(※以下ネタバレあります。これからご覧になる方はご注意ください)
10月3日13時公演を観てまいりました。
観てからもう1週間、すでに記憶は曖昧……って、毎回言ってる気がしますが、今回は観劇直後に母の入院(膝の手術)という一大イベントがあったので、さらに記憶が薄れています(^^;)
いつも以上にただの「自分メモ」記事になってしまうかもしれませんが、ご容赦を。
永久輝せあさんの大劇場でのトップ披露公演であり、凪七瑠海さんのサヨナラ公演でもあります。すっかり情報に疎くなってしまって、凪七さんが退団されると知らないまま観ていて、ショーの方で「あれ?これもしかして凪七さん辞めるの?」と気づいたという……。
いわゆる「ベテラン専科」とは違う、バウや地方公演で主演を務めるスターさんだった凪七さん、何もトップ披露の公演で退団しなくても、と思わないでもなかったです。
お芝居『エンジェリック・ライ』は谷貴矢先生の作/演出。大劇場デビュー作『元禄バロックロック』がめちゃくちゃ良くて期待していたのですが……うーん、なんか、いまひとつ物足りなかったです。決して悪くはなかったんだけど。
お話は、天上界から始まります。大ボラ吹きの問題天使アザゼルが「天界戸籍台帳」に手をつけ、天帝の怒りを買って下界に落とされるところから。
「地上に堕とされる天使」というと、往年の月組『天使の微笑・悪魔の涙』を思い出しますが、「堕天使」となって人間と血の契約を結んでいたメフィストフェレスとは違い、アザゼルは天使の称号と能力を封じられ、いわば「ただの人間」のようになっただけ。そしてアザゼルは最初から最後まで底抜けに明るい。
「嘘つき」ではなく「ホラ吹き」というのがミソで、彼のつく「嘘」はいわば大言壮語、人を傷つけたり騙して利用しようという類のものではなく、「冗談」に近いもの。
舞台に登場してから地上に堕とされるまで、もうとにかく喋る喋る。アザゼルの台詞が多い! 永久輝さんのあの独特の声を最初から存分に堪能させてもらえます。
地に堕とされるまでがちょっと長すぎない?と思うぐらいでした。
アザゼルが落ちた先は美しい島ラズーリ。大宝石商フェデリコが経営するリゾート「エンピレオ」の完成記念セレモニーのまっただ中に落ちたアザゼル、エンピレオの目玉である秘宝「ソロモンの指輪」を盗みに現れた盗賊と間違えられ、警察に連行される羽目に。
天界では口八丁で鳴らしたアザゼル、地上では嘘がつけなくなっていて、「何者だ」と問われても「天使」としか答えられない。「どうやってあの場に現れた?」「いや、天帝様に堕とされて」――そんな話が信じてもらえるわけもなく。
どうにか解放されたアザゼルはエレナという娘に出会い、彼女とともに「ソロモンの指輪」を盗み出す計画を立てます。天使や悪魔を従えることができるという「ソロモンの指輪」、それを手に入れれば天界に戻れると考えたのですが、さて。
エレナ役は新トップ娘役星空美咲さん。とても声が綺麗で歌もうまく、お芝居も良かったです。
エレナは「エンジェルシーフ」と呼ばれる盗賊なんだけれど、盗みで稼いだ金品はすべて孤児院に寄付している“義賊”。そして実は彼女、フェデリコの娘なのです。フェデリコのあくどいやり方に反発し、家出して、父が勢力を拡げる陰で犠牲になった子ども達を援助していた。
……あれ? ヒロインが実は仇役の娘って、『元禄バロックロック』の時と同じでは。あの作品のヒロイン・キラも家出中の吉良家のご令嬢だったよね。
フェデリコ役を凪七さん。濃いめのイケオジキャラ、シュッとして格好良かったけど、主役2人に比べると歌唱力が弱くて、可もなく不可もなくというか。
フェデリコが手を組んでいる悪魔フラウロス役で聖乃あすかさん。色悪的な出で立ちがよく似合って、美しかったです。聖乃さんもちょっと歌が弱いかな~。
悪魔が絡んだ一件ということで、「アザゼルだけでは心配だ」と天帝から助っ人に送りだされる大天使ラファエル役に綺城ひか理さん。アザゼルとは幼なじみで“親友”の間柄、「おまえなんか親友じゃない!」と言いながらもいいコンビで、「ソロモンの指輪」事件解決に奔走。出番も多く、いわゆる“美味しい役”ですが、綺城さん、長身でビジュアルも良く、お芝居もしっかりしていて、永久輝さんとの掛け合いが良かったです。一番印象に残った。
でも綺城さんも残念ながらこの公演で退団。こちらもショーの演出で気づきました。「え!?辞めちゃうの?すごく良かったのに!」と……。永久輝さんと綺城さんは同期生、アザゼルとラファエルの「幼なじみ」設定は谷先生からのはなむけなのでしょう。
フェデリコに秘めた想いがあったり、エレナには出生の秘密があったり、最後の最後に「ホラ吹き」設定がちゃんと生きたり、そつなくまとまっていてそこそこ楽しめたんだけど、なんか、もっと笑えそうなのに笑えない、盛り上がれそうで盛り上がれない……みたいな惜しい感じがありました。
フラウロスが「この悪魔め!」って悪態をつくとことか、「ここ笑うところですよ~」だったんだけどなぁ。
ラファエルが地上にやってきた時は人間には姿が見えなかったのに、「天使の能力」を取りもどしたアザゼルは変わらずエレナ達に見えてるのも気になったし、そもそも指輪を手に入れたエレナ、真っ先に「悪魔退散!」ってやればそれで解決だったよね? そりゃあエレナにとってはアザゼルのことが一番大事だったかもしれないけど、「願い事の順番おかしい」って思っちゃった。
エレナの出生の秘密も「人間と天使で子ども生まれるんだ」と思ったし、最後のハッピーエンドのところも「アザゼルは人間になったということ?天使のままで地上に居残るの???」とモヤっとしました。
前者は「人間の体を借りて地上に降りていた」みたいな話だったからまぁ問題なかったのかもしれない。後者も、ソロモンの指輪の力で人間になったのかもしれないし、エレナが半分天使だというならアザゼルも天使のままでいいのかも。
あまり突っ込んでも野暮だとは思います(^^;)
最後、客席降りで幕が下りたの、B席民としては寂しかったです。何も見えん……。
とはいえ永久輝さんの麗しい天使ビジュアル、そして軽妙なお芝居と素晴らしい口舌を堪能させていただきました。
ショー『Jubilee』は稲葉太地先生の作/演出。主題歌以外は有名クラシック曲をアレンジして使っていて、音楽が良かったです。幕開きも華やかで衣装も美しく、楽しめました。
「S3 Secret Garden(秘密の祝祭)」場面は男役だけの群舞。みんなが赤い衣装の中、永久輝さんだけが黒で、格好良かった。
中詰めはまた客席降り……コロナの間できなかったサービスをここぞとばかりやってくれてる感じですが、あれ、1階席にはサービスでも、2階席(特に後方B席)にとっては「何やってるか全然見えん」なので、むしろマイナスなんですよね。たくさんお金払ってる人にはそれだけサービスする、ってことなんでしょうけども。
中詰め後の「S5 Party is over(終わらないパーティ)」場面、すごく印象に残りました。若手スターさん達の場面なんですが、ありがちな「若手男役さん5人ぐらいでなんかロックな曲をやる」というのとは全然違って、娘役さん含め16人のダンスシーン。1人ずつ登場するところもあって構成と振付がとても面白かった。一番良かったと言ってもいいぐらい。
「S10 Finale B(威風堂々)」は男役燕尾の大階段! 威風堂々のボレロアレンジも良く、素敵でした。永久輝さんと凪七さんがハグしたり、綺城さんが永久輝さんをリフトっぽく回したり。この演出で「あれ?綺城さん辞めるの!?」って気づいたという…遅い……。ともあれ男役さん同士のリフト、いいよね~。辞める時だけじゃなくて日常的にやってほしい。
「この人いいな」と思って観てるとその公演で退団、というのがちょくちょくあるけど、退団する人はいつもより出番が多くて美味しい役をやるってことなんですよね。目に止まりやすい……。ラファエル役もショーでの歌やダンスも、綺城さん素敵だった……うう。
グランドフィナーレ、凪七さんが羽根を背負って二番手格で階段降り。本来の二番手聖乃さんは殺生丸様みたいなやつを肩に掛けているだけでした。聖乃さんファンには残念な扱いだったのでは。
永久輝さんは本当にあの“声”が好きで、歌もお芝居も巧い。星空さんも声がきれいでキュートな娘役さん、バランスの良いトップコンビだと思いました。今後の舞台も楽しみです。
VIVA!タカラヅカ
0 Comments
コメントを投稿