(※以下ネタバレあります。これからご覧になる方はご注意ください。記憶違い多々あると思いますがご容赦を)



11月18日公開、『死神遣いの事件帖』映画第2弾『月花奇譚』観てまいりました。
公開2週目になるとすぐ上映回数が減ってしまうのでどうしようかと思いましたが、頑張って京都まで行ってきましたよ~。

映画第1弾『傀儡夜曲』で主人公幻士郎がまさかの死を迎え、その後の舞台『鎮魂俠曲』では幻士郎を失った死神十蘭が俠客新之助を相棒にして事件に挑んでいたもよう。
で、今回第2弾は舞台が先行、舞台『幽明奇譚』の方で幻士郎が復活したらしいのですが。

一体どうやって黄泉の国から戻ってきたんでしょう? 舞台は観られなかったので、経緯が気になっていたんですが、映画『月花奇譚』では残念ながらその辺の説明はなく。
再びコンビを組んだ幻士郎と十蘭が、以前と同じような日常を過ごしている描写から始まります。

そう、以前と同じく幻士郎はまたしても賭場で負けて、ヤクザなお兄さんたちに追いかけられている。追っ手をやりすごすため、十蘭に変化(へんげ)を頼む幻士郎。「こんなことに命使うんですか?」みたいに言いながらも大きな狸の置物(信楽焼的なあれ)に化け、幻士郎を助けてくれる十蘭。

「お命ひと月分ですよ」
「ええーっ、そんなに?」

みたいなドタバタの後、幻士郎と十蘭は謎の白装束の男たちが侍を襲っている現場に遭遇。最初は「見なかったことにしよう」と立ち去りかける幻士郎、渋々ながらも白装束の男たちと戦います。
「来い、十蘭! 蘭斬刀!」
「お命七日、いただきます!ごちそうさま!」
いいですねぇ、このやりとり。待ってました(*´∇`*)
でも十蘭を刀にするたび寿命が削られてしまうんですから、そりゃ「見なかったことにしよう」ってなりますよね。ヤクザから逃げるためには躊躇なく命を差し出してましたけども(笑)。

のっけからのアクション、鈴木拡樹様の殺陣が格好良いのですが、しかし斬っても斬っても敵は死なない。すぐに起き上がってきてしまう。
「こいつら、腐乱人だ!」

江戸では「腐乱人」というのが流行っていたのです。死人が墓場から甦り、生者を襲う。そして腐乱人に噛みつかれると噛みつかれた人間も腐乱人に……って、要するに「ゾンビ」なんですけど、ただのゾンビじゃない。
腐乱人は頭を潰すか、3日経てば動かなくなる。なので幕府は江戸に外出禁止令を出して第一波を乗り切った。しかしそのおかげで経済は停滞し――ちょ、それ新型コロナウイルスでは!?

しかも幻士郎が出くわした白装束のゾンビ――じゃなくて腐乱人は戦闘訓練を受けているようで、「変異したというのか!?」みたいな。デルタ株かな……。

腐乱人に襲われていた侍は「死霊兵」という言葉を残して絶命。旗本の、それもけっこう高齢の侍が同じように腐乱人に襲われる事件が頻発していて、幻士郎は1作目で懇意になった保科正之から、「事件を調査するように」という依頼を受けます。

一方、幻士郎と十蘭は事件現場の近くで記憶喪失の娘を助けていて、仮に「ハナ」と名付けたその娘から、「私が誰なのか調べてほしい」という依頼も受けていました。
「ハナ」の元が「はてな」なのが笑えます。
「あきな」「ゆりな」みたいな名前があるんだから、「はてな」もOKだろうという幻士郎、いや、江戸時代に「あきな」とかあったの?(笑)

ハナ役は乃木坂の清宮レイさん。1作目のヒロインも乃木坂の子だったよね、鈴木絢音さん。鈴木さんもお芝居上手だったけど、清宮さんも普通にお芝居こなしてらして、すごいなぁと。殺陣のシーンは吹き替えだったのかな? ご本人もがんばってたのかしら。

ハナが事件に関係のある人物なのは予想がつくのだけど、視聴者はさらに「この子は“キク”なのでは?」と思ってしまうのです。映画の冒頭に、「善さん」と「キク」という少年と少女のシーンがあるから。
「いつかかんざしを買ってやる」「買ってくれたら、私、善さんのお嫁さんになる」という可愛らしい約束をかわす2人。

薬問屋の番頭善吉に出会って、その思い出が蘇り、「私の名は“キク”らしい」と思い出すハナ。

善吉役はキラメイブルー、水石亜飛夢くん。名前のとおりごく普通の、善人の若者で、アクションも変顔もなく、ましてや万力ネタもなく。ちょっと(だいぶ)寂しかったですねぇ。よく見たら後ろに万力の置物があったりとかした???
幻士郎と小判を引っ張り合いするところが、もしかして万力ネタだったのかしら。

善吉の方はまったくハナのことを覚えていなくて、「知らない娘だ」と言います。先に結論を言ってしまうと、知らないのも道理、ハナは「キク」ではなく、ただ二人のやりとりを納屋の隙間から覗いていただけの、浮浪児だったんですね。
近隣の家から食べ物を盗んで生きるしかなかった子ども。空真という妖術師に拾われてからも、過酷な扱いに耐え、彼の忠実な奴隷として生きるしかなかった子ども――それが彼女だった。

記憶をなくし、幻士郎たちと過ごす中で、ハナは「今が人生で一番楽しい」と言います。幻士郎は「記憶を取り戻したらもっと楽しいことがいっぱいあったに決まってる」と答えるんだけど、そんなもの彼女にはなかったんだよね……。

記憶喪失ネタ、『漆黒天』とかぶるし、「思い出さない方が幸せだった」みたいなのもベタだけど、でも最後はほろっとさせられました。幻士郎を庇って、「会えて良かった、一番幸せだった」と言って死んでいくハナ。彼女にとっては「思い出の人」である善吉に、「そういやあの頃、近所に困った浮浪児の集団がいたなぁ」としか思い出してもらえないハナ……。

「自分とは違う世界に生きている子どもたち」を眺めて、「かんざしを買ってやる」という言葉をさも自分に向けられたもののように記憶に刻みつけて、そうして、幻士郎にかんざし買ってもらえたんだよね……良かったね、ハナちゃん。

って、「ハナ」はほんとの名前じゃないんだけど、でも、ハナとして死んで行きたかったんじゃないかな、彼女は。

で。
彼女を手駒として使っていた妖術師・空真
もちろん巷の腐乱人騒ぎは全部彼の仕業。死体を蘇生させる薬を開発して腐乱人を生み出し、そいつらを「死霊兵」として使役して江戸幕府を転覆しようとしてた。
「死霊兵」というのは実は家康の時代に研究されていたもので、もともと空真は家康の命を受けて動いていた。それが太平の世になったことでお役御免となり、捨てられた空真は幕府に対する恨みを募らせながら研究を続けていたわけです。

空真や死霊兵のことを知っている古参の旗本たちは皆おじいちゃん。けれども同時代人のはずの空真は若く美しい。なんたって演じるのは北村諒くんですからね。オペラ座の怪人みたいなマスクがよく似合って麗しかった。
なんで若いままかと言うと、「お前たちのように醜く老いるのは嫌だったから」で、若返りの薬を飲んでいたらしい。
すごいなー、その薬を売るだけで一儲けどころか幕府をコントロールできたかもしれないのに。自分以外の者には使わせたくなかったのかしら。

善吉が番頭を務めている薬問屋の主人は空真と結託していて、空真から「抗腐丸」とかいう「これを飲めば腐乱人に噛まれても大丈夫!」という薬を仕入れて大もうけ。
薬を売るために、「3日じゃなくて7日間動ける腐乱人を作って」みたいな話もしている。

腐乱人に噛まれた人は腐乱人になって、3日経つと動かなくなる――つまりは「死ぬ」だと思うので、日数に関わらず絶対噛まれたくないと思うんだけど、「3日間」ぐらいなら外出しないでなんとかやり過ごせる、ってことなんでしょうね。実際第一波はそれで収まったらしいので。(この辺りの「新型コロナ」彷彿ネタはちょっとムズムズしました(^^;) まだネタとして楽しむには“真っ最中”すぎる…)

終盤まで「裏で糸を引く」感じであまり動きのなかった空真、実は戦闘力もめちゃくちゃ高くて、最後は幻士郎との一騎打ち。幻士郎が「大変化(だいへんげ)」を使わないと勝てないぐらい強い。

「大変化」って「お命無限!いただきます!」の技で、前作ではこれを使った結果ほんとに三途の川を渡っちゃったんだけど(※復活できたので三途の川に足を踏み入れた、ぐらいだったのかもしれない)、今回はそんなこともなく見事空真を撃破。
でも「無限にお命いただいてる」んだから、寿命はかなり短くなっちゃってるはずよね? あと何回「大変化」使えるんだろう……。

「大変化」すると幻士郎も髪型その他見た目が変わるんだけど、前作でもあんな髪型でしたっけ? ちゃんと覚えてなかったので、「あれ?こんなだったっけ?」と思ってしまいました。

拡樹様と北村くんのアクションは見応えたっぷり、お二人とも格好良かった~。寒い時期に撮影されたようで、息がかなり白くて、空真はまだマントっぽい感じで厚着に見えたけど、幻士郎さん寒そうだった(笑)。

空真との最終決戦前に幻士郎と十蘭はちょっとした仲違いをしていて、幻士郎はまず死神・亜門で戦います。十蘭との契約だと刀の名前が「蘭斬刀」、亜門との契約だと「亜斬刀」。そうなんだ~~~。
亜門とは舞台『幽明奇譚』でコンビを組んでいたようで、「僕を使って~♡」とニコニコ笑顔で幻士郎に訴える亜門くん、可愛かった。死神と死神遣いというより、飼い主に「遊んで遊んで!」言ってる犬みたいだったw
亜門を演じる小林亮太くん、名前に見覚えがあるな~と思ったら『仮面ライダーアマゾンズ』のマモちゃんでした。マモちゃん、立派になって(笑)。

幻士郎とは喧嘩したものの、十蘭は十蘭で腐乱人騒ぎを止めたいと思っており、新之助に声をかけるもあっさり振られ。「おまえとの契約はあの時だけ、一時的なもんだ」と。
崎山つばさくん演じる新之助、ポスターにはそこそこ大きく映っていたのでたくさん出番があるのかと思いきや、このシーンまで出てこないんですよね。新之助のファンというわけでもないけど、「いつ出てくるの?」と心配してしまった。
新之助の子分、陣さん(松本寛也さん)扮する義助は割と早いうちに出てきたんだけど。露天で博打を売る役で。

「博打を売る」っておかしいな、なんて言うんだろ。壷の中に張り子の虎みたいなのを入れて、3つの壷を「どっちがどっち」とぐるぐる場所を入れ替えて、客に「どの壷に張り子が入ってるか当てさせる」の。
幻士郎はいいカモでことごとくハズして有り金巻き上げられるんだけど、横で見てたハナが参戦して百発百中、全部当てて賭け金以上に取り返す。
けっこう長いシーンだった。陣さん出番多い(笑)。

十蘭の誘いは断った新之助、けれどももちろん「こんな連中を好きにさせといたんじゃ鬼八一家の名がすたる」と最終決戦に参戦。相棒は百目鬼です。
エンターさん(陣内将さん)扮する死神・百目鬼。前作では山口馬木也さんに使われていた(というか使っていた)百目鬼、舞台の方で新之助と契約したことがあったようで。

「私を使わない? まだ契約は残ってるわよ。あんたの魂、ちょっとイケてるから」などと自分からアピールして新之助の銃に。

百目鬼、出番そんなにないんだけど、めちゃめちゃいい! エンターさんがすごくいい!

途中、十蘭が死神たちの鍋パーティみたいなのに参加する時、百目鬼は呼ばれてなくて、「百目鬼は呼ばないの?」「あいつは群れるのが好きじゃないから」とかって噂をされて、百目鬼ったら乙女チックに手で口を覆いながら「くしゅん」とくしゃみをするのよ。何それ可愛い、めっちゃいい!!!

呼ばれてないし、中には入らないけど様子は窺っててこっそり話は聞いてる百目鬼、いいキャラだ~~~。好き

鍋パーティには十蘭、亜門の他に2人死神がいて(※死神の数え方は“人”でいいのか?)、そのうちの一人が若林司令官(田邊和也さん)でした! 役名は確か獅子王。すごいな、強そうだし格好いい。キャスト一覧には出てなかったので、思いがけず司令官のお顔を拝めて嬉しかったです。妙にテンション上がった(笑)。

キャスト一覧に出ている比奈ちゃん(高田里穂さん)も出番は1シーンのみ。
みすぼらしいなりをしているハナに着物をあつらえてやろう、ということで幻士郎が「友だちに頼む」。その友達が、遊郭の女郎比奈ちゃん。前作でお近づきになった後、親しく友達付き合いしているのねぇ、ちょっとびっくり。
彼女の手で町娘から花魁姿まで、ファッションモデルよろしく色んな格好をさせられるハナちゃん。ほんと、一生で一番楽しい時間を過ごせたね……。

しかし遊郭ってレンタル着物ショップとは違うと思うんだけど、あの町娘の着物一式、幻士郎はちゃんとお代を支払ったのかしら。義助との博打で勝った金を使ったんだったっけ? あの後保科様から依頼料貰えたし、それで払ったのかな。

前作からのキャラクターはみんな出番控えめで、幻士郎と十蘭、ハナちゃんとの「かけがえのない時間」をしっかり描く感じでしたね。
「死神遣い」や死神についての説明をもうあんまりしなくていい分、前作よりもテンポが良くなってて面白かった。まだ幻士郎が「百両~♡」と喜んで小判が降る演出あったけど(^^;)

幻士郎が大変化した時かな、彼岸花バックで大見得切って決め台詞を言うシーンもちょっとこう、そこでブチッと流れが切れてテンポが悪いと思うんだけど、でも「桃太郎侍」とかあーゆー「昭和の時代劇」を彷彿とさせて、もしもこれがテレビシリーズの時代劇だったらちょうど8時45分にこの名乗りシーンがあったのかなぁ、とか。

町の何でも屋、依頼を受けて事件解決、普段はへたれっぽく見えるけどやる時はやる――テレビ時代劇で毎週できそうなお話だよね。時代劇華やかなりし頃なら。

入場特典ブロマイドは十蘭でした。狸の置物から戻った時のポーズかな? 可愛い(*´∇`*)

こんなに可愛いのに実は528歳。幻士郎に雑に「530歳ぐらい」と言われて「まだ528歳です!」と訂正するの、お茶目だった。死神も年を気にするんだ、ちょっとでも若い方がいいんだ(笑)。というか、死神って、生まれた時――存在の最初から大人で、そのまま別に老けたりしない気がするんだけどどうなんだろう。獅子王さんは十蘭よりだいぶ年上っぽいけど、存在年数が長くなると見た目も変わっていくのか。

もし3作目が作られることがあったら、死神たちのパートに焦点を当てたものも見てみたいですね。特に獅子王さんと百目鬼。百目鬼もっと見たいわ(笑)。

あ、そうだ、一つ言い忘れてた。
「死霊兵」を操るのに笛を使うところ、『キカイダー』の「ギルの笛」を連想しました。記憶を失っているハナちゃんが、笛の音を聞いて「うっ」と苦しみ出す様子はまさにジロー……。
死体を兵士にするっていうのは『アマゾンズ』でも出てきたし、東映特撮を色々思い出しながら楽しみました。

次のムビステ『仁義なき幕末』はいよいよ城乃内(松田凌さん)が主演ということで、これも楽しみです。