蒼乃さん。大変素敵でした♪
サビーヌっていい女すぎるんだよねぇ。ジュリアンのことを本当に愛してる。巴里の社交界で頭角を現していくジュリアンには自分のような女はふさわしくないと身を引いて、ただ見守ることを選んだ。
そしてジュリアンの輝かしい未来を守るために彼女は……。
そりゃこんな愛され方したら「俺の胸を愛が叩く!」になるわなぁ。
踊り子として店で踊るシーンはとてもセクシー。衣装もなかなかきわどくて。
昔の宝塚の作品見るとけっこうこーゆー「アブナイ」衣装着てるよね。今よりずっと露出度高くて、「大丈夫なの!?」って感じの。
ここまで4作品くらい見てるけど、蒼乃さんはとてもいい娘役さんだと思う。少し歌が弱いけど、ダンス素敵だし、お芝居も雰囲気あってうまい。
好き♪
『赤と黒』でのマチルダに当たるような、高慢な総督の娘エリザベート。総督とその奥さんがとてもいい感じの人なので、なぜ娘だけそんな高慢に育ってるの?って思う。
しっかりした人々でもやっぱ娘には甘いのかなぁ~。
親が二人して「あなたは本当はジュリアンを愛してるのよ」って諭すんだもんな。娘の気持ちはお見通し。
エリザベート役は彩星りおんさん。滑舌は良かったし、役の個性はしっかり表現できてたように思う。
そして公爵夫人の姪アナベル。両親を亡くし、盲目ということもあって、社交界の華である伯母とは真逆の地味で静かな暮らしをしている。公爵夫人は彼女に幸せになってもらいたいと思い、ジュリアンを焚きつけ、またアナベルの方もジュリアンに好意を抱いて……。
アナベル役、花陽みらさん。薄倖でつい同情したくなる役ということもあるけど、なかなか良かったです。
彼女の「付き人」アンリとの場面はじーんと来た。
アンリってアナベルのこと好きなのに、自分の想いは決して口に出さないんだよね。アナベルだって「あなたには何でも話せるわ」ってすごく信頼してるんだから、ジュリアンに裏切られて傷心のアナベルをもうちょっとなんとか「自分の愛で」って思えばいいのに。
ただ耐えてる。
アンリ役の明日海りおさんは端正な2枚目で、こういう「優しくそばにいてくれる人」の役がハマってました。セリフも出番も決して多くない中で、アナベルへの想いがしっかり伝わってきた。
で、公爵夫人が邦なつきさん。
ミス・ハヴィシャム!とつい声をかけたくなります(笑)。好きやわ~、邦さんのあの声、あの存在感!
専科のお姉様方は減る一方(どんどん辞めていかれるばかりで、新しく専科になる方がほとんどいない)で、今後の宝塚がホントに心配なのですけどね。組子にも「脇を固める実力派」がいない、助っ人として芝居を支えてくれる専科さんも人手不足となると……。
しかし邦さん、ミス・ハヴィシャム(1990年月組公演『大いなる遺産』)の時はまだ若かったんだよね。今の私と同じくらいだったんだよね、きっと……。すでに貫禄だったなぁ。
ジュリアンのアルジェ時代のチンピラ仲間で、ジュリアンの成功を妬むいわば「敵役」ジャックに龍真咲さん。
役自体大変ヤな奴なので好感が持てなくても仕方ないのですが。
うーん、もうちょっと品があってもいいのかなぁ。チンピラだけどやっぱり“宝塚”だし、2番手男役として演じるわけだから、ただの「三下」ではいけないと思うんだ。
龍さんちょっと線が細くて、ジュリアンのキリヤンがやっぱり年季入って貫禄だから、どうしても「三下」に見えちゃうんだよなぁ。きっと人気のある若手スターさんなんだろうと思うけど、あまり色気が感じられなくて、私は明日海りおさんの方が好み。
「色気不足」は彼女に限らず昨今の宝塚における大問題だと思う。
「Sexy」じゃなくて、「色気」。
背中やちょっとした仕草から匂い立つ香気。女が男を演じるという嘘ならではの、虚構だからこその、えもいわれぬ魅力。
世の中全体からそういうものはなくなっていってるのかもしれないけど……。
ショー『ダンス・ロマネスク』もなかなか素敵でした。最近見た中ではかなり良い部類。というか、好み。どーも最近わくわくするショーに出逢えないのよね。まぁトップさん以外の生徒がほとんどわからなくて漫然と見てるからかもしれないんだけど。
オープニングから客席降りで盛り上がり、「ノートルダム・ド・パリ」の場面では涙腺うるうる。
いやー、あの場面良かったなー。「ノートルダムのせむし男」をモチーフにした場面なんだけど、ヤンさん(安寿ミラ)の振り付けが素敵で、蒼乃さんのダンス、キリヤンの表現力……久々に心に残るショー場面だった。(ただ最後、翼の演出は私的には不要だった)
中詰めもスタンダードナンバーをラテンで♪ 大変私好みの選曲。
が。
フィナーレ前の男役燕尾の大階段。
♪こえて~こえて~♪って、え゛?
まさかのゆず。
ゆずの『虹』をボレロアレンジ。
……ビミョーっ!!!!!
男役燕尾のボレロ大階段ったら一番カッコいい場面じゃないですか。それがなんでゆず……。
斬新と言えば斬新だけど、ちゃんとアレンジされてるしキリヤンが歌い上げるとなんか格好良かったけど、でも。
ゆずかよぉ(ゆずファンの人ごめんなさい)。
「ダンスロマネスク」というタイトルなんだし、クラシカルな名曲をボレロにしていただいた方が私としては嬉しかった。
まぁこれは好みの問題だから、「わぁ、ゆずだ!嬉しい!!」「へぇ、あの曲がこんなふうに」と高評価な方もいることと思います。
広くウケようと思うとなかなか難しいね。スタンダードばかりだと同じようなショーになってしまうし、演出の先生方も「宝塚らしさ」=「型」と新しさ・オリジナリティのバランスには苦労されているのでしょう。
全体としてはなかなか良いショーでした。
ところで。
『アルジェの男』、峰さん主演のおりの新公主役はシメさん(紫苑ゆう)だったそうな。そして今回の新公主役は音楽学校でのシメさんの教え子さんとか。
シメさんももう在団年数とそれ以後の、音楽学校の先生との年数が近づいてきたって。
そんなに経っちゃったんだねぇ。
「100周年を目前に今の宝塚が何処に向かいたいのか・・・正直わかりません。」とシメさんも書いてらっしゃって(シメさんの公式サイトはこちら、やっぱり、って感じなんですけど。
どうなっていくのかなぁ、宝塚。
とりあえず専科さん補充しなくていいのかなぁ。専科さんに行けるような生徒がいないてか…?
VIVA!タカラヅカ
4 Comments
とても共感しました。またゆっくり遊びに来ますね。
返信削除��たろ様
返信削除こんにちは。
コメントありがとうございます[E:happy01]
最近は年に数回しか宝塚には行けず、感想も「年寄りの繰り言」っぽくなっておりますが、よろしければまた遊びに来てください。
お待ちしております[E:clover]
はじめまして、こんにちわ。
返信削除いろんなところで共感しました。
特にショーのノートルダムの最後…羽…と、ゆずの曲は…
「えっ…」って思いました。
でも前回のバラの国~より、今回の方が全体的に好きでした(^-^)。
��ルカ様
返信削除こんにちは。
ご訪問&コメントありがとうございます[E:happy01]
やっぱり「ゆず」は「えっ…?」って思いますよね(笑)。
たとえマンネリでも宝塚はやはり宝塚らしくクラシックやスタンダードナンバーを使った方が…。
もちろん今ドキの歌も使いようだとは思いますが、よりによって燕尾の大階段では[E:coldsweats01]
『バラの国の王子』はキリヤンのせっかくのお顔が隠れてしまっていましたし、ショーの印象も薄かった(笑)。
再演物を見ると、やはり昔の作品の方が“宝塚らしい香気”があっていいな、と思っちゃいます。
なんで今はこんな風な作品が作れないのかな、と…。
次、キリヤンは『我が愛は山の彼方に』ですね。すごく期待できるけど、残念ながら観劇の予定がないです[E:sweat02]
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