はい、またまたLIVE配信で楽しみました、雪組公演。6月13日の15時半開演。もうすっかり配信頼みになってしまってます。地方公演で公演日数も少なく、観に行けるわけもない(涙)。

彩風さんと朝月さんのトップお披露目公演でもあり、80年代後半~90年代前半宝塚ファンにはあまりに懐かしい演目でもあり。
ねぇ。
『ヴェネチアの紋章』は1991年、ナツメさん(大浦みずき)のサヨナラ公演。そして『ル・ポアゾン』は1990年、ウタコさん(剣幸)のサヨナラ公演の演目です。
あー、懐かしい。

とはいえ『ヴェネチアの紋章』の方はあんまり覚えてなくて、新鮮に楽しめました。塩野七生さんの原作も読んだんですけど、配信を見るまでストーリーもぼうっとしか覚えてなかったんですよねぇ。リアルタイムで観劇した当時、正直あまり面白いと思わなかった気がする。ははは。

(ちなみに原作小説は最近改題されて復刊されました。↓)


彩風さんのアルヴィーゼ、とても良かったです! せつない、やるせない表情がたまらない。どんどんお芝居に深みが出てきてますよねぇ、彩風さん。大人の男の色気もすごく感じる。
ナツメさんは何をやっても「ナツメさん」という感じだったので、自らの出自に苦しみ、愛と野心のために破滅への道を進んでいく哀しい青年(と言ってもおそらく30歳は過ぎてる)の葛藤は、彩風さんの方がより強く、深く感じられた気がする。
終盤、彩風アルヴィーゼの運命にぐっと来ましたもの……。

舞台は16世紀前半のヴェネチア。主人公アルヴィーゼはヴェネチア元首グリッティの息子。けれどギリシャ女性との間に生まれた「私生児」であるため、自他ともに認める優秀な若者でありながら、ヴェネチアでは政治に携わることができない。
コンスタンチノープルで貿易商として財をなしながら、ヴェネチアのスパイとして活動して10年、彼には心に秘めた野心があった。それは、愛する女性リヴィアと結婚するため、彼女にふさわしい“紋章”を手に入れること――!

リヴィアはいいとこのお嬢さまだったので、私生児のアルヴィーゼとは結婚できず、30歳も年上の「いい家のおっさん」のところに嫁がされているんですね。でもアルヴィーゼとはずっと関係が続いていて、実は子どもも生まれている。
要は不倫関係が続いてるわけで、さすがナツメさん&ひびき美都さん大人コンビ向けのお芝居だなぁ、と思ってしまいますが。

トルコでは「元首の息子」ともてはやされても、ヴェネチアでは「私生児」と呼ばれ、元老院議員になることもできない。
だからトルコ軍を率いるハンガリー総督となって――さらにはハンガリーの王位を手に入れ、その“紋章”をもってリヴィアを正式な妻として迎える。それが、アルヴィーゼの野心。

ハンガリー侵攻はヴェネチアの国益にもかなうはずだったのだけど、世界情勢は刻々と変化している。アルヴィーゼの軍隊が劣勢になっても、ヴェネチアは援軍を出せない。そしてトルコ側も出さない。

リヴィアは「王になんかならなくていい。地位や身分など、人間の値打ちに何の関わりもない」と言ってくれるんだけど、アルヴィーゼは「人間の値打ちには関係なくとも、人間の誇りには大いに関わりがある!」と答えて破滅への道を進んでいく。

うん、そうだよね。
「地位や身分なんて関係ない」と言えるのは、地位も身分も持っている人間だけ。人は生まれる家を選べず、親を選べず、自分ではどうすることもできない「生まれ」のせいで差別され、苦汁をなめてきた人間にとって、そんな言葉はただのきれいごと。

この「人間の誇りには」のくだり、援軍を得られず、ハンガリーの城で討ち死にするしかないと覚悟を決めさせられるくだり……彩風アルヴィーゼ、ほんとにやるせなかった……。

16世紀イタリアの衣裳もいいよね。麗しい。彩風さんはじめ、みんなきらびやかで美しくて素敵でした。

リヴィア役の朝月さんもパッと目を引く可憐さ。初演のひびきさんは超「大人の女性」な雰囲気だったけど、朝月さんは可愛い系の容姿で瑞々しくて、「意に沿わず30も年上のおっさんに嫁がされた若い娘」感がより強く出る。それでいてちゃんとしっとりと、人妻の落ち着きもあったし。

初演ではヤンさんが演じたアルヴィーゼの親友にしてお話の語り手マルコは綾鳳華さん。綾さんすごく良かったわ~~~~~。ヤンさんマルコは金髪ロン毛だったんだけど、綾さんマルコはショートで、なんというか、優しい人柄が全体ににじみ出ていて、お芝居がとても良かった。

マルコの恋人というか愛人というか、要はその筋の人(高級娼婦?)で実はスペインのスパイ、オリンピア。初演では香坂千晶さん、今回は夢白あやさん。夢白さん、怪演だった。なんかすごい迫力というか、怖かった、オリンピア(笑)。人のいいマルコが完全に手玉に取られてる感あった。

あと、初演ほとんど覚えてなかったけど、 カシムとヴェロニカのくだりはめちゃめちゃ見覚えがあって、「あー!そうだ、この女の子は確かみはるちゃん(森奈みはる)が!」と。
カシムというのはアルヴィーゼの下男で、イスラム教徒だからと処刑されそうになってたところをアルヴィーゼに助けてもらって、それでアルヴィーゼに仕えてるんだけど、ヴェネチアに戻ってきて、ヴェネチアの屋敷で働いているヴェロニカに惚れられ、追い回され、「イタリア女はよくしゃべる!」とこぼしながらもついには結婚の約束をして、でもカシムはアルヴィーゼと一緒に玉砕してしまうという……。

本筋とは関係ない、そこだけパッと場面が明るくなる「幼い恋」のエピソード、カシム役の一禾あおさんもヴェロニカ役の莉奈くるみさんもがんばってました。初演のカシムは宝樹芽里さんだったのよね。あー、あの頃ジェンヌさん、みんな懐かしいわ。

この記事書く前に初演(東京公演版)のビデオ見返したら、ラストシーンでヴェロニカ、「カシムが死んじゃったー!」って泣きながら舞台を横切っていってた。雪組版ではカシム死後のヴェロニカは描かれてなくて、ちょっと残念。みはるちゃんは次の公演ではトップ娘役になるわけだから、まぁ最後にも出番ってことだったのかな。「よくしゃべるイタリア女」の喋りが圧巻だった、みはるちゃん好き。

ヴェロニカだけでなく、初演と雪組版、ラストが少し違って、初演には「アルヴィーゼとリヴィアの間には実は娘がいて、尼僧院に預けられてるその少女を見て、マルコが“この子が大きくなったら結婚しよう”と思う」というくだりがなかった。
というか、ここ、ちょっとびっくりしたんだけどね。
「え? オリンピアに翻弄された後は幼女に向かうの、マルコ?」と。アルヴィーゼの忘れ形見が、正統な貴族で元老院議員でもあるマルコと結婚するというのは、アルヴィーゼがついぞ手に入れられなかった“紋章”を手に入れるってことになるんだろうけど……、だから「それがアルヴィーゼとリヴィアの思いを継ぐことだろう」みたいなマルコの独白になるんだろうけど、「え?マルコ??何歳違い???」ってなっちゃった(^^;)

原作にあるくだりなのかな。ちょっと、今手元に原作なくて確かめられない。

続いて『ル・ポアゾン~愛の媚薬~Again』。
こちらは初演の時のプロローグのカナメさん(涼風真世)が美しすぎて、歌も圧倒的すぎて。「あなたがもし恋を~♪」あの歌めちゃくちゃ好きで未だに全部歌えるだけに。

ああああああああ、違うぅぅぅぅぅ(身悶え)となってしまいました……、ごめん、雪組さん。どうしても比べてしまう……。

ライブ配信だとキャストも出ないし、プログラムもないのでカナメさんパートの人が誰かもわからなかった。お芝居の流れだと綾さんが2番手で、プロローグのカナメさん役も綾さんかな、と思ってたら違った。
歌ってたの、お芝居でヴィットリオやってた人かな? 諏訪さきさん???
ちょっと、脳内にカナメさんやミミちゃん(こだま愛)の歌声が流れすぎて、全体的にみんな「歌が下手」に聞こえてしまった……。彩風さんは良かったけど、他はちょっと、歌が弱い……。

ともあれ歌もダンスも懐かしいな、と思って見ていたら。
あれ?
これは、このスパニッシュの場面は――この「Un Amor」は――『ナルシス・ノアール』
じゃないか!!!!!
我が青春の星組、ネッシーさんとシメさんが「光と影」、分身となって踊るあの大好きな場面じゃないかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
ここは綾さんでしたね。彩風さんと綾さんで「光と影」、美しかったです。良かった。
続いて朝月さんが「ナルシス・ノアール」主題歌歌ってはったし。同じ岡田先生のロマンチック・レビューシリーズとはいえ、まさか『ナルシス・ノアール』挟まってると思わなかったので、嬉しいサプライズでした。

『ル・ポアゾン』ではクィーンメドレーで空軍兵か何かが踊るところなんですよね。そこがカットされて「Un Amor」になってる。うん、「Un Amor」の方が良いね、うん。

千秋楽ではないので最後の彩風さんの挨拶は短め。「またぜひ宝塚大劇場でもお会いしましょう」みたいな。
大劇場でお会いしたいのは山々川々!!!
『CITY HUNTER』、どう宝塚化されるのか、楽しみでしょうがない。
『ほんものの魔法使』ではイケメン犬モプシーを超演した縣さんがどう海坊主を演じるのか、そして今回主人公を見守る人柄のいい貴族を好演した綾さんがどんな槇村を見せてくれるのか。
朝美さんのミック、そしてそして彩風さんの冴羽獠!

なんか、この再演ラッシュといい(昨年の『炎のボレロ』、この秋の『川霧の橋』)、私ら世代が狙い撃ちされてる感凄いんですけど、ええ、はい、楽しいです、ありがとうございます。
どうかこの先も無事有観客で公演ができ、無事観劇できますように。まんまんちゃん、あん。


【以下おまけ】

昔の公演の資料ないかなぁ、とその辺の段ボール箱を開けるとあら不思議、1990年と91年の『歌劇』誌が!
怖いですねぇ、ほんとオタクは怖いですねぇ。家じゅうこんな昔の紙類ばかりで、片付かないのも道理です。
ともあれ初演『ヴェネチアの紋章』写真を発掘。



昔のビデオも引っ張り出して見ちゃいましたけど、特にショー『ジャンクション24』を見ると、ナツメさんが早世されてしまったのが本当に残念で……。「Don't Stop Dancing, Can't Stop Dancing♪」の歌詞の通り、ずっとずっと、踊り続けていらっしゃるだろうと思っていたのに。もちろん天国でもステップを踏んでいらっしゃるだろうけれど。

続いて初演の『ル・ポアゾン』

下の小さい枠がプロローグのカナメさん。あああああ、小さくても麗しいぃぃぃ。

そして『ナルシス・ノアール』から「Un Amor」の場面。シーン名としては「アンダルシアの孤独」。


ネッシーさんとシメさん、長身2人のそれはそれは麗しいマタドール。『ナルシス・ノアール』もビデオ引っ張り出して見ちゃった。もうあれから30年の月日が流れたなんてなぁ、、、