(※以下ネタバレあります!これからご覧になる方はご注意ください。記憶ちがい等多々あると思いますがご容赦を)

本当は11月29日に宝塚大劇場に行くはずだったのですが。
皆さまご存知のとおり、初日から11月30日までの公演が中止になりまして、10月宙組公演に引き続き雪組公演も観られませんでした。

当初は確か11月23日まで中止、というアナウンスだったので、「29日はあるかも?」と一縷の望みを託していたのですけどね。再開は12月1日から……あと2日、あと2日早ければ!いや、12月のチケットを取っていれば!!!

12月も7日の11時公演と8日~10日までが中止になったので、「いつだったら良かったのか」もうわかりませんけども。結局1週間ほど、10公演ぐらいしか上演できてないんですものね。

ともあれ千秋楽の幕は無事開いて本当に良かったです。

まずはお芝居『ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル』。めちゃくちゃ韻を踏んでて語呂が良いタイトルだけど長い!!! 「あの○○の時の彩風さんがさぁ」などと言いたい時に長すぎてかなり使いにくい。
「Boiled Doyle on the Toil Trail」――直訳すると「苦難の道を行く茹でドイル」という感じでしょうか。
かの有名なシャーロック・ホームズの作者コナン・ドイルの苦労に満ちた人生を描く作品、トップスター・彩風咲奈さんはもちろんドイル役。そして二番手朝美絢さんはホームズその人。

キャスト表を見た時に、「想像上のホームズと一緒にコナン・ドイルが何か事件を解決するのかな」と思ったんですが。

全然違いました。

ごく普通に、ドイルがホームズ作品を世に出すまでの紆余曲折、世に出てからの艱難辛苦(?)を描くものでした。
医者でアマチュアボクサーで、歴史小説家を目指しているコナン・ドイル。医者稼業の方は閑古鳥が鳴いていて、毎日患者はゼロ。けれども、「おかげで原稿が進んだ?」と優しく見守ってくれる妻ルイーザのおかげで、今日もせっせとペンを走らせています。
一体日々の生活費はどうしてるんでしょうか。
出版社に送った原稿はどれも封も切らずに突き返され、郵便屋の少年にも「こんな難しくてやたらに長いもの、誰も読まないよ」と酷評される始末。
「○○に載ってる『三文文士』って連載小説が面白いんだ!ドイルさんもああいうのを書かないと」
「『三文文士』と一緒くたにされるとは」
「一緒じゃないよ、あっちの方が何倍も面白い!」

ああ、可哀相なドイル。

一方、新興雑誌ストランド・マガジンでは編集長ハーバートが投稿原稿をすべてボツにしてしまうため、連載が決まらず売り上げも地を這う有りさま。
そこへルイーザが、「一番売れてない雑誌に持ち込みましょう!」とホームズ物の短編「ボヘミアの醜聞」を持って現れ、ハーバートは「これこそ本物だ!」とドイルに連載を依頼する……。

ハーバート役は和希そらさん。ストランド・マガジン編集部の場面からお芝居が始まり、最初のナンバーは和希さんの歌。和希さん、声も歌唱もとても良くて、曲自体も素敵で、幕開きから盛り上がります。
全編通して楽曲がとても良く、お芝居とナンバーの絡め方も良くて、往年の名作ミュージカル『大いなる遺産』をちょっと思い出しました。あの作品のナンバーと劇中での使い方、めちゃくちゃ好きだったんですよね~。同じ19世紀イギリスを舞台にしているせいか、冒頭の音楽は特に雰囲気が似ていたような。

夢白あやさんのルイーザもとても良かったです。小説家としてなかなか芽が出ないコナン・ドイルをいつも明るく優しく、時にユーモラスに支える素敵な女性。生き生きと魅力的なお芝居でした。
途中、ドイルがホームズを「殺した」あとにルイーザの具合が悪くなって、ホームズを復活させたとたんピンピンするのにはびっくりしましたが。ホームズの呪い…というかシャーロキアンの呪い!?

で、時々ドイルの前に現れて彼を叱咤したり助言したりする「実体化した」ホームズ。ドイル以外の目には見えないので、「ドイルの頭の中のホームズ」ぐらいな感じなんですが、なんとホームズ、開演から30分間出番がない
ドイルが歴史小説を諦めてホームズ物を書いてみようとするまでに30分かかる。
二番手男役がそんなに長く出てこない作品……他にある??? 観ながら「これ朝美さんいつ出てくるの?」って不安になっちゃいました。

ホームズ物が売れすぎてしまった葛藤、家族との軋轢、「すべてうまく行くと思ったのに」そうはいかない「Toil Trail」。
「自分が書きたいものと売れるものが違う」というドイルの悩みは身につまされるし、諸々の葛藤を乗り越え、「世界には物語が必要だ」とペンを走らせ続けるドイルの姿、寄り添うルイーザ――作品としてはよくまとまっていて、ナンバーも良く、楽しいミュージカルだったんだけど、朝美さん、朝美さんを、もっと……!

なんか、あんまり見せ場らしい見せ場もなかった気がする。「変装の達人」だけど、そこは「老婆」とか「水夫」とか「物乞い」とか、全部別々に「分身」がいて、朝美さんが色々変装するわけではない。一つぐらい朝美ホームズが変装しても面白かったのになぁ。
朝美ホームズ、めちゃくちゃ元気よく、溌剌として、原作中のホームズ像とはだいぶ違う人物だった。

9月にライブ配信で観た地方公演『愛するには短すぎる』での彩風さんと朝美さんの掛け合い、バディ感が最高に良かっただけに、今回の朝美さんの扱いはかなり寂しいものが……。

ドイル家の新築パーティの場面で悪魔コスでヴァイオリンを奏でる朝美ホームズ、あれはとても素敵だったけど。ラップとクラシックを掛け合わせたようなナンバーもとても良かったし。

縣千さんはインチキ心霊術師のメイヤー教授。インチキだけど、教授の「魔法のペン」はドイルがホームズを書くきっかけになる。ドイルが心霊術にハマるのは史実らしいのだけど、縣さんも「もうちょっとマシな役なかったの」感が。
妙に似合ってはいるんだけど……。

心霊術の研究会に参加するバルフォア卿を華世京さん。出番は多くないけど、大臣を務める上流紳士、シュッとして格好良かったです。

アルコール中毒で施設に入れられているドイルの父親役は組長奏乃はるとさん。悪態をつきつつ、「俺みたいな父親がいると知れたら…」と息子を思いやる父。さすがのお芝居でした。
ドイルの二人の妹は野々花ひまりさん華純沙那さん。華純さんは『双曲線上のカルテ』でヒロイン経験済み、愛らしい風貌の方だなぁと思いました。
『ODYSSEY』『愛するには短すぎる』で強烈な印象を残している音彩唯さんはストランド・マガジン編集部の一員ベアトリス。そんなに見せ場はなかったと思うけど、どこにどんな役でいても「音彩さん!」ってわかるあの可憐なビジュアル、強みだよねぇ。

野口幸作先生作のショー『FROZEN HOLIDAY』は雪山の映像から。美しい冬景色の果てにたどり着いた先は100周年を迎える秘境のホテル「FROZEN HOTEL」。世界中から集まったお客様と一緒にホリデー・シーズンを楽しもう!というコンセプトで、ひたすらクリスマスソングが流れます。

ちょっと、さすがに、「クリスマス限定イベントじゃないんだから」という気がしました(^^;)お馴染みのクリスマスソングの数々、盛り上がるし、楽しいけど、3分の2ぐらいクリスマスだったような…? 途中お正月もあったけど。

お客なのか、もてなす側のチームなのか(配信だと手もとにプログラムがないので詳しい設定が何もわからない)、最初に紹介される「教会チーム」「サンタチーム」「和物チーム」etcが後半までずっと続いて、和希さんは基本「司祭」朝美さんは基本「サンタ」。主役2人だけが色々変わる感じだったような……。
お芝居でも「イカサマ師」だった縣さん、ショーでもなんか怪しいレゲエジャズシンガーみたいな感じで、いや、似合うけど、色物にされがちというかこう。

プロローグから客席降りがあったり、椅子を使ったラインダンスも面白く、最初は楽しかったんだけど、30分後には「いつまでクリスマス?」と。
中詰めもサンタだったもんね。サンタで客席降りはそりゃ楽しいし盛り上がる。わかるけど、もっと違う曲も聞きたい……。

若手チームによるジャニーズっぽいナンバーのあと、「司祭」和希さんの場面。実は私、和希さんの退団のニュースを見逃してて、この場面のいかにも「サヨナラ」な歌で「あれ?和希さん辞めるの!?」と気づいたんですよね。遅い(>_<)
「ここに想いを残して、新たな世界へ今飛び立とう」みたいな歌詞。和希さん本当に歌うまい。

その後、和洋折衷な「お正月」があって、やっと雪組100年コーナー「Snow Flower Will Bloom」。
これまでの雪組のショーの名曲メドレーとか来るのかと期待してたんだけど、オリジナル曲ですよね、あれ。床に寝転んで鏡に映すラインダンスは昔のやつの再演なのかな、面白かった。
公式サイトの作品紹介を改めて見たら「雪組100周年を祝福する場面を盛り込みながら」としか書いてなくて、「雪組の歴史を振り返る」ショーというわけじゃなかったんですが、クリスマスソングもうちょっと削って歴代雪組の曲を入れて欲しかったなぁ。具体的に「この曲を!」ってとっさに思いつくの『花幻抄』や「愛!」しかないんだけど。あと「ブライトディライトタイム」とか。

そもそも1月の東京公演でもこんなにクリスマスクリスマスしたショーをやるの?と思ったんですが、最後のカーテンコールの挨拶で彩風さんが、「東京公演に来ていただければもう一度クリスマスから大晦日、お正月までを一緒に楽しめます!」みたいに言ってらして、「なるほどそういう考え方もあるか!?」と思いました。
毎日が誕生日、毎日がクリスマス、楽しいことは何回やってもいいですよね、うん、それはそう。

えーっとそれで、たぶんラインダンスのあと、フィナーレの前になんと朝美さんメインで「WHITE BREATH」!!! T.M.Revolution!!!
格好良かった~、好き♡

つつがなくショーが終わって、恒例、組長さんと退団者さんのご挨拶。和希さん、挨拶まで全部格好良かったなぁ。本当にお声が良い。

そして彩風さんのご挨拶。私たちファンに向かって、「苦しませてしまって、悲しませてしまって」と。彩風さん、フィナーレの歌のところでも感極まってらっしゃるように(うるうるしてらっしゃるように)見えたけど、ここの挨拶のところも……。
もしかしたら大劇場公演、全部中止だったかもしれないものね。たった一週間ほどでもよく上演できたと思うし、退団する三名の方も、無事大劇場に別れを告げることができて、本当に本当に、良かったよね。

挨拶のあと「宝塚フォーエバー」が流れて、うう、この流れで「宝塚フォーエバー」は! 泣く!!!
彩風さんも「フォーエバー続くといいのにね」みたいに言ってらした。110周年企画はことごとく中止になってしまったけど、この先どうなるのかな……。フォーエバー続いてよ、宝塚……。

配信ででも観られて良かったけど、「この先私が宝塚を生で観られることはあるのだろうか」という気分にもなってしまって、せつなさが募りました。
中止云々もそうだけど、一般前売りでチケットをGetするのが難しくなりすぎて。平日B席ならそんなに頑張らなくても取れてたのに、ここ半年ぐらいは全然サイトに繋がらないもんね。昔は友の会入ってたけど、また入らないと駄目なのかなぁ。
この先花組も月組もサヨナラ公演、そして次の雪組は『ベルばら』……取れないよね、一般では無理だよね。

はぁぁ、つら。