全国で13館のみ、2週間限定上映の「青い瞳のキャスバル」、わざわざ京都まで出かけて観てきました。

やはり1stガンダム世代としては見に行かざるを得ない。

13の上映館のうち西日本は京都、大阪(2館)、福岡だけ。「わざわざ京都」と書いたけど、滋賀から京都ならまぁ近い方ですよね。京都で上映あってほんと良かった。

で。

四部作になるというアニメ版「ORIGIN」、この1作目「青い瞳のキャスバル」ではコミック版「ORIGIN」第9巻の「シャア・セイラ編・前」がほぼそのまま映像化されています。


正直コミックで「シャア・セイラ編」を読んだ時は、興味深くはあったけど、「蛇足」という気がしなくもなかったのです。シャアの過去――キャスバル・レム・ダイクンがどうしてシャア・アズナブルになり、ああいう男になったか、という「テレビシリーズで描かれなかった部分」というのは、視聴者それぞれが勝手に妄想を膨らませればいいのじゃないかなぁと。

全部説明してしまうと、野暮なような気がして。

まぁ、そう言いながら「アニメ化!」と聞くと喜んでほいほい見に行ってしまうわけなんですが。

うん、やっぱり、動くと嬉しい。

動いて、しゃべると、楽しい。

冒頭7分の映像はオフィシャルサイトで公開されていますが、1stのモビルスーツ達が今のアニメの動きで動くとこうなるか!という感じでわくわくします。

描かれているのは1st以前のエピソードであるルウム戦役ですから、実際には「初めて見る戦い」ですけど、やっぱり『UC』とか『Gのレコンギスタ』とかのモビルスーツ戦とはこう、思い入れが違う(笑)。シャアや黒い三連星が駆るモビルスーツをこんなきれいな新しい映像で見ることができるとは。

ルウムでの戦いが描かれた後、時間は遡ってシャア=キャスバルの子ども時代。コミックではいきなりダイクンが倒れてキャスバル達が駆けつけるところから始まりますが、アニメはその前夜から。

演説の草稿を練るダイクンが「こんなんじゃダメだーっ!」と頭をかきむしってるシーンからです。

コミック読んだ時も思いましたけど、ジオン・ダイクンって、「たいがい」ですよね。

動くと、いっそうその感を強くします。「こいつキ○ガイ」

理想を追い求めすぎて、ちょっとヤバくなってる。「ORIGIN」の第18巻、テキサス・コロニーでセイラと再会したシャアが、

「私は父が嫌いだった」「空論をもてあそび家族をかえりみず母を苦しませてばかりいる父を憎いとさえ思った」

って言ってるんだけど、ほんと「さもありなん」。

隣の部屋で父が何やら叫んで母を困らせているのを、キャスバル坊やはベッドの中でなんとも言えない表情で聞いてる。すごくせつない。

ザビ家への復讐は父ジオン・ダイクンがどうこうというより、「母のため」だった。でもお母さん(アストライア)があんな死に方をせざるを得なかったのは、ザビ家のせいというより父ちゃんのせいなんじゃ。

父ちゃん、あそこで暗殺されてなくてもその後アストライアや子ども達を幸せにしたとは思えなくてなー。

ザビ家が祭り上げてくれたおかげで「人の革新を唱えた思想家」として名を残したけど、ジオン・ダイクンってあのまま生きてても途中で発狂しそうだし、少なくとも「国のリーダー」として人々を引っ張っていける器じゃなかったように思える。

そもそもローゼルシアみたいな女を正妻にしてる時点でもう(´・ω・`)

革命の同志でお金持ちだったんか知らんが(もしかしてジオン・ダイクンって婿養子?)、アストライアと出会って子までなしてもあの正妻と縁切ってないなんて。

お母さんを不幸にしたのはジオン・ダイクン。復讐するならその相手は父。

だとおばさんは思うぞ、キャスバル坊や。

そんで結局君自身も、「女を幸せにする男」には全然なってないわけでな。

まぁ、君の苦労はわかるが。それほどお母さん思いだったのに、お母さんに抱きしめられてるような描写もない。アルテイシアが生まれる前は愛されてたのかなぁ。ジオン・ダイクンもアルテイシアしか抱っこしないし、アストライアもアルテイシアにかかりきりで、最後の夜もお兄ちゃんには何も言ってくれない。

「月がまるくなるのを100回数えたら」

あれ、キャスバルにはわかってるはずだものね。月が1回丸くなるのにどれだけ時間がかかるか、100回ならどれだけの年月がかかるか。

たぶんもう、母親には会えないだろうとわかっていて、何も言わず、すがりつくこともしないキャスバル坊や。

ううう。

コミックで読んだ時よりせつなさがしみるんだ、動くと……。

ジオン・ダイクンも「たいがい」だし、ランバ・ラルの父親ジンバ・ラルも騒がしいだけの役立たずな親父だし、アムロの父ちゃんもあんなだったし、ガンダムのキャラクターってみんな「父親で苦労してる」よね。

『青い瞳のキャスバル』見てて、「この中で一番まともな“父親”ってデギン・ザビなんじゃ」って思ったもの。まぁギレンやサスロの育て方はともかくとして、ガルマへの愛情は豊かだったし、政治家としての力量もダイクンの比じゃない。

連邦との全面戦争を望んでいたわけでもないしなー。

ギレンさえいなければ。

ギレンは安定の銀河万丈さん。他のザビ家の皆さんはテレビシリーズとは声変わってるよね? (そもそもテレビ版と劇場版で声が変わってたりもするけど)

キシリアが小山茉美さんでないのが残念で残念で。

若い頃のキシリアなら、本編でのキシリア以上に茉美さんの声がハマるのではと思っていたのになぁ。ミンキーモモやアラレちゃんとキシリア様が同じ声なんだぜ。声優さんってほんとすごい。

もしもキシリアが茉美さんだったらキャスバルの田中真弓さんとはアラレちゃんと則巻良太、面堂了子と藤波竜之介だったりしたのに……(したらどうなんだ)。

というわけでキャスバル坊やの声は田中真弓さんです。

あのシャアの子ども時代ですから、なまなかな声優さんではな~と思ってました。ファンそれぞれに思い入れがあって、それぞれ勝手に好みの声を脳内再生しつつ『ORIGIN』を読んでいたと思うので、きっとどの声優さんに決まっても「しっくり来ない」という人が出て来るだろうなと。

私は、読んでる時あんまり「声」のイメージがなくて。いくら池田秀一さんの声が好きと言っても、最初の11歳のキャスバルはやはりあのお声ではない。かと言ってどんな声なのか想像がつかない。

なので田中真弓さんという発表があった時には「おーっ!」と思い、「それってゴーグじゃん」と思い。


安彦さんが原作・監督・キャラクターデザインを手がけられた伝説のアニメ作品。この『巨神ゴーグ』で主人公・田神悠宇君の声をやっていたのが田中真弓さん。

キャスバルを田中真弓さんに、というのは安彦さんのご指名だったそうで(ご指名があったにもかかわらずオーディションを受けさせられたらしいけど)、悠宇君の時の声がお気に入りだったのでしょうかね。『ゴーグ』には池田さんも主要キャストで出ていらっしゃいましたが。

今の若い人にとっては田中真弓さんは断然ルフィーなんでしょうけど、私にとっては「アニメトピア」で島津冴子さんや三ツ矢雄二さんとキャイキャイやってた方であり、イタダキマンであり、クリリンであり悠宇君であり、きり丸。

とにかくずーっと昔から見てきた(聞いてきた?)好きな方なので。

嬉しかったです。

「サシで話し合いましょう」ってやってきたキシリアに手錠をかけられ、「キャスバル・レム・ダイクンが命令する!」っていうところなど、後の池田秀一シャアの口調がなんとなく感じられて、「ああ、この子があのシャアに――赤い彗星になるんだな」を実感させてくれました。

しかしあのキシリアとキャスバル坊やのシーンはあれですね。ショタコンでSのヤバいお姉さんが金髪碧眼の美少年をそーゆー目的で襲ってるとしか見えませんね。手錠まで出て来るんですからね。プレイですよね(爆)。

テレビシリーズでキシリアが「私は幼い頃のキャスバル坊やと遊んであげたことがあるんだよ」とかいうセリフがあったはずですが、キシリアお姐様の「遊び」怖い……。

アルテイシアの声はテレビでララァを演じた潘恵子さんのお嬢さん、潘めぐみさん。

これは、シャア本人にとって大変感慨深いのでは。ララァの娘が生まれ変わって私の妹に……って時系列おかしいけど。まぁ「生まれ変わり」とか多次元ぽいし必ずしも時系列は一直線じゃあるまい。

「青い瞳のキャスバル」で描かれてるアルテイシアは6歳ぐらい? シャアは11歳設定のはずだけど、テレビとORIGINではシャアとアルテイシアの年齢差が違う気がする。テレビでは3歳違いでORIGINでは……5歳違い???

ともあれ可愛らしいお声でした。もうちょっと成長した時の声が楽しみです。

井上瑤さんが生きていらしたら、子どもの頃のアルテイシアだって井上さんが……うっうっ。

残念でなりません。


さてそして。

この作品のタイトルは「青い瞳のキャスバル」ですが、後半は「金色の髪のハモン」にした方がしっくり来るのでは(笑)。それぐらいハモンさん大活躍。

コミック読んだ時もその胆力・行動力・変装力・身体能力の高さに「ハモンさんって何者!?」と思ったんですが。

わかりました。

不二子ちゃんだったんですね。

ハモンさんが沢城みゆきさんの声で喋った瞬間から、もう不二子ちゃんにしか(笑)。色っぽいのもスパイみたいなのももうそれで全部納得。

ランバ・ラルがちょっとポンコツぽい車でガタガタ階段駆け上ってハモンさんと合流するところなんてほんと「ルパン」を彷彿とさせて。

ハモンさんの「ヘイ、タクシー!」への返しが「あぁららら、どしたの不ぅ二子ちゃぁ~ん!」でも全然違和感ないと思う。

この辺、映像として動くとホント面白かった。

ガンタンクのキャタピラの動きも、照準合わせや、砲撃の反動で後ろへのけぞるみたいになるのも。

クレジットに「協力:陸上自衛隊」ってふうに出てたの、あの戦車の動きとか取材したのでしょうか。


それにしてもハモンさんって、何歳設定なんでしょう。

『ORIGIN』本編では、アストライアがクラブの歌姫だった時代(ジオン・ダイクンと知り合った頃)にクラブに出入りし始めて、「自称18歳だったけどホントは子どもだった」らしく。

先日出た24巻特別編の中の「キャスバル坊や生誕」エピソードではアストライアの出産に際して産婆さん役を務めてる。


「クラウレ」って呼ばれてるからハモンさんなんだと思うけど……ハモンさんの妹か何かなの……??? 「自称18歳」の頃よりさらに幼いんだけど。

その幼い「クラウレ」がランバ・ラルに「出産時の注意事項」をあれこれ聞いてきて、医者も産婆もいない中アストライアの初産を助けるわけで。

サイド3から無事逃がしただけでなく、ハモンさんいなかったらそもそもキャスバル坊や無事に生まれてなかったかもしれない。

うん、そういう経緯があったからこそ、あれほどの危険を冒してキャスバルとアルテイシアを助け出したんだろうね。ランバ・ラルに頼まれたからってだけじゃなく、自分の意志として、二人を救いたかったんだろう。

そんで幼い「クラウレ」、すでにランバ・ラルのことを「結婚するならあんな人がいいな」って言ってて、一途というかなんというか(そこは不二子ちゃんとは違う(笑))。ランバ・ラルにとってハモンさんが「使えるガキ」から「愛しい女」に変わっていく過程を妄想するとそれだけでご飯3杯いけそうです。

ホワイトベースとの戦闘でランバ・ラルが亡くなった後、ハモンさんは「ランバ・ラルという男が私の生き甲斐だった以上、これから先無為に生き続けて何になりましょう」って言って無謀な突撃を仕掛けて自分も命を落とすんですけど……。子どもの頃からランバ・ラルに何かと厄介な頼みを引き受けさせられ、それをやり遂げてるうちになんか途中から不二子ちゃんばりのスーパーウーマンになっちゃって、きっと一人でも十分生きていけただろうに、その能力はすべて「ランバ・ラルという男のそばにいるためのもの」で――。

ご飯おかわり(爆)。


えーっと、話が飛びましたが、ほぼコミック版と同じ内容ながら、キシリアがギレンに「キャスバル畏るべし」と伝えるシーンだけ、ちょっと違いました。コミックではギレンは庭木の剪定をしてるんですけど、こちらでは囲碁やってます。コンピュータと連動した囲碁。石を打つとそれがコンピュータ画面に反映されて、画面の横にはなんか鯉みたいな和風な映像が。

やってるのは囲碁だったはずなんだけど、ギレンが羽織ってる「ちゃんちゃんこ」みたいなのには「王将」とか「桂馬」とか書いてある。

庭木の剪定より絵面的に面白かったです。

あとドズルも楽しかった。サスロと同じ車に乗ってたのに死なないのも、その後縫合した傷口からドピャー!と血が噴き出すのも、全部コミックと同じだけど、動くとさらにコミカルで楽しい。ギスギスしたザビ家の中で――そして幼いキャスバル兄妹のせつないお話の中で――ドズル兄さんの存在は一服の清涼剤。

「顔に似合わぬその人の好さがいいのだ!」


最後に2作目の予告がちらり。

次は『哀しみのアルテイシア』、公開は秋ということで。

秋かぁ。けっこう間があきますね。同じペースなら4部作全部終わるのは来年の秋ということに。

2作目はおそらくコミック10巻「シャア・セイラ編・後」で描かれた部分が映像化されるのだと思いますが、どこまで田中真弓さんなんでしょうかね。地球で、キシリアの手の者に襲撃を受けるところ――中世の鎧をつけた刺客と剣で応戦するシーンまでは田中さんかな???

テキサス・コロニーで、アルテイシアのもとを去って行くところはなんか、もう池田さんのイメージですよね。16歳。刺客とやり合ってから1年ぐらいしか経ってないけど。

15歳のミライさんは出てくるのかな? キャスバルじゃない方の、鳶色の瞳のシャアの声は誰だろ。

「シャアの過去なんて蛇足」と思ってましたが、もう2作目公開が待ち遠しいです(汗)。 

うん、「こうだったんだよ」と提示されたからといって、こちらの妄想の余地がなくなるわけじゃないし、「安彦さん的にはこう」という、ある種のパラレルワールドみたいなものなんですよね。

それだけ1stガンダムの世界は懐が深いということで。


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