『辞書を編む』の記事で書いたとおり、私は『三省堂国語辞典』第七版を衝動買いしてしまいました。

これで、私の手元には『新明解国語辞典』第六版、『大辞林』第二版、そして新版『旺文社国語辞典』と『三国』の4冊の国語辞典があることになります。

我が家には他に息子ちゃんの『旺文社国語辞典』第十版もありますし、義父母のところにはまた別の辞書があり、なぜか『日本国語大辞典』まであったりします。

どんだけ辞書好き。

でも私が自分で買ったのは新解さんと大辞林、三国さんの「たった3冊」ですから!!!

学生の頃は新解さんの第三版あたりを愛用していて(第六版を買った時に処分してしまったのが大いに悔やまれる)、ずっとメインは新解さんだったのですが。

「こたつパソコン」をするようになって、PC部屋に新解さんを取りに行くのがめんどくさく。

最近ではもっぱらリビングにある旺文社国語辞典にお世話になっています。昭和58年重刷のものですが、ふだん「あの漢字どうだっけ」「この言葉の使い方はこれで合ってたっけ」などと使うのにはまったく支障がありません。

むしろ昭和の前半に訳されたような古典を読むには重宝かもしれないくらいで。

新しい辞書では削られた古い言葉や意味が、昔の辞書には載っている可能性が高いですからね。

なので今回最新の三国さんを手に入れたとはいえ、30年前の旺文社さんを捨てるつもりはさらさらなく。

仲良くリビングのローボードに並んでいます。

で。

辞書がたくさんあるとついひき比べたくなるのが人情というもの(え?私だけ?)。

これまでにも「辞書をひく楽しみ」「楽しい辞書のひき比べ」「君の辞書に「モヒカン」の文字はあるか?」などと何度か記事にしています。

新解さんにも旺文社十版にも載っていなかった「モヒカン」。三国さんにはちゃんと載っていました。

【モヒカン】頭の中心のかみの毛を、前から後ろにかけて立たせたスタイル。

もちろん、それがアメリカ先住民族の名前であるという情報も載っています。

また、新解さんが「思いがけない人の善意に恵まれるなどして」とやけに詳しく説明していた「焼け太り」については。

【焼け太り】1:火事などの災難にあって、かえってもうかること。2:責任をとるふりをして、かえって得をすること。例、問題解決のためと言って、多くの予算を得るなど。

私が「焼け太り」という言葉を新解さんでひいてみるきっかけとなった「政治的な」意味がきちんと説明されています。

さすが、「今の日本語はこうなっています」の三国さん。実例を集める中で、「2」の意味を載せるべきだということになったのでしょうね。

「『新解さんの読み方』&イケてる・イカシてる」で取り上げた「イケてる」は単独で項目がありますし、「イケメン」も載っていました。

「イケメン」は「1990年代末に例があり、2000年以降に広まったことば」だそうです。

「いく」の項を見ると、“〔「いっ(ちゃっ)てる」の形で〕正気を失う。「目がいってる」”と書いてあって思わずうぷぷ。

新解さんとはまた違うふうに面白いぞ、三国さん。

「『新解さんリターンズ』と美少年・美少女」で、新解さんは「美少女」に「〔アイドルとしてもてはやされる〕」というカッコ書きをつけていましたが、三国さんはずばり

「美しい少女」

です。

え、いや、まぁ、そうですけど。

「美少年」はもちろん「美しい少年」。簡潔だなぁ。

「美女」の項には新解さんと同じく反対語として「醜女」が。「美男」の反対語はこれまた新解さんと同じく載っていません。

なぜ「美男」には反対語がないのだ!

「ぶおとこ」を引くと反対語として「ぶおんな」が示されているんですよねぇ。うーん、「ぶおとこ」の反対は「美男」じゃないのか?

今なにげなく「おとこ」をひこうとして「おそろ」という項目を見つけました。「オソロとも書く。おそろい」 うわぁ、そんな言葉まで。

「恐ろしい」の関係語だと思ってしまった私はきっととてもおばはん……。(「お揃い」の「おそろ」も知ってますけどね、ええ)

三国さんには、「お役所仕事」という語も載っています。「役所」項目に付随してではなく、単独の項目として。

【お役所仕事】〔官庁などで〕決められたとおりの手順でしかものごとをしない、時間がかかり、ゆうずうのきかないやり方。

新解さんでは「役所」の項に

〔かつては、「お役所仕事」の形で、形式や前例にこだわった杓子定規な扱いしかできない上に、能率の悪い仕事ぶりを(役所に限らず)指して、皮肉ったり非難したりするのに用いられた〕

と解説がついているのですが。

「かつて」?

新解さん第六版ではもう「お役所仕事」という言葉はあんまり使われていない、という認識なのでしょうか。

今でも使いますよね?

ちなみに30年前の旺文社さんをひくと。

あれ、載ってるぞ、「お役所仕事」。

【お役所仕事】形式的で、能率の低い官庁の仕事や仕事ぶりを皮肉っていった語。

三国さんで「お役所仕事」を単独項目として見つけた時、「ほほぉ、さすが“今の日本語”」と思ってしまったのに30年前にすでに載ってるし、新解さんには「かつて」と言われるし。

私の頭が古いだけなのか(苦笑)。

古い辞書には載っていて、新しいのには載ってない言葉があると面白いな、と思ったんですがそんなの急には思いつくわけもなく。

今ぱらぱらしていて、旺文社さんには「ずず」の項目があります。「数珠(じゅず)」と同じ意味なのですが、「→じゅず」とはなっておらず、「仏・菩薩を礼拝したり云々」としっかり説明されています。じゃあ「じゅず」の方が「→ずず」ってなってるのかと思ったらこちらにも「玉を糸でつないだ、仏をおがむときに云々」と説明が。

「ずず」と「じゅず」で微妙に語釈が違うのが面白いです。

新解さんでは「ずず」は“「じゅず」の変化”、とだけ書かれていて、三国さんには「ずず」という項目はなし。「じゅず」の項を見ても、「なまって“ずず”」のような注記はありません。

かつては「ずず」と発音する人も多かったけれど、今では圧倒的に「じゅず」だ、ということなのでしょうか。

辞書は単独でひいてももちろん楽しいですが、こうしてひき比べてみるといっそう楽しいですね♪