6月2日の15時、VISAと友の会の合同貸切公演を観てまいりました。

大劇場で星組を観るの何年ぶりだろ……。2012年11月の『宝塚ジャポニズム』以来? 6年ぶり???

紅さんと綺咲さんのトップコンビは昨年梅田芸術劇場の『オーム・シャンティ・オーム』を観ているんですが、あれからもうほぼ一年。一年過ぎるの速いな……。

で。

そんな、久々の星組大劇場公演だったわけですが。

めっちゃ楽しかった!!!最高っ!!!!!!

落語ミュージカルと銘打たれたお芝居『ANOTHER WORLD』が本当に面白くて楽しくて、観に来て良かったと心底思いました。

“ANOTHER WORLD”ってGACKTさんの曲にもありますが、日本語にすると「もう一つの世界」。そう、「あの世」です。

いきなり、トップスターさんが死んでます。

蓮の小舟に乗って、「あれ?ここはどこや?そうや、わては死んだんや!死ぬ前は死ぬほど死ぬのん怖かったけど死んでもうたら意外とええもんやなぁ」などと大阪弁でまくしたてる!

さすが大阪出身、紅さんのセリフ回しが素晴らしい。セリフが多くてちょっと早口なので、大阪弁話者以外にはもしかして聴き取りにくいかもしれないけど(^^;)

「地獄八景亡者戯」「朝友」「死ぬなら今」といった落語がモチーフになっていて、紅さん演じる康次郎はのっけから死んでます。両替商のぼんぼんで、なんと死因は恋煩い。「あの世でも借金取り立てて来い!」と父親が借金の証文を棺桶に入れるとちゃんとそれがあの世に届いて、三途の川を渡ったりする時に役に立つ、というのがすごい。

康次郎の恋の相手、菓子屋のいとはん、お澄もまた恋煩いで死んでしまっていて、「同じあの世にいるならぜひ探しに行こう」となるのですが。

袖すり合うも多生の縁で道連れになるのが江戸の米問屋の若旦那、徳三郎とその取り巻き。大金持ちのこの若旦那、「娑婆の遊びにはもう飽きた、あの世なら何か面白いことがあるだろう」とわざとふぐの肝を食べて死んだっていう豪儀なお方でございまして。

大阪の純なぼんぼんと、江戸のいなせな若旦那。水と油かと思いきや、みんなが「死因は恋煩い」と聞いて笑う中、徳三郎は「いや、立派じゃねぇか。“おまえさんがいないとあたしゃ死んじまうよ”とよく言われるが、ホントに死んだやつなんか見たことねぇ。それだけ人を好きになれるなんてすげぇよ」と康次郎を褒める。

おおお、さすが「娑婆に飽きた」からって死んじゃう人は人間の器が違うわいな。

この徳三郎が礼真琴さんなんですが、ちょっと見ないうちに(いや、6年は“ちょっと”じゃないけど)すっかり男臭くなって!!!

びっくりしました。

6年前は少年役だったこともあって「可愛い子だな~」という印象だったのに、すっかり立派な男役。歌やお芝居の巧さは以前観た時にも光っていたけど、さらに「男の色気」が加わって、「何この人すごい」に。

紅さんのコメディエンヌぶりと礼さんのいなせな若旦那ぶりが好対照で、お話の楽しさに奥行きを与えておりました。

「冥途にあるからメイドカフェ」とか、「出演者が全員団十郎、初代から全部揃ってる歌舞伎」などなど、小ネタも楽しい。小林一三翁はあの世とこの世を繋ぐ電車を建設中、もちろん「冥途歌劇団」もあって、美稀さん扮する冥途のスターが「宝塚我が心の故郷」を熱唱(ここ、場面名が「冥途、我が心の故郷」なんですけど、いいのかそれで(笑))。歌舞伎が全員団十郎なら、さしずめこのスターさんは春日野八千代大先生かしらん。美稀さんさすがの貫禄で素敵でした。

続くラインダンスが阪急電車モチーフのマルーン色の衣裳なのがまた! 可愛いし、阪急ファンにはたまりません。

『ベルサイユのばら』ならぬ『ベルサイユの蓮』というポスターが貼ってあり、「演出:植田紳爾」という名前の横に「近日来園予定」と書いてあるとかなんとか。

わはは。楽しいけど大丈夫なのか。
(プログラムに“落語では自分の師匠を登場させるのが慣例なので”と谷先生が書いてらしたので、大丈夫なのでしょう)

全編本当に楽しいんだけど、ただ楽しいだけじゃなくほろっとさせられるところもあって、康次郎が閻魔大王に「みんな一緒に裁きを受けたい」と訴える場面などグッと来ました。

康次郎の恋煩いを笑わず「立派じゃないか」と言うところ、そして「福の神になりたい貧乏神」をも笑わず、「きみの夢を応援するよ」「諦めちゃダメだよ」と言うところ。この、「人を笑わない」っていうのがすごくいい。

人を貶めたりバカにする笑いはしっかり否定して、そうじゃないところで笑わせる。

いやぁ、ほんと、いい作品だったなぁ。

『エリザベート』とか『ファントム』とか、この後大作の再演が目白押しだけど、私はこういう素敵なオリジナル作品をもっと見たいわ。あの世のお話だけど(あの世のお話だから?)康次郎も徳三郎も若衆姿で格好良く、宝塚の日本物の美しさも堪能できて、初めて宝塚を観る人にもお薦めだと思う。

閻魔大王の場面で三面六臂の人がいたのもよくできてて面白かったな~。閻魔大王に「浄玻璃の鏡」と来たらつい「鬼灯さんはどこ!?」と思っちゃうけど(わからない人は『鬼灯の冷徹』を読もう)、もちろんそれっぽい補佐官は出てきませんでした。奪衣婆も『鬼灯』とは違って美人だったし。

閻魔大王役は声ですぐわかる汝鳥さん。さすがのお芝居、貫禄でした。貧乏神のびんちゃんも専科の華形さんが演じていて、華形さんはショーの方にもご出演。

ということで、『ANOTHER WORLD』の後はショー『Killer Rouge』。こちらも華やかでキラキラ☆ 楽しめました~~~。

紅さんにちなんだ「Rouge」というタイトル。のっけから紅い竜で格好いい! あの場面、ビジュアルが大変好みでした。

薔薇モチーフの中詰めでは綺咲さんがなんと「薔薇は美しく散る」を。「あれ?ベルばらじゃん」と軽くスルーしそうになりましたが、ベルばらはベルばらでもアニメのベルばら。今まで宝塚の舞台で使われたことってあったのかな。大好きな曲なので嬉しかった♪

初舞台生のラインダンスは「SAKURA ROUGE 104」と銘打たれ、「さくらさくら」の曲……と思いきや、ケツメイシの「さくら」、森山直太朗の「さくら」、いきものがかりの「さくら」と、「さくらメドレー」。どれももう10年くらい前の曲で、「最近のJ-pop」とは言えないのかもしれないけど、ン十年宝塚を見ている身としては、「こんなに最近のJ-popが使われるなんて!」とちょっと衝撃でした。

時代は変わっていくのね……。もう平成も終わるんだものね……。

しかぁし!

フィナーレの男役大階段では昭和の名歌謡曲「情熱の嵐」がっ!!!

まさか公演中に秀樹の訃報を聞くことになるとは思わず、「紅」→「情熱」というイメージで使ったのでしょうけど……礼さんの歌とダンスがピタリとハマり、感慨深い名場面になってました。うん、この男役大階段は何度でも観たい。

続く紅さんの歌は歌詞の最後が「くれない」になってて心憎かった。これも歌謡曲かなと思ったけど、プログラム見ると「スパニッシュ歌謡」って書いてあって、日本の曲ではないみたい(なんか知ってる曲のような気がしたんですが(^^;))。

貸切公演恒例、最後の紅さんの挨拶までたっぷり楽しんで、一緒に行った母も「久しぶりに観たけど星組いいね。また観に来よう」と高評価。「最近雪組ばっかりやったから新鮮やった」とも。

でも今年はもう大劇場での星組公演はないんですよね。来年のお正月までお預け。あ~次はどんな舞台を見せてくれるんだろ、早くも待ち遠しいぞ~。


おっと、来年のことを言うと鬼が笑いますな。うぷぷ。



【2019/02/21追記】

今さら「知ってる曲のような気がしたスパニッシュ歌謡」ミッチー(及川光博)の「紅のマスカレード」だったことを知りました。
どうりで聞いたことあるような気がしたわけだ。
この公演を観たのが6月2日で、ミッチーのライブに参戦したのが6月の24日。参戦前の予習で春頃からミッチーの曲色々聞いていたから、「紅のマスカレード」も絶対聞いてたはず……。
俺としたことがががが。
てかマジ今さらすぎてアレなんだけど、10年後に振り返った時にきっと忘れてるから備忘録としてここに書き記しておくのだった。

(いつまで見られるかわからないけど紅さんのDVDプロモ映像もリンク貼っておく→こちら
(おまけでミッチーのも)