2014年2月2日日曜日

『修道士カドフェル10 憎しみの巡礼』/エリス・ピーターズ



カドフェルシリーズも10作目となりました。長編は全20作ということで、半分読んじゃったことになりますねぇ。うーん、すでに「もうあと10冊しかないのか」という寂寥感が……。

1作目『聖女の遺骨求む』は1137年5月のお話でした。今作『憎しみの巡礼』は1141年5月。10作の間に4年の歳月が流れたことになります。

そして、1作目でウェールズの地からシュルーズベリへ運ばれてきた聖女ウィニフレッドの遺骨。その遺骨の「移送祭」が行われるということで、シュルーズベリには大勢の巡礼者がやってきています。巡礼者をカモにしようと狙う怪しげな連中ももちろん。

そして、巡礼者の中にも奇妙な二人の若者が……。

ネタバレになるので今回あまり話の筋に触れられませんが、この二人の正体には「そう来たか!」と唸らされました。これまでに登場した懐かしい人物も出しつつ、1作目の「事件」だった聖ウィニフレッドとカドフェルの確執(?)を解き、女帝モードとスティーブン王の王権争いと司教ヘンリーの画策もうまく絡めて、「よくまぁこんな事件を思いつくなぁ」「よくこんなにうまくまとめるなぁ」とピーターズさんの手腕に感心しきり。

で、「懐かしい登場人物」というのは6作目『氷のなかの処女』に出て来たオリヴィエのこと。そう、かつて十字軍兵士として東方に赴いたカドフェルが、その土地の女を愛して生まれた「カドフェルの息子」。

二度と会うことはないかもしれない、と思っていた彼が(もちろんファンとしては「出番がこれっきりということはあるまい」と思っていたけれど)、聖ウィニフレッドの恩寵のごとく再びカドフェルの目の前に現れる。

もちろん彼は『氷のなかの処女』で助けた令嬢アーミーナと結婚していて。

あの事件から1年半の月日が流れているそうな。

シリーズ物は本当にこういう「ああ、あの時の!」というのが楽しいですねぇ。巡礼に混じった悪党どもが開く賭場のカモにされ、当局に捕まえられる「金細工師のダニエル・オーリファーバー」っていうのはあの、7作目『聖域の雀』に出てきた彼でしょう? 新婚3日で愛人のもとに忍んで行き、それを逆手にとられて新妻の尻に敷かれてしまったあの……。

あの時の事件で心を入れ替えたかと思ったのに、またぞろ詐欺師の賭場で金を巻き上げられて……また女房に怒られるよねぇ。

あと、カドフェルの有能な助手だったブラザー・マークは大人の階段ならぬ出世の階段を順調に上っているようで。

若いマークはいま、レオリック・アスプレーの奨学金を受けて母院とセント・ジャイルズの患者たちのもとをはなれ、リッチフィールドの司教のもとに行っていた。 (P15)

アスプレーっていうのはえーっと、8作目『悪魔の見習い修道士』でマークが面倒を見てやった若者のお父さん、かな? 「お礼をしたい」って言ってはったもんねぇ。

マークの代わりにカドフェルの助手を務めていたオズウィンが、再び「マークの代わりに」セント・ジャイルズへ赴くことになりそうで、ということは次回からカドフェルの助手は――。

この『憎しみの巡礼』で出てきた実に聡明そうな少年(しかもイメージ的には美少年)ルーンが助手を務めることになるのでは、と大いに期待。

お気に入りのキャラクターが成長して旅立っていくのは寂しいけど、ピーターズさんはちゃんとまた新しい素敵な若者を用意してくれる……と信じてるけどさて!?

それにしても、カドフェルシリーズを読んでいると本当に、「人が人を裁く」ことの難しさを考えさせられます。人が人を断罪する、それは「傲慢」ではないのかと。

真相に辿り着いても、必ずしも真犯人を公表し、官憲の手に渡すわけではないこのシリーズ。今回も、「犯人」は獄に繋がれるわけでなく、復讐者の手にかかるわけでもありません。

「では、若いの、復讐とは神のみがなすべきであるということに、そなたも気づいたのか?」
「それだけではありません、院長さま」リュックはいった。
「復讐も神の手になると安全なものになることを知ったのです。たとえどんなに長引こうと、どんなに奇妙な形をとろうと、罰はかならずくだるということを」
 (P289)

「罪を償う」とはどういうことなのか。ある「罪」に見合った「罰」とは何なのか。犯人の命を奪ったとしても、殺された者は二度と生き返らない。そうであるなら、失われた命は一体何によって、どのように「贖われる」べきなのか。

カドフェル達の崇める神を私は信じていないし、「神」というものが公平なものかどうかも知らないけれど、人が――自らも過ちを犯す可能性の高い人が、人を「悪」と断罪し、その量刑を決めるのは――それを「正しく決めた」と思うことは、人の驕りでしかないのかもしれない。


社会思想社版の解説には再び『修道士ファルコ』の名前が踊っています。解説の大津波さん、よほどファルコが気に入ってらっしゃったのね。

ファルコのおかげでカドフェルシリーズに出逢えた。感謝。

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