6月27日の11時公演を観てまいりました。
100年ぶりに弟も一緒、親子3人での観劇。父が生きていたら父もきっとこういう演目なら一緒に観るだろうなぁ、と懐かしく思い出しますが、そもそも「壬生義士伝なら観る」と言い出すところが父そっくりで(「竜馬なら観る」と言って私が観ていない真矢ミキちゃんの竜馬を観ている父…)、見た目も似てきている中、不思議なもんだなぁ、と思います。

で。

ドラマにも映画にもなった浅田次郎さんの『壬生義士伝』。私はどちらも観ておらず、もちろん原作も未読で、開演前に弟から「こーゆー話」と先にレクチャーを。
ふむふむなるほど、とあらすじを呑み込んでから観たのでお話はとてもわかりやすかった。

新選組の話なのにいきなり幕開き鹿鳴館だったので「ふぁっ!?」となりましたが、維新から18年、「警部」になった斎藤一や新選組の主治医でもあった松本良順、そして主人公吉村貫一郎の遺児みつ達が、「吉村のことを振り返る」というていで舞台が進みます。

藤田五郎じゃないのかぁ、牙突はしないのかぁ、とつい思ってしまうるろ剣脳(笑)。

狂言回しとしてこの「18年後の人達」はちょくちょく出てきて、最初はそんなに気にならなかったけど、後半、本筋が盛り上がってそちらに意識が向いているのを不意に呼び戻されて興醒めのところも(^^;)

南部藩の貧しい足軽吉村貫一郎は愛する妻子を養うため、脱藩して新選組に参加。そこで「守銭奴」と呼ばれながらも愛され、その剣の腕と人柄で土方歳三らにも一目置かれる存在に。

最後は淀川決戦で重傷を負って南部藩蔵屋敷に逃げこみ、竹馬の友大野次郎右衛門に帰藩を乞うが……。

吉村役の望海さんは本当にうまくて、南部なまりのセリフも素晴らしいし(と言っても本物の南部なまり知らないけど)、吉村の純朴さ、妻子への想い、「弱そうに見えて凄腕」、斎藤一を脅すほどの豪胆さとしたたかさを余すところなく表現。
決して宝塚ぽくない人物を見事に「宝塚の主役」にしていた。

んだけれども。

うーん、私、吉村って人間にあんまり共感できなかったよ。
てかあの人けっこうヤバくない?
「新選組の良心」「僕達は地獄に行っても吉村さんだけは極楽に(by沖田総司)」と言われてたけど、あれは良心なの……???

剣の腕は確かで、局長たちに命じられるまま人を斬る吉村。そしてそのことで駄賃を得、刀を研ぐための金をさらにせびる。それはすべて家族のためで、そうして人を斬って得た金を彼は全部妻子への仕送りにしている。

人を斬るのは――殺すのは、あくまで家族と自分が生きるため。

主義主張のために人を殺す方がよほど野蛮、とは思うのだけど、他の隊士が「あいつは冤罪かもしれないのに」と介錯を引き受けない事案でも、吉村はためらわずその首を落とす。

「家族のため」なら、それは非道とは呼ばれないんだろうか。

貧乏な足軽とはいえ武士だし、剣を振るうことは本分かもしれないけど、なんか引っかかったなぁ。
「どうしておまえは最後まで優しさを失わないんだ!」と斎藤一にキレられてたけど、金のために人を斬り続けて心を病むこともなく他の隊士には気配りできるって、逆に怖いような。

最後、大野が用意してくれたおにぎりに口をつけることなく、「これを使え」と渡してくれた刀さえ使わず、「その刀と金を妻子に」と書き置きして自刃するとこなんか、もはや狂気だと思うんだけど、原作や映画ではそういう視点では語られてないんだろうか、あくまで「家族のために生きた優しい人」なんだろうか……。

怖いぐらいに思えるほど、望海さんのお芝居がすごかったということでもあるけど、吉村、淀川決戦の時みんなに「おまえは家族のとこ帰れ」って言われてるのに「義のために戦うのだー!」つって先陣切ってるのも意味わからんかった。

あそこで帰れよ(´・ω・`)

最後は泣かされちゃったけど、どっちかと言うと大野側に感情移入して泣いてた。
内心では親友を助けたいけれども、南部藩蔵屋敷を預かる身として切腹を言い渡す他ない大野のつらい心情。ぼろぼろの刀では苦しかろうと自身の刀を下げ渡し、手づから南部米でおにぎりを握り差し入れる。

そんな大野の心情を全部ないがしろにしてんだぞー、てめぇは。

これ、「良心」は大野の方じゃない?
惚れた女が吉村を選んでも変わらず親友として接して、最後は板挟みのつらさを押し殺し、母の前でだけ涙を流す。吉村の遺児には「私が切腹を命じたのだ。私が仇なのだ」と正直に話す。

大野の方が人間として何倍も上なんじゃないのかー。そりゃかたや食うや食わずの貧乏侍、かたや差配役にまで出世して、生きるために這いずりまわらなくてもいい、“余裕のある”立場。逆だったらどうだったよ?って話はあるけどさー。

大野役の彩風さん、これまた宝塚の二番手としては地味な辛抱役だけどとても良かったです。こんな役もできるんだなぁ。

斎藤一は朝美さん。ちょっと悪っぽい雰囲気が齋藤に合っててなかなか良かった。『るろ剣』の時は彩風さんが斎藤だったんだよなぁ。

『るろ剣』では見事な観柳を見せてくれた彩凪さんは今回土方歳三。パンフコメントでの土方愛がすごいw

永久輝さんの沖田総司も似合ってました。雪組の男役陣、充実してるなぁ。


「男役陣の充実」はダイナミックショー『Music Revolution!』でも感じました。
またこのショーが! さすが中村一徳先生、本当に選曲も絵作りも、好みすぎる!!!!!

ラテンジャズというかラテンロックというか、よく知ってる曲を超好みなアレンジで聞かせてくれるよのよね、一徳先生は。そんでまたどのシーンも群舞が多くて、入れ替わり立ち替わりスターさんがこれでもかと踊ってくれる。

舞台上のダンサーがいくつかのグループに分かれてて次々に……みたいな構成が多くてまさに「ダイナミック」! 銀橋に若手男役スターがずらり、でも後ろでもちゃんと娘役さんがずらっと並んで踊ってる、っていうこの絵面がとても好み。

デュエットダンスとか、舞台にぽつねんとしか人がいないシーン、あんまり好きじゃないんだ。前と後ろで別の歌を重唱とか、踊ってる一団の横から別の一団、さらに後ろからセリで一団、みたいなこう、「掛け合い」で進んでいくのがすごく好きなの。

ちょっと、今回はそれがあまりに続きすぎて、観ている方も息切れする感じだったけど、生徒さん達みんなめっちゃ踊らされてて、中堅どころまで全場出場のヒーハーなのでは???

ほんとに、これを2回やるのか!?って感じの踊らされまくりだった。
楽しい♡

特に7場8場の「JazzSensation」の部分が圧巻!
音楽も超いいし、振りがまたすごい!! めっちゃ格好いい!!!
振り付けはBryantBaldwinさん……あれ? JazzでBaldwinさんですごい!って話前にもしたような……。

同じ一徳先生の『Dramatic“S”』の時ですね。

今回は彩風さんがメインダンサーでのJazzシーン、いやぁ、ほんと良かった。

男役黒燕尾大階段も「キタ━(゚∀゚)━!!!」の格好良さだし、望海さんはほんと歌うまいし、彩風さんはとても綺麗で太陽のような明るさで望海さんとのバランス良くて、堪能しました♪

『Dramatic“S”』の時も書いてるけど、音源欲しい。もちろん映像もあるに越したことはないけれども。NHKさん……8Kじゃない普通のBSでも宝塚流して……。

次の雪組公演は来年のお正月。どんな演目になるのかな。待ち遠しい。



【以下余談】

えー、実は『壬生義士伝』、前半はちょっと退屈してたんですよね。なんせ今頭がすっかり『どろろ』に浸食されてるので、「もっとチャンチャンバラバラしてくれないかな」「なんなら魔物の一つも出てきて」と、ついつい荒唐無稽さを求めてしまう。

普通の時代劇ってつまんないよなぁ、ぐらいの(^^;) ははは。

それに映画では吉村の役を中井貴一がやってるわけで、「これを醍醐景光が」と思いながら観てしまうわけです。

(Prime特典で見られるのか……また2時間超か)

景光ならさぞかしなぁ、やっぱり最期は狂気じゃないのかなぁ、とか。
これが2003年で、『どろろ』は2007年
『陰陽師Ⅱ』は……2003年。『壬生義士伝』と同じ年!? 役者さんすごいな。いや、歌って踊って殺陣に方言までこなすタカラジェンヌの方がすごいか。