先日、近江八幡市安土町の文芸セミナリヨで開催された「信長まつり前夜祭コンサート」に行ってきました。



文芸セミナリヨ、久しぶりに行きました。県内で唯一パイプオルガンを備えたホールですが、周りはとってものどかです。


すぐお隣には安土城考古博物館がありますが、安土城跡とは少し離れています。

安土では毎年6月の第一日曜日に「信長まつり」が開かれていて(信長の命日が6月2日であることにちなみます)、その「前夜祭」として開かれたコンサート。

第一部は箏をメインとした「和楽の調べ」、そして第二部はパイプオルガン。和洋いっぺんに聞けるなんてお得じゃん♪という軽い気持ちで出かけたらば。

「和」の方がすごい現代音楽でびっくりしました。

箏――いわゆるお琴というとお正月の定番「春の海」みたいな、ああいうものを連想するじゃないですか。

ポップス的な箏曲というのは伍芳さん等で知っているのですが(たとえば「上海的夢幻 ~SHANGHAI DREAM~」とか)、

「ポップスではない“現代”の箏曲」というのはほとんど聞いたことがなく、その前衛的な音楽にびっくり。

「うわぁ、これ林田さん(OTTAVAのプレゼンターさん)が好きそう!」と思ってしまいました(笑)(※林田さんは“変な曲大好き推進委員会”の委員長さんで、怪しい曲や一風変わった現代音楽に造詣が深いのです)

何も知らずに目をつぶって聞いたら「お琴」だとは思わないんじゃないか。そんな気がしました。箏の胴部分を裏から叩いて打楽器のように使ったり、ホントに面白かったです。

当日の第一部のプログラムはこんな感じで、


1曲目の箏の配置はこんな感じ。


尾形光琳の紅白梅図をイメージしてあるのだとか。後ろにパイプオルガンが控えているのがまたなんともアバンギャルド。

で、この後ろのパイプオルガンは3曲目の「クレド六段」の時に箏と一緒に鳴り響くのですが。

箏の有名曲「六段の調べ」がグレゴリオ聖歌「クレド」をもとにしている、という説があるそうなのです。隠れキリシタン達が聖歌だとばれないよう、箏や三味線で演奏していたものをもとに、八橋検校が「六段」という曲に高めたと。

本も出ているし、CDも出ています。


マジか!?と思いますが、キリスト教伝来とともにパイプオルガンも伝わり、聖歌や西洋音楽が日本に入ってきていたのは確かなので、「クレド」や隠れキリシタンがどうこうはともかく、当時の日本の音楽家がその調べを取り込んだということは大いに考えられます。

ともあれ、声楽アンサンブルが歌うグレゴリオ聖歌とともに「六段」が鳴っているのは、とても刺激的で面白かったです。

「クレド六段」と第二部でのパイプオルガン演奏はイタリア人のカルロ・フォルリヴェジさん

第一部の2曲目「沈黙の月」はカルロさんの作曲です。もとは琵琶のための曲だそう。

イタリアの人が琵琶の曲を!?と思いますが、カルロさんは東京音大でアイヌ音楽の研究に取り組んだこともあるそうで、二部では日本語で曲解説をしてくださいました。琵琶版はAmazonさんで試聴できます↓


この前夜祭コンサートは日伊修好通商条約締結150周年記念事業でもあり、第一部と第二部の間には大阪のイタリア文化会館館長さんの挨拶もありました。

第二部ではパイプオルガンの音色を存分に楽しむことができました。


フレスコバルディの教会音楽は「THE・パイプオルガン」という感じでしたし、盲目の作曲家ブルーナの楽曲は「琵琶に通じるものがある」との解説。そしてオルガンで鐘の音を表現するルイ・クープランの「パリのカリヨン」は街中の鐘が一斉に鳴り響いているかのようなすごい迫力でした。体中がオルガンの響きに包まれる感じ。

もともとはチェンバロ用の曲のようですが、あまりに印象深かったのでパイプオルガン演奏の音源を衝動買いしてしまいました。


生演奏ほどの迫力がないのが残念ですが……しょうがないですね(^^;)

アンコールとしてバッハの平均律クラヴィーア曲集から1曲、さらに出演者全員での「アヴェマリア」(たぶんグレゴリア聖歌のアヴェマリアだと思うけど違うかもしれない(^^;))、そして最後の最後にもう1曲、カルロさんが即興のような感じで演奏してくださいました。

休憩や館長さんの挨拶も含めてたっぷり2時間半。楽しかった~♪

キリスト教とともに日本にやってきたパイプオルガン。文芸セミナリヨには当時の宣教師が書いた「日本に送ってもっとも喜ばれたのはオルガンだ」みたいな文章が掲げられていました。

当時の日本人は、海の向こうからやってきた新しい音楽、新しい音色をどんなふうに聞いたんでしょうね。

信長様のおかげで日本で最初にオルガンが設置された安土。今こうして滋賀県でパイプオルガンが聞けるのも、言ってみれば信長様のおかげです。

ありがとう、信長様!!!


日伊修好通商条約締結150周年は実は来年なので、このコンサートは今年と来年の2年セット企画だそう。

来年もカルロさんをお迎えしてのコンサートとなるようです。都合が合えばぜひ来年も伺おうと思ったことでした。