(その1はこちら。その2はこちら

リアル書店で『ウィトゲンシュタイン講義 数学の基礎篇』『ソラリス』を買って意気揚々、「ミッション・コンプリート!」と大喜びでツイートしていたひゅうがを待っていたのは1通のメールだった。

e-honからのメール。

タイトルは「ご注文商品品切れのお詫び」

は?

本文を見る。


「恐れ入りますが、下記の商品につきまして出版社/メーカーに取り寄せの手配を行いましたが、現在品切れのため、お取り扱いできませんでした。
つきましては、誠に勝手ながらご注文を取り消しさせていただきました。
お待ちいただいたにも関わらず、ご期待に添えず大変申し訳ございませんでした。」



えーーーーーーーーーーーーーーーーっ!

e-honでは、新装版の『クローム襲撃』と『パーマー・エルドリッチ』を注文していた。

そして今さっき私は、リアル書店でその2冊を見つけたのだ。見つけたけど、「e-honで注文してるから」と思って買わずに帰ってきたんだよ。

今さっき!

ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、ないならないでもうちょっと早よ言えやこの××××がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

(※一部不適切な表現が存在するため、伏せ字でお送りしております)

1万円ほぼギリギリまで買って「買い物ゲームなら私が優勝ね♪」という浮かれた気分でいたというのに。

いっぺんに、地に堕ちた。

ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、もういっぺん行け、言うんかい。

自転車で行ける範囲なら「しょうがない、また明日行くか」って思うけど、わざわざ車出さないといけない距離だし、あっち方面に行くついでが何もない。

しかし確保しておかないと、万一締め切りの5月5日までに買えなかったら何か別の本を買わなきゃいけなくなる。せっかく築き上げた9,898円という美しい数字が壊れてしまうではないか。

まぁ、最悪ハヤカワオンラインで注文すれば入手できるはずなんだけど、これ以上よけいな会員登録を増やしたくない。

てかハヤカワで注文できるってことはハヤカワに在庫あるんじゃ? なんで取り寄せられへんのん……。


と、すっかり落ち込んでいた時。

高校生の息子から「部活なかったから帰るわ~」とメールが。

片道1時間かけて学校へ通っている彼。先ほど『クローム襲撃』等を見つけた書店は私にとっては「わざわざ車を出さなければならない距離」だが、彼にとっては「帰路の途中」である。

悪魔が、私に囁く。

頼め。頼んでしまえ!

いや、でもしかし。「途中」と言っても寄り道には変わりないわけで、買い物しようと思うと電車の時間が狂ってくる。なんせ田舎の電車は1本逃すと次がなかなか来ない。

部活で遅くなる日なら、まずお遣いなんか頼まない。頼めない。

頼んだら、たぶん断らない子だから。

しかしその日の私はあまりにがっかりしていたのだ。可愛い息子より本を優先してしまうぐらいに(いつもやろ、というツッコミはしないように)。

「あのー、つかぬことをお伺いしますが財布に2,500円ぐらいあります? もし入ってたらちょっとお遣いお願いしたいんですが」

いくら彼が優しくても、お金がなくては買うに買えない。しかもハヤカワ文庫、高い。

幸いその日の彼は3,000円ぐらい持っていた。万一定期を忘れたら(or落としたら)詰むので、大体いつも2,000円ぐらいは持ち歩いているらしい。

恐る恐る「もし時間があったら○○書店で本を買ってきていただきたいのですが」とお願いしてみた。

「時間があったらでいいからね。無理に寄ってくれんでいいから」

……結果、彼はわざわざ電車を1本遅らせて本屋へ寄ってくれたのだった。

うわぁ、すまん、お母さんが悪かった! せっかく部活なくて早く帰れたのに我がままなオカンのせいで。

このご恩はいつか必ず……。

優しい息子が買ってきてくれた本、2冊。これで本当にミッション・コンプリートだー!


ハヤカワ70年記念のこんなカードもついてました。


実はこれ、『ソラリス』にもついてたんだよね。一番上に置いてある本にだけ、こういうカードがシュリンク包装で付けてあって、おかげで表紙が見えなくてすごくわかりにくくなってた……。息子ちゃんよく見つけられたよな。

『ソラリス』にも付いてたけど、私はわざと下にある付いてないのを選んで買ったのだ。カードがPOPというか宣伝になってるわけで、全然知らないでこの棚の前に来た人が「面白そうだ」と買っていってくれるかもしれないなーと思って。

ハヤカワの回し者なのか(笑)。

うん、でも、今回のラインナップ、どう考えてもハヤカワの回し者だよね。

1万円で買った本、雑誌1冊を除いて全部で十冊。創元2冊、角川1冊、講談社学術1冊、そしてハヤカワが6冊!

見事に全部文庫だし。

お金貰えるんだったら普段なかなか手が出ない単行本買ってもよさそうなもんなのに、結局買わなかった。「単行本はかさばる」という「置き場所の制約」もさることながら、単純に「買ってまで読みたい本が今は単行本になかった」

もし橋本治さんの新刊出てたら絶対それは買っただろうし。

カーリルの「読みたいリスト」に入れてあるものも、所詮「図書館にあったら読もう」というリストでしかなくて、「買いたいリスト」ではない。

買ったらまずめったに捨てないので(おかげで家の中が大変なことになってるわけだが)、いくら経費で落ちても「ちょっと気になる」程度の「よけいな本」は買えない。

ということがよくわかった。

あと、私にとってはひどく当たり前なことだけど、「本を買う」と言われたらまず「小説を買う」で、エッセイや評論はまだしも、実用書は絶対買わないなー、ということ。

料理の本とかお裁縫の本とか、あと写真集とか。

他の14名の方の中に、そういう「字を読むのがメインじゃない本」を買う方いらっしゃるのかしら。こういう企画に応募する以上皆さんかなりの「本好き」でいらっしゃるのだろうし、一般的な「本好き」のイメージってやっぱり小説や評論メインで、『太ももを鍛えれば痩せる!』とか『億万長者になれる株入門』みたいなのは買わない気がする。

趣味は読書って言われて本棚見せてもらったらそんな本ばっかり……ってかなり引くわ(偏見)。


ちなみに。

家にある橋本治さんの評論や内田樹センセの本はほぼ全部読破しているうちの高校生に「1万円あったら何買う?」と聞いてみたところ。

ソードワールドというTRPGのデータブックが欲しいそう。

4,000円以上する……。

しかも何種類かあるらしく、コンプするには1万円じゃ足りないのだとか。

ひえぇぇぇ、TRPG怖い。

1冊なら恩返しに買ってあげないこともないけどなー、全部はキツい……。



というわけで、まだ4月25日発売のものが手元に来ていないものの、無事1万円分本が買えました。が、もう1回だけ続きます。

買って終わりじゃないのです。家に帰るまでが遠足、原稿提出するまでがこの「森へゆく径」企画なのです。

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