(※以下ネタバレしまくりです。これからご覧になる方はご注意ください。細部の記憶違い等はご容赦を)


 はい、観てきました、まさかの『翔んで埼玉』続編。キャッチコピーは「そうだ、関西、行こう」で、サブタイトルは「琵琶湖より愛をこめて」。滋賀県民として観ないわけにはいきませんよね。



1作目の感想記事の中で「滋賀なんてネタにもされない、羨ましすぎるよ埼玉」って書いてたのに、こんなに真正面からネタにしていただけるとは。
とび太くんは想像以上の大活躍だったし、平和堂の旗にHOPカード、平和堂の歌「かけっことびっこ」……あれ? とび太と平和堂以外に滋賀の名物、ない???
あ、そうだそうだ、学習船「うみのこ」「琵琶湖周航の歌」も出てきましたね。うちの息子氏も小学生の時に乗船した「うみのこ」。映画では白鳥ボートに毛が生えたみたいなボロ船でしたが、本物はもっとちゃんとしてます!(※本物はこちら
あと私はエセ滋賀県民なので「琵琶湖周航の歌」は歌えません。たぶん息子氏も歌えないと思う。「かけっことびっこ」も西川兄貴が歌うまでちゃんと聞いたことすらありませんでした(→西川貴教バージョンこちら)。

って、そんな滋賀県民語りは置いといて。
映画の話をしなくては。

冒頭、またバレエダンサーと魔夜峰央先生。そして前作の振り返りが少し。
前作同様、本編の茶番劇は「都市伝説」という扱いで、今回もまた「父親、母親、娘」の乗った車のラジオから百美の語りで流れてきます。
父親はさいたま市職員で、一家で地区対抗綱引き大会に向かう途中。娘は身重で、「子どもの名前どうしよう」みたいな話をしている。そこへラジオから「埼玉解放戦線」の続編が流れてきて、「今度は関西へ」みたいな話に、和久井映見さん扮する母親が「私のおじいちゃんおばあちゃんは滋賀なのよ、だから関西、無縁じゃないわよ」みたいに乗ってくる。すかさず父親の方が「滋賀なんて取り上げられるわけないだろ」って突っ込むのがまた、「ですよね~」です。ねぇ、まさか滋賀がねぇ。

この「現代パート」、前作に比べるとだいぶインパクト弱かったけど、浦和と大宮ってそーゆー仲なんだ、というのは勉強になりました。『翔んで埼玉』なんだもん、埼玉の話もしないとですよね。
和久井さんが「滋賀の扱いがひどい!もういい!」とラジオを消して車を降りたら、綱引き大会の観客席で与野地区の人達がやっぱりラジオを聞いていて、結局ずっと一緒に滋賀の運命に共感してくれたりして、「与野の人優しい」って思いました。

で、肝心の都市伝説。
こちらは前作よりも「ストーリーがちゃんとある」感じがしました。なんか展開とネタのバランスが良いというか、前作以上にうまくまとまってるなぁと思ったんだけど、単に舞台とネタが関西なので、「馴染みがある」「全部わかる」からそう感じただけかも。前作の関東ネタはピンと来ないものも多かったですから。

通行手形が廃止され、解放されたはずの埼玉。しかし埼玉内の争いが激しく、もう一度一致団結させるにはどうしたらいいか、と思案する百美と麗。「そうだ、関西行こう」――ではなく、「ビーチを作ろう!」。海がない埼玉、海やビーチに憧れがある埼玉、「目標」があれば結束が強まる。
「和歌山には白浜という美しいビーチがある。そこの砂を取ってこよう」というわけで関西へ行くことに。

「麗様はビーチに詳しいですね」という流れで、麗が「僕はアメリカ留学していた頃にマイアミビーチで日光浴していたからね」みたいに答えるんですけど、もうここで滋賀県民にはオチが見える。「マイアミビーチ?それはもしや…」と。

百美を留守番に置いて、いざ和歌山へ!と向かう麗たち。船の扱いは千葉解放戦線の海女2人(前作にも出ていた小沢真珠さんと中原翔子さん)に頼むんだけど、その際に「阿久津はどうした!阿久津に何があったぁぁぁ!!!」と、ちゃんと伊勢谷友介氏が出ていないことに対するツッコミがあって笑ってしまった。
形見(?)の杖と帽子だけ……もし何もなかったら今作にも出てきたんだろうか、阿久津。

船に乗り慣れていない埼玉県民、船酔い続出、しかも嵐にあって船が難破。
この嵐のシーン、無駄に力が入っていた気がする。なんか壮大で見応えあった。

一人ぽつねんと浜辺に打ち上げられた麗、そこへ現れる滋賀解放戦線のリーダー、桔梗。「美しい…」と一目で麗に心を奪われる桔梗、やたらに麗にキスしようとするのがちょっとうっとうしかった(^^;) 百美がいちいち「僕の愛する麗」と枕詞をつけるのも、ネタだとわかってても「もうそれはいいから」ってなったなぁ。

桔梗役は杏さん貴公子衣装がよく似合って美しく、GACKTさんともども異世界ファンタジー感がすごい。杏さんほんとに背が高いよね、GACKTさんと並んでもそんなに変わらなくて、よく釣り合ってて、見事なキャスティング。
「おまえは誰だ?」と訊かれて自分で「滋賀のオスカルと呼ばれている」って名乗るの面白かった。『翔んで埼玉』の世界には『ベルばら』が存在する。
(※しかしオスカルなら「男装の麗人」で、桔梗は女性なのかと思ったら男性ぽくて、「じゃあオスカルじゃなくない?」とちょっとモヤモヤ)

麗が打ち上げられていたのは目的地、白浜だったんだけど、そこは大阪の植民地になっていて、他県人が足を踏み入れると奴隷労働させられてしまう。なので二人は逃避行。和歌山からなんと徒歩で滋賀を目指す!!!

いや、ちょっと、それは、無理すぎない??? 大津から白浜まで車で3時間超、電車だと4時間半ぐらいかかるところを、徒歩で。しかも山の中を。
健脚すぎる。
途中パンダの群れがいたり、「奈良に入った」ところでは鹿の大群。なんか、日本の鹿じゃない、もっとワイルドな映像だったけども。

で。
山の中に忽然と現れる飛び出しぼうや、とび太君。
「とび太がいる!滋賀に入ったぞ!!」

いやいやいや、いくら県民よりとび太の数の方が多いと言っても、さすがにそんな山道には。
と思っていると通り過ぎていく山羊だかロバだかの馬車(?)。荷車に積まれたラジオから流れる「かけっことびっこげんきっこ♪」の歌。
滋賀県だ…確かに滋賀県だ……。

この場面を見た時はまさかとび太がその後あんなに活躍するとは思いもせず。
クライマックスの大阪との決戦場面、「味方の兵」の代わりに集められた大勢のとび太。戦い傷つき、水没していくとび太……。ありがとうとび太、君のがんばりなくして滋賀の平和はありえなかった。ありがとう、ありがとう。

あのたくさんのとび太、映画用に新しく全部作ったんですかね。新しいのにあんなふうに折られて……可哀相なとび太。
うちから琵琶湖は見えないけどとび太は見えます。ちょっと散歩に行けばそこかしこにとび太。滋賀県民みんな車で移動するので人には出くわさないけど、とび太には頻繁に出逢う。マジで人よりとび太の方が多い。
とび太の管理は小学校のPTAがやっていることが多くて、年に一度、担当委員が補修とか点検をするらしいです。
とび太のグッズは「ここ滋賀」などで買えます。もちろん平和堂でも売ってます。とび太誕生秘話はこちらのサイトをご覧下さい。

えーっとそれで、マイアミ浜です。
時々サブリミナルフィルムのようにさし挟まれていた麗の子どもの頃の映像、マイアミビーチで誰かに、「大きくなったらあなたはここ、滋賀の救世主になるのよ」と言われていた記憶。
そう、それはマイアミビーチではなくマイアミ浜。フロリダではなく琵琶湖岸。そして麗に「滋賀の救世主になれ」と言っていた女性は滋賀解放戦線の初代リーダー、滋賀のジャンヌ・ダルクにして桔梗の母親

この回想シーン少しとポスター風写真でしか出番がない「滋賀のジャンヌ・ダルク」、扮するのは大津市出身高橋メアリージュンさん。これがまたあの無茶な衣装がよく似合ってすごい。出番少ないのがもったいない。
実は彼女は桔梗の母であるだけでなく、麗の母親でもありました。そーか、京本政樹とメアリージュンさんの間に生まれたのかそーか。そりゃ美形が生まれるわなぁ。
フィクションとはいえ、「GACKTさんにも滋賀の血が!」という展開、嬉しかったです。てかGACKTさんマジで滋賀に住んでたことあるし、不思議なご縁ですよね。いつか滋賀でライブやってくれないかな……。

麗を通して繋がっていた埼玉と滋賀。埼玉ポーズと滋賀ポーズもうまい具合に重なるようにできていて、これ考えた人天才だなと思いました。

大阪に攻められ、「もう琵琶湖の水を止めるしかない!」となる滋賀側。「琵琶湖の水止めたろか」「そんなことしたらそっちが水浸しやろ」も鉄板のネタですが、「そんなことしたら田んぼが、畑が」って逡巡するの、すごく真面目で良かった。作物の方が勝ち負けより大事だよね。水害のニュースで田畑が水につかってる映像、ほんと「うわぁぁぁ」ってなるもんね。

「琵琶湖の水を止める」って、具体的には瀬田の洗堰を閉めるってことなんですけど、「これまで大雨の時には京都や大阪を守るために滋賀が水没させられてきた。だが今回は自分たちの意志で水没するんだ!」って桔梗がアジるとこ、うるうるしちゃいました。
いや、ひどくない?
これまでがひどくない???

「そんなだから三重は関西を離れて東海に行ってしまったんだ!」ってくだりには笑ったけど。三重の立ち位置なぁ。
あと、「もうここはいいからおまえたちも彦根城に避難しろ」って言うの、洗堰から彦根って遠くない?間に合う???和歌山から滋賀まで歩けるぐらいだから都市伝説の住人には平気?

つい滋賀の話ばっかりしてしまうけど、大阪、京都、神戸の描き方も秀逸。
大阪府知事役の片岡愛之助さんはあの派手派手衣装に負けないさすがのお芝居、神戸市長役の藤原紀香さんとは映画の中でも夫婦役。京都市長役は川崎麻世さん。川崎麻世もおじいちゃんになったなぁ、と思ってしまった。言われないとわからないというか。
それぞれちゃんと出身地も考慮されてキャスティングされてるのがすごいし、特に藤原紀香さんは「出身地対決」のくだりで「産地偽装」とネタにされるところまでセットになっててほんとよくできてる。

大阪は「知事」なのに、兵庫と京都は「市長」なのもわかりみが深い。兵庫と一口に言いましても広うございますし、洛中以外は京都やおへんもんねぇ~。
山村紅葉さんの京都人代表っぷりがまたハマりすぎてるし。

「日本全国大阪化」を進める大阪の武器が「粉もん」の「魔法の粉」で、甲子園で球児が持ち帰るのも砂ではなく「白い粉」。その粉で作ったたこ焼きを食べるとみんな大阪人になってしまう。言語中枢は冒され、ボケにはツッコまずにいられなくなり……。
「甲子園に放りこんどけ!」って、甲子園の地下が謎のたこ焼きパーク&奴隷工場になってたけど、甲子園は大阪ちゃいますよ、西宮ですよ。神戸市長とは夫婦か知りまへんが、西宮の許可は取ってあるんでっか?

「大阪人じゃないのに阪神優勝で道頓堀にダイブした罪」とかも出てきて、撮影はだいぶ前のはずなのにすごい予知能力。
「大阪都構想がダメになって大阪人は変わってしまった」とか「大阪万博だけはやらしてくれ」とかいうネタはあまりに生々しかったけれども。

「大阪による天下統一はおかんの悲願」ということで、先代大阪府知事にして愛之助様の母親役はハイヒールモモコさん。これがまたなんかすごかった。半裸(だったよね?)の信者たちにケチャダンスのようなもので崇められながら、水晶玉にひたすら怨念を込める。一言も台詞を発しないのがまた強烈。

何なん?
大阪のイメージ何なん???

最後、通天閣ロケットを飛ばして「魔法の粉」を東京に拡散しようとする大阪。迎え撃つは埼玉唯一のタワー、行田タワー。
ここはちょっと、大阪応援しちゃったなぁ。滋賀や和歌山が虐げられるのはアレだけど、関西が覇権を握るのはやぶさかじゃない。「一発お見舞いしたれ」ぐらいは思う()。
空中で飛散した大量の粉で、周辺大阪化しなかったのかなぁ。地上へ降りそそぐ前に雲散霧消した設定かな。残念だな~。

大阪側に幽閉され、姿形まで変えられていた「和歌山の姫」の正体はあの人で……ポスターをよぉく見てたら気がついたはずだけど、見てなかったので「あなたでしたか!」ってなりました。もちろん「見た目がまったく違う、“ええぇ、姫???”って感じの役者さんが来るんだろうな」という予想はしてたんだけども。
ちゃんと和歌山ご出身でねぇ。いや、ほんま、キャスティングすごい。

エンドロールではミルクボーイの滋賀ネタ漫才が流れ、これまたよくできてて面白かった。最初から最後まで滋賀盛りだくさん! 監督、スタッフ、キャストの皆さん、そしてとび太、ありがとうございました。

滋賀限定の入場特典ステッカーは滋賀県長浜市出身堀田真由さんでした♪

堀田さん、『鎌倉殿の13人』でも『大奥』でも存在感ある見事なお芝居で、出身地対決で「堀田真由!滋賀出身の大女優!!!」ってなる日も遠くない――というか今すぐ出てもおかしくないと思う。今回はそんなに見せ場なくてもったいないぐらいでした。

現在西武鉄道と近江鉄道で『翔んで埼玉』スタンプラリーが開催されています。近江鉄道で3つ集めるのもなかなか骨だなぁと思ってましたが(行く用事がない&運賃が高い)、西武鉄道の方もかなり難易度が高いらしく。

6駅全部集めても景品は抽選。まぁ全部集める人はそうそういなさそうだから、集めさえすれば「5名」のうちに入るかもしれない?(※スタンプラリーについて詳しくはこちら

ちなみに滋賀県の広報紙も秋号で『翔んで埼玉』の特集。(※Web版こちら。県外の方も読めます)
こんなに滋賀がフィーチャーされること、もう二度とないよね、きっとね……。

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