2016年12月1日木曜日

『汚れつちまつた悲しみに…』/中原中也(角川文庫:文豪SDコラボカバー版)



わはは。
「文豪ストレイドッグス」カバーにつられてつい買っちゃいました。まずは中也と国木田さん。
中島敦と太宰治はすでに持ってるし、この2冊を買った本屋には織田作も安吾もなかったので。



中也の方から読みました。
このコラボ企画のために新しく編まれた詩集です。

30歳という若さで亡くなった中也が生前に遺した自作詩集は『山羊の歌』のみ。亡くなる直前に編集していた『在りし日の歌』は没後に刊行されています。(巻末の年譜参照)

その2冊の詩集と、生前に雑誌等に発表されたもの、草稿のみが現存する未発表のものの中から、編者の佐々木幹郎氏が「生きる」「恋する」「悲しむ」という三つのテーマに沿って選んだ詩篇が収められています。

全部で80篇余り。

「文豪ストレイドッグス」のおかげで新しく詩集が編まれて新しい読者の目に触れる。なんか素晴らしいですね。まんまと買わされてしまいましたよ。

表題作「汚れつちまつた悲しみに…」は「序詩」として巻頭におかれています。あまりにも有名な一篇。中也の詩ってこれと「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」(「サーカス」)しか知りません(^^;)

これはもう

「汚れつちまつた悲しみ」という言葉の響きだけですごいです。つい使いたくなってしまうフレーズ。

良い子はゆめゆめ詩人の言葉をこんなつまらないつぶやきに使ってはいけません(^^;)


“汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる”

中也が表現したかった「汚れた悲しみ」が本当はどんなものなのかわからなくても、読む人それぞれが自分の「汚れた悲しみ」を投影して、ひょぉぉぉと心に風を吹かせてしまう。

巻頭にこれがあるの、割とずるくて、あとは初めて見る知らない詩で、詩を読むのに慣れていないせいもあってついこう、うとうとと……。
小説に比べれば文字数は圧倒的に少なくて、そもそもページ数だって多くないし、目を通すだけならすぐに読み終れるはずなのになかなか最後まで行けませんでした。

うーん、詩って難しいな。

「汚れつちまつた悲しみに」は文字数が揃えられててリズムよく読めるんですが、そうじゃない、いわゆる自由律な詩は読みにくくて(^^;)

なのでどうしても

“雪が降つてゐる、
    とほくを。
 雪が降つてゐる、
    とほくを。
 捨てられた羊かなんぞのやうに
    とほくを、” 
(「雪が降つてゐる……」)

とか、

“今では女房子供持ち
 思へば遠く来たもんだ
 此の先まだまだ何時までか
 生きてゆくのであらうけど”
(「頑是ない歌」)

といった文字数やリズムが調えられてある詩が印象に残ります。うん、「頑是ない歌」、けっこう好きだ。

“あれはとほいい処にあるのだけれど
 おれは此処で待つてゐなくてはならない
 此処は空気もかすかで蒼く
 葱の根のやうに仄かに淡い”
(「言葉なき歌」)

なんかも好き。

「夭逝の天才詩人」というイメージで読むせいか、「死の影」がまつわりついているようにも読んでしまうけど、本人は別に早死にする気なんかなかったはずで、第一章「生きる」に収められた詩篇にはなんとなく「喧嘩上等!」な匂いもあります。

周囲から「神童」と言われ、13歳で雑誌・新聞等に短歌が入選。文学に没頭しすぎて学校を落第し、17歳で女優と同棲。その女優と小林秀雄とで「奇怪な三角関係」を繰り広げていたという……。

ふぉぉ、なんという「いかにも」な人生でしょうか。後からこうして年譜をたどるといかにも早世しそうですよね。早熟で、生き急いで。

もちろんそんなのは後付けの印象なんだろうけど、長男をわずか二歳で亡くし、その翌年には自分も死んで、さらに忘れ形見となるべき次男も一歳で死去……。

長男を亡くした後に詠まれた詩はなんともせつないです。

“彼は自らの生涯を生贄のようにして、詩を書き続けたのです”と編者の佐々木氏が解説でおっしゃてますが、どうしてもそういうふうに読んじゃいますよね。最初から「死の影」に囚われていたかのように。

1907年生まれの中也。もしも長生きしていたら、私が生まれた頃にはまだ還暦ぐらいで、「歴史上の人物」というには近すぎる時代の人。

ちなみに中島敦も33歳で亡くなってしまっていて、中島敦と太宰治は同い年で(1909年生まれ)、太宰は40歳で没。

みんな私が小学生ぐらいの時まで生きていてもおかしくない人だったのになぁ。人の一生って……。


【というわけで中島敦関連の記事も良かったらどうぞ】

臆病な自尊心と尊大な羞恥心 (言わずと知れた「山月記」の話です)

『李陵』/中島敦

『悟浄出世』『悟浄歎異』/中島敦

『環礁』~日本に南洋庁があった頃

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