あれは9月の30日、台風にも負けず宝塚に『銀英伝』を観に行った日。

母に、「シメさん(紫苑ゆう)出るねんで!」とチラシを見せられたエリザベート・スペシャル・ガラ・コンサート。

「えええええーーーーーーっ!」と驚き、「行く行く!私も行くーーーーーーーーーーっ!」となんとか手に入れたチケット。

12月3日13時半公演、無事シメさんトート観てきましたぁぁぁぁぁ。

嗚呼嬉しい。

何十年ぶりですか、生シメさん。

1994年に退団なさってから初めてですから、18年ぶり?

高校生だったかもう大学生になっていたんだか、昭和のベルばら以来久々に宝塚大劇場に足を運んだのが星組公演『炎のボレロ』で、そこでシメさんの軍服姿にやられて以来、シメさんは私の永遠の宝塚スター。

カリンチョさん(杜けあき)もウタコさん(剣幸)も、カナメさん(涼風真世)もノンちゃん(久世星佳)も大好きだったけど、シメさんは別格なのです。

そのシメさんが、トートをやる!

1999年に行われた阪神大震災のチャリティーリサイタルで少し歌われていましたけど、私はビデオでしか観ていませんし、楽しみで楽しみで楽しみで。

私が観に行った12月3日の公演は「ドリームバージョン」ということで、トートはシメさん、春野さん、姿月さん、彩輝さんのクワドラブル・キャスト(こんな言い方するのだろうか(笑))、エリザベートは白羽さん、大鳥さん、花總さんのトリプル・キャスト。フランツもゾフィーもルドルフもダブル・キャスト。

ゼータクなんだけど。

もちろんすごく楽しかったんだけど。

でも最初から最後までシメさんトートの公演観たかったよ、ううう。もっともっとシメさん観たい。せめて全編シメさんのDVDを発売してください。嗚呼、シメさん。

と、いささか先走ってしまいましたが、順を追って、一応。

まず第一幕の前半は姿月トートと白羽エリザベートの組み合わせ。

私は宝塚では1996年の雪組の初演(一路トート&花總エリザベート)、同じく1996年の星組(麻路トート&白城エリザベート)、そして2002年の花組(春野トート&大鳥エリザベート)を観ています。

一番最近観たのでももう10年前だったのねぇ。

初演は16年も前……。

一路さんのサヨナラ公演にも関わらず花總エリザベートの鮮烈さに衝撃を受けた初演。

「え、マリコさんのトートって、そんな無茶な…(歌唱的に)」という予想を覆してその指先まで神経の行き届いたお芝居に心奪われた星組。

そして春野さんも大鳥さんも歌うまいなー、大鳥さんのエリザベートいいなぁ、と思った花組。

白羽さんの少女エリザベートもとても愛らしくて、素敵でした。うん、トップ娘役としての公演もいくつか拝見したけど、白羽さんはどーんとした「女優」の風格があって、好きだった。

姿月さんトートは……うーん、普通(笑)。

いや、もちろん歌はうまいし、見た目も格好良かったけど、宝塚時代からあまり姿月さんはタイプじゃなくて……。すいません。

主要メンバーがすべて複数キャストの中、最初から最後まで通しで演じたルキーニ、わたる君(湖月わたる)。

昔観た星組公演ではエルマー役だったわたる君、ネッシーさんやシメさんのゴージャス星組の正統な後継者(と勝手に位置づけてた)だったわたる君。

格好良かったぁ♪

全然変わってないよぉ。いつでもトップスターとして大劇場に立てるよねぇ。歌もお芝居もさらに自在になった気がするし。

ルキーニって、大変な役だなぁ、って改めて思った。狂言回しだから出ずっぱりだし、歌多いし、客席との絡みもあるし。もちろんエリザベートもトートもエネルギーの要る役だけど、今回ルキーニだけ「一人で」やってたから、よけい「大変だなぁ」って思っちゃった。

最初から最後までたっぷりわたる君観られて嬉しかった♪

黒塗りの肌にきらりと白い歯が光って(笑)。

わたる君が星組でやったエルマー(ハンガリーの革命家)は夢輝のあちゃん。

のあちゃん、お懐かしい。トウコちゃん(安蘭けい)が五右衛門をやった『恋吹雪・花吹雪』での才蔵役、『プラハの春』のヘス中佐が印象深い。

なんというか、他の出演者の皆さんもそうだけど、「男役の姿が見られる」っていうのがホント、ファンとしては嬉しい。退団後も女優として活躍してる方は多くて、そのお芝居や歌声を見聞きすることはできるのだけど、宝塚ファンとしてはやっぱり「男役の○○さんが好きだった!」っていうのがあって。

退団後に「男役」として舞台に立たれることなんて、皆さんそうそうないわけで。

女優としてのわたる君も美人でいいけど、ドスの効いたルキーニたまらんわぁ、っていうのが、ホントに。

あ、そうだ、言い忘れてたけど、これ「コンサート」という名前なんだけど、限りなくお芝居に近い形式です。衣装やメークはばっちり決まってるし、セリや銀橋、セットはないけど、ちゃんと皆さん「演技」をなさってる。『エリザベート』ってホントにほぼ歌のみで進行するお芝居なんだなーと改めて。

マイクが手持ちなのだけが「コンサート」で、あとは『エリザベート』という「お芝居」を観ている感覚でした。

舞台上にオケがいるんだけど、それも全然気にならないキャストの皆さんの“熱演”。

で、えーと。

エリザベートの父親マックスは立ともみさん。立さん大好きなのよー!嬉しい。あの声が好き。もう発声が全然違うものね。最後に大峯麻友さんもマックスの衣装で出てこられて、お二人すごいそっくりだったんだけど……もしかして途中で大峯さんに替わってらしたのかな。ずっと立さんだと思って見てたんだけど…あれ…どうだったんだろう…。替わったら声でわかると思ったんだけど…あれ…。

月組時代の大峯さんはよく知ってるし、あと美郷さんや嘉月さん、秋園さんも、皆さんホントに懐かしくて、あっちもこっちも「我が青春の宝塚」すぎる。

ああ嬉しい(笑)。

オーストリア皇帝フランツ、ユキちゃん(高嶺ふぶき)。変わってない! 退団してもう15年も経つのに、全然変わってない! 若い! 可愛い!!!

芸風も変わってなかった(笑)。

ちょっと声が裏返り気味の、ちょっと過剰な、あのセリフ回し。

すごい懐かしい。

カリンチョさん(杜けあき)がトップで、ユキちゃんトドちゃん(轟悠)ミユさん(海峡ひろき)あたりが3番手にひしめいていたあの雪組。大好きだった、ううう。

フランツの母でオーストリア皇太后、エリザベートをいじめる怖い姑ゾフィーは初風諄さん。これまた懐かしい。

私、小学生の時『ベルサイユのばらⅢ』を大劇場で観てるんですけど、その時アントワネットをやられたのが初風さんで、素晴らしかったんですよね。

小学2年生だし、当然オスカル様大好きで、『ベルばら』はオスカル様のお話、と思って観に行ったのに、オスカル様が死ぬ時より最後に王妃様が断頭台にのぼる時の方に感動してしまって。

「さようならベルサイユ、さようならパリ、さようならフランス――」 そして鳳蘭さんのフェルゼンが「王妃様ーーーーーっ!」と叫ぶ。

あれから三十数年。

オーストリアの女帝マリア・テレジアの娘だったアントワネット様は、ゾフィー皇太后となって再びオーストリアに。

貫禄ありすぎて、怖かったです、はい(笑)。

ゾフィーってホント、怖ろしい姑だよね。宮廷のしきたりがあるのはまぁわかるけど、息子に新妻との初夜のことを聞いたり、「息子を嫁に取られた!女には女をだ!」って息子に浮気をさせたり。

自由奔放でそもそも宮廷に馴染まなかったエリザベートだけど、もっと普通のおとなしい令嬢だったとしても、こんなとんでもない嫁いびりの姑がいたら、とても耐えられないよね。

「お母様か私か!」って言いたくなるわ、そりゃ。

そんな最後通牒を突きつけられるまで「妻」を選べないフランツもどやねん。

1幕の途中でトートは彩輝さんに。なんか、すごい粘着な感じだった。息が多い歌い方で、やけにエロい。「人間じゃない感」はものすごくあったなぁ。同じ“フェアリータイプ”でもカナメさん(涼風真世)とはまた全然イメージが違って、私は好きになれない……。

(カナメさんのトートも観てみたかった。ミミちゃん(こだま愛)のエリザベートにウタコさん(剣幸)のフランツ♪)

エリザベートも途中で花總さんに交替。

初演の時のあの弾けるような若さ、体当たりの演技があまりにも強烈だったので、「ああ、老けたな」って思っちゃった、ごめん。そりゃ16年も経っちゃったんだもんねぇ。

初演の時、1幕の最後であの肖像画の扮装で出てきた時、本当に息を呑んだもの。

花總さんのシシィにユキちゃんのフランツ。初演と同じ組み合わせなんだもんねぇ。感慨深いにも程がある。

初演と同じと言えば、1幕ではプロローグにしか出てこないけどルドルフはタータン(香寿たつき)。相変わらず歌うまい。危なげがない。でもルドルフにしては少々貫禄がつきすぎた感(笑)。

いや、見た目じゃなくて、全体の存在感がね。他のお客さんが「タータンのルドルフは革命が成功しそう」って言ってらしたけど、まさにそんな感じ。ルドルフって危なっかしい子のはずなんだけど、タータンはこう、どーんと安定感が(褒めてます)。

2幕に入り、春野さんトートの出現。

ついこないだまで大劇場で観ていた気がするのに、春野さんももう退団されて5年……。春野さんの歌、相変わらず素敵♪

フランツが浮気してる写真を見たエリザベートが「どうしたらいいの?生きていけない」って言うのに答えて「死ねばいい」っていうところ。すごい冷酷で突き放した感じがものすごく良かった!

2002年公演の時の音源を聞くと「死ねばいい!」って叫んでるんだけど、今回の舞台ではもっと静かに「死ねばいい」って言ってて、それが一層凄みを感じさせて。

東宝版では今年エリザベートも演じた春野さんだけど、やっぱり宝塚時代のファンとしてはトート閣下がいいよねぇ、うん、麗しい。

2幕のゾフィーはタキちゃん(出雲綾)。いやー、もうタキちゃんのあの美声はほんま、たまりません。あんな声に生まれたら歌うの楽しくて仕方ないだろうなぁ。羨ましい。

もちろんお芝居も絶品で、2幕のゾフィーも怖いし。シシィが宮廷に帰ってこないの当たり前すぎる(爆)。

フランツはガイチ(初風緑)に交替。ガイチは退団して…7年? 2幕のフランツは髭のお爺さん、「夜のボート」のシーンは何度観てもジーンと来る。

ルドルフも2幕の途中(というか、最後死ぬとこだけか?)に涼さんにバトンタッチ。死ぬ前に急に若返った(笑)。

そして。

2幕の途中、「闇が広がる」のところからかな。ついに。

シメさんトート
キタ―+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゚― ッ ! ! !


麗しいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!

退団なさってもう18年も経つのに、相変わらず美しいその立ち姿。見よ、この圧倒的な膝下の長さを!!!

ファンの欲目はわかっているけど、でもやっぱりこの、「立ってるだけで様になる」美しさ、オーラは素晴らしいと思う。嗚呼、感涙。

もう一度その舞台姿を目にし、そのお声を聞ける日が来るなんて。生きててよかった(大げさ)。

声。懐かしいあの声。

生シメさんだーーーーーーーーーーっ!(くどい)

途中の紫のお衣装がまた!!!!!最後の白いフリルのお衣装がががっ!!!!!!!!!!!!

嗚呼、眼福。

あんまり嬉しくてなんか逆にシメさんトートの部分の記憶が飛んでるんだけど、かなり激しいトート閣下だった。まさに「黄泉の帝王」、「魔王」の風格と、ほとばしる激情。

いやー、ホント、目力が違うわぁ。

そして指の細く長いこと。

最後にエリザベートを抱くシーンの、指先の“溜め”。天を仰いで、無邪気とも言える歓喜の表情を見せる。

やっぱり好き。

シメさん最高!!!

4分の1の出番じゃ物足りないよぉ。うう。最初から最後までシメさんのトート観たかった。少女のエリザベートに魂を射抜かれて、拒まれて苦悩しながら、見守り、最後には彼女をその手に抱きしめる。そのトート閣下の心の動きを、全部シメさんで観たかった。

とはいえ。

フィナーレで3人のエリザベートと4人のトートが揃う光景はやはり圧巻。

1幕最後のあの肖像画の衣装で並ぶ3人のエリザベートには思わずほぉとため息が漏れます。

トート閣下も4者4様。当たり前だけど、演じる人でずいぶん印象が変わる。鬘もそれぞれ違うし、並ぶとさらにそれぞれの個性が際だって、面白い。

一言ずつの挨拶も、性格が出てて。

やっぱりシメさん一番おもろいし(笑)。

「10月から2か月、この虹組が愛しくてたまりません。どっぷり片足ウィーンに突っ込んでます。でもあと1回で終わっちゃう。あと1回頑張ります!」みたいなことをおっしゃった。

小池先生がこの公演を「宝塚虹組」と名付けられたそうで。

いっそ常打ちでやってくれませんか、虹組。今の宝塚、もうほとんど知らない人ばっかりで……虹組の方が楽しいです。もっともっとシメさん観たいです。わたる君やのあちゃんの男役姿も観たいです。

最後、ルキーニのわたる君にシメさんトートがナイフを渡す。シメさんサヨナラ公演の新人公演でシメさんの役を演じたわたる君。あのゴージャスな星組時代の最後の後継者だったわたる君とシメさんの、競演。

花總さんはシメさんトップ披露『白夜伝説』のミーミルだもんなぁ。

嗚呼、我が青春の宝塚よ。

あと10回ぐらい観たかったわ(お金ない)。

全編シメさんトートのDVDをどうかよろしく。

そしてそして。この先もまた生シメさんに会えますように。


【2012/12/07追記】

はっ、大鳥さんエリザベートのこと書くの忘れてた!

シメさんに興奮しすぎて、2幕の途中からエリザベートが大鳥れいさんに替わったことに言及してなかった。春野さんが「死ねばいい」って言ったところはまだミーミルシシィで…その次くらいから大鳥さんだったのかな???

シメさんのお相手は全部大鳥さんでした。

大鳥さん、ほんと歌がうまい。聴かせる。

2幕の途中からだから、エリザベートとしては晩年なわけだけど、彼女の苦しみ、哀しみがひたひたと迫ってくる。大人のお芝居。

シシィって、1幕の最後で子ども達の養育権をゾフィーから取り返して、でも結局ルドルフの思いに寄り添ってやれなかった。「ぼくはママの鏡だから、ぼくの気持ちわかるでしょ?」って言われて、「わからないわ、久しぶりなのよ」。

あんなに苦労してゾフィーから子ども達を取り返したのに……。

ルドルフが亡くなった後で、「ママは自分のことで精一杯で」って反省するけど、そして彼女がそうならざるを得なかったのはわかるけど……ルドルフ的にはゾフィーにずっと育てられてた方が“楽”だったのかもしれないなぁ。

歌もお話も構成も、あらためてよく出来てるなぁと思った『エリザベート』でした。