行ってきました、兵庫県立美術館。兵庫会場は10月12日からの開催、早速16日に行ってきたのですが。


展示量ハンパない!!!
情報量エグい!!!

福岡会場開催中に「4時間でも足りない!」みたいなTweetを見てはいたのですが、まぁ言うても私はそこまでマニアじゃないし、せいぜい3時間ぐらい見ておけば大丈夫だろうと軽く考えていたんですよね。

なんせ滋賀からなので片道2時間以上かかるんです。往復するだけで4時間以上(汗)。内容がどれだけ盛りだくさんでも3時間ぐらいで帰らないとご飯の用意が……。

と思っていたのに3時間半
ついうっかり前半かなりしっかり観覧してしまい、「あれ?これもしかしてまだまだ展示ある?」と途中で気づいて後半はかなりスピードアップしたにもかかわらず3時間半。

「しっかり見た」前半だってすべての文字を追ってはいなかったのに、たぶん前半だけで2時間以上時間を使ってしまったと思う。後半を同じペースで見たら5時間、さらにじっくり文章や絵コンテに見入っていたら一体何時間かかるのか。

これから富野展行かれる方はくれぐれも時間に余裕を持ってお出かけください。近所なら2回に分けて行くのがきっと正解。1日ではしんどい……。

「会場内にトイレはないので先に済ませてください」とちゃんと注意書きがあったんですけど、午前中から行く人はお昼をどうするかも考えておいた方がいいと思います。私は着いたのが11時前だったので先に腹ごしらえしたんですけど、うっかり10時ぐらいに会場に入ってしまうときっと途中でとてもお腹が空く……空くが下手すると2時過ぎてもお昼にありつけない。

(※ここからは多少ネタバレ有りの感想なので、まっさらな状態で展示を楽しみたい方はご注意を。)

美術館に入るとまず富野監督が出迎えてくれます。


で、「富野展はこちら」という矢印に従って階段を登っていくと「海に陽に…」が聞こえてくる! イデオン接触篇発動篇の主題歌(は「セーリング・フライ」の方?)だった「海に陽に…」。大好きな曲とともに階段の天井や壁面に映し出される富野作品のダイジェスト映像。

おおおおおお。
いきなり見入ってしまうではないか。

以前、「大河原邦男展」の時も階段のところにザクか何かの絵があって、「もうここから始まってる!」と感激したのですが、今回も。


入場時にもらえる栞、水曜日バージョン。曜日によって違うので、ほんと近所だったらもう一回違う曜日に行って駆け足だった後半をじっくり見直したい。

後ろの紙は出品作品リストで、これも入場口のところに置いてあったんですが、もらった時にちゃんと見ていれば「めちゃめちゃ展示物が多い」ということがわかって、もうちょっと時間配分考えられたかもしれないのに。
A1の紙の両面にぎっしり!

まぁ公式サイトの「展示作品」ページにちゃんと何部構成か書いてあるので、これを見てれば「あれ?まだまだある?」と第3部くらいのところで時計見てびっくりしないで済んだんですけども。事前リサーチは大事ですね。

で。

第1部は「宇宙(そら)へあこがれて」ということで、“富野由悠季を形作ったもの”が展示されてるですけど、いきなり与圧服。
富野さんのお父上が軍の工場で与圧服の研究をしていたって、それなんてテム・レイ!?

軍の技術者とその内気な息子ってもしかしてまんま富野父子がモデルだったのかな?とつい勝手な妄想を。

宇宙に魅せられた富野少年のロケットの絵や論文、研究ノート。まさに「栴檀は双葉より芳し」で感心するし、中学生ぐらいの時の絵やノートをご家族だか本人だかがちゃんと取っておられたのも素晴らしいなぁ、と。

アニメの話が出てくる前の、この段階でもうかなり情報量が多いんですが、続いて虫プロ時代、トリトン、ライディーンと来て、ザンボット3まで!

第1部だけで濃すぎるやろぉぉぉぉ
ライディーンってファンクラブあったんですね。安彦さん画のファンクラブ用ポスターが掲示されててびっくり。

ザンボット3は抜粋映像が流れていたんだけど、あの!トラウマ必至の「人間爆弾」回が!!! よりによってこれ流すか! 確かに最もザンボットらしい回だろうけども……。うう、ツラいと思いつつ見てしまうじゃないか、アキ……。
あと終盤のブッチャーとの対決シーンも。

人間爆弾回の印象が強すぎて最後どうなったのか、ブッチャーのこともあんまり覚えてなかったんだけど、こんなふうに抜粋で見せられるとよけい全部見たくなるよね、ザンボット3。


第2部は「人は変わってゆくのか?」ということでファーストガンダムとイデオンをたっぷり。第1部でもそうだったけど、まだ仮題だったころの企画書とか設定資料とか、とにかく「文字」の情報が多くて!

「前半しっかり見た」と言ったけど、必ずしも全部は読めなかった。「概念の展示なんかできない」と富野監督がおっしゃっているけど、展示するためにこれでもか!と資料があるので、ほんともう読み応えがありすぎて。

全部読まなくてもあまりの情報量に脳がパンクしそうだし、ファーストガンダムとイデオンなんてそれだけでお腹いっぱいじゃない? それがまだ2部なの。残りあと4部もあるなんて思わないじゃんよ、思ったところで「軽めに通り過ぎる」とか無理じゃん。

富野監督の考える「イデとは何か」というメモとか興味深すぎる。

ガンダムもイデオンも、設定資料集とか色々出てるから、知ってる人はもう知ってる情報なのかもしれないけど、私には大変面白かったです。
ミハル姉ちゃんの設定資料に「ぺちゃ胸」とか書いてあるし。

そしてイデオンは発動篇のラストが上映されてる。
見ちゃうでしょ!
どうしたって見ちゃうでしょ!!!


見たらやっぱりうるうるしちゃうし。
リアルタイムで劇場で観たけど、本当にこのラストは……。多感な時期(中学生だった)にこれを観たおかげで私の死生観が変わったと言っても過言ではない。

でもこれ、実はこのラストには希望があるよね。「死んだらノーサイドで敵も味方もなくなって、メシア(救世主)とともに新しい星に転生」って。
せめてあの世では幸せになりたい、みたいな希望。
そんな死後の世界なんか信じられないがゆえに信じたい“光”

「幸せになれよ」「もちろん、でなきゃ損しちゃう」みたいなセリフ(うろ覚え)とか、「私たちの戦い、無駄じゃなかったのよね」とか。

戦わずに――何の葛藤もなしに死んだのなら救いはないのか、血みどろの戦いがあればこそメシアも生まれたのか。

本当にあれこれ考えさせられすぎて、まだ展示は第2部だというのに……。

第3部は「空と大地の間で逞しく」。ダイターン3とザブングル。これも抜粋映像が流れてたはずだけど、すでにこの時点で「ダメだ、見てたら間に合わない」ってなってた。

さらにキングゲイナー、ラ・セーヌの星、闇夜の時代劇。
「ラ・セーヌの星」は終盤3分の1が富野監督だったんですねぇ。めちゃめちゃ見てたよ。
民衆の味方だったはずのシモーヌが実は憎むべき王妃の妹で、終盤革命側が“正義”ではなくなる感じなの、史実を踏まえつつも富野作品の「善悪の逆転」に通じますよね。


第4部「魂の安息の地は何処に?」ではダンバインをはじめとするバイストン・ウェルストーリー、そしてエルガイム。

もう全然時間がないです!!!

でも「ガーゼィの翼」や「リーンの翼」は内容をほとんど知らなかったので興味深かった。
「エルガイム」もリアルタイムでは途中で挫折して最後まで見なかったので、もう一回見てみたいなぁ、と。
永野護氏のイメージが強すぎるけど、企画ともともとのストーリーラインは富野さんだったのねぇ。

(エルガイムも、というのは「ダンバインも放映当時は挫折」してたからで、10年前にちゃんと最後まで見てびっくりした話はこちら

第5部「刻の涙、流れゆくその先へ」。
Z、ZZ、逆襲のシャア。F91、Vガンダムにブレンパワード。
ぜーはー。
もう全然時間が足りない。
駆け足。
ZとZZの抜粋映像、エルピープルとプルツーの対決シーン!!! ああ、プル好きだったなぁ。プルのくだりだけ面白かった、ZZ。


『ブレンパワード』は全然見たことがないけど、いのまたむつみさんのイラストが異彩を放ってて面白かったです。そこだけ急に雰囲気がキラキラしいというか。
いのまたさんの絵で紡がれる富野ワールド……どこかで再放送やってくれないかしら。


富野監督が基本的には「絵を描かない」人だから、色んな作家さんの絵(原画やキャラ設定)が見られるのが面白いし楽しいですよね。なんかお得な感じ(笑)。

今となっては安彦さんじゃないファーストガンダム世界は考えられないし、湖川さんじゃないイデオン世界も考えられない。もし絵が逆だったら、物語自体がすごく変わってそうな気がしてしまうもんね。

富野さん、「絵を描かない」と言ってもマシンの設定&デザインはしてらっしゃるし、富野さんの描くララァのイメージラフとか、本当に興味深い。
そもそもあれだけの絵コンテ描ける人を「絵を描かない」と言っていいのか……。

時間がなくて絵コンテはどれもささっとしか見られなかったけど、画面の見せ方、「絵作り」、勉強になりますよねぇ。「ロボットアニメの真骨頂!」みたいな書き込みも楽しいし。

ほんと、「じっくり見た」はずの前半だって文字を全部は読んでないし、絵コンテはさら~っだし、すべてを完全に見ようとしたらどれだけ時間かかるんだろう、この展示。恐ろしや。

やっと最後の第6部、「大地への帰還」

前半が『ターンエーガンダム』で後半が『Gレコ』。
実はターンエーも途中で挫折して最後まで見てない。もしかして富野作品で初見で完走したやつ数えるほどしかないのかもしれない。ははは。
最終回の「奇跡の6分間」が上映されていました。
これもちゃんと見ないとなぁ。(見なきゃいけない作品が多すぎる)


『Gレコ』はちゃんと最後まで見たんだけど、最後まで「どこを面白がればいいのかよくわかららない」感じだったんですよね。キャラクターの誰にも感情移入できないし、ストーリー的にも「結局何だったの?」と……。
キャラクターを好きになれないのは私がすっかり年を取ってしまったからなのか?とも思い、70歳でこういう「元気な子ども達の話」を描ける富野さんはすごいな、と思います。

キャピタル・タワー=唯一のエネルギー源っていうの、まさに「今の課題」なわけで、「Gレコを見る子ども達が現代の課題を考え、解決するよすがになってくれたら」という富野さんの願いを、設定資料等を見ながら改めて考え……るほどには時間がなかったけれども。

本放送の時間帯は、とても子どもが見られる時間ではなかったけど、今はむしろ子どもはテレビではアニメ(に限らず)見ないのかもしれないし、監督の思いが届くといいなぁ。

今度、再編集での劇場版も気になるけれども5部作とか無理すぎて。しかも上映館少なすぎて……(泣)。

はぁ。

こうして書いてると本当にもう一回後半をじっくりしっかり見に行きたくなります。

あまりに情報量が多かったのでキャパオーバーで細かいところを全然覚えられてないけど、イデオンのとこかな? 「隷属と自由」みたいな話がとても興味深くて印象に残りました。
人はなんで戦うのか。
自由のために戦うとは言っても、自由じゃなくても、人はそれなりに生きて、子孫を残せる。
もしも人間がただのDNAの乗り物で、DNAを次代に繋げるだけが「存在の目的」なら、子孫を残す前に戦って死ぬのは目的に反するし、子孫を残す余地が残されているなら、圧制下でも隷属下でも、戦って根絶やしにされてしまうよりは「目的にかなう」。

自分が死んでも自分の属する集団が生き延びるなら……?

勘違いと個人の私怨で敵味方全滅する「イデオン」。
「戦争を早く終わらせるため」とか言ってジオン(というかギレン?)はコロニーを落として、地球連邦側も終結させる気などさらさらなかったり。
「命令する人」自身は「自分は安全なところにいる」つもりなのかもしれないけど、本当に、「一体何のために戦って、なんのためにこんなにも人を殺すんだろう」だよね。

シャアにしても、最初の方はともかく、結局「戦いの場」以上にわくわくすること、能力を活用するとこがない、って感じで、色々大義名分をつけはするけど、「戦うの好きなだけやろ?」「アムロに勝ちたいだけやろ?」みたいな。

『ザンボット3』で、地球を守るために戦ってるはずの主人公たちが「おまえたちがいるから攻撃される」って言われて、最後ブッチャーにも「別に頼まれてもないのになんでおまえら戦ってんだ」と言われて。

苦しい思いをして――仲間の命も自分の命も差し出して、そうまでして戦った先にあるのは何なのか。
それは結局、「何のために生きるのか」という話でもある。