(※以下ネタバレあります。これからご覧になる方はご注意ください。記憶違い等多々あると思いますがご容赦を)



4月24日13時公演を観てまいりました! ポスターからしてもうめちゃくちゃ格好良くてワルそうで、期待大だったのですが、予想以上のワルさと格好良さで、鳳月さんの見事なお芝居を堪能いたしました。

「三国志演義」ではなく「三国志炎戯」と銘打たれたお芝居、「RYOFU」。三国志に詳しくないので(さすがに劉備や関羽の名は知っているけど)、「呂布奉先(りょふほうせん)」という人物のことはまったく知りませんでした。

一人で一万の敵を相手にする猛将、「人中に呂布あり」と謳われた人物、そして二人の主を葬り去った裏切り者――。

幕開き、その呂布が劉備や関羽に縛り上げられているところから始まります。でもあれ?声が鳳月さんじゃないぞ?と思ったら、その男は呂布の「替え玉」。「俺が本物の呂布かどうかもわからんのか」と言う男に対して、「本物だろうがどうだろうが、呂布が捕らえて殺されたということが重要なんだ」と返す諸将たち。可哀相に替え玉の男はこのあとあっさり処刑されたと思うんですが、「今こそ呂布の真実を語ろう!」ということで、時が遡る。

事後のシーンから始まり、“本当のことを話そう”ってなる構成、『雨にじむ渤海』を思い出します。

「本物の呂布」の登場は、いきなり戦場。并州(へいしゅう)刺史(しし)・丁原に仕える呂布は、丁原の嫡男丁成とともに異民族討伐の最中。呂布の働きにより丁原軍は勝利を収めるも、呂布はいきなり丁成に刃を向け、その場にいた兵ともども皆殺し。

呂布の得物は巨大な矛・方天画戟(ほうてんがげき)。戦闘場面はすべてアクション担当の先生が付いていて、見応えたっぷり。暗い赤の照明、矛を操る鳳月さんの立ち回り。衣装も格好いいし、いきなり「主君殺し」で引き込まれる。

「丁成様は戦場で命を落とされた」「私に丁家と雪蓮様を守るようお託しになった」と、いけしゃーしゃーと丁家の令嬢・雪蓮を口説く呂布。

雪蓮はもともと呂布に惹かれていたらしく、父・丁原も呂布の忠義を疑わない。何より「呂布の武力が必要」ということで、早々に呂布と雪蓮の婚姻が決まる。

一方その頃洛陽では董卓が好き放題。帝を幽閉、毒殺の上、帝の弟を新帝に立て、自らは「相国」として政をほしいままにする。あ~、こないだ『蒼月抄』でも聞いた単語だ、[相国」。平清盛が「入道相国」と呼ばれていたんですよね。帝に代わって国政を牛耳る「宰相」。

董卓役は風間柚乃さんなんですが、これがまためっちゃワルい! ワルが巧い!

権力に溺れ、恐怖で人を支配する喜びに酔いしれる残虐な男をジェンヌがこんなに巧く演じちゃっていいんですか。てか、主役に加えて二番手にも人の心がないって!

しかも三番手・礼華はるさんまで来てもまだ人の心がないんですよ。礼華さん演じる李粛は董卓に心酔してて、「董卓様の命に叛く者は死んで当たり前」と思っている。またキツいメイクが似合うんだよなぁ、礼華さん。

彩海せらさん扮する李儒まで来てやっと少し人の心が見えてくる。李儒は董卓の信頼厚い、「右腕」とも言える部下なんだけども、最近の董卓の横暴ぶりについていけなくなってきてる。「こんなことをしていては人心が離れていく」と考え、董卓の機嫌を損ねない範囲でどうにか人死にを減らせないかと頑張っている。

見るからに武官衣装の李粛と違って、李儒は文官ぽい衣装。ヤバい人だらけの中では温厚なキャラだけど、ただ「いい人」ではなく、董卓に重用されてる右腕、「知恵袋」なので、それだけの「大きさ」「重さ」も見せなくてはいけない役。個人的には「もっと彩海さんにキラキラした衣装着せて~~~」「もっと溌剌とした役やらせて~」と思ってしまうんだけど、「理想の主君」ではなくなってしまった董卓に対する葛藤、「耐える」系の彩海さんも素敵でした。

最後、李儒は李粛にグサっとやられてしまうんだけど、つい「あんなに互いを信頼しあった仲なのになんてことするんだよ、インソン!」と思ってしまった。インソンじゃない(わからない人は『雨にじむ渤海』の記事を読もう)。

で、呂布と雪蓮との結婚式。呂布にとっては「政略結婚」に過ぎない、野心のための踏み台に過ぎないはずの雪蓮。けれども婚礼の宴の席で雪蓮が見せた「清らかすぎる心」に打たれ、呂布は心乱されてしまう。

宴の席に紛れ込んだ「肉引き」の少年。周囲の者が蔑み、処罰しようとするのを雪蓮は止めるんですが、実は呂布の出自も「肉引き」であり、それがために激しい差別を受け、母親も無惨に殺されてしまった。呂布の野心、「人間すべてに復讐する」という苛烈な想いは、その差別から来ている。

「肉引き」って要するに「屠殺業」で、獣を殺し、その皮を剥いでなめすような仕事をする者は人間以下、穢れた「獣」という扱いをされている。呂布が「獣屠れば蔑まれ、人殺めれば讃えられる」と歌うとおり、そして雪蓮が「彼らがいなければ肉を食べることも革を使うこともできないのに、どうして差別するの」と訴えるとおり、本当に理不尽。

日本でもそれらの職業の人々は長く「穢多」として最下層に位置づけられてきたわけだけど、古代中国でもそうだったんですね。ヨーロッパとかではどうだったんだろう……。

雪蓮に対して本物の愛が芽生えそうになるところで、李粛からの調略。「丁家皆殺しにして董卓のところへおいで~。赤兎馬あげるからさ~~~」 ほんと董卓陣営、人の心がない。

赤兎馬役は羽音みかさん。いや、馬じゃん?って思うけど、馬とのダンスシーンがあるわけですよ。最初に赤いシルエットで格好いい馬の絵が浮かんで、そこから羽音みかさんと鳳月さんのダンス。ここのカゲソロがすごくうまかった。彩姫みみさん

赤兎馬の誘惑に負け、主君丁原その他を斬りはらっていく呂布。ここの呂布の衣装がまた! 血みどろの白い衣装が呂布の鬼気をさらに際立たせる。残酷なシーンなんだけど、鬼気迫る鳳月さんが本当に美しく格好いい

雪蓮だけは手にかけたくない――呂布は刀を捨て、雪蓮に「俺を殺せ」と迫る。あそこ、ほんとに雪蓮になら殺されてもいい、むしろここで雪蓮の手で終わらせてほしい、って呂布は本気で思ってたんじゃないかなぁ。残念ながらそれは叶わないんだけど。

呂布は董卓の配下となり、紆余曲折を経て、最後は雪蓮を守って果てる。雪蓮が呂布のことを思い出すきっかけが「手のぬくもり」とかそういう優しく楽しい思い出ではなく、「血塗れで武器を振るう姿」なのがね、せつないよね……。それでも、「愛」という言葉を使ってくれる雪蓮。

「この想いを、愛と呼んでくれるのか――?」

最期の呂布と雪蓮とのやりとり、呂布のこの台詞にうるうるしてしまった。誰よりも呂布自身が、「この想いを“愛”と呼ぶのはおこがましい」と思っているに違いなく、ましてや彼女に受け入れてもらおう、許してもらおうなどとはおそらく考えたこともなく。

ただただ「彼女を傷つけることは許さぬ」と、その一念で命を賭した。それまでの人生すべてを捨てて、ただ彼女のために戦うことを選んだ。その無私の想いを、雪蓮は“愛”と呼んでくれる。彼女からすべてを奪った非道な裏切り者の想いを、それでも“愛”と。

うぉーん、良かったね、呂布。

鳳月さんのお芝居がまたほんとに素晴らしいんですよね。ずっと苛烈な鬼神のままなのに、哀しみが匂い立つ。

雪蓮役の天紫さんも、絢爛な中華衣装がよく似合って美しく、たおやかで無垢な良家の令嬢でありながら芯のある女性を好演。「皆殺しの夜」のところと、ラストの呂布とのやりとり、ほんとに良かったなぁ。

鳳月さんと風間さん、「大人の男役」お二人が揃った月組ならではのピカレスクロマン――うん、いいよね、悪い男、いい。途中中国語の歌があったり、音楽も良かったし、衣装が本当に素敵で。あの冠(?)のツノみたいなやつも格好いい。

主役級がみんな濃すぎるので、他のキャラクター、スターさんの印象がちょっと弱いんだけども、雪蓮の父、丁原役が安心と信頼の佳城葵さんで、個人的に「うんうん、この役は佳城さんだよね!」って思いました。丁原も数少ない「人の心がある」役なんですよね。董卓に「そんなやり方は間違ってる」と面と向かって意見する度胸と見識の持ち主。なのに(というか、だからこそ?)呂布にコロッと騙されてしまうんだけども…。


Amazing Fantsyと銘打たれたショー、『水晶宮殿 クリスタルパレス』齋藤吉正先生の作/演出。齋藤先生だからまたアニソンとかあるかな、と思ったら中詰めが水樹奈々メドレーだったらしいんだけど、彼女の歌ほとんど知らないので盛り上がれず……。「アニソンぽいなぁ」「今どきのビートだなぁ」としか思えなかった。フィナーレにはミッチー(及川光博)の曲も使われていたらしいのに……気づけなかった……。

わかったのは第四楽章「恋のデリバリー・ロード」の冒頭、礼華さんが歌っていた「噂のふたり」だけ。もっと精進しなければ。

プロローグはいきなり風間さんの「デビル・フリーザー」。お芝居に引き続き悪役の風間さん。ファルセットの使い方が格好良かった。鳳月さんも風間さんも歌うまい。

「水晶宮殿」というタイトルから、もっとファンタジックで妖しい、クラシカルな雰囲気を予想していたら、すごくシャープで現代的な感じで、中詰めはなんでか恐竜で水樹奈々だし、割とずっとテンポの速い曲が続いて、こう、「どの場面」「どの曲」という印象が残ってない。

「恋のデリバリー・ロード」の場面はカジュアルな若者たちの群舞、背景にはスターさんのポスターで、他と違ってわかりやすかったんだけど、でもああいう感じの場面、さほど好みではなく……。執事役の佳城さんの大きなリボンが可愛くて、娘役さんとコミカルなやりとり(もちろん台詞ではなくダンスで)してらしたのが楽しかった。

なんか、佳城さんと彩海さんだけをひたすら双眼鏡で追っていました。彩海さんは第八楽章での「炎神」のコスチュームが良かったなぁ。オペラ座の怪人風仮面も格好良く。出番短いのが残念だった。炎神だけでもっと場面作って~~~。

客席降りはちゃんと2階にも来てくれて嬉しかった。2階に来ると来ないとで、ショーの評価がだいぶ変わる(笑)。

第九楽章の冒頭かな? 組長・梨花ますみさんがセンターせり上がりで歌唱。きれいな輪っかのドレスで「誰だろう?」と思ったら梨花さんだったw 組長クラスの方がせり上がりで登場するの、珍しくない??? 1981年初舞台の梨花さん、お元気で何よりなんだけど、若手娘役さんの見せ場にしてあげてほしい気も。あと、ああいう使われ方すると「あれ?梨花さん月組最後?」とかよけいなことも考えてしまって(退団者が目立つパートを与えられる奴)、ニュースを確認してしまいました(そんな情報はなかった)。

この3月から副組長2名体制になって、夢奈さんと佳城さんが副組長。夢奈さんが研17で佳城さんが研16かな? 夢奈さんはほんとにお顔が小さくて可愛らしくて、佳城さんも「コメディ要素のあるおじ様」がハマるけど普通にシュッとして格好良いので、「まだこんなにお若いのに副組長なの」と思ってしまう。バンバンセンターでせり上がってほしい。


正直ショーはあんまり好みじゃなかったけど、『RYOFU』の方はもう一回じっくり見たいなぁ。千秋楽ライブ配信見ようかしら……。