行ってまいりました、彦根公演。
宝塚観劇歴は長いのですが、「全国ツアー」ってこれまで観たことがなかったのですよね。全国ツアーだけど梅芸にも来るやつを梅芸で観たことはあったような気がするし、中日劇場にも行ったことあったけど、「完全に地方公演」というのは初めて。

せっかく滋賀に来てくれるし、演目が『はばたけ黄金の翼よ』というのも興味深い。

ターコさん(麻美れい)のサヨナラ公演であり、ヒロインを当時研3だった一路さんが演じたことで有名な『はばたけ黄金の翼』よ。
リアルタイムでは観てませんが、何年か前にメモリーズオブ宝塚か何かで放送があり、映像では見ています。

テレビで観るのと実際に舞台を生で観るとのはだいぶ違うので、正直そんなに面白いとは思わなかったのですが(^^;)、望海さんのヴィットリオはハマるよな、と期待大。

貧乏なので2階の後ろの方でしたが、ひこね市文化プラザの2階席、見やすかったです。綺麗だし。


彦根公演は午後2時と午後6時の2回公演でしたが、私が観たのは2時の回。

予想に違わず望海さんのヴィットリオ、格好良かった!
冷酷で傲慢で野心的な、中世北イタリアの小国イル・ラーゴの若き領主ヴィットリオ。黒髪の巻きロン毛で、「これぞ宝塚!」な貴公子コスチューム。

こないだの大劇場公演『壬生義士伝』もすごく良かったけど、やはりこういう「ザ・宝塚」な役も見たいですよね。
っていうか、田舎の貧乏浪士からロマンティックな貴公子まで、本当にタカラジェンヌの役は幅広い。

「領民に愛されても、自分は誰も愛してはならない」
愛するということは執着すること。特定の個人に執着することは、領主としてトラブルの種になるだけ。

幼なじみの従者ファルコとともにその掟を胸に生きてきたヴィットリオだけれども、ある日出会った娘クラリーチェの、「私は自分で自分の人生を決めたい」という言葉に強い印象を覚える。
女だけでなく、男だって親の言うなりに「家」のために生きるのが普通の時代、「自分で決めたい」などと口にする娘は本当に珍しかったのでしょう。

実はクラリーチェは隣国ボルツァーノの領主カンポ公の娘で、ヴィットリオはカンポ公を手ずから暗殺したばかりだったのです。
後を継いだ若きカンポ公ジュリオは、一度しか会ったことのない異母妹クラリーチェを和議の証にヴィットリオへ差し出します。

「自分で決めたいと言っていたのに政略結婚の具か」といったところですが、最初の出逢いでクラリーチェに好意を抱いていたヴィットリオ、皮肉めいた言葉を投げかけながらも、早々にクラリーチェに「世継ぎの剣」を渡してしまう。

「それで父の仇を取ればいい(=殺せるものなら私を殺すがいい)」
大事な剣だと知らないクラリーチェにしてみれば、自分を殺させるためにわざわざ自分の剣を渡すなんて「バカにして!」としか思えなかったりしますが、もちろん周りは大騒ぎ。

「ヴィットリオ様が世継ぎの剣をあの女に!」

特に狼狽したのが幼なじみのファルコ。
「あの女はきっとヴィットリオを――この国を滅ぼす」として、クラリーチェを亡き者にしようと謀ります。

うん、まぁ、クラリーチェを差し出したカンポ公には思惑があるはずだし、敵の妹を本気で愛しちゃったりしたらこの先色々交渉に差し障りが出てくると心配するのはわかる。
わかるけど。

ファルコ、やきもちやいてるだけだよね?
ヴィットリオは誰も愛さない、女なんかに心を開かない、その心は子どもの頃からそば近くに仕える俺だけのもの、って思ってたんでしょ、ファルコ。
ヴィットリオにとって「第一の存在」だった自分の立場が、突然揺らいでしまったから。

そうとしか見えなかったよ、ファルコ(´・ω・`)

ファルコ役は朝美さん。ファルコもロン毛だけど、ヴィットリオとは違いこちらはストレートでブロンド。一癖ありそうな黒っぽい役が似合いますね~。
朝美さんも歌うまいし、格好良かったけど、「ファルコ」という人物自体にはどうしても「いや、ヴィットリオのこと好きすぎてクラリーチェ気に入らんだけやろ?」としか(笑)。

ファルコの妹ロドミアもヴィットリオを愛していて、のみならず、一度ならず関係を持ったこともあるようで、「政略結婚の小娘なんか屁でもない」と思っていたのが「世継ぎの剣を渡した」と知って大激怒!

でも兄がクラリーチェを誘拐したことを知ると、救出してヴィットリオのもとに運んじゃう。ファルコ側のセキュリティ甘すぎやん、と思うと同時に、ロドミアにも「手足となって動いてくれる従者たち」が複数いるんだな、と。
ロドミア一人で「毒飲まされて意識を失ってるクラリーチェ」を運べないでしょ、ま、本筋とは関係ないけど。

ロドミア、「この解毒剤が欲しければ私と結婚してちょうだい」みたいなこと言うんだけど、ヴィットリオ、めっちゃクラリーチェのこと心配してるくせに、「俺は他人に支配されたりしない!いっそ自分でクラリーチェを殺す!」とかってクラリーチェの喉に剣を突きつけちゃう。

心からヴィットリオのことを愛し、ヴィットリオがクラリーチェに惹かれていることも十分承知しているロドミアは、「あなたは気づいていないかもしれないけど、そんなことをすれば後でどれほど苦しむことになるか!」と自ら解毒剤を渡してあげる。

ロドミアいい女だ。

本当はただ眠らされてるだけで、解毒剤要らなかったのでは?と思ったりもするよね。ロドミアはただ、ヴィットリオを試しただけではないかと。

ロドミア役は朝月希和さん。
最初パッと見た時ちょっともっさりというか、クラリーチェ役の真彩さんが顔ちっちゃくて細くて可愛いから、ふっくら顔の朝月さん、少しおばさんぽく見えるなぁと思っちゃったんだけど、お話が進むにつれ、その「お姉さん感」が実にいい味になってきた。

ファルコは追放されて、ロドミアも「いいとこのお嬢さん」だったのが酒場女に身を落とすことになり、その美声で酔客を喜ばせている。
少年のなりをしたクラリーチェが酒場に飛び込んできた時もとっさの機転でうまく彼女を助けるし、ヴィットリオのために自ら毒盃をあおる最期も見事。

往年の星組なら絶対ジュンベさん(洲悠花)がやってる役よねぇ~。ぜひやってもらいたかった役だわ。
昔の作品はこの手のどーんとした娘役キャラがけっこう出てきたような気がするけど、最近はトップ娘役さん以外の娘役にあんまりたいした役がない感じよね。なんか久しぶりに「二番手娘役」っぽい濃い役を見て楽しかった。
朝月さん、歌もお芝居も堂々として良かったし。
花組に組替えになっちゃうの残念だわ。

組替えといえば永久輝さんもですが、永久輝さんはクラリーチェの兄ジュリオ役。初演ではカリンチョさん(杜けあき)がおやりになった役ですが、あまり印象に残ってない(^^;)
宰相の悪巧みにいいように乗せられるヘタレ王子な感じなので……。

その「悪い宰相」は久城さん。シュッとした、なかなか男前な宰相さんだった。

クラリーチェの真彩さんは髪を切って少年のなりになるところがとっても可愛かったです。髪を切って牢に忍び込み、ヴィットリオを助け出す場面、ヴィットリオが「城に戻ったら俺がもっとマシに切ってやる。だから生き延びろ」って言うの、すごい好きだわぁぁぁ。少女漫画よねぇ。

少女漫画だけど、原作(^^;)

初演の時はお芝居本編85分+パレード20分で構成されていたのを、今回は小柳先生が95分に伸ばして、原作のエピソードを織り込みつつ新たに脚本・演出されたということで。

セリフや場面など、どこまで原作由来なのかわからないけど、小柳先生はさすがお話をまとめるのが上手だなぁ、と思いました。テレビで初演を見た時にはあんまり面白いと思わなかったけど、退屈することもなく、「ザ・宝塚」を楽しむことができました。

うん、終盤眼帯して「独眼竜」になってる望海ヴィットリオもほんと格好良かったし、「優しいだけの白王子様」ではない、「傲慢だがヒロインに対する愛は本物、でも決してデレデレしない黒王子様」、ハマるわぁ~~~~~。

ショー『Music Revolution』は『壬生義士伝』の併演だったので、一回観ていますが(その時の感想はこちら)、一回しか観てないからあんまり覚えてなかった……はは。
聞いたら主題歌は「ああ~!知ってる知ってる!」だったし、「このシーン好きだった!」も思い出しましたが。

全国ツアーゆえ出演者は35人とほぼ半減。2番手彩風さんのパートを朝美さんが務めたり、役代わりも多いので大劇場公演とはまた違った『Music Revolution』が楽しめました。

「入れ替わり立ち替わり群舞が多くて嬉しい!」ショーだったのが、さすがに「そこまで大量に入れ替わりできない」感じでしたが、舞台自体も大劇場より小さいですし、少ない人数でうまくまとめてるなぁと。

セットとかもねぇ。
当然銀橋もセリもない、大階段もなくてせいぜい10段くらいのミニ階段。
限られた環境でどう魅せるか、演出家の腕の見せ所ですよね。
照明も、それぞれの劇場で色々違う中、スタッフさんすごいなぁ。一部ピンスポットがステージの床に反射して見苦しかったり、2階席からは後方から当てるライトがまぶしすぎたりあったけど、ろくにリハーサルできないだろう中でセットや照明ぴたっと合わせてくるのすごい。

こういう地方の小さいハコ(と言っても客席数1,480、収容人数自体は博多座や中日劇場と変わりませんね)で観るの初めてなので、そういう舞台装置的なところも面白かったです。

大劇場で観た時に好きだったJazzのシーンは「人数が足りない!」感があったけど、彩風さんの代わりに綾凰華さんががんばってらっしゃいました。

その彩風さん。
実は観劇にいらしてたんですよね。残念ながら2階席からはほとんど見えなかったけど、彩風さんはじめ『ハリウッド・ゴシップ』組と思しきジェンヌさんが数名(5~6名?)1階席5列目くらいに座ってらした!

客席降りの際には望海さんが彩風さんを立ち上がらせて熱いハグ!きゃ~~~~♡
いいもの見せてもらえた♪遠かったけど(笑)

そして望海さん、客席降りで何かの物真似を(これも2階からよく見えない(^^;))……「わかった!ひこにゃんだ!」と舞台上の真彩さんが。

ひ こ に ゃ ん の も の ま ね (゚∀゚)!

地方公演ならではのご当地サービス、ありがとうございます。ありがとうございます。
その後舞台上でもひこにゃんの物真似してくださったけど、いや、難しいよね、ひこにゃんw
こう、両手を脇にペンギンみたいにして「とてとてとて」と小さくゆっくり歩く感じ。
掛け声でも「ひこにゃん!」と叫んでくださったり。
いや、それは、ちょっと(笑)

そんな楽しい一面も見せてくださりながら、男役燕尾の大階段ならぬミニ階段ではビシッと!
うん、段数少なくてもやっぱり格好いいわ~。
パレードでは客席との一体感も感じられ、楽しかったです。

最後の挨拶では、奏乃組長が相次ぐ自然災害に言及、被災者の皆さんへの気遣いとともに、「そんな中で公演ができること」「足を運んでくださったこと」への感謝を。
うん、ほんとにね、こうして無事宝塚を楽しめるのありがたい。いつどこでどんな災害が起きてもおかしくないんだもの。

そしてそして、トップスター望海さんを紹介する段には「昨日、ひこにゃんに会うためにお堀の橋をダッシュしていた望海風斗からご挨拶です!」と。

えーーーーーーっ、11月1日に彦根城行ってたら望海さんに会えたの!?

「彦根に着くそうそう、荷物を放り出して彦根城へ」とか、「とても有名な方だと存じてはいましたが、あれほどの癒やしを与えられるとは」と、ひこにゃん話をしてくださった望海さん。
トップスターの心をもわし掴むひこにゃん、さすが!

彦根を楽しんでいただけて良かったです。

大津出身の生徒さんも紹介されていました。二人も!がんばれ~~~。

最後の最後、「どうぞ宝塚にも!」とおっしゃっていましたが、今度1月の公演、チケット取れるのかしらん。行きたいのはやまやまだけど、最近一般人がチケット取るのほんとに大変で。
1公演の公演期間を昔みたいに1か月半に戻してもらいたいなぁ。1か月しかない上に貸切公演だらけでは(>_<)

『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』のチケット取れますように!



【おまけ】
※帰りの送迎バスがなかなか出発できなくて、予定の電車に乗れるかどうかやきもきした話を書きました。よろしければご覧下さい→『彦根公演のおまけ:送迎バスについて』