発売当初からめっちゃ気になってたんですよねぇ、この本。もうタイトルからしてふざけてて最高じゃないですか? しかも「ロシア人」。ドストエフスキーゴンチャロフさんの作品が好きで、一時期ラジオのロシア語講座にもハマっていた(過去形)私としては手に取らずにいられません。

と言っても発売後手に取るまでに1年以上かかってしまったのですが。

これ、ミシマ社の「コーヒーと一冊」というシリーズから出ていて、「コーヒータイムに読み切ることができる」分量(100ページ前後)なんですね。「本を一冊読み切る時間がなくて」といった声にお応えしたシリーズなんですが、時間があろうとなかろうと本がなければ生きて行けない活字中毒者にとってはあまりに寂しい。

たった100ページしかないのに1000円もする!

と思ってしまう。
1000円あればもっと「読みで」のある本が買えるぞ!と。

なのでなかなか通販では買えなかったんですが(近所の本屋には置いてない)、京都のジュンク堂行った時に実物を見てしまって、ぱらぱらめくってしまい……。

やはり「実物が並んでる」というのは強いですね。レジに持っていってしまいました。

うん、でも買ってよかったです。面白かった。
あんまり面白いので息子ちゃんにも強制的に読ませました。子どもの頃は歯磨きの間も本を読み続けるほどだった彼、高校入学後はそれどころではなくなってろくに本を読まない人間になってしまったのですが(本人的にも大変不本意であるらしい)、この本は見事歯磨きしながらあっという間に読み切りました。

「コーヒーと一冊」ならぬ「歯磨きと一冊」

姉妹シリーズとしてどうでしょうか。うっかり歯磨き粉やヨダレが垂れても大丈夫な防水仕様で。さらに単価高くなっちゃうと思いますけど。

えー、そんでこの本の内容なんですが、タイトル通りです。見開き2ページに1人のロシア人。その名前の紹介と、その人自身の経歴などの紹介。プーチンさんやゴルバチョフ、ドストエフスキーにその作品の登場人物たち、リムスキー=コルサコフにスタニスラフスキー、カラシニコフにポチョムキン。三十数名のロシア人の名前が俎上に上がっています。

リムスキー=コルサコフはこれ全部で「苗字」だったんですね。コルサコフ家のリムスキーさんじゃなかった。ラフマニノフやチャイコフスキーは普通苗字だけでしか呼ばれないんですから、考えてみたらリムスキー=コルサコフだけがフルネームで呼ばれるわけもないのです。ロシア人のフルネーム、父称入るし。

ちなみにリムスキー=コルサコフのフルネームはニコライ・アンドレーヴィチ・リムスキー=コルサコフ。

ほんと読みづらいな(笑)。

この中の「アンドレーヴィチ」の部分は「父称」で、お父さんの名前がアンドレイってことですけど、そういう父称のお話とか、女性の名前のこととか、ところどころコラムで解説してくださってます。

トルストイの有名な作品『アンナ・カレーニナ』。あれ、アンナの旦那様は「カレーニン」なんですよね。固有名詞でさえ変化させるロシア語では同じ家族でも姓の語尾が違ってくる。フィギュアスケートのメドベージェワ選手のお父さんはメドベージェワさんではなくメドベージェフさん。あれ、メドベージェフ首相とおんなじ名前か。

女性か男性かで変化するだけでなく、所有格とかそんなんでも固有名詞が変化する。ダブルネームのリムスキー=コルサコフは「リムスカヴァ=コルサコヴァ」となるそうで……。

ロシア語恐るべし(´・ω・`)

ロシア語は怖ろしいけど樟太郎さんの文章はとってもゆるくて楽しくて、くすっと笑える箇所満載。樟太郎の「くす」は「クスッ」の「くす」では、と勝手に思っています。

それぞれの人名についている「発音のコツ」ではロシア語独特の「x」(kh)の発音を「ハッ!」と説明しておいて「和田アキ子か」と自己つっこみ。

「面白くてためになる」とはこういうことを言うのでしょう。別にためにならなくても面白いから全然いいですが。

樟太郎さんがミシマ社のWebサイトで連載してらっしゃる「究極の文字をめざして」も素晴らしいです。プロフィールの「TOEIC受験経験なし」も素敵。

たった100ページで1000円もするけどお薦めです!