(※以下ネタバレあります。これからご覧になる方はご注意ください。記憶違い等多々あると思いますがご容赦を)



はい、観てきました『スーパーヒーロー戦記』。
平日でしたがさすが夏休み、劇場ロビーはなかなかの混雑。しかし『スーパーヒーロー戦記』はすでに公開2週目、もうすぐ3週目に突入というタイミングだったせいか、ガラガラでした。
私を含めて5組ほど。

大丈夫か、スーパーヒーロー。
土日は混んでたんだよね? ね??

まぁそれはともかくとして。
仮面ライダー50周年、戦隊ヒーロー45作品の記念コラボ作品。クライマックスの戦闘シーンでは各ヒーローのロゴと決めゼリフを駆け足で紹介したり、「よくがんばったな」という感じでした。
決めゼリフ、まったくオリジナルの声ではなかったけども、それもまたご愛敬、むしろ「すごいなー、声優さんたち手分けしてがんばったんだな」と思ってしまいます。
オーズファンとしては「セイヤー!」って決めぜりふなのかよ!とも思いましたが、まぁ戦闘シーンで「明日のパンツ」云々は言わないし、後がつかえてるから短いのはしょうがない。
(※たとえば「W」だったら「さぁ、おまえの罪を数えろ!」だったわけです。「セイヤー」との差よ…)

しかしあの戦闘シーン、ヒーローの数があまりに多すぎてもう目が追いつかない。敵も色々歴代のやつが登場してたはずなのに、ほとんど認識できませんでした。ううう。

冒頭、いきなりトウマが「俺、小説家に向いてない」とか言い出して、「今ごろ気づいたのか!?」と。そもそもほとんど小説書いてるシーンないし、セイバーの物語においてトウマが小説家である必要性がどれほどあったのか、と思ってしまうんですが。

ともあれ、「物語の登場人物たちにとっては作者である俺が神、つまり俺が登場人物を苦しめ、ひどい目に遭わせている。そうじゃない話を書きたい」とか言い出すトウマ。
そこへ「この本を参考にしては」とユーリが紹介するのが「ゼンカイジャー」の本。「この本では誰も苦しまない」。

あー、確かに『ゼンカイジャー』は歴代戦隊の中でも1、2位を争う脳te――いや、明るいお話で、ステイシー君以外には「悲愴感」というものがかけらもないですよね。

「どれどれ、どんな本」とみんなで覗きこんでいると本が光り出し、トウマとユーリとケント(だったかな)の姿が消えてしまう。
気がつくとトウマ達はゼンカイジャーの世界に
そしてゼンカイジャー世界では、同じように「いきなり本が光ってカイトたちが消えてしまった」とジュランが似顔絵プラカードを持ってカイトたちを捜索中。

例の、トウマとケントが謎の小芝居をするあの屋上に出現したカイトたちを発見するのは倫太郎で、カイト、ガオーン、マジーヌを見て「もしやさっき読んでた本の中の!?」とピンときます。
一人だけ名前を呼んでもらえないブルーンが嘆くのが細かい。「まだ君が出て来るところまで読んでなかったんだ」、しかたない。

なんでこんなことが起こったかと言うと、禁書ばかりを集めた「アガスティア・ベース」を守っていた衛士アスモデウスが突如叛乱を起こし、禁書――戦隊やライダーの物語――が解放されてしまったから。

「禁書が解放されたことで、物語と現実の境が曖昧になり、融合してしまった」

と、確かこれソフィアさんが説明してくれたと思うんだけど……その「禁書」の中に「セイバー」の本もあるわけで、「んー?」となりますね。
ソフィア様が「現実」と呼んでいる「セイバー」世界も「本の中の世界」で、でもアガスティア・ベースが「セイバー世界のもの」なら、結局すべては「本の中の出来事」で……???

途中、カイトたちが持っていた本が「仮面ライダーセイバー」だとわかって、トウマが「俺たちも本の世界の登場人物だったのか!」とショックを受けるんですが。

え?
トウマ、そういうこと1回も考えたことないの???

小説家というか、お話作るのが好きな人なら一度は「この世界も誰かの書いた物語かもしれない」って考えるよね? そりゃ「考える」のと「実際にそうだった」の間にはかなりのギャップがあるけれども、カイトたちと出会って、「本の中の人物が目の前で生き生きと動いている」のを目の当たりにした後ならなおさら、「もしや俺たちも…?」は考えるのでは。

だからおまえ小説家に向いてないんだよ、ってなる(´・ω・`)

えーっとそれで、さらに「お話」は混ざり始め、カイトと倫太郎たちは「西遊記」の世界へ。砂漠のような荒涼とした世界に現れる三蔵法師の一行、というかイマジンたち。
モモタロス=孫悟空、ウラタロス=沙悟浄、キンタロス=猪八戒、リュウタロス=三蔵法師

これはうまい。
てかイマジンはほんとどう出ても「ハマる」し面白いし、最初からクライマックスになってずるい。

デカいオーマジオウも現れ(今気づいたけど、あれって「お釈迦様」役だったんだな。これも巧い配役だよなぁ)、「天竺へ行け」と。
「歩いていくなんてめんどくさい」というわけでデンライナーが現れ、オーナーも登場。

天竺と思われる中華っぽいお寺に着くと敵が待ち構えているけど、ソウゴ君が現れて……だったかな。もう記憶があいまい。
チャイナ服でロン毛のわが魔王、素敵でしたわ~。
ジオウ仏壇フォームから繰り出される歴代ライダー。ジオウの物語の中に他のライダーも入れ子で入ってるのはどう説明するのか、“本”の構成どうなってるの?と思ったりしますが。

三蔵法師が天竺に取りに行く“お経”が“禁書”みたいななぞらえ方も巧い。

テレビ本編でゼンカイジャーコラボした時も言われてたけど、こういう「みんなが知っている既存の物語」になぞらえてお話が進むって、「これこそセイバーでやってほしかったこと」だよね。
小説家が主人公で、「本で変身する」と聞いた時に思い浮かべるイメージ。

変身アイテムが本である必要性がさ、ないじゃん、セイバー……。

一方トウマやメイちゃんは――の前にえーと、福君が出てきたんだよね。倫太郎や他のセイバーのライダーたちが敵と戦ってる姿を隅っこでせっせとスケッチしてる少年。
22日の上映開始後、わりとすぐ公式さんが「彼は石ノ森章太郎」ってネタバレしちゃってたけど、メイちゃんに「危ないから逃げて!」と言われても逃げず、敵が襲いかかってきても「うるさいな、今忙しいんだよ」とペン1本で撃退。

「おおおおお、ペンが剣より強し!」と驚くメイちゃん。

これも「小説家主人公のライダーなら武器はペン」でやってほしかったネタだよなぁ。福くん=章太郞の持つペンは文章ではなく絵を描くペン(っていうか確か鉛筆だった)だけど。小説でも漫画でも、「物語を生み出すペン」だものね。

で、トウマ、メイちゃん、ジュラン、福くん達は「八犬伝」の世界へ飛ばされる。気がつくと世界が時代劇。
町娘の格好をしたラプターがショウ司令に「おじいちゃん」と言いながら現れ、もうそれだけでこっちの頬が緩んでしまう。ついに完全に「ジジィ」扱いになってしまったのね、ショウ・ロンポー(笑)。

里見家再興を果たすには「犬士」ならぬ「剣士」が必要!?というわけで、炎の剣士であるトウマやシンケングリーン、キラメイブルーしぐたん、デカマスターなどが登場。
シンケングリーンの「我々がいれば百人力!」を受けてしぐたん、「百人力じゃない!万力だ!って、何言わせてくれとんじゃ」と一人ぼけツッコミ。うぷぷ。

しぐたんと言えば万力、万力と言えばしぐたんですもんね~。

別に剣士ではないのに或人も登場。相変わらず駄洒落がうざい、めんどくさい。
8剣士まであと2人、となったところで、「意外なところから現れるものだ」とラプターとショウ司令が「私たちも剣士だったのですね!」と参戦。

いやー、ここも「八犬伝」の下敷きの仕方がうまいなぁ。デカマスターなんて「剣士」でもあり「犬士」でもあるし。

福くんは相変わらずせっせとヒーローたちの活躍をスケッチしているんだけど、「違う、僕の描きたいヒーローはこんなんじゃない」と……。
はは。
はははは。

ライダーも戦隊もずーっと「原作:石ノ森章太郎」とクレジットがついているけど、実際問題もし石ノ森先生が生きてたら平成ライダーや今の戦隊をどう思うのか。「もう俺の名前使うのやめてくれよ」と思うんじゃないのか、と新しいシリーズ始まるたび思いますもんねぇ。

福くん(章太郞)のそんな気持ちを煽ってヒーロー達を消そうとするアスモデウス。「こんなの!」と福くんがスケッチブックを破ると、破られたヒーロー達は次々と姿を消していく。

「この世界の“神”を使ってヒーロー達を抹殺する」というアスモデウスの企みは見事成功……って、うーん、“神”=作者が物語を作るのをやめたら確かにそれ以上お話は動かないし、「やっぱこのキャラ要らないわ」で消された登場人物はもう存在しなくなるかもしれないけど。

ヒーロー達が消えても敵だけ消えないのはなんでなんだぜ。

物語全体を消したわけじゃなくヒーローの絵だけ破ったから、ってそんな理屈おかしくない??? そもそも福くんが描いたわけじゃないのに敵キャラは存在してるし。ヒーローだけ消えて「物語世界」は消えてないんだよなぁ。

トウマも目が覚めると「幸せな現実」にいて、「ヒーロー物の登場人物としては消されたが平凡な(?)“現実”を生きる人間としては消えてない」みたいになってる。

んーーーーーー?

そんでその「幸せな現実」では、トウマはケントとルナと一緒に暮らしててさ……。いきなり大人ルナが出てきてさ……。テレビ本編でいきなり大人になったけど、あのエピソードより前に公開されてるこの映画では何の説明もなく大人で、トウマも当惑して、「え?もしかして、ルナ!?」と。

「ルナーっ!」と大人ルナに抱きつくトウマ。
さらにルナが「ケントもおいで♡」と誘って3人で抱き合って――えーっと、俺ら何を見せられてるの???
君たちの「幸せな現実」というのはゲフンゲフン。

一方、福くんは古いアパートの一室みたいなところでヒーロー物じゃないマンガを描いて、メイお姉ちゃんに「すごいすごい!知り合いの編集さんに紹介してあげるよ!」みたいに言われている。

福くん、なんでかメイちゃんに懐いてて、最初の方でヤツデさんにお菓子配られた時にはけんもほろろだったのに、相手がメイちゃんだと言うこと聞く、みたいな描写で、「おまえ、我らが郁恵ちゃんをなんだと思ってるんだ!」ってなりました。

郁恵ちゃんの方が100倍可愛いだろ!!!

福くんのアパートに突如出現するトウマ、福くんに「ヒーローは描かないの?」と尋ね、福くんは「僕の描くヒーローはどうしても悪が同居してしまう」みたいな返事をする。
「それでいいじゃないか、それこそ“君にしか描けないヒーロー”だ!」とトウマに鼓舞され、トウマと福くんはちゃぶ台で物語を書き始める。

途中、「どうしてだ?幸せな現実でいいじゃないか?」みたいなケントの声が聞こえ、トウマは「僕たちは物語から逃げちゃいけないんだ!」とかなんとか。

すでに記憶があやふやで、細かいところ覚えてないんですけど、「セイバー」世界も「本の中」で、トウマも登場人物に過ぎないなら、「幸せな現実」だって「物語」で、逃げるも安住するもないだろう、って気がする。

そこで「ヒーローであることを選ぶ」ことさえ「物語の作者(東映)にいいように操られてるんだぜ」と思わないのか、トウマ。

まぁでも、自分が何かの登場人物であろうとなかろうと、結局ヒトにできることは「その世界で精いっぱい生きる」しかない

ヒーロー達は復活し、歴代ライダー、歴代戦隊レッド勢揃いでクライマックスのアクションシーン。

1号とアカレンジャーが出てくるところは胸熱だし、戦いが終わって1号が変身解いて藤岡弘、さんになって、「先生にもう一度お会いしたかった」と思いの丈を述べるところ、そして福くんが「君は、本郷猛だね」って言葉をかけるところはうるうる来てしまった。

「やっぱりぼくは死ぬんだね。君(トウマのこと)は、ぼくが死んでから生まれたライダーなんだね」

あ、そうだ、その前にアスモデウスが「二次創作」云々言うんだっけ。そんで誰かが(誰が言ったのか思い出せない)「みんな必死に生きてる人間だ、人間に一次も二次もあるか!」と反論する。

いやー、ちょっと、それ、自虐っていうか、面白いけどあまりに「メタ」すぎる気が。

全体的にはよくできてて、「セイバー」のモチーフである「本」「ペン」「剣」「物語」をめちゃめちゃうまく使って、「この記念映画のために主人公を小説家にしたのか」と思うほどで、脚本の毛利さんすごいなーだったんだけど。

でも「おまえたちの平成って醜くないか?」のジオウ夏映画とか、平成ライダーを見て育った男の子の写真が最初と最後に流れる『平ジェネFOREVER』とかも「メタ」だったので、なんか「そうじゃない、がっつりどっぷりフィクション」な映画を見たいなという気もしました。

本来は別々の世界にいるはずのヒーロー達が結集するお祭り映画、色々仕掛けは必要だし、今回は特に記念映画として「石ノ森章太郎先生」を出したい、というのあったんだろうけど、「おまえら二次創作じゃん」まで自分で言っちゃうのはなー。

(※今『平ジェネFOREVER』の感想読み返して、「そもそも俺は存在しなかった、虚構だった」と言う戦兎くんとトウマを会わせてみたい気がした。トウマには戦兎くんほどの深みがない)

7日からはスマホアプリでラジレン出張版コメンタリーが聞けるとかで、ラジレンファンとしてはめちゃめちゃ気になる! 福くんも参戦してるって言うし、こんなご時世でなければ――そしてもっと裕福ならば――コメンタリー聞くためにもう1回見に行きたいところなんですけども。

リュウタロス・鈴村さんとショウ司令・神谷さん、そしてラジレンの準レギュラーである稲田さんデカマスターも出ていて、「皆さんこの記念映画に出られてほんと良かったですね!3人とも出られてほんとに!!!」って、思いました。
稲田さん、またラジレンでこの映画について語ってほしいなー。何時間でも喋ってくれるだろうになー。

あ、そうそう、忘れるところだった。クライマックスの戦闘シーンで新ライダー「リバイス」もお披露目しているのですが、そこで鴻上会長が! 「Happy birthday! 仮面ライダーリバイス!」と。

わざわざ。
そのためだけに。

嬉しいねぇ、うん。オーズファンとしてとても嬉しい。この1シーンのためだけにわざわざ出演してくださって、宇梶さん本当にありがとうございます。毎年新しいライダー誕生するたび祝ってくださっていいのよ!

引き続き『リバイス』の短篇映画も上映されましたが、そちらの話はまた別の記事に書くとして。

なんだかんだ楽しませていただきました。このコロナ禍、出演者の皆さん、スタッフの皆さん、お祭り映画作ってくださってありがとうございました。

君と好きなヒーローが100年続きますように。


(※全3種の入場者特典スペシャルビジュアルシートはライダーパートが当たりました。ディケイドがおっきくて嬉しい)