※以下ネタバレあります!これからご覧になる方はご注意下さい!

 

10月20日木曜日の11時公演を観劇してきました。

平日だというのに2階の後ろまでいっぱい。よく入ってました。前売りの時も平日A席狙いだというのに確保するのが大変だったもんなぁ。

お芝居は久しぶりの正塚作品♪ 最近雪組さんばかり観ていますが、正塚先生のお芝居見たさにまた雪組さん。

うん、実に正塚先生らしい作品でした。会話の作り方が実に独特……というか、あまり他の宝塚の作品にはない感じなんですよね。小粋で、何気ない掛け合いで魅せる、みたいな。

音楽の使い方――コーラスワークとか、掛け合いの感じとかも、先生らしい。……って、そういうつもりで観てるからそう思うだけなのかもしれないけど、複数のキャラクター達が歌い継いで最後は別々の歌詞を一緒に歌う、みたいなの好きなのよ。『銀の狼』の時のあれ(どれだよ)とか、今回の第13場のとか。

タイトル通り、「私立探偵ケイレブ・ハント」のお話なんですが、早霧さん演じるケイレブは探偵モノと聞いてぱっと思いつくようなハードボイルドな男性ではなく。

ちゃんと信念は持ってるし、芯の通った男ではあるんだけど、ちょっとコミカルなところもあって、恋人に「私たちって所詮こんな巡り合わせなのかしらね」と溜め息まじりに言われると「え?どういう意味?」と慌てふためいて懸命にご機嫌を取ろうとしたりする。

格好いいけどお茶目、お茶目だけどやる時はやる、みたいな、そーゆー感じ、早霧さん巧いです。ちょっとルパンぽいね。ルパンがもう少し真面目になって探偵業を営んでる感じ。

最初の事務所でのやり取りとか、その後の恋人との場面とか、少し展開がたるいかな~と思ったけど、仲間との関係性、恋人との関係性、そしてそこから浮かび上がるそれぞれの登場人物の個性が最初の数場面でわかるようになってるんですよね。

まず。

探偵事務所の名前は「ケイレブ」で、彼が所長を務めているようなんですが、事務所の他のメンバー、望海さん演じるジムと彩風さん演じるカズノは「部下」とか「社員」ではなく、「共同出資者」という間柄で、対等の仲間なんですね。

誰にも依頼されてないのに「何か裏があるような気がする。このまま放っておけない」と調査しようとするケイレブに、「え~っ」と言いながらもやっぱり協力しちゃう2人。後にジムは調査を続行したおかげで狙撃されて怪我しちゃうんですが、それでもやっぱり自分の意志で調査に関わり続ける。

打ち合わせ中にケイレブに向かって「昨日と同じ服」って冷静に突っこむところとか、ジムのキャラクターなかなか良かったです。プログラムの正塚先生の言によると、「私が以前より望海から受けているイメージを強く反映させた役どころ」なのだとか。

ビシッとスーツで仕事人間、金にならないことはやらないビジネスライクな男に見えて意外に正義感があり、仲間思いで、恋人のこともちゃんと考えてる……っていうのが正塚先生の思う「望海風斗」なのかしら。

探偵という職業柄、ケイレブもジムも恋人には心配かけてるんですよね。ケイレブ、「映画に出てくるようなそんな危ない仕事じゃないから!」って冒頭では言っていたのに、後半めっちゃ危ない仕事になる(^^;)

こういう作品の場合、「事件のおかげで知り合った娘と恋仲になる」という展開が多いと思うんですが、ケイレブとイヴォンヌは最初っから恋人同士です。探偵のケイレブに対してイヴォンヌは駆け出しのスタイリスト。大きな仕事を任されて張り切っていたら「あの男はマフィアなんだぞ!」とケイレブに言われ。

「危険だから近づいちゃいけないって、自分は近づいてもいいの? 探偵は危険な仕事じゃないって言ってたじゃない!嘘つき!」

って喧嘩する場面、楽しいです。なんというか、お互いがお互いのこと想ってるのにすれ違って喧嘩になっちゃう展開がすごく巧い。イヴォンヌにしてみれば「彼がマフィア?何言ってんの?」って信じられない話なんだよね。観ているこっちとしては「いやいや、ヤバい奴なんだって。信じろよ!」と思うんだけど(笑)。

後半、ケイレブの恋人だからという理由でマフィアにアパートを襲撃されるイヴォンヌ。その可能性を見越して守りに行くケイレブ、実に優秀な探偵&恋人です。

「本当にヤバい相手だった」ことにショックを受けつつ、自分が襲われたこと以上にケイレブの身を案じるイヴォンヌ。でもケイレブのためにマフィア(表向きは実業家)の開くパーティの招待状を渡す。

このシーンも良かったなぁ。

去り際、「なんとか言ってくれよ」と言うケイレブに「わかった。わかったから」と答えるイヴォンヌ。「気をつけて」と送りだした後、「言葉なんかで何も守れない。自分の心さえ救えない」と歌う。

うーん、好みだ♪

咲妃さんはお芝居巧いし、早霧さんとのバランスもいいですよね。

ジムの恋人レイラが「もうこんな仕事やめてよ~!」と騒ぐシーンも面白かった。狙撃されたジムをレイラが案じるのは当たり前なんだけど、入院中のジムを見舞いに来たケイレブは相変わらず調査を続行しようとしていて、ジム本人も調査をやめる気はないようで「これからどうするか」話し始めちゃう。隅っこで一人キレて泣き叫ぶレイラ(^^;)

レイラにとっては全然笑い事じゃないんだけど、笑えるシーンになっちゃってるところがまた笑える。

正義感の強い恋人持つと大変だよね……。でもジムは事件に決着がついたらちゃんと休暇を取ってレイラと一緒にいてくれる。ジムいい奴(笑)。

決着の付き方は割と呆気なかったけど、主人公側の人間が誰も死ななくてハッピーエンドなのいいなと思いました。こーゆー感じのお話だと恋人か仲間の誰かが犠牲になって、主人公がさらに燃えるとか、「おまえの仇はとった」とか「でもおまえは帰らない…」とか、なんかそーゆーふうになりそうじゃない。

暗すぎず、かといってコメディでもなく、バリバリハードボイルドじゃないけどちゃんとケイレブは格好よくて、ヒロインとの物語もきっちり描かれてる。

1950年代くらいの設定らしく、音楽も好み。「南京豆売り」のスペイン語版楽しかった♪

「実はマフィア」な敵役、マクシミリアンの月城かなとさんは堂々たる色悪っぷり。男前だしお芝居もしっかりしてるなぁと思っていたら月組さんに組替えになるのですねぇ。ほぼ雪組しか観なくなってしまった私にはちと残念。

その代わり(?)月組から朝美絢さんが来て、星組から真彩希帆さん(こちらは娘役)が来るのですね。真彩さんは素晴らしい歌唱力の注目若手娘役さんのよう。次期トップ娘役候補なのかしらん。

 
ショー『Greatest Hits』の感想はこちらで。