※以下ネタバレあります!これからご覧になる方はご注意ください!
梅田芸術劇場で上演中の星組公演、『オーム・シャンティ・オーム』を観てまいりました。
今年の1月に東京国際フォーラムで上演されたこのミュージカル、ボリウッド映画の宝塚化ということで気になってました。
なんで東京だけ?と思ってたんですよね。めでたく関西でも上演され、観劇することができました。
貧乏なので3階席。下手の端でしたが、思ったよりキャストが近く見えて良かったです。
平日の昼間ということで満席にはなってなかったんですが、他の日もまだけっこうチケットあるみたいで、特製チケットフォルダー付きリピーターチケットとやらの宣伝がくり返し流れていました。
価格もお得らしいリピーターチケット、もうちょっと梅田に近いところに住んでたらねぇ……。
で。
ボリウッド映画『オーム・シャンティ・オーム』のミュージカル化、使われている楽曲も映画のものが多いようです。
1幕目は、売れないエキストラ俳優オーム・マキージャーが主人公。人気女優シャンティに憧れる彼は、そのポスターに語りかけながら、「いつか自分も有名になって彼女と共演するんだ!」と夢を追う毎日。
自身も売れない女優だったらしい母親のベス、そして見習い脚本家のバップーがオームを見守ります。
オームの家には売れない俳優だった父親の写真が飾ってあるんですが……それがハッチさん(夏美よう)の写真なのがウケます。「父ちゃんみたいに売れないまま終わるよ!」みたいに母親が言うところがなんとも。
ハッチさんのようなベテランスターさんを捕まえて「売れない」とは!
回想シーンとかでご本人の出番あるのかと思ったら写真だけでした。ハッチさん、お逢いしたかったわ。
努力しても報われず売れないままのオームなんだけど、ある日スタジオが火事になり、炎に巻かれたシャンティを助けたことから彼女と“友だち”になり、彼女の秘密を知ることに。
敏腕プロデューサー・ムケーシュと秘密裡に結婚していたシャンティ。女優としての成功よりも、彼の妻としての幸せを望むシャンティを“自分の野心の邪魔”として疎ましく思ったムケーシュは、彼女を亡きものにしようとします。
虫の知らせで現場に駆けつけたオーム。けれどもシャンティを助けることはできず、それどころかオーム自身も命を落とす羽目に……。
1幕目は、ちょっと展開がたるく感じました。1幕目が1時間10分、2幕目がアンコール入れて1時間15分。なんか、1幕目は長く感じたなぁ。やっぱりオームが「冴えない」からかな? 頑張ってるけど空回り、的な感じが見ていて少しツラいというか(^^;)
でもこの1幕目の「冴えない空回り」があってこその2幕目なんですよねぇ。
オームが命を落としたその同じ夜に生を受けた男の子。同じように“オーム”と名づけられたその子は30年後、スター俳優になっている。とある賞を受賞して、かつて「エキストラ俳優だったオーム」が大スターを夢見て練習したのと同じスピーチを語る場面で、うるっと来てしまいました……。
生まれ変わって夢を叶えたオーム。
でも。
見ている方としては複雑な気分ではあるのですよねぇ。だって生まれ変わった新しいオームがスターになっているのは「家柄」のせいなんだもの。
1幕目で、「売れない親の子どもはやっぱり売れないまま」「スターの子どもは大根でも何でもとにかくスター」という話があって、「そんな名前(姓)じゃ売れない!改名した方がいい!」ってバップーに言われたりしてたんです。
母親に「何言ってんの!?あんたは私と父さんの子なのに!」って言われ、オームは本名のままエキストラ俳優を続けてたんだけど、それが両親ともスターのところに転生して、「生まれながらのスター」として30年我がまま気ままに育つわけですよ。
努力が報われないまま人知れず命を落としてしまったオームと、苦労知らずのお坊ちゃんスターである“新”オーム。
これ、「夢が叶った」って言っていいのか……。
後に“新”オームは前世のことをすべて思い出して、母親やバップーとも再会するんだけど、自分が今、“名前”のおかげでスターになってることについて、本当なら葛藤しそうだよね。目の前に「前世の仇」であるムケーシュが現れちゃったから、葛藤より何よりまず「復讐」に向かっちゃうんだけども。
で、ちょっと話が戻るけど1幕目の最後で死んじゃったオーム、“人知れず”命を落として、母親はずーっと息子のことを探し続けてるんです。彼女にとって息子は“行方不明”のまま。
30年後なので、1幕目で40そこそこだったとしてももう70歳。最後にオームに「母さんを頼む」と言われたバップーが親身に彼女の面倒を見ているんだけど、バップーだって50過ぎてるわけで。
「見習い脚本家」で、「おまえの方が心配だよ、やっていけるのか」などとオームに言われていたバップー、30年間どうやって糊口を凌いできたんだろう……。もう脚本家はやっていないのか、やっていたらスターになってる同名のオームのこと、奇妙に思わなかったのか、とか。
オームが行方不明になった日に(それは“新”オームの誕生日でもある)いつもスタジオに息子の姿を求めてやってきていた母親ベス。30年目にしてついに“新”オームの姿を見かけ、「オーム!私の息子!」と呼びかけるのですが……。よく考えたら“新”オーム、有名スターであちこちにポスター貼ってあったりするんだけど……やっぱり写真じゃなく実物を見ないと「私の息子」という確信は持てないものなのかしら。
いや、この、ベスとの再会はとってもうるうるしたんですけどね。最初はもちろん「こんな女知らない!」ってなるのが、記憶を取り戻して「母さん!」と抱き合う。息子がどうなったのかわからないまま30年探し続けてたベスにとってみれば本当にたまらないなぁ、と思うけど、逆に今の、“新”オームを育ててきた両親の立場は……と思わないこともない。
いや、まぁ、そんな細かいことはいいじゃないか、そもそも輪廻転生ってのがファンタジーなんだから――ではあります(^^;)
2幕目はあっという間に感じたし、1幕目の諸々が見事に生きて楽しかったから、それでいいんですが。
オームと同じくシャンティも転生か?と思いきや、2幕目に出てくるサンディは単なるそっくりさんらしく。かつてはオームがスター女優シャンティに憧れ、今度はスター俳優オームに地方から出てきたサンディが憧れている。
シャンティそっくりなサンディを使って“新”オームはムケーシュを罠にかけようとする。演技はまったく素人のサンディに「元女優」の母親ベスが演技指導をするシーンがあり。
ここ、爆笑でした!
ベス役の美稀千種さんがホントに最高で。
1幕目から素晴らしいな、と思ってたけど、この演技指導のところで(たぶんアドリブで公演ごとに違うことをやってるんだと思おう)もう、もう、もう!!!
笑いすぎてオペラグラス覗いてられなかったし、ご本人もちょっと笑っちゃって次へすぐ行けなかったりして。
フィナーレのダンスシーンとかもずーっと美稀さんを目で追ってしまった(笑)。歌もダンスもお芝居も素晴らしすぎる。美稀さんの怪演を観られただけでも見に来た甲斐がありました、うん。
星組公演って久しぶりで、大劇場公演は2012年に観たのが最後、バウ公演を2014年に観ているけど、スターさんは誰か誰だかさっぱりわからない。
バップー役、『アルカサル』でドン・ペドロ役だった麻央さんだったのに、観ている間まったく気がつかなかった……。この人なかなかうまいな~いい味だな~と思って観てたんだけど。
うん、『アルカサル』の時は若いなー可愛いなー、という印象だったのに今回は2幕目ではだいぶ年取ってる役だし、主人公の親友でありその母を30年間支えてきたっていうの、しっかり伝わってきた。
同じく『アルカサル』でエンリケ役だった十碧さんも映画監督の息子でそこそこスターの役で出てたけど、こちらももちろん気づかず。バップーに比べれば印象の薄い役だったこともあり、演技の印象は特にない(^^;)
今回レポーター役ですごくうまいな~と思った白妙なつさんは『アルカサル』で母マリア役をやってらして、あの時も圧巻!と思ったのでした。こういうドーンとした娘役さん、好きやわ~。
で、主役のお二人。
紅さんは1幕目の「冴えないオーム」と「スターのオーム」をきちんと演じ分けてらしてさすが。売れない、でも一生懸命で可愛い1幕目のオーム。ちょっとチャラい感じのスター、オーム。チャラいスターの方が合ってたかな(笑)。
インド人で少し黒塗りっぽいから歯がまっ白なのがすごく際立ってた。
シャンティおよびサンディ役の綺咲愛里さん。インド風のお化粧と衣裳がよく似合って可愛かった。シャンティは「秘密裡」とはいえ「人妻」ということもあり大人っぽく、サンディは一転元気な女の子。「素人」としてわざと下手にお芝居するの、かえって難しそうよね。
美稀さんの爆笑演技指導にもがんばって食らいついてて……ほんとにあのシーンは最高やった♪
仇役ムケーシュは七海ひろきさん。立ち姿が格好良かったけど……うーん、そんなに印象がない(^^;)
最後、ムケーシュどうなったのかなぁ。オームが前世の記憶を持ってることがそもまずファンタジーだから、消え失せちゃってもおかしくないとはいえ、「ん?」と思いました。
1幕目でシャンティからオームにプレゼントされたスノードームが2幕目で効果的に使われてて面白かった。30年前の同じスノードームということは普通に考えたらあり得ないけど、だからこそファンタジーだし、無念の死を遂げたシャンティの想いの象徴、シャンティとオームの“友情”のしるしなんだよね。
無事復讐が終わって、サンディを抱きしめたオームが「やっと新しい人生を始められる気がする」って言う。
うん、いくら前世の記憶があったってやっぱり今は別人で、別の両親のもとに生まれて育って、この先も別の人生を生きていくわけで。
良かったな、って思いました。
ベスやバップーとの交流はもちろん続くだろうけど、今の自分の人生をちゃんと生きなきゃね。せっかくスターになってるんだし、親の七光りだけじゃなくって、これから名実ともに大スターの道を歩んでいかなくっちゃ。
フィナーレの後、「客席も一緒に歌って踊って楽しみましょうアンコール」があります。
劇場内にこーゆー紙が貼ってあって。
この中で実際に客席も言った(言わされた?(笑))のは「ハ リッパ」だけでした。麻央さんによる振り付け指導のもとに練習→本番。(「今日の講師は~」と言っていたので、公演ごとに指導役は替わるもよう)
今ひとつテンポが掴めなくて「ハ リッパ」ってちゃんと言えなかったけど楽しかったです。
本場インドのマーケットで調達したらしい衣裳もとても綺麗だし、1幕目で主役二人が死んじゃうとはいえ最終的にはハッピーなミュージカルで、宝塚初心者にもとっつきやすい作品だと思います。公演は8月7日まで。お近くの方はぜひ♪
(公演日程等詳細は公式サイトで)
(なんとAmazonPrimeVideoで配信されています♪)
VIVA!タカラヅカ
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