(※以下ネタバレあります!これからご覧になる方はご注意ください。あと洋画ほとんど見ない特撮脳の雑感です。色々ご容赦ください) 



9月1日公開の映画『ブレット・トレイン』を見てまいりました。アニメと特撮絡み以外の普通の(?)映画、それも洋画を見るって何年ぶりだろ。『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』以来なのでは。つまり10年以上ぶりでは。

ブラピ主演の新幹線を舞台にした殺し屋アクション群像劇、描かれる日本はリアリティ無視の「トンデモニッポン」という触れ込みに惹かれまして。

原作は伊坂幸太郎さんの『マリアビートル』。もちろん読んだことありません(^^;)


原作では東京から盛岡へ向かう東北新幹線を舞台にしているらしいのですが、映画では東京から京都へ向かう高速列車「ゆかり」号が舞台。
「ひかり」でも「こだま」でも「のぞみ」でもなく「ゆかり」。うん、いいとこ突いてる。車内に集合した殺し屋たち、「縁ができたな!」

なんか、「めちゃめちゃお金のかかったアホアホ映画」でしたね。トンデモニッポンもわざとやってるし、音楽の使い方から映像の切り取り方から、わかっててツッコミどころ満載にしてる感じで、B級好きとしてはなかなか面白かったです。

こんなバカみたいな話をこんだけお金かけて大々的にバカっぽく作れるっていうのがまさに「ハリウッド」なんだろうなぁ。
車の爆破とか、暴走高速列車の壊れっぷりとか、さすがの派手さ。回想シーンにもお金かかってた。

回想の入れ方(というか演出?)に、こないだのリバイス映画(アヅマの七変化)を思い出しちゃって、ああ、リバイス映画ももっとお金と時間がかけられたらあの回想シーンをこんな風にできたんだろうな、方法論としては間違ってなかったんだな、と思ったり。(別にアヅマ主役じゃないし、金かけて長尺の回想シーン入れても仕方ないけど)

なんせ普段特撮ばっかり見てるので、特撮との比較しかできないんだけど、人間のアクションについては予想したほどではなくてちょっと物足りなかった。特に序盤、レモンとタンジェリンが延々喋ってるところとか面倒くさくて、もっといきなりアクションしてくれよ!会話なんかいいから!と思っちゃいました。ははは。

最後まで見ればあのレモンとタンジェリンの会話、二人の関係性を最初にしっかり見せておくのが重要だとわかるんだけど(実質あの二人が主役だと思う)、前半はもう少しテンポアップしてもいいような。序盤、少し退屈でした(^^;)

上映時間は2時間ちょっと。ドンブラザーズならきっとこれを1時間にぶっ込んで見せてくれる……。


私が見たのは字幕版なんですが、吹き替え版だとレモンを関智一さん、タンジェリンを津田健次郎さんがやってらっしゃるんですよね。関さんとつんちょの掛け合い、楽しそうすぎる! レモンの「きかんしゃトーマス」ネタ楽しかったし、劇中でレディバグも「あんたはいい人そう」って言ってたとおり、人殺しだけどなんか憎めない奴で、タンジェリンとの「双子」の関係性にはほろりとさせられちゃった。

最後のオチもねぇ。ほんとレモンが主役だよね。関さんのレモン、聞いてみたかった。
吹き替え版は上映時間が合わなかったのよね……。

でも字幕版は字幕版でブラッド・ピットの片言日本語が聞けたり、真田広之の日本語と英語バイリンガルの見事なお芝居が聞け、一部ロシア語も聞けて面白かったです。ロシア語、「ничего」しか聞き取れなかったけど。言ってたよね?ニチェボーって(自信がない)。

真田広之久しぶりに見たけど、車内で刀振り回してる様がもうゴールデンカムイ終盤の土方にしか見えなくて、実写土方は真田広之しかないだろ!と思いました。うん、格好良かった。仕込み杖とかねぇ、たまらんよねぇ。声も良いし。
真田広之というとどうしても「伊賀のカバ丸」や「コータローまかりとおる」で変な格好させられてたのを思い出してしまう世代なので、「立派になって」という妙な感慨も(^^;) こないだ『ジャッカー電撃隊』で志穂美悦子の弟役してるのも見たばかりだし、あれからン十年、ほんとにすごいスターさんになられて。

真田広之扮するエルダーや、その息子キムラが喋る日本語には字幕がつかない。なので「キムラの日本語がわかりにくい」という話をTwitterで見ていたのですが。
そんなには困りませんでした。何言ってるかだいたいわかった。でも日本語にも字幕はあった方がいいですよね。キムラ、役柄自体が暗くてぼそぼそ喋るお芝居だから、聴き取りやすくはないし、全体に台詞のボリュームが控えめなのか、真田広之の日本語も「ん?」ってなるところが。

で、キムラ。
最初から最後まで可哀想
でした。本当は凄腕の殺し屋っぽいのに、終始ひどい目に遭って、あんまり格好いいとこ見せる機会もなく、エルダー呼んでくるための前座みたいな扱いで。
キムラ、これを機に裏稼業からは足を洗って息子と静かに暮らした方がいいのでは。

お話は、キムラの子どもワタルがどこやらの屋上(?)から突き落とされ、大怪我させられるとこから始まるんですよね。
それはキムラを高速列車「ゆかり」におびき寄せるための「餌」で、キムラは列車内でプリンスと名乗る謎の女の子(あの子、何歳設定なんだろう。ハイティーン?)に「逆らったらワタルの命はない」と脅され、色々と協力させられる。

一方「ゆかり」の中には、レモンとタンジェリンが「白い死神」と呼ばれる男の息子と一緒に乗っていて。誘拐されたその息子を救出し、身代金とともに京都まで送り届けるのがレモンとタンジェリンの今回の仕事。

で、その「身代金が入ったブリーフケース」を盗んでくるのがブラッド・ピット扮するレディバグの仕事。本来はカーバーという別の殺し屋に依頼された仕事だったのが、「カーバーは腹痛で欠席」ということで、レディバグにお鉢が回ってきた。

またこのレディバグというキャラクターがなんともいえず、公式サイトでは「世界一運が悪い殺し屋」って紹介されてるけど基本的には盗みや潜入が専門で殺しはやらず、カウンセリングに通ってて、敵と鉢合わせても「まぁちょっと話しあおうよ」「君と僕の間には壁がある、でもその壁には窓があって」とカウンセリングで得たらしいコミュニケーション術(?)でやり過ごそうとする。

ちゃんとアクションもするし、ブラピがやってるから格好良く見えるけど、キャラクター的には小物、「しょぼい奴」。

目当てのブリーフケースは簡単に見つかって、さっさと列車を降りようと思ったらウルフって奴がノリ音できて、なぜかウルフに命を狙われ、仕方なく応戦するレディバグ。
ウルフ、『新・信長公記』の満島真之介にしか見えなくて、すごいムズムズしました(^^;)

どうにかウルフを片づけたものの、ブリーフケースがなくなったことに気づいたレモンとタンジェリンに追い回されるし、「モモもん」という着ぐるみまで襲いかかってくるし、プリンスもブリーフケースを狙っているようで、車内は殺し屋たちの大渋滞

かなり派手に暴れてるのに乗務員も他の乗客も異変に気づいてないらしく、誰も様子を見に来ないのがまた。
レモンとタンジェリンがやり合ってるところに来合わせたアテンダントさん、何も気づかず普通にレディバグに飲み物売ってるし。いやいやいや、室内の様子も明らかにおかしいやん、なんでそんな落ち着いてるの。あとなんで炭酸水1本1000円もするの。ぼったくりやん、日本高速鉄道。(「ゆかり号」、JR東海ではなく「JSL 日本高速鉄道」と車内にロゴがあった)

乗客に関しては途中から「白い死神」がチケットを買い占めたらしく、後半は殺し屋さん達の貸切状態になっていたけれども。

「白い死神」というのは日本のヤクザを乗っ取ったロシア系の男で、とにかく非情で凶悪。回想シーンは桜舞い散る「ザ・日本のヤクザ!」という絵面でありながら、駅に出迎えに来る手下たちはヤクザというより薹の立ったヤンキー。
レディバグに「80年代のMVかよ」とか言われてた。あれもわざと「間違った日本」なのかなぁ。

静岡過ぎてだいぶ経ってから富士山が映ってたのもツッコミ待ちな気がするし、東京駅も他の駅も、現実の駅とは全然違う。(まぁJR東海の駅ではなくJSLの駅だから違って当然ではある)

ああそれなのにそれなのに。

なぜか米原駅だけリアリティが追求され、一面の白い霧。何もない。あれが霧じゃなく雪原だったらまんま米原駅、おかしい…どこも間違ってない……。

でも真田広之が乗り込んでくるのは米原駅だから!
優遇されてるから、米原駅!!!(滋賀県民のむなしい叫び)

東京を夜に出発して、京都に近づく頃に夜が明けてきて、だから米原のあの霧は「朝霧」なんだと思うけど、つまり「ゆかり」号は夜行の高速列車ということで、これが一番「現実の新幹線ではない」部分だよね。
京都に朝の6時ぐらいに着くんだとしたら、東京を出るのは深夜3時とかだよね…。いや、新幹線じゃないから実は所要時間6時間とかかかってたのかしら。
そもそも「京都が終点」というところからして新幹線じゃないんだけど、どうせなら新大阪までぶっ飛ばしてきてくれれば良かったのにねぇ。日本高速鉄道はもしかしたら京都以西は開通してないのかな。

暴走する高速列車を止めようと必死になるやつ、そして最終的に脱線してかなりヤバい感じになるやつ、去年コナン君でも見たなぁ、と思ったし、「白い死神」がリボルバーを腕でキュイーンと回すやつは「ボウケンジャー!Start Up!」を思い出さずには。
トンデモニッポンのネタとしてちゃんとリサーチした上でボウケンジャーだったらすごいけど、まぁ違うわな。

冒頭から「Stayin' Alive」が流れたり、「時には母のない子のように」が使われたり、要所要所の選曲もほんとにあざとかった。特に「Hero」流れた時は「ここで!Heroを!!流す!?」ってなりましたそれにつけても麻倉未稀さんうまいなぁ、格好良い。



日本語吹き替え版が尼プラに来るのを楽しみに待とうと思います。