(4巻目までの感想はこちら→第1巻第2巻第3巻第4巻

第4巻の感想で「この先まだまだ長いと思われるけど」と書いたのに、どうもこれでおしまいらしい。

Amazonで予約した時に商品説明のところに「完結!」みたいに書いてあったので、「ええっ!あと1冊で終わるわけないじゃん、打ち切りってこと!?」と思ったんだけど、読んでみるといかにも最後が「無理矢理駆け足」で、「やっぱ打ち切りか…」感。

ググると、連載されていたWebコミックの方では「第1部完」となっていたようなのだけど、いずれにしろこの「駆け足」感は、「あと1冊でとりあえずまとめてね」と言われたのじゃないだろうか。

まぁ『やじきた』の方が本格的に再開してきたこともあるから、並行して連載するのが大変というのもあるのかもしれないけど。

「第2部」が描かれることはあるのかなぁ。

うーん。

「次の女王は………ジャカジャカジャカジャカ♪」とドラムロール鳴ったところで終わった第4巻。

アルティモラの予知通り、そして読者の予想通り、土壇場で「次期女王はペンテシレイア」というお婆のお告げがくだる。

「神になぜを問うか!?」と4巻で出てきた通り、たとえそれがペンテシレイアに破滅をもたらすものであろうと、どんなに周りの人間がそれを阻もうと、ペンテシレイアが女王の座につくことは変えられない。

妹のヒッポリュテーに比べれば地味だけれど優しく頭も良く、武術の腕も申し分ない芯の強い娘として描かれてきたペンテシレイア。さぞかし素晴らしい女王になるだろうと思われたその矢先、彼女は誤ってヒッポリュテーを……。

ヒッポリュテーの死因としては実際に「ペンテシレイアが誤って殺した」という説があるらしいです。

そしてヒッポリュテーも「女王」だったと。妹が先に女王になって、あとから姉が即位したみたい(Wikipediaによる)。

本作では戦闘の際に誤ったわけじゃなく、「ええー、そんな死に方なの」って感じなんですけど。

何要らんことしてんのよヒッポリュテー、的な。

ともあれ自らの手で愛する妹を殺してしまったペンテシレイアの嘆きは深く、ころっと性格が一変。アルティモアの態度から「玉座につくことは破滅すること」と悟った彼女は「喜んで破滅してやろうじゃないの!」と喧嘩上等な女王様になってしまう。

アマゾーン国ではペンテシレイアの前の女王が色々改革を行おうとしていて、反対派の反発を買っていた。反対派は自分達の言うことを聞く保守的な娘を新女王につけたかった。

もともとペンテシレイアの新女王には反対、しかも彼女は「妹殺し」の汚名を着た、なんでこんな女が女王なのと思うその上に、ペンテシレイアは反対派の意見などばっさり切って捨てる。

「現場(戦場のこと)に行きもしない人間がごたごたぬかすんじゃねぇよ!悔しかったら戦って戦功を上げてきやがれ!!」と(マンガ中のセリフではありません。私の意訳(笑))。

折しもギリシャではトロイアの王子パリスがスパルタ王妃ヘレネーを略奪してトロイア戦争勃発。

「妹殺し」のほとぼりを冷ますためにトロイアに送られ、トロイア王家から丁重な扱いを受けていたペンテシレイアはトロイア側につくことを決め、アマゾーンの運命は大きく破滅の道へと梶を切る……。

ってとこで終わっちゃうんですよね。

えーっ、こっからが本番じゃーん!!!

まぁ、トロイア戦争の結末は誰でも知っていることであり、この先ペンテシレイアとアマゾーン達を襲うのは悲劇ばかりとわかっている。きっとつらい物語だろうし、あまりくどくど描くのは野暮かもしれないのだけど。

でも、やっぱり。

「月に選ばれし12人の戦士」達の生き様、見届けたいよねー。市東さんの描くトロイア戦争、読みたいよねー。

Wikiにはペンテシレイアはアキレウスと1対1で戦って敗れる(死ぬ)と書いてあるし、5巻目でもまだ女装のままのアキレウスとペンテシレイアの哀しい運命の糸が再び交わるとこ、見たいよー。

その結末をイメージしてこそのあの因縁、片方だけの耳飾りでしょうに。

エウアンドレーもせっかくペンテシレイア側についたのに。

「自らの権力に他者をひれ伏させることが目的なんて、それじゃあ愚かな男の国々と一緒じゃん」(これもちょっと意訳)

「女だけ」といういびつさを抱えながらも存続してきたアマゾーン国。よそから逃げてきた他民族の女にもチャンスを、子をなした女にもチャンスを(子が生まれなければアマゾーン国も滅びるのだけど、しかし男と交わることは“穢れ”と思われている)と、改革をなし始めた前女王。

この先の破滅がアルテミス神の思し召しなのだとしたら、神はそのような改革を無用だと思われたのだろうか。

「アマゾーン国」という他に例を見ない女だけの国がそもそももう要らないのか。

トロイア戦争も、「増えすぎた人口を減らすため」、ゼウスが大戦を起こそうと決めたものとも言われている。

「神になぜを問うか?」

結局人間達は「暇を持てあました神々の遊び」ってやつにもてあそばれるだけなのかよー!

たとえそうでも、人は生きるしかない。己の信じる道を進むしかない。

そうやって精一杯生きたであろう12人の戦士の物語、いつか、続きを読める日が来ますように……。