
バウホールから連チャンで、大劇場も観てきました。11月21日15時公演。
肩こり首こりに悩まされ、体調的に連チャンはなかなかキツかったのですが、しかし! 観てよかった! 『ひかりふる路』、めっちゃ良かったです!!!
正直観る前は「え?ロベスピエールが主役って、どんな話にするの?」と思ってたんですよね。フランス革命の影の部分、バスティーユ陥落後に恐怖政治を敷いて結局自分も断頭台の露と消えたロベスピエール。
どう宝塚の舞台で「主役」にするのかなぁ、と。
そうしたら、前半は優しくて大人しく、理念の面で革命を引っ張ってきたとはいえ割と地味、な感じに描かれていて。
うん、前半のロベスピエールは、とてもいい青年。
だけど、革命によって、「ただ貴族である」というだけで家族や恋人を惨殺されたマリー・アンヌにとっては、彼は「革命の象徴」。復讐すべき「仇」。
自らの手で彼を殺すべく素性を隠して近づいたマリー・アンヌは、ロベスピエールの人となりに触れ、彼を愛し始めてしまう。
ロベスピエールもまた、凛として美しく謎めいた彼女に心を惹かれ、住む場所を世話したり親身に面倒を見る。
けれど。
イギリスの侵攻、反革命派による内乱、そして友であり革命の同志であるダントンの裏切りに遭って、ロベスピエールは人が変わってしまう。
「どうすれば革命を進めていけるのか? それには徹底した反革命派の排除、恐怖政治しかない!」と、突然「独裁者」になってしまうのです。
ここ、あまりに突然すぎて、「へ?」って感じでしたが(^^;)
ドラマとしてはロベスピエールが「悪者」になってしまってからの方が面白い。目的のために選んだ手段、でもその手段が「目的」になってしまって、敵対者をおおかた粛清してしまった後、「次はどうしたらいいんだ?」とうつろな目で尋ねるロベスピエール。
「裏切った」とされたダントンも決して悪いやつではなくて(むしろ非常に好感の持てる人物として描かれていた)、「革命は理想だが政治は現実だ」「君自身が喜びを知らないで、どうして人民に喜びを与えられるんだ」とロベスピエールを「間違った道」から引き戻そうとする。
ダントンは2番手男役彩風さんが演じていましたが、彩風さんの持つ大らかさ・可愛さのおかげもあって、すごく「おいしい役」になってましたねぇ。
ロベスピエールを説得しようとするあの二人きりの場面、すごく密度濃かった。
ダントンの説得にも耳を傾けず、ダントンさえも断頭台に送ってしまったロベスピエール。道を誤り続ける彼を止めようと刃を向けるマリー・アンヌは捕らえられ、貴族の娘であるというその素性が暴かれてしまう。
「私に近づいたのは、私を殺すためだったのか……」
失意のロベスピエールは、自分自身の粛清を口にし、反革命派の思惑もあって「革命の英雄」から一転「犯罪者」に。
牢の中で再会するマリー・アンヌとロベスピエール。憎んでいるけど愛してる。あなたのおかげで新しい生き方を見つけられもした。もしも普通の男と女として出会っていたら……いいえ、きっと、それなら出会うこともなかったでしょう……。
もうこの二人のやりとりにボロ泣きでした。ううう。
ロベスピエール役の望海さんも巧いけど、マリー・アンヌ役の真彩さんも歌・お芝居ともに絶品で、引き込まれちゃう。
最後の最後、マリー・アンヌは無罪として牢から出され、ロベスピエールは断頭台への階段を登ってゆく。
「君は生きろ」
生という「光」の中へ再び出ていくマリー・アンヌと、死――それも処刑という「闇」に消えていくロベスピエール。
そこで幕、という終わり方もとても良かったなぁ。変な「あとがたり」とかなくて、宝塚の舞台としてはとても重いまま終わる。
舞台奥のスクリーンには最初から斜めの線が入っていて、それがまるで「断頭台の刃」のように見えていたんだけど、「光」と「闇」、「生」と「死」、革命で救われた者と殺された者、色々な断絶・二面性を象徴する「線」なんだろうなぁ、と。
国王や貴族という特権階級から民衆を解放した革命。でも、殺された貴族たちがみな「悪者」だったわけじゃなかった。
「理想のため、より良い世界を創るためであれ、犠牲になっていい命なんてあるのか?」
序盤でマリー・アンヌが突きつける問いが、のっけから重くて考えさせられる。
「尊い犠牲」なんて言葉は、実際に殺された人々、その遺族にとっては……。
何もしなければ――変えようと行動しなければ、悪い世界のままなのかもしれない。でも良い世界を求めて、その過程で多くの、流れなくてもいい血が流れ、「より良い」を目指したはずの「良い人物」もまた、いつの間にか「倒されるべき既得権益者」に変質して。
折しもジンバブエではクーデター。辞任に追い込まれたムガベ大統領も、最初は「白人支配から国民を解放した英雄」だったんでしょうにね。(最初から政敵を徹底排除する人ではあったらしいけども→参考:“ロバート・ムガベの興隆と没落 ジンバブエ”(BLOGOS記事))
オスカル様はバスティーユで死んで幸せだったよ、とか思ってしまいました(^^;)
『ベルばら』でも王や王妃の処刑は描かれているけど、「革命」の後、「自由・平等・友愛」に基づいて政治を行うことの難しさよ……。
物語自体も面白かったし、構成・演出、そして音楽と、非常に質の高いお芝居でした。音楽は『スカーレット・ピンパーネル』等で有名なフランク・ワイルドホーン氏が全曲手がけています。
コーラスや掛け合いでのアンサンブルが多くて、曲調がどうというより「音楽の使い方」がすごく好みでした。
また望海さんと真彩さんが歌巧いから。
耳福♡
ダントンの彩風さんもとても良かったし、サン・ジュスト役の朝美さんが「なるほどサン・ジュストだ」と思わせる美形で印象に残りました。
マノン・ロラン夫人役の彩凪さんは「男役がやる女」のどーんとした感じと妖しさがあって似合ってました。
タレーランの夏美さんは貫禄の演技。ロベスピエールの側から見れば「敵」で「悪」だけど決して悪人じゃなく、一歩引いて見てる策略家、って感じでいい役でした。
夏美さんと同じく専科からの出演の沙央さんはロベスピエール、ダントンと堅い友情で結ばれたジャーナリストのカミーユ役。うーん、あんまり見せ場がなかったような(^^;)
若い頃だったら「もう一回見る!」って言って立ち見に並んでるなぁ、と思うぐらい素敵な舞台でした。楽しかった!
(※長くなったのでショーについては別記事で)
(制作発表時の動画↓)
(初日舞台映像↓)
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