2016年11月22日火曜日

『幽霊屋敷と消えたオウム』/エラリー・クイーン



以前「『ジュナの冒険』シリーズの新訳が刊行されてました!」という記事でご紹介したジュナシリーズの新訳本、やっと読めました!
図書館で予約していたのですがなかなか手もとに来てくれなくて。いや、こんなおばさんのところに来るより市内の子ども達の手もとをたくさん回ってくれた方がいいんですが、ごめんね、ちょっとおばさんにも読ませてね。

当たり前だけど面白かったです。

表紙だけ見ると全然イメージが違うんですが(だって昔のハヤカワ文庫のジュナ君ってこんな子ですよ↓)、


中身はお馴染みのジュナ君。おなじみのソッカー・ファーロングさんやブーツさんも出てきて……って、ファーロングさんはこのお話で出てくるんですよね。

そう、角川つばさ文庫での新訳版、1作目『黒い犬の秘密』ではなく3作目の『緑色の亀の秘密』から始まるのです。ちょうどハヤカワ文庫版で読めていない作品なので良かったといえば良かったんですが、読んでみて、「これだと都会の話で今の子にもとっつきやすそうだから最初に持ってきたのかな」と思いました。

本来の1作目、『黒い犬の秘密』はジュナの住むエデンボロが舞台。エデンボロって家が12軒しかなく、電話はピンドラーさんのお店にしかないという、すごい「田舎」なんですよね。今ドキの子ども達には「幽霊屋敷」や新聞社が出てくる3作目から入る方がきっととっつきやすい。「見習い探偵ジュナの冒険」というシリーズ名からしても、3作目の方がそれっぽい。

うん、これ、背表紙に「ぼくは、ジュナ。名探偵めざして、毎日がんばってるよ」って書いてあるんですよね。そういうふうに少し脚色してあるのかな、と思ったんですけど。

普通にジュナだった(笑)。

「ぼくは名探偵をめざしてるんだ!」なんて自分で言うシーンは一切なく、それどころか褒められてどぎまぎしたり、「こんなこと言ったら笑われるかもしれない」と自分の推理を話すのをためらう、「頭が良くて度胸もあるけどシャイな普通の少年」ジュナのままです。

背表紙には同じく「名探偵エラリー・クイーンの助手ジュナが活躍する新シリーズ!」と書かれてますが、もちろんエラリーは出てきません。むしろジュナはファーロングさんの助手(笑)。

もともとハヤカワ版で読んでいた私には「ジュナシリーズにエラリーは出てこなくて当たり前」ですが、背表紙を見て手に取った子ども達、「いつ名探偵が出てくるの?」と思わないかしら。「なんだ、結局出てこなかったじゃないか!」って。

まえがきもあとがきも解説もなくて、背表紙の文章にしかシリーズの説明がないのに、そこに「エラリー・クイーンの助手」って堂々と書いてあるんだもんなぁ。いいのかな(^^;)

ともあれ。

本編は安定の面白さなので、名探偵が出てこなくても子ども達もきっと楽しんでくれるはず。

物語の舞台は先ほども言ったとおりエデンボロではなく、「都会」の、おそらくリヴァートン(地名は出てこない)。『黒い犬の秘密』に書いてあった情報によると、エデンボロからは13マイル離れた、鉄道の通る街です。

アニーおばさんの具合が良くないので、ジュナはおばさんの姉のジュニパーさんのところにしばらく厄介になっているらしい。

……おばさんの具合が悪いならむしろジュナはそばにいて看病してあげた方がいいんじゃ、と思うんですが、ジュナがいるとおばさんは無理して食事を作ったり、ついつい世話をしようと動いてしまうってことなんでしょうかね。

ジュニパーさんが犬を怖がることもあって、愛犬チャンプをエデンボロに置いてきたジュナ。でもやっぱり寂しいので、チャンプを呼び寄せるためのお金を稼ぐため、広場で靴磨きをしています。そこで出逢ったのが新聞記者のファーロングさんと、同じ新聞社で原稿係として働いている少年ベン。

「靴磨き」って今の子ども達、ピンと来るのかしら? 私でさえ「街角で靴を磨く商売」を実際に見かけたことはないんだけど。

で、ファーロングさんから「幽霊屋敷」の話を聞き、ベンとともに行ってみると中から可愛い女の子が。「あれ?幽霊屋敷でも空き家でもないよ?」と思ったものの、翌日にはその家はやっぱり「空き家」にしか見えず、ノックをしても誰も出てこない。

屋敷を訪ねた時に置き去りにしてしまったベンのペットの亀、ウォーターベリーを探すためこっそり忍び込むと、亀も人も幽霊もいない代わり、今度はスペイン語を話すオウムが。

屋敷の持ち主アーキンスさんの振る舞いはどことなくおかしいし、巷で噂の偽札事件にもなんだか関係がありそうで――。

ヒントの出し方、別々の事柄が結びついていく巧さ、そして亀や犬やオウムといった子ども達の好きそうなアイテム。子どものジュナをバカにせず、ちゃんと話を聞いてくれる大人の存在。大団円の最後には必ずみんなでご馳走を囲むところも、ジュブナイルミステリとして本当によくできています。

しかも毎回ジュナがピンチに陥るスリリングな展開。

ジュナ、何回こーゆー目に遭えば学習するんだ(笑)。名探偵エラリー同様、ジュナも確証が得られるまでは人に推理を話さない。話さずに一人で「確証を得るために」行動して、敵の手中に。

コナン君ばりに事件に巻き込まれ、コナン君以上にピンチに陥るジュナ。良い子は真似してはいかん(^^;)


さて次は4作目が刊行されるのでしょうか。
4作目『赤いリスの秘密』はベンに見送られてジュナが列車に乗り込むところから始まっていました。エデンボロに帰るため列車に乗ったはずが途中で……。

あとがきも解説も何もないですが、目次の下部、Copyright表示の部分に小さく

“本書は、1944年に米国で発表された「THE GREEN TURTLE MYSTERY」の新訳版です。”

と書いてありました。

“Ellery Queen is one of the world's finest detectives, but his adventures are nothing compared to the Ellery Queen Jr. Mystery Stories. Join Queen's apprentice, Djuna, and his trusty Scottie, Champ, on adventures filled with danjer, sspence, and thrills.”

という言葉も書かれています。著作権者からの言葉、ってことなんでしょうか。「Queen's apprentice」って、著作権者的に「ジュナはクイーンの徒弟(見習い)」なのか。
国名シリーズでのジュナはクイーン家の万能執事で、徒弟のようなものかもしれないけど、こっちのジュナは田舎でアニーおばさんとともに暮らす普通の男の子なのになぁ(^^;)

「名探偵エラリーの冒険も、クイーンのジュニアミステリに比べれば何でもない」ってすごい褒め言葉ですけど、実際負けないぐらい面白いので、どうか多くの子ども達に読まれて、シリーズ全作新訳されますように☆

0 件のコメント:

コメントを投稿