先に2巻目を読んでしまった『天久鷹央』シリーズ、1巻目も読みました。

語り手小鳥遊くんがいくつなのか、2巻目にははっきり出てこなかったけど、1巻目には鷹央のことを「2歳年下の上司」と説明するくだりがありました。
鷹央が27歳設定なので、小鳥遊くんは29歳。最初のエピソード『泡』では、「4か月前に天医会総合病院にやってきた」と言ってます。

2巻目の最初のお話は5か月前だったんじゃなかったっけ? 半年前かな。
立て続けに事件起こってるなぁ(^^;)

2巻目も1つが小説新潮掲載で残り2話とプロローグ&エピローグが書きおろし。
1巻目も最初の『泡』が小説新潮掲載(2013年6月)で、残り3話とプロローグ&エピローグが書きおろし。

『泡』は河童を目撃した、と言う少年の証言に基づき、鷹央が河童の正体を突きとめるお話。

『人魂の原料』は病棟でナースが目撃した「人魂」の正体を以下同文。

『不可視の胎児』は、母親の指図により仕方なく中絶手術をした女子高校生が、「お腹の中に赤ちゃんがいる!」と訴えるお話。中絶手術は成功したはず、そして母親により軟禁状態に置かれている彼女が再び妊娠することはありえないはずなのに、なぜ……?

そして最後『オーダーメイドの毒薬』は、2巻目で言及されていた「鷹央が医療過誤で訴えられそうになり、統括診断部が消滅の危機に陥った」事件。
『泡』の中で、河童とは関係なく、単に鷹央の診断能力の凄さを描写するために出てきたと思われた母子が、一躍主役に躍り出るのが「そう来たか」感で面白い。

面白いけど、いわゆるモンスターペアレント的な事件なので、読んでて少ししんどいですね。その前の『不可視の胎児』も、娘をほぼ軟禁状態にしてしまう母親と、意に染まない中絶をされた女の子の苦しみが……しんどい。

「とりあえず謝っとけば提訴を取り上げてもらえるかも」と周囲に言われて、「論理的に間違ってるから私は謝らない」ときっぱり断る鷹央。

「私にとって論理は行動原理そのものなんだよ。本能的に相手の気持ちを読み取ったり、場の空気を読んだりといった社会生活に必要な能力が私は劣っている。だから私は、自分の行動を論理で固めることで、それを補っているんだ。つまり、私にとって論理を曲げることは、私自身を曲げることでもあるんだ」 (P223-224)

なるほど、と思うと同時に、小鳥遊君の気持ちはかなり読めているのでは、と思わないこともない(笑)。読めてるからこそからかえているのでは!?

短編集で隙間時間にも読みやすく、文章もこなれて、登場人物も魅力的だけど、全巻読まなくてもいいかなぁ(^^;)

『推理カルテ』の残りは飛ばして、長編『事件カルテ』の方を一つ読んでみようかな。