(※以下ネタバレあります。これからご覧になる方はご注意ください。記憶違いもあると思いますがご容赦を)


7月11日の13時公演を観てまいりました!
2014年に凰稀かなめさんオスカルを拝見して以来、10年ぶりの「ベルばら」ですが、『ベルサイユのばら45』『ベルサイユのばら50』を観ているので、そんなに間が空いた気がしません。『50』はつい2か月前なので、むしろ「またベルばら」という気すらいたします。

『50』は休演なさっていた汝鳥さん、雪組公演ではお元気なお姿を拝見できると思って楽しみにしていたのですが。


いざ幕が開いてみると……あれ? メルシー伯が汝鳥さんじゃない……。
幕間に確認したらちょうど11日公演から休演ということで。やはり体調が優れないご様子、心配です。(※7月16日の公演から復帰されたそう。良かった良かった)
劇場入り口にちゃんと告知も出ていたんですが、気づいたのは終演後。1箇所じゃなく複数箇所に案内貼っといてほしいなぁ。


ジェローデルの諏訪さきさんは12日から復帰されたということで、ある意味貴重な咲城さんジェローデルでした。
7月7日公演では新人公演でジェローデルを演じる律希奏さんが代役を務められたそう。律希さん、研2ですよ! 研2で本公演でジェローデル、しかも主役フェルゼンと二人で舞台に立ってることが多い役…うわぁぁぁ。すごい経験だなぁ。

咲城けいさんのジェローデル、扮装もよく似合って、代役とは思えない落ち着いたお芝居で良かったです。
真那春人さんのメルシー伯も安心して観ていられました。格好いいめのメルシー伯。

幕開き、ミラーボールが回り、お馴染みのあの鐘の音。そして始まる音楽。「ごらんなさい、ごらんなさい、ベルサイユのばぁぁら~♪」
今回初演から50年ということで「いつつとせ薔薇が咲きました~♪」という歌詞になっていました。(「五十年」だと「いつととせ」のような気がするけど、「いつつとせ」と聞こえた)

小公子たちのプロローグが終わると彩風さんフェルゼンの登場! お人形のステファンを手に、「愛の面影」。この曲はどうしてもナツメさん(大浦みずき)のお声で再生されてしまうけど、彩風さんよく声が出て、見事なお歌。貴公子衣装もよく似合ってお美しい

「あのお方と出会ったのは…」ということでパリ・オペラ座での仮面舞踏会の場面になり、アントワネットとの出逢い。「無礼者!」と飛び出てくるオスカル様。
朝美さんオスカル、麗しかったです、ふふふ。

フェルゼン、オスカル、アントワネット、原作イラストをバックに3人の歌があり、その後、ピンクの薔薇の精たちの踊り。ここ、ちょっとダンスが長くて退屈だったな。舞台中央奥に据えられた薔薇のつぼみっぽいオブジェも微妙な造型だったし。
その「つぼみっぽいオブジェ」からフェルゼンとアントワネットが出てきて、愛の語らい。「二人の時はマリーと呼んでください」というあの場面。

オペラ座の時はまだ王太子妃だったけど、あれから一気に15年ほどの月日が流れている設定。
ここのアントワネット、夢白あやちゃんのセリフ回し、もうちょっと軽めでも良かった気がする。その後のルイ16世との場面とか、後半のカペー未亡人のくだりもすごく良かったけど、ここは少し大仰な感じがした。もっと可愛いめに発声しても良いのでは。

で、オスカルとブイエ将軍たちの場面があり。
ここでオスカルのお供をしているのはジェローデルで、アンドレはまだ出てこない

「おおプランタン、おおプランタン♪」と令嬢たちの歌が続き、悶絶夫人と失神夫人の場面。令和になってもまだ「悶絶しそう」を聞くとは。昭和の時でも「モンゼットで悶絶って何だよ」と思っていたのに。
そしてここで。
音彩唯さんのジャンヌ!
キャストが発表された時は意外だったんですけど、音彩さんのジャンヌ、非常に良かったです。可愛いビジュアルの人が意地の悪い黒い役をやる時にしか摂取できない栄養がある! 小悪魔感がたまらないし、しっかりドスも効いて堂々たるジャンヌ。いやぁ、いいわぁ。好き。
ジャンヌってリンゴさん(小乙女幸)やこけしちゃん(花愛望都)といった個性派娘役さんがやるイメージで、「最近の宝塚はジャンヌ役者がいなさそう」と思っていたんですよね。そのせいかどうか知らないけど、2000年以降の再演ではジャンヌは出てきてなくて、1990年ナツメさん版フェルゼン編の梢真奈美さん以来のジャンヌ。

え、そんなに久しぶりのジャンヌだったの!?

音彩さんのジャンヌが一番の収穫、と思うほど好みだったけど、「このままクセつよ枠になってしまうのも」と思ったら、音彩さん新人公演ではロザリーだそうで。
まだ研6なんですよねぇ、音彩さん。ジャンヌとロザリーをいっぺんにやるのすごい。音彩さんロザリーも見てみたい。

で、そのロザリーやベルナールとともにやーっとアンドレが出てきます。待ちかねたよ、アンドレ。でも出番は短く、すぐまたフェルゼンのターン。フェルゼンの居室に、メルシー伯がベランダ(テラス?)から入ってきます。ええっ、なんでそんなとこから。凰稀さんオスカルの時もロザリーがテラスからオスカルの部屋に入ってきてたけど、ベルばらの登場人物たち、玄関から入ってこなさすぎでは。

その後フェルゼンはスウェーデンへの帰国を決め、アンドレに「オスカルを守るのはおまえだ」とか言って、さらにオスカルには「アンドレは君のことを愛している」などとわざわざ手紙に書きます。

「ええっ、何それ。オスカル様、フェルゼンの手紙読んでいきなりアンドレに“私を抱け!”って言うの!? 植田先生いくら何でも改変しすぎ!」とびっくりしたんですが、1990年花組版を見返してみたら同じ展開。全然覚えてなかった、1990年当時は「ええっ!?」と思わなかったのかな、私。
いや、だって、ねぇ、オスカル様の情緒どうなってるの??? 「アンドレが私を?」から自分の想いに気づいて「私を抱け!」になるまでが秒すぎない?

それにこの「今宵一夜」の場面までオスカルとアンドレが一緒にいるシーンがないんだよね。アンドレがオスカルを想う一人語りはあるけど、「ずっと一緒にいた」っていう実績がないままいきなり「今宵一夜」になっちゃう。だからこそ「説明的台詞」としてフェルゼンの手紙があるのかもしれないけど、なんか、唐突だったなぁ。

1990年版では、オスカルがフェルゼンに「そんなむごいことは言われないはずだ」(『ベルばら』のこの独特のセリフ回し、令和になっても変わらない)となじられたあと、物陰からその様子を見ていたアンドレが出てきて心情を吐露したり、もうちょっとアンドレの出番あったのに。
あの時は二番手のルコさん(朝香じゅん)がアンドレをやっていて、「二番手だから」というのはあったのかなぁ。今回は下級生の縣さんがアンドレで……でも89年星組版でも下級生マリコさんがアンドレだったわけで。

縣さんアンドレ、歌が少し弱いし、発声ももう少し…という気がするけど、今宵一夜の場面も、橋の上での最期も熱演でした。
アンドレに抱かれながら「これが愛か――」と呟く朝美オスカル様、展開は唐突だけど、お二人のお芝居は素敵でした♡

が。

このあと、普通ならバスティーユへ続くところ、スウェーデンにいるフェルゼンの場面になり、訪れたジェローデルによる「オスカルは死にました」。
え?え??オスカル様、ナレ死!?

事前にSNSで「ナレ死」情報を得ていたので、開演前にプログラムをチェック、「ほんとだ、バスティーユが後半に」と確認はしてたんですけど、しかし実際に「今宵一夜」のあといきなり「死にました」って来ると「は?」ってなりますね、やっぱり。
もし何も知らずに見てたら「は?」どころではなく「ええええええええっ!?」だったと思います。客席でたぶん声出てた。

第一部でバスティーユをやってしまうともうフィナーレまでオスカルとアンドレの出番がないし、「美味しいところは後半にまとめて」という意図もわからなくはないけど、しかしこの構成は……斬新すぎるでしょう……。

ジェローデルからオスカルの死や王室の状況を知ってフランスへ駆けつけようとするフェルゼン、スウェーデン国王に対して滔々と「愛の強さ」を述べ、国王をして「行くが良い!そなたの愛を貫き通せ!」と言わしめる。
槍を使った大立ち回りも格好良く、フェルゼンの見せ場なんだけど、フェルゼンに思い入れがないので「宮廷で国王相手に個人的な愛の話を訴えるってどうなの」とつい思ってしまいました、ごめん。
最後、ナツメさん版では銀橋を去って行くだけだったのが、客席に降りて去って行くフェルゼン、2階B席からではすぐに姿が見えなくなってしまって、これも寂しかった。1階席の方羨ましい。

スウェーデン国王役はハッチさん(夏美よう)。ずいぶんお年を召されたなぁと思ったけど、お声は健在。重厚な王様でした。
そうそう、モンゼット夫人は万里柚美さん。我が青春の星組スターのお二方、89年『フェルゼンとマリー・アントワネット編』の時はニューヨーク公演の方に参加してらして、大劇場公演には出てらっしゃらなかったのよね。まだ割と下級生だった頃から知ってる万里さんが悶絶夫人をやられているの、感慨深かった。

第一部は1時間10分、バスティーユがないので短い。バスティーユがないので…ちょっと……退屈だったかも……。

第二部幕開きは再び小公子たちの歌、そしてベルナールを中心とした革命市民による群舞。こんなところで群舞入るの初めてだよね? 現代っぽい格好いいダンスシーンでした。

チュイルリー宮でのルイ16世や王妃の場面。第2部の夢白さんアントワネットはとても良かったです。ルイ16世と心を通わせ、子どもたちの良き母としての顔を見せるアントワネット。アントワネットが良いだけに、よけい「フェルゼン要らなくない?」って思っちゃうんだよなぁ。

でもフェルゼンはフランスにやってくる。ジェローデルとともに、王妃様を救出しようとやってくる。
そして「ここでオスカルが死んだのか」と崩れたバスティーユを眺め、回想シーンになります。

オスカルがブイエ将軍に「女にだって主張を述べる権利はある!」と啖呵を切るシーンから橋の上でのアンドレの最期、そしてバスティーユ。
ブイエ将軍役は悠真倫さん。さすがのお芝居、安心して見ていられます。
アンドレが死ぬところは、いつもながら「なんであんただけそんなとこにいるんだよぉ」「何発撃たれるねん」と思ってしまいます。オスカルと一緒に橋の下にいれば無事だった(かもしれない)ものを。
一緒に観劇した母は「やっぱりあのシーン泣いちゃうわ~」と言ってました。朝美さんも縣さんも熱演。私はどうしても「回想でやるのかー」とそっちの方に気がいってしまって、泣くまでには至らなかった(^^;)

第一部のプロローグのあと、フェルゼンは「お人形のステファン」を抱いてアントワネットとの出逢いを振り返るので、考えたらこのお芝居、最初っから「フェルゼンの回想」ではあるんですけどね。

朝美さんオスカルの最期……ちょっと細かいところを忘れてしまったけど、どこかの台詞の言い方(緩急)がとても良いな、と思いました。朝美さん、凛々しく熱い系のオスカルだったなぁ。
衛兵隊着任の場面もないし、アランの見せ場も特にないまま、「隊長、バスティーユに白旗が~!」。残念ながらB席からは見えない白旗……。ロザリーの絶叫とともに幕となって、再びフェルゼンとジェローデル。

「オスカル、よくやったな」と白バラを捧げるフェルゼン。そして「バスティーユは崩れても、マロニエの緑は変わらない。自然は変わらず美しいのに、どうして人は殺戮を繰り返すのだろう、何度も何度も」みたいな述懐。
ああ、今回はここがメインなのか、と思いました。この台詞を言わせたかったのかな、と。2024年に上演する『ベルサイユのばら』、2024年の世界情勢を踏まえてのフランス革命
「私の中にあなたは生き続ける」と歌う新曲「セラヴィ、アデュー」もここで披露。これが人生、さらば……。

そうしてコンシェルジュリーの牢獄の場面。すっかり白髪になってしまったアントワネット――カペー未亡人の一番の見せ場。ここの夢白さん、とても良かったです。細面で線が細く見えるので、前半は「ロココの女王」にしては少し寂しい感じがしたけど、それがカペー未亡人の時はプラスに働くし、何よりお芝居がとても良くて胸に迫る。

彼女の世話を焼くロザリーとベルナール。「フェルゼン編」、なにげにこの2人の出番も多いですよね。ロザリー役はこれで退団の野々花ひまりさん。野々花さん、とてもロザリーの「柄」にあってる気がしました。バスティーユでの「オスカル様ーーーっ!」絶叫も熱演だったし。
考えたらバスティーユで絶叫して、一場面あっただけですぐ王妃様のお世話してるんだよね、ロザリー。忙しいな。

そしてベルナールは華世京さん。ベルナールって割とベテランというか中堅どころの方がやるイメージだったので(一樹千尋お姉様とかみつえちゃん(若央りさ)とか)、ずいぶん若いベルナールだなと思ったけど、落ち着いたしっかりしたお芝居で、良かったです。「カペー未亡人!」の台詞も決まってた。
華世さん、まだ研5ですっけ? 研5でベルナールとかすごい。
見ていて「華世さん、アンドレも合いそう」と思ったんだけど、新公でアンドレをやるそうで、俄然新公を見たくなってしまいました。9月12日木曜日、ライブ配信見ようかな。

フェルゼンの助けを断り、フランス王妃としての生涯をまっとうするアントワネット。フェルゼン彩風さんももちろん熱演なんだけど、どうしてもこの場面、フェルゼンよりもアントワネットの方に目を奪われてしまいます。

断頭台へと消えるアントワネット、フェルゼンの絶叫、そして幕。

フィナーレはロケットから。「ベルばら50年」を記念して50人のラインダンス
続いて男役さんたちのダンス。曲は「愛の面影」。ここの振り、格好良かったなぁ。フィナーレの振付はすべてみつえちゃん。91年月組版のベルナール。
男役ダンスで縣さんがすごく活き活きと、にこやかに踊ってるのが印象的でした。アンドレが溜め込んだ苦しみをばーっと発散してるみたいに見えたw

その後娘役さんのダンスがあり(ここも素敵な振りだった)、彩風さん、朝美さん、夢白さんのトリオダンス。

続く場面は彩風さんを送る「サヨナラ」の場面。新曲「セラヴィ、アデュー」は退団される彩風さんへの惜別の歌でもある。野々花さんたちこの公演で退団される生徒さんもクローズアップされていたし、最後彩風さんが舞台に一人になって、アカペラ陰コーラスみたいなので「アデュー」と歌う演出があった……気がする。

なんか、『ベルばら』のフィナーレというよりは、「サヨナラ公演のフィナーレ」という色合いが強かったですね。これはこれで素敵だったけど、彩風さんの「薔薇タン」とか、朝美さんドレスの「小雨降る径」とか、そういう「ベルばら」ならではのフィナーレも見たかったな。

その代わり(?)グランドフィナーレは「ベルばら」メドレー。いきなりアントワネット様ご自身がエトワールで「青きドナウの岸辺に~♪」。夢白さん、ここのお歌も見事でした。
朝美さんは「我が名はオスカル」で階段降り。劇中では歌わない曲をここで!
普通は降りてきたスターさんたちが舞台上に並んでトップさんを待つ形だけど、スターさんたちいなくなって、誰もいない舞台に彩風さんが降りてくる。
あれ?と思っているとオスカル様たち客席から現れるんだけど……B席からは!よく見えない!!!

第一部のラストも見えなかったし、フィナーレでもこの仕打ちかーと思っちゃいました。見たいなら金払えか、と……。中詰めとかの客席降りはともかく、フィナーレで「1階にだけサービス」されるのはかなり寂しかったです。

あ、そうそう、彩風さん、降りて来るときは確か「愛の面影」で、降りきってから「宝塚わが心のふるさと」をお歌いになった。そのあと客席からみんなが出てきたと思う。ここもとても「サヨナラ」を意識した演出だと感じました。

なんか、「オスカル様がナレ死!?」という斬新な構成に気を取られて、いまひとつお話にのめり込めませんでしたね(^^;) バスティーユと牢獄の場面が続くの、「名場面集を見ているみたい」だったし。
私としては普通に第一部にバスティーユがあった方がいいなと思うけど(というか、「今宵一夜」のあとすぐ「オスカルは死にました」ってなるのがちょっと)、50年経ってまだ新しい『ベルばら』を作ろうとする植田先生、すごい。

朝美さんオスカルを生で見られて嬉しかったし、音彩唯ちゃんのジャンヌも収穫だったし、何より母が「『ベルばら』観られて良かった、楽しかった」と喜んでくれて。
母も私も、この先また再演があっても劇場に足を運べるかどうかわからない。チケット取れて、本当に良かったです。


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