(1作目『青い瞳のキャスバル』の感想はこちら。この後の作品の感想はこちら→『Ⅲ 暁の蜂起』『Ⅳ 運命の前夜』『Ⅴ 激突 ルウム会戦』『Ⅵ 誕生 赤い彗星』

京都まで行くのは時間もお金もかかるなぁ、配信で見ようかなぁ……と思っていたのですがやっぱり見に行ってしまいました。

モビルスーツの動きとかキャラクターの表情、大きな画面で見たいですものねぇ。音響もPCから出る音とは段違いですし。

『青い瞳のキャスバル』が原作コミックス9巻の映像化、今回の『哀しみのアルテイシア』は10巻の内容がアニメで動きます。


と言っても10巻丸々ではなくて、かの有名な「キャスバル兄さぁぁぁぁぁんっ!」のシーンまででした。

空港で入れ替わって士官学校に入っちゃうところまでやるのかな、と思ったんですけどそこは「Ⅲ」のお楽しみらしい。

スペインはアンダルシアでテアボロ・マスの養子として暮らしているところから、刺客の襲撃、テキサスコロニーへの移住、そしてキャスバルがアルテイシアの元を去って行くところまで、ほぼ忠実にアニメ化されています。

話の展開はわかっているのですが、やはり映像として動き、声や音楽が入るとわくわくしますし、改めてキャスバルとアルテイシアの不憫な境遇が胸に迫ってきます。

ジンバ・ラルの「屑さ加減」も倍増。ほんまなー、困った爺さんよなー。二人をテアボロさんに託して自分はさっさといなくなれば良かったのに。アナハイム社なんかと連絡取って。

「夢を見てはいかんのか!?」とかテアボロさんに泣きついてるけど、その夢が自分だけで完結しない以上――、それどころか「ダイクンの遺児」あっての「夢」である以上、あんたにそんな夢を見る権利はないんだよ。キャスバルもアルテイシアもあんたの持ち物じゃないんだから。

地球に来てから3年余り、あの爺さんにずーっとあの調子で「スペースノイドの意義」とか「ジオン・ダイクンの理想」「ザビ家の非道」を講義されてきたキャスバル(今はエドワウ)の心中、察するに余りある。

キャスバルの性格が歪んでしまったのって、ジンバ・ラルのせいじゃね?

もし一緒に地上に降りたのがランバ・ラルなら――ラルとハモンさんに育てられたのなら、「抜き身のナイフ」にまではならなくて済んだのでは。

誰に育てられようと、ずーっとザビ家に監視される人生には違いなく、母を死に至らしめた父とザビ家に対する暗い想いが消えることはないだろうけど……。

その点テアボロさんは大変いい人で、「夢を見てはいかんのかぁ!」と叫ぶジンバ・ラルに対して「それならばこの家を出て、外で勝手にそういう企てをするがいい!」って言い返す。渋々引き取った二人のことを今では実の子どものように思っているのに、もしも彼らが「ダイクンの遺児として戦う」ことを自ら選ぶのなら、「この3年余りのことはすべて忘れよう」と言ってくれる。

「なんでもないことだ。あれたちが命をかけた戦いに起とうと決意することに較べれば……」

ホント、男前だよなぁ、テアボロさん。テキサスコロニーの学校長がキャスバル(エドワウ)のことを「抜き身のナイフのようで怖い」と言った時も、「あの校長はクビだ!」って言うほど激昂してくれてる。

二人を引き取ったせいで、自身も大怪我を負って不自由な体になり、この先もずっと政争に巻き込まれる危険があるのに、それでもキャスバルのために怒ってくれる人

正直ジオン・ダイクンよりずっと「父親」らしいのだけど、それでもキャスバルの心は溶けるどころかどんどん頑なになっていくのよねぇ。「テアボロ・マスの息子」としては生きていけないんだなぁ。

で、そのエドワウ・マスと名乗るキャスバルくん、早くも声が池田秀一さんです。うーん、もうちょっと田中真弓さんで良かった気もするけど、ジオンの士官学校行っちゃったらもう池田さんだろうし、スペインで襲撃を受けた時は真弓さんだったのにテキサスコロニー行ったら池田さんになってるっていうのも変だろうから……うーん、しょうがないのか。

池田さん、エドワウ役をやるに当たってはオーディションを受けられたそうで、すごいなぁと思いました。安易に「池田さんでいいか」ではなく、それでもやはり池田さんしか考えられないっていう。

前回が11歳で、あれから3年余りということはエドワウは14~15歳。池田さんの声で喋る14~15歳はちょっと大人っぽすぎるような(^^;) まぁ1st時点での赤い彗星も確か二十歳そこそこなんだから、あのツラい境遇のおかげでさっさと大人になるしかなかった……ってことなのでしょう。

ホワイトベースのみんなだって、50近いおばちゃんになってから見れば「あんた達ほんとしっかりしてるねぇ」と感嘆する他ない。今の日本の年齢設定で宇宙世紀の子ども達を見てもしょうがないよね。

アルテイシアもこの作品の冒頭では10歳で、「そうは見えないほどしっかりしてる」って言われてるし。

アルテイシアは引き続き潘めぐみさん。1作目では幼女だったのが少し大きくなって、つい「ニンニンジャーの狐…」とか思ってしまいました(笑)。

「哀しみのアルテイシア」というタイトル通り、母の死、愛猫ルシファの死、そして兄との別れ……。お母さんの死を手紙で知らされる時以上に、ルシファが亡くなっていることに気づくシーンがつらい。

「どうしてみんな行っちゃうの!」

まだたった11歳ぐらいなのに、ダイクンの子どもだというだけで。

前作でキャスバルがガンタンクを動かしてバカスカ砲撃していた時も、今回ザビ家の監視役をこてんぱんに打ちのめした時も、アルテイシアの「やめて!」でキャスバルは我に返る。

キャスバルを止められるのはアルテイシアだけで……でも、そのアルテイシアを置いて、行っちゃうんだなぁ。

1作目2作目のせつないアルテイシアを見てると、後に再会したキャスバルが「アルテイシアが戦っているだと!?」とびっくりするのも無理ないと思う。この子が数年後に「軟弱者!パシッ!」になるのか、と思うと「苦労したんだね、アルテイシア……」みたいな。

とはいえ原作ではテキサスコロニーのあほガキに絡まれて「パシッ!」と平手打ちお見舞いしたりしてるので、片鱗はあるんですけど、アニメではそこは省かれてました。

テキサスコロニーで、キャスバルは自分そっくりの少年シャア・アズナブルに出会います。なんであんな美少年が二人同時に、しかも同じ年頃で存在するかな、都合良すぎだろ、って思ったりするんですけど、「ガルマと一緒にジオンの士官学校にいた」とするためには、よほどうまくやらないと「別人」にはなれないわけですよね。あれだけずっと監視されている以上、単に誰かの戸籍をうまく入手しただけでは、ザビ家の目をごまかせない。

まず最初にアルテイシアが「あれ?兄さん…じゃない?」と元祖シャア(変な言い方だけど普通に「シャア」って言ったらどうしてもキャスバルの方を。ああ、めんどくさい)に出会って、彼に乗馬を教えてもらっているところにキャスバルが現れ、アルテイシアはどうなることかとヒヤヒヤするのです。

アルテイシア、なんであんなにヒヤヒヤしてたんだろ。

そりゃあ自分そっくりの人間に会うっていうのは衝撃だから、キャスバル兄さんがどんな反応を示すか――しかも自分そっくりの若者が妹に手を出している(わけじゃないけど)ところに出っくわしたら、お兄さんはいきなり殴りかかるか脅し文句を投げつけるかもしれない。

そんなふうに思ったのかな。

アルテイシアの心配は杞憂に終わり、キャスバルは自分から「エドワウ・マス」と名乗って二人はハイ・タッチ。

マンガだとそっくりすぎてどっちがどっちかわかんないんだけど(笑)、アニメだと色や声が違うから区別がしやすい。この一瞬の――そっくりさんの姿を認めてから名を名乗るまでの短い間にキャスバルの頭はフル回転して「こいつは使えるかもしれん」って計算したんだろうなぁ、とマンガで読んだ時以上に思いました。

元祖シャアの声は関俊彦さん。モモタロスが十六夜九衛門に乗馬を……(違う)。

キャスバルとアルテイシアが地球からテキサスコロニーに旅立つ宇宙港で、ちらっと幼いアムロが出て来ます。原作よりも少し出番が長かった気がする。ふふふ。お声はちゃんと古谷徹さん。こんなところで赤い彗星やセイラさんとすれ違ってたと思うと楽しいですよね。

そしてキャスバル兄妹がテキサスコロニーに移ることになったのにはヤシマさんが絡んでいて。そう、まだ存命だったミライさんのお父様。テアボロさんとは昵懇の間柄だったらしく、刺客の襲撃を受けて包帯ぐるぐる巻きのテアボロさんのお見舞いにいらっしゃるのです。

15歳のミライさんを連れて。

お声は白石さんじゃありませんでした。残念。オリジナルと同じ声優さんなのは池田さんと古谷さん、そしてギレンの万丈さんだけかな。

前作ほど「ハモン無双」ではありませんでしたが、今回はクラブエデンの「歌姫」であるところを見せてくれるハモンさん。歌は沢城さんじゃなく別の方が歌ってはりましたが、美人で歌うまくて不二子ちゃんばりのスパイ活動ができるハモンさんってやっぱ最強ですよねー。あれだけすごいのに決してヤな女じゃなく、アストライアや子ども達のために涙し、傷つき疲れたランバ・ラルを膝に乗せ、愚痴を聞いてあげる。

アニメでは省略されてたと思うけど、原作には

「軍人である以外のあなたが想像できるなら、きっといろいろと言いましょうが……」

って台詞があって、ほんまいい女ですよねぇ。

原作24巻の番外編で、キャスバル誕生時の産婆役まで務めているクラウレ・ハモンちゃん。


まだ12~13歳ぐらいかと思いますけど(18と偽ってクラブエデンに出入りしてた)、すでに「結婚するならランバ・ラルみたいな人」と言ってるんですよね。「青い瞳のキャスバル」にも書きましたけど、「使えるガキ」だったハモンさんがある日「いい女」になってるのを見てドキっとするランバ・ラルの話読みたいです(笑)。

アストライアが死んだことを告げる手紙も、ハモンさんの声で読まれてました。原作では特に誰からの通知なのか明示されていません。まぁ、二人にそれを知らせることができる人ってラルかハモンさんしかいないとは思いますが。

「キャスバル兄さぁぁぁぁぁん!」のラストシーンの後、クレジットとともに流れる主題歌『風よ0074』。キャスバルの心情を歌った歌ですけど、「風よ 苦しくても 僕は傷口に永遠の赤を纏う」って歌詞が、じわじわと染みいります。(フル歌詞こちら


アルテイシアは確かに哀しいけど、キャスバルはもっと孤独なんだよね……。アルテイシアにすら、彼の抱える想いは理解してもらえない。母の死を知らせる手紙を、あんなに苦しい顔で持ってくる彼は、最後の夜に母に甘えることもできなかった。

「ララァは私の母ともなれる女性だった」っていう台詞を思い出します。ララァには甘えられたんだろうな……。不憫なやつ。

3作目『暁の蜂起』は来春公開だそう。いよいよガルマ坊ちゃまの出番です。

あと、上映前に流れた「ガンダムさんの劇場マナーCM」にウケました。『青い瞳のキャスバル』の時も流れてたらしいけど……記憶がない(笑)。期間限定と言わずずっと流してくれればいいのにな。