(前編はこちら

アンドレ役は、花組『フェルゼン編』の時のルコさん(朝香じゅん)も良かった。
2番手男役で、歌も芝居もうまくて見た目もハンサムだったのに、トップにならずに辞めてしまったルコさん。アンドレの扮装がとてもよく似合っていたし、渋い大人の男を演じられる方だったので、控えめでありながらカッコいいアンドレだった。

『フェルゼン編』はフィナーレもシャンソンメドレーで楽しく、各組から特別出演しているオスカルがドレス姿でナツメさん(大浦みずき)と踊るというシーンがあり、カナメさん(涼風真世)の時はその美しさに客席がどよめいたほどであった。

オスカル役は、誰がいいかというのはきっと人それぞれだろうな、と思うけれども、私はカナメさんが好きだった。一番「宝塚のオスカル」としてはまっていたと思う。
カナメさんは「フェルゼンとマリー・アントワネット編」「フェルゼン編」、そして「オスカル編」と3回オスカルを演じているけれど、中でも最初の「フェルゼンとマリー・アントワネット編」のもの。お話が、これが一番まとまっていて好きなのだ。

「オスカル編」は、フェルゼンもアントワネットも出てこなくて、オスカル出ずっぱりで単純にカナメさんファンとしては楽しいけれども、やっぱり話に無理がある。
トップ娘役の役がロザリーでさえなくアランの妹のディアンヌなんだもんなぁ。なんとマニアックな……。

ちなみにこの時のアンドレは後に教室で女王になったり売れない演歌歌手になったりする天海祐希であった(あと、各組トップが役替わりで出てた。いくら何でもナツメさん(大浦みずき)のアンドレは無茶だろうと思ったものだ)。

私が生で見たオスカルは、「昭和のベルばら」の時の順みつきさんに始まり、「平成」の一路真輝、涼風真世、安寿ミラ、真矢みき、紫苑ゆう、「2001」の稔幸。
単純にもともとファンだった、という理由もあるけれど、マンガのオスカルに一番近いと思ったのはシメさん(紫苑ゆう)だった。
颯爽と軍服が似合って、綺麗なだけでなくかなり熱血なオスカル。

マンガのオスカルって、アンドレ同様やっぱり意外にお茶目だし、そんでもってかなり“熱い”人なんだよな。感情の振り幅が激しくて。

昨日書いた「カーテン前でお父さんにぶたれるオスカル」ってシーン。オスカルって何歳だっけ……って思ったりしますが、まぁお父さんも熱い人なんよね……。いくつになっても親にとっては子どもは子どもやし。
フェルゼン、アントワネットと同い年のオスカルは1755年生まれ。バスティーユの戦闘は1789年だから、オスカルの享年は34歳ということになる。
『ベルばら』を初めて読んだ小学生の私は、「え〜っ、オスカルってそんなに年なの!?」と驚いたものであった。満33歳だか34歳だかで「さらば、二度と戻ることのない私の青春よ!」とか言っているのだ、オスカル。
今でこそ私も「いいじゃないか、30代で青春を口にしたって」と思うけれども(笑)、小学生にとって30歳は立派なおばさん。「15になるやならずで嫁がされる」18世紀フランスの当時でも、オスカルは立派な“おばさん”だったのでは……。

アンドレはオスカルより確か一つ年上という設定。
あの感動的な(?)「今宵一夜」のシーンは34歳と35歳のラブシーンなんだよなぁ。
いや、もちろん、恋にも愛にも青春にも、年は関係ありませんけれども。

私にとってもっとも宝塚らしいオスカルだったカナメさんは退団後舞台でアントワネット役。
宝塚の中だけでも、アンドレとオスカル両方やった人、アンドレとフェルゼンをやった人、オスカルとジェローデルをやった人、などけっこういる。

トウコちゃん(安蘭けい)はフェルゼンとアンドレとオスカルの3役。メインキャストを3つもやった人、というのはたぶんトウコちゃんだけじゃないだろうか。
彼女が芸達者なのはもちろん、短い期間で再演が相次いだからこそであろう。

「昭和」の『ベルばら』から「平成」の再演まで、13年の間隔があった。
「平成」は各組で3年に渡って公演があり、10年経って「2001」。5年経って「2006」。

「2006」は、「こないだやったばっかりなのにまた『ベルばら』?」と思って見に行かなかったんだけど、DVDで久しぶりに見たらやっぱり懐かしいというか、飽きるほど見てるはずなのに飽きなかった。
きっと今後も再演されていくんだろうな。
その時はやはり見に行ってしまうのか、私……。