(※以下ネタバレあります。これからご覧になる方はご注意を。記憶違い等多々あると思いますがご容赦を)



花組全国ツアー公演『マジシャンの憂鬱』『EXCITER!!2026』をライブ配信で楽しみました。良かったぁぁぁ、特に『マジシャンの憂鬱』が素晴らしかったです

初演は2007年月組さん。瀬奈じゅんさん主演。そして昨年博多座で永久輝さん&星空さんが再演、その評判が良かったらしく、今回全国ツアーで再々演となったそうですが、「評判が良かった」のも納得、これは楽しい!

作/演出は正塚晴彦先生。あー、もう、正塚節全開、掛け合いの台詞劇たまらん。台詞も多いし歌も多い。冒頭からこれでもかと永久輝さんがあの独特の歌声を披露してくださる。コーラスや掛け合いの多いナンバーの使い方、場面転換の際に流れる「マジックマジックマジック~♪」というハーモニックなアイキャッチ――。『BLUFF』を思い出すなぁ。

『BLUFF』のドノヴァンは天才詐欺師でしたが、『マジシャンの憂鬱』の主人公シャンドールはタイトル通りマジシャン。でも最近は「透視能力」を売りにしています。貴族のご婦人の迷い犬の居所を当てたりして、「超能力マジシャン」として巷で噂の彼のもとに、ヴェロニカと名乗る女性が接触してくる。身分を明かさない彼女に案内された先はなんと皇太子ボルディジャールの屋敷だった。

3年前、事故で命を落とした皇太子妃マレーク。深く彼女を愛していたボルディジャールは最近頻繁に彼女の夢を見、その死の真相に疑いを持つようになっていた。「あれは事故ではなく事件だったのではないか?マレークは何者かに暗殺されたのでは?」

その死の真相を、シャンドールの透視能力で解き明かしてほしい。

でももちろん「透視能力」なんて嘘なんですよ。詐欺なんです。仲間と色々調査したり仕込んだりしてさも超能力で見通したみたいに装ってるだけ。「皇太子妃の死の真相」なんて、暴けるわけがない。

断りたかったのに断り損ね、トンズラし損ね、「こうなったら嘘八百で向こうから愛想を尽かしてもらうしか」とついた嘘もなぜか的中、事件の渦中に巻きこまれていくシャンドール。困っているはずなのにあんまり困った感じじゃなく余裕綽々に口八丁で対処していく永久輝さんのお芝居がめちゃくちゃ良いんですよねぇ。あんな状況、ほんとだったらもっと焦ったりイライラしたり、仲間に怒鳴ったりしてもおかしくないのに、「やれやれ、どうするかね」みたいな大人の余裕。

正塚先生のキャラ造形力が冴える

彼の助力を良く思わない真犯人側から命を狙われても、たいしてパニックになることもなく、落ち着いててほんとにすごい。どういう育ち方をしたらああなるんだ。「透視」は詐欺だけど、ケチな悪党では全然なく、粋でお洒落で頭の回転の速い紳士。本当に永久輝さんが良い

皇太子ボルディジャール役は聖乃あすかさん。聖乃さん、いきなり「ボルディジャール」を噛んでらしたけど、口内炎でもできてらしたのかしら。もう一個所ぐらいなんか言いづらそうに聞こえた台詞が。

ボルディジャールはちょっと過剰なキャラクターで、コミカルで、これまでシュッとした聖乃さんしか観たことなかったので、とても面白かったです。

マレークの侍女でシャンドールのお目付役となる女性ヴェロニカを星空美咲さん。生真面目すぎるゆえに見ている方がクスッとなる感じ、シャンドールに惹かれていくお芝居、ラストでのシャンドールの提案への食いつき方――永久輝さんとの息もぴったりで、素敵でした。

3年前に事故死したはずのマレーク、実は生きてるんですが、なんで生きてたのか、3年前の検死どうなってたの???って思うんですが、まぁ舞台は現代ではない(とはいえ20世紀ではある)ので、埋葬してから蘇生した、もないとは言い切れないのかもしれない。

なんか「病院もグルだった」みたいな台詞もあったような気がするけど、でもボルディジャール含め大勢の人間が埋葬に立ち会ってるはずで…。そもそも真犯人側が「死んだことにして生かしておく」理由がわからない。マレークは事故のショックで記憶をなくしていたし、生かしておいても問題ない、何ならいざという時何かの切り札にできるかも、と考えた???

普通こういうお芝居だと幕前で犯人側の人物が「困ったことになった」とかなんとか喋ってる場面があったりして、「観客には誰が犯人か早い段階で開示されている」ことが多いと思うんですが、今回はまったく犯人側の事情が描かれず、終始シャンドール側の描写で進みます。

なので「こんな熱愛コミカルなノリで実はボルディジャールが悪者だったりする?」とちょっと皇太子を疑ってしまいました。マレークが生きているということは、実はマレーク自身がボルディジャールの悪事に気づき、「死んだふり」をして彼の手から逃れたのでは?などと。

あるいは侍女3人(ヴェロニカの他に2人の侍女がいて、3人とも謎拳法の使い手らしくやたら構えを取るのが面白い)のうちの一人が裏切り者なのでは?とか(だからシャンドールへの依頼を知って狙撃してきた)、皇太子妃の墓地を守る司祭が怪しいのでは?とか。

でも全部はずれだった。主要登場人物に誰も悪い人がいない! 誰も裏切ってない!!!

この「犯人側を描かない作劇」、終盤までずっと「犯人誰なの?」とワクワクして見られるし、何より主人公シャンドールの出番が多くて、彼と周りのキャラクターとの会話劇をたっぷり堪能できて、ほんとに楽しかったです。

「楽しかった」しか言ってないけども(笑)。

事件が一件落着して、さてここからがまた正塚先生の本領発揮! 『BLUFF』の「一緒に持ってくぞ!」的名言が飛びだすのか? どういうハッピーエンドになるんだ???とわくわくどきどき。

「超能力マジシャン」のほとぼりが冷めるまで、ヨーロッパをあちこち旅行でもしようと思ってるんです。え?あなたの故郷はウェールズなの?じゃあ出発地はウェールズにしましょうか。一緒に行っていただけると助かるな、マネージメントしてくれる人がいると――。

「好き」とか「ついて来て」とは言わずに言葉巧みにヴェロニカを誘うシャンドール、それに食いついて「行きます!!!」と言っちゃうヴェロニカ。序盤の「ヴェロニカに監視されることに慣れなくては」というくだりを逆手に取って、「もうそれ(=一緒にいること)は慣れてますからね。あなたはどうです?ダンスは慣れました?」といけしゃーしゃーと言っちゃうシャンドール。

いや、もう、ほんま、口八丁すごい。「一生懸命口説く」というのではなく、いかにも「さらっと」言ってのける。そしてそんな「さらっと」ビジネスライクに「マネージャーとして付いててくれると」と言ったあとに

「好きですよ、あなた」

おおおおおおおおおおおおお、これか、FNS歌謡祭のあれ、これだったのか(指示代名詞だけで喋るな)。

「好きですよ、あなた。あなたはどうです?」

……ほんとに正塚先生はどういう顔でこんな台詞書いてるんですか??? どっからこんなキャラクターと台詞が出てくるんです??? 宝塚の男役にしか許されないキャラクターと台詞、ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ。

シャンドールがヴェロニカにコートを掛ける仕草もほんとに格好良くて、ヴェロニカが最後ベンチに置き去りにされたシャンドールのシルクハットを手に取るのも素敵で。

にやにやが止まらない。

途中のジグモンド(一之瀬航季さん)とラースロ(希波らいとさん)の掛け合い台詞も楽しかったし、大作もいいけどこういう洒脱な作品を大劇場で観たいんだよぉぉ、永久輝さんシャンドール、生で観たかったよぉぉぉ。


ショー『EXCITER!!2026』藤井大介先生作/演出。2009年真飛さんトップ時代の花組で初演、その後2010年にすぐ大劇場で再演され(珍しいですよね)、2017年花組、2018年花組の全国ツアーで上演され、今回が5回目。永久輝さんが「Five EXCITER!」と掛け声をかける場面もありました。

私はそのどれも生では見たことがなく、今回の永久輝さん版を見たあとで真飛さん版録画を見返したのですが、第3章『Men's Exciter!!ー男の革命ー』部分がだいぶ違いましたね。「チェンジBOX」が出てくるのは2018年版を踏襲しているみたいだけど、Wikiのあらすじを読むとストーリー展開はだいぶ違う。

掃除夫に扮した永久輝さんがとても可愛いらしい場面でした。メガネもリュックも可愛い。客席から登場して、「大阪弁教えてもらったんだ。好きやで、あんたら!」と言ってから舞台に上がってらした。全国ツアー恒例ご当地アドリブ楽しい。

全体的にはオーソドックスでシャープな雰囲気、冒頭のタンゴが格好良く、フィナーレの男役小階段も格好良かった。出演者少ないからみんな出ずっぱりな感じで大変だけど、見てる方は推しをたっぷり見られて楽しい。客席降りも2回あって、前方通路席の人超羨ましい。

今回専科から高翔みず希さんが出演されてますが、高翔さん、『EXCITER!!』皆勤賞??? 全部出てらっしゃいますよね? 2018年の『EXCITER!!』は今回と同じ正塚先生の『メランコリック・ジゴロ』との併演。正塚先生の作品、全ツに選ばれがち。

『BLUFF』といい『メランコリック・ジゴロ』といい『マジシャンの憂鬱』といい、正塚先生は「嘘から出たまこと」がお好きですよね。そしてどれも主役とヒロインの関係性がたまらない。ふふふ。

繰り返しになりますが、「大作もいいけどやっぱり宝塚はお芝居+ショー」。配信とはいえ観られて良かったです。