(第10巻の感想はこちら。それ以前の巻の感想へのリンクもそちらに貼ってあります)

2巻同時発売でついに完結。

とりあえず、薪さん死ななくて良かったなぁ、って。

自分で自分の脳を撃ち抜いちゃうんじゃないかなぁ、ってずっと思ってたけど、そんなに薪さんは弱くなかったというかさすがにそんな結末はないだろうというか。

うーん、でもこの最終2巻が面白かったかというとちょっと微妙で。

青木嫌いの私としては、青木が薪さんをむぎゅうしながら「好きです!」って叫ぶとことか、最後薪さんにせっせとラブレター送ってるとことか、「何これ薪さんと青木のハッピーエンドなん?」と、ちょっと不満。

薪さんはそれを喜んでいるのかどうなのか。「生きている限り、幸せも感じるようになる。守るべきものもできてしまう。そして秘密も」というラストシーン。

薪さんにとって、青木を大事に思いすぎるのはやっぱり「秘密」? 鈴木さんへの想いは???

「もう自分の脳は見られてもかまわない」って、薪さん言ってるけど。

脳が損傷していても記憶映像が再現出来る、さかのぼれる年数も増える、なんて技術の向上があったんじゃ、秘密があろうとなかろうともう観念するしかないけど。

でも青木は薪さんを「むぎゅう」して「好きです!」って叫んでも、ラブレター書いても、それを全然「秘密」とは思ってないよね。それを「アブない感情」だと全然思ってないから。

鈍感な人ってそーゆーとこ羨ましいなぁ、ほんと。

「エピローグ」の冒頭、「8年前に殺された大統領」って、『秘密』1巻の最初のエピソード、薪さんじゃないお話のあの大統領だと思うんだけど、あの最初のエピソードで、大統領はとある美青年をずっと目で追っている。その「視線」をMRIで追体験する捜査員には、大統領が彼に「恋している」とわかってしまう。

言葉に出さなくても。

ただ、「見ている」だけで、その「恋」を知られてしまう。

MRI捜査に関わった主人公の青年は、MRIの持つ怖ろしさを知って、実母のもとから去る。彼は、実の母に恋していたから。その恋は、決して知られてはならないものだったから。

「ただ見ているだけ」も許されない。

MRIは「ただ見ているだけ」の秘めた恋心さえ暴いてしまう。

だから見ない。二度と母には会わない。

そんな青年の苦悩と葛藤が大好きだったあのエピソード。

ああそれなのにそれなのに。

「好きです!」とまで叫んでそれを何とも思わない青木よ! 少しは恥ずかしいと思えよぉぉぉ。

やっぱり私は断然岡部さん派!(笑)

薪さんも青木だけじゃなく「第九」全体が「家族のような場所」って言ってるんだからっ。

青木だけじゃなくみんな薪さんのこと好きだったものね。

新参者で地味な山本さんも、11巻でいいセリフ言ってくれちゃってる。

みんな、敵である滝沢でさえも。

滝沢が「俺は薪を殺したいのか?どうしたいんだ?」って自問自答して薪さんを押し倒すとこ、「うわぁぁぁぁぁ」って思ったよ。別に服脱がすとかじゃなかったけど(笑)。

誰にも彼にも、犯罪者にも愛されるって、美しく生まれつくって大変だよね……。

雪子さんも「つよし君が好きだったの」って言っちゃったし。うん、知ってたよ。バレバレだった(爆)

そんな雪子さんもついに結婚。青木に似た感じの人と……。黒田とかいう人、苦労しそう(笑)。


それにしても、MRI技術ってホント、どうなんだろう。凶悪事件を解決するのに絶大な威力を発揮するとはいえ、それ以外の記憶も見られてしまう。

一方で、隠蔽された家族の虐殺を公表するため、自らすすんで脳を見てもらえるよう仕組む少年。

そのような使い方もある。何の証拠も提示できず、ただ、自分の見た映像、脳に記憶されたその風景だけが事件の記録。

必死の思いでMRI技術に最後の望みをかけた。でも。

身を捨てて「脳」を提供しても、それでも隠蔽され続けた事件。

どんな技術が開発されても、結局は「上」の意向次第なのかもしれない「真実」。

人間って……。


メロディではすでに若き薪さんの活躍を描く前日譚が始まっています。青木出てこないの嬉しい(笑)けど、今度は鈴木さんとラブラブなのかしら。

岡部さんの出番は…ないかな…。