4月1日にお遊びで書きはじめ、その後完全に放置していた『のす太郎』の続きをちょっと書いてみました。Nostr民以外には何のことやらさっぱりわからないと思います。Nostr民にもたいして面白くないかも。
くすっとでも笑えてもらえたら幸いです。
第一話「のす太郎と秘密の鍵」
むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に出かけました。すると川からにっぷらこにっぷらこと大きな竹の節(ふし)が流れてきました。「こんな大きな節は珍しいわい」と思ったおばあさんは、苦労してその節を家に持って帰りました。
おじいさんが竹を割ってみますと、なんということでしょう。中には小さな赤ん坊が入っていました。子どものいなかったおじいさんとおばあさんは、その子を「のす太郎」と名づけ、大切に育てました。
のす太郎はすくすくと大きくなりましたが、五つになってもなぜか「竹」としか話せませんでした。
のす太郎が十歳になった時、おじいさんとおばあさんは流行り病で亡くなってしまいました。息を引き取る少し前、おばあさんはのす太郎に奇妙な地図と鍵を渡してこう言いました。
「のす太郎や、これはおまえと一緒に竹の中にあったものなんだよ。きっとおまえの本当のお母さんやお父さんがいる場所にちがいない。この鍵は、生まれたお屋敷の鍵かもしれない。大事にするんだよ」
鍵は二つあり、ひとつには「npub」、ひとつには「nsec」と刻まれていました。そして地図の方には大きく「Nostr」と書いてありました。その異国の文字の上には振り仮名らしきものがあったのですが、「のす」のあとが汚れてしまって読めません。
「のす……なんだろうねぇ」
「うむ、ようわからんが、この子の生まれた村の名前なのかもしれんな」
それで、おじいさんとおばあさんは赤ん坊に「のす太郎」という名を付けたのでした。
一人ぼっちになってしまったのす太郎は、その地図を頼りに旅に出ることにしました。地図には川や山の絵があり、竹林も書き込まれています。「竹の節」の中にいたのですから、「竹」はきっとのす太郎と深い関係があるに違いありません。「ここへ行け」と指し示すように、竹林のそばには「⚡」という印もついていました。「のす太郎や、これはおまえと一緒に竹の中にあったものなんだよ。きっとおまえの本当のお母さんやお父さんがいる場所にちがいない。この鍵は、生まれたお屋敷の鍵かもしれない。大事にするんだよ」
鍵は二つあり、ひとつには「npub」、ひとつには「nsec」と刻まれていました。そして地図の方には大きく「Nostr」と書いてありました。その異国の文字の上には振り仮名らしきものがあったのですが、「のす」のあとが汚れてしまって読めません。
「のす……なんだろうねぇ」
「うむ、ようわからんが、この子の生まれた村の名前なのかもしれんな」
それで、おじいさんとおばあさんは赤ん坊に「のす太郎」という名を付けたのでした。
のす太郎は自分が流れてきた川を遡り、ずんずんと歩いていきました。小柄でやせっぽち、年より幼く見えるのす太郎ではありましたが、元気で丈夫で賢い子でしたので、食べられる木の実や果実を見つけ、時には出会った人たちの助けを借りながら野を越え山越え、ついに目指すべき竹林にたどり着きました。
しかしそこに「家」や「屋敷」はありません。人の姿もありません。おばあさんに渡された一組の鍵は大事に身につけていましたが、そんな鍵が必要になるような代物は何も見当たりません。
けれども地面には、竹を抜いたような、何かを掘り出したような跡があります。まだタケノコ掘りには少し早いな、と思いましたが、のす太郎も試しに少し掘ってみました。するとなんと、出てきたのは鍵でした。のす太郎が持っているのとよく似た、「npub」「nsec」と刻まれた二つの鍵が出てきたのです!
驚きながらも別の場所を掘ってみると、そこにはまた同じような鍵が。一体この竹林は何なのでしょう。タケノコではなく鍵から育つ竹なんてありえるのでしょうか。
「こんにちは」
突然背後から声がしました。女の子の声です。
振り返ったのす太郎は思わず「竹…?」とつぶやきました。十歳になった今でも、びっくりしたり言葉に詰まった時には「竹」という単語しか出てこなくなるのです。のす太郎の目の前にいたのは人間ではありませんでした。蛸を思わせる、赤い色の不思議な生き物だったのです。
「ご新規さん? あら、たくさん鍵を掘ったのね。いい鍵はあった?」
“蛸なのに喋ってる”と、のす太郎は思いました。そして、“蛸なのに可愛い”と。
蛸っぽいのに髪はツインテール、胸にはリボン、そして頭の上に「⚡」の形の髪飾りのようなものが刺さっています。
「あ……えっと、その、ぼくは、のす太郎と言います」
「のす太郎? 奇遇ね、私はノスタコちゃんよ、よろしくね」
“のす太郎とノスタコ、文字列距離”という意味不明な言葉がのす太郎の頭に思い浮かびました。よくわかりませんが、彼女も、地図に書かれていた「Nostr(のす…)」という言葉と関係がありそうです。
のす太郎はまず地図を見せ、ここが目的の場所かどうかを確かめようとしました。
「これは……!」
ノスタコちゃんは顔色を変えました。と言ってもやっぱり赤いままなのですが。
のす太郎は彼女が自分のことを――少なくとも地図のことを知っているのだと思い、懐から自分の二つの鍵を取り出し、見てもらおうとしました。
「やめろ! バカ! 秘密鍵を人に見せてどうする! そっちじゃない、npubだ、npubだけでいいんだ! nsecは早く隠せ!!!」
ノスタコちゃんはすごい剣幕でまくし立てます。すっかり口調が変わって、顔つきまで変わっています。と言ってもやっぱり蛸は蛸なのですが。
「この鍵とともに竹の中から生まれただと? しかも10年前……いくらCreaterd_atを操作したとしてもまさかそんな……一体誰が……」
ぶつぶつ言いながら考え込んでいるノスタコちゃんはまるで名探偵か何かのようです。
のす太郎は言いました。
「ここは、どういうところなの? 君以外にその……人はいないの?」
ノスタコちゃんはハッとしたようにまじまじとのす太郎を見つめ、「そうか、そうだな」と独りごちました。そして急に最初の“可愛い女の子”の雰囲気に戻り(と言ってもやっぱり蛸なのですが)「Nostr村を案内してあげる」と言いました。発音が良すぎて「のす」のあとがよく聞き取れません。
「まずはあなたのプロフィールを流さなきゃ。私は後ろを向いているから、秘密鍵を握って、こう唱えてちょうだい。“kind0、のす太郎”」
のす太郎は言われたとおりにしました。すると不思議なことが起こりました。何か自分の輪郭が急にはっきりしたような、妙な感覚がしたのです。そしてノスタコちゃんの背後に突然村が――門や建物が出現しました。さっきまで竹の他には何もなかったのに!
第2話「のす太郎と天空の城」
のす太郎はノスタコちゃんと一緒に村に足を踏み入れました。「最初は私の公開鍵で入りましょう。でないと誰も見えないから」
村の中には50人ほどの人や猫やペンギンがいました。猫もペンギンも、ノスタコちゃんと同じように人間の言葉を喋ります。そしてみな一様に、「ご新規さん!?」とわいわい嬉しそうにのす太郎に近寄ってくるのです。
呪文「kind3」を使ってみんなと友だちになっていると、突然空が真っ暗になり、雷鳴とともに稲妻が降りそそぎました。ノスタコちゃんはじめ、村人たちの体に「⚡」がぐさぐさ刺さっていきます。
「竹――!?」
いくつも刺さっている人もいるというのに、みな痛がるどころかむしろ喜んでいて、のす太郎にはわけがわかりません。
「これはね、zapって言うの」
背中に刺さった「⚡」を器用に抜きながら、ノスタコちゃんが説明してくれました。「⚡」には「1」とか「10」とかいう数字が書いてあり、お金の代わりになるそうなのです。
「まぁ“村コイン”ってとこかしら。十分に貯めて取引所に持っていけば普通のお金に替えられるのよ」
お金が空から稲妻として降ってくる――まったく意味がわかりません。ここはなんて奇妙奇天烈なところなのでしょう。
でも、その場にいたほぼ全員に刺さっているのに自分には刺さらなかったのが、ちょっと残念です。
「ライトニングアドレスを設定しておかないと受け取れないのよ」
そう言ってノスタコちゃんはいきなりシュパッとのす太郎に「⚡」を投げつけました。びっくりしてよけようとすると、「⚡」はのす太郎に届く前にぐるんと回ってノスタコちゃんのところに戻りました。
「ほらね? 投げてもダメなの」
村役場のようなところで「アドレス」とやらの手続きをし、「kind0」の呪文とともに唱えると、ノスタコちゃんの投げた「⚡」がちゃんとのす太郎に刺さるようになりました!
のす太郎は村で暮らし始めました。残念ながら、10年前にのす太郎を川に流した“誰か”を知っている人はいなかったのですが、他に行くあてもありません。ノスタコちゃんは時々急にキャラ変して怖くなるものの親切でしたし、他の村人や猫たちも楽しい人々で、やたらに何か新しいものを生み出しています。
のす太郎は畑でブロッコリーを育てることにしました。小さい頃からおじいさんとおばあさんの手伝いをしていたので、畑仕事は得意です。
村には時折、“ご新規さん”がやってきました。門のあたりで途方に暮れている“ご新規さん”を、いつしかのす太郎も案内できるようになっていました。ただ、のす太郎のように村に居着いてくれる人は少なく、数日で姿を消してしまうことがほとんどでした。
「うわぁぁぁぁぁ、フォローが飛んだぁぁぁぁぁぁ!」
村人のこんな叫びにも、すぐ慣れました。
なぜか“友だちの呪文”が効力を失い、他の村人がまったく見えなくなることがあるようなのです。こちらからは見えて、声も聞こえるので、誰かしらが“魔法の杖”を渡してやると、すぐに復活します。まれに魔法の杖が効かないこともありますが、そんな時は地道に「kind3」の呪文を唱え続けるしかありません。
村にはとある「伝説」がありました。「約束の地」の伝説です。
♪その国の名はぶる~すかい
どこかにあるユートピア
どうしたら行けるのだろう
教えてほしい~♪
「“ぶる~すかい”と言うからには、空の上にあるはずなんだ」
「それって、zapが降ってくるところ? zapは“ぶる~すかい”の人たちが降らせてるの?」
「いや、そうじゃない。zapの出どころはわかってる。あれは“ぶる~すかい”とは無関係だ」
そういう話をする時のノスタコちゃんの口調はとても厳しく、別人ならぬ別蛸のようです。他の村人が「ノスタコちゃんはチヨダだから」と言っているのを聞いたことがありますが、「チヨダ」が何のことなのか、のす太郎にはわかりません。
ある日、のす太郎がいつものようにブロッコリーの世話をしていると、畑にひらひらと何かが落ちてきました。
短冊のような紙です。
拾ってみると、そこには「bsky-f12t56z」という文字が書かれていました。のす太郎は思わずまた「竹…!」とつぶやいてしまったのですが、それがのす太郎を助けることになりました。
「なんだこれ? bsky-cge89eu?」
隣で短冊を拾った村人は書かれた文字を素直に読みました。読み終わった瞬間。
「――!?」
村人の姿は消えてしまったのです。のす太郎は一瞬、「これが、フォローが飛ぶってこと?」と思ったのですが、どうも様子が変です。短冊の文字を声に出して読んだ人たちが次々に姿を消していくのです。
「みんな、読んじゃダメだ! これが何かわかるまで――」
異変に気づいたノスタコちゃんが警告を発しました。しかしその声をかき消すように、どこかから別の声が鳴り響きました。
「さぁ、おいでなさい、天上界へ!」
のす太郎は声のした方――上を見あげました。雲の隙間から神々しい光が射しています。そして何か、お城のようなものが見えました。空の上に、お城が浮かんでいるのです。
「まさか、あれは……」
「おいでなさい、美しい天上界へ。さぁ、この招待コードを使って」
再び短冊がひらひらと舞い落ちてきました。誰かが叫びました。
「ぶる~すかいだ! あれこそぶる~すかいに違いない! 俺たち、やっと約束の地に行けるんだ!」
村は大騒ぎになりました。我先にと短冊を奪いあい、そこに書かれた文字を読んでは姿を消していきます。のす太郎が拾った短冊も、いつの間にか誰かに取られてしまっていました。
それはほんの三十分ほどのできごとでした。天空の城は再び雲の中に消え、村は恐ろしい静寂に包まれました。のす太郎とノスタコちゃんの他には、ほとんど村人が残っていません。みんな本当にあの城の中に吸い込まれてしまったのでしょうか。あの城は、本当に「約束の地」ぶる~すかいなのでしょうか。そもそもぶる~すかいとは何なのでしょう。そこに行けばどんな夢も叶うというのでしょうか。
城を呑み込んだ雲は、大きなイカのように見えました。
【第3話「のす太郎とみんな○○てる」予告】
取り残されたのす太郎たちわずかな村人はbotと呼ばれるロボットを大勢生み出し、活気を取りもどそうとする。
Nostr村に明日はあるのか。
がんばれのす太郎、がんばれノスタコちゃん、11月までNostr村を守るのだ!
11月――11月に一体何が?
どうしたら行けるのだろう
教えてほしい~♪
「“ぶる~すかい”と言うからには、空の上にあるはずなんだ」
「それって、zapが降ってくるところ? zapは“ぶる~すかい”の人たちが降らせてるの?」
「いや、そうじゃない。zapの出どころはわかってる。あれは“ぶる~すかい”とは無関係だ」
そういう話をする時のノスタコちゃんの口調はとても厳しく、別人ならぬ別蛸のようです。他の村人が「ノスタコちゃんはチヨダだから」と言っているのを聞いたことがありますが、「チヨダ」が何のことなのか、のす太郎にはわかりません。
ある日、のす太郎がいつものようにブロッコリーの世話をしていると、畑にひらひらと何かが落ちてきました。
短冊のような紙です。
拾ってみると、そこには「bsky-f12t56z」という文字が書かれていました。のす太郎は思わずまた「竹…!」とつぶやいてしまったのですが、それがのす太郎を助けることになりました。
「なんだこれ? bsky-cge89eu?」
隣で短冊を拾った村人は書かれた文字を素直に読みました。読み終わった瞬間。
「――!?」
村人の姿は消えてしまったのです。のす太郎は一瞬、「これが、フォローが飛ぶってこと?」と思ったのですが、どうも様子が変です。短冊の文字を声に出して読んだ人たちが次々に姿を消していくのです。
「みんな、読んじゃダメだ! これが何かわかるまで――」
異変に気づいたノスタコちゃんが警告を発しました。しかしその声をかき消すように、どこかから別の声が鳴り響きました。
「さぁ、おいでなさい、天上界へ!」
のす太郎は声のした方――上を見あげました。雲の隙間から神々しい光が射しています。そして何か、お城のようなものが見えました。空の上に、お城が浮かんでいるのです。
「まさか、あれは……」
「おいでなさい、美しい天上界へ。さぁ、この招待コードを使って」
再び短冊がひらひらと舞い落ちてきました。誰かが叫びました。
「ぶる~すかいだ! あれこそぶる~すかいに違いない! 俺たち、やっと約束の地に行けるんだ!」
村は大騒ぎになりました。我先にと短冊を奪いあい、そこに書かれた文字を読んでは姿を消していきます。のす太郎が拾った短冊も、いつの間にか誰かに取られてしまっていました。
それはほんの三十分ほどのできごとでした。天空の城は再び雲の中に消え、村は恐ろしい静寂に包まれました。のす太郎とノスタコちゃんの他には、ほとんど村人が残っていません。みんな本当にあの城の中に吸い込まれてしまったのでしょうか。あの城は、本当に「約束の地」ぶる~すかいなのでしょうか。そもそもぶる~すかいとは何なのでしょう。そこに行けばどんな夢も叶うというのでしょうか。
城を呑み込んだ雲は、大きなイカのように見えました。
【第3話「のす太郎とみんな○○てる」予告】
取り残されたのす太郎たちわずかな村人はbotと呼ばれるロボットを大勢生み出し、活気を取りもどそうとする。
Nostr村に明日はあるのか。
がんばれのす太郎、がんばれノスタコちゃん、11月までNostr村を守るのだ!
11月――11月に一体何が?
(※この物語はフィクションです。実在のキャラクター、プロトコルなどとは関係があったりなかったりします)
【関連リンク】
・実在ののすたろう(このお話の「のす太郎」とは別人です)
・実在のノスタコちゃん(このお話のノスタコちゃんとは…?)
・実在のスカイカちゃん(このお話の“イカ”と関係が…?)
・実在のNostr(nostterが開きます)
・実在のにっぷらこ(NIPと呼ばれるNostrの仕様一覧)
・実在の竹林(竹翻訳で有名なAndroid用NostrクライアントAmethyst)
・実在のブロッコリー畑(Nostr日本人村でブロッコリーが名産になった経緯)
0 Comments
コメントを投稿