月組さんによる『侍タイムスリッパー』の舞台化、生で観たかったけどチケットが取れるわけもなく。ライブ配信で楽しみました。
あの映画をどんな風に舞台化するのか? 映画と舞台では当然見せ方が変わってくるし、「ミュージカル」ということで当然新左衛門や風見さんは歌い踊る、しかも宝塚。一体どんなふうになるんだろうと思いましたが、よくできてて面白かったです。
ストーリーや台詞は基本的に映画をなぞっているんだけど、幕末の会津の様子がちょこちょこ差し挟まれ、当時と現在の落差、ラストの大殺陣に向かう新左衛門の葛藤が一層沁みるようになっていました。正直途中までは「会津のご家老と姫様のパート、こんなに要る?」とちょっと退屈に思ったし、白虎隊の剣舞まで出てきた時は「これも宝塚っぽくするためかな」と冷ややかに見てしまったりしたんですが、新左衛門が「改訂稿」で故郷会津藩の最期を読む場面で、「ああ、このためにか!」と腑に落ちました。
幕末の会津の顛末、知っている人は多いとはいえ、「舞台上でずっと現代だけを描いて唐突に会津の最期」を見せるより、「そこに至るまで」がちゃんと差し挟まれていた方がグッときますものねぇ。
雷に撃たれて幕末から現代の京都にタイムスリップした凄腕の侍、高坂新左衛門役はもちろん月組トップスター鳳月杏さん。鳳月さん、台詞がずーっと会津弁なんだよね。殺陣も大変だったろうけど、あの会津弁の台詞も大変だったろうなぁ。歌うときれいな標準語になるのはご愛敬w
宝塚的な「格好いい主役」ではないし、タイムスリップしてすぐはおどおどと挙動不審、滲み出る人の良さと自然なコミカルさ、最後の覚悟を決めた大立ち回り、お見事でした。
殺陣師関本さんとの特訓場面も映画そのままで。いやー、ほんとにタカラジェンヌ、なんでもできるな。関本役は専科の輝月ゆうまさん。関西弁が自然で「なんでやねん!」の間(ま)もさすが、お芝居もすごく関本さんだった。『悪魔城ドラキュラ』の時のあの格好いいドラキュラ伯爵との落差、ほんとにタカラジェンヌは以下同文。
ヒロイン山本優子役はトップ娘役天紫珠李さん。ポロシャツにジーンズ、大きな眼鏡、宝塚のトップ娘役がこんな出で立ちでお芝居に登場するの、初めてでは??? スタイルいいからどんな格好でもシュッとして綺麗。一生懸命で優しくて健気な“普通の女性”を好演。優子殿はナレーションというかお話の進行役も兼ねてましたね。
冒頭、登場人物たちがいっぺんに舞台上に出てくる場面、あまりにみんな「普通の格好」で、その辺の兄ちゃん姉ちゃんおばちゃんな服装なのがすごくこう……いつもの宝塚の舞台と違いすぎて面白かったです。割烹着の梨花ますみ組長がよしもと新喜劇の中山美保お姉様に似て見えたりw
行き倒れの新左衛門を助けてそのまま“息子”のように世話してくれる寺の住職を専科の汝鳥伶さん。その妻節子を梨花さん。汝鳥さんはほんとに滑舌も声量も変わらず巧い。至宝。
そういえば優子殿がお寺にケーキを持ってきて、みんなで食べるシーン、ケーキ本物でしたね。舞台上では一口二口しか食べてなかったけど、残りはスタッフが美味しくいただいてるのかしら? ライブ配信でアップになるから特別に本物だったとか?
会津藩のご家老、専科の夏美ようさん。……ハッチさん、なんかずいぶんお年を召したように見えて、声とか歩き方も、ちょっと弱々しく感じて心配になってしまった……。我が青春の星組スター、いつまでもお元気でいてほしい。
“心配無用ノ介”こと錦京太郎役、英かおとさん。映画の無用ノ介よりさらにコミカル寄り? 英さん、長身で見栄えがしますね~。“心配ご無用”というフレーズがしっかり歌に生かされてて面白かった。(そういえば「心配無用ノ介」、スピンオフテレビシリーズが作られるんですよね、楽しみ)
時代劇スターにして実は新左衛門と同じように幕末からタイムスリップしていた長州の武士、風見恭一郎役を風間柚乃さん。風見さんを風間さん、ややこしいですね。いっそ役名風間恭一郎にしても良かったのでは。
冒頭に登場したあと、なかなか出番がない風見、「あの風見さんが新左衛門をご指名」という場面でやっと姿を現した時はまさに「いよっ!待ってました!!」。またストライプスーツの後ろ姿がキマるんだわ。すごいよね、あのスーツ。なかなか一般男性には着こなせないよ。
新左衛門よりだいぶ早い時間軸にタイムスリップして斬られ役から時代劇スターにのし上がっていた風見、二人とも現代への適応力が凄すぎるけど、風間さんの「ベテラン俳優感」がまた凄い、巧い。新左衛門と2人で「アドリブで会話するシーン」も、中打ち上げの乾杯の挨拶で時代劇と「あの時代」への想いを語るところも、なんかうるうるしちゃった。時代劇大好き民として、風見のあの挨拶はほんと沁みるし、関本さんの「斬られ役なんかで食べていかれへん」「いっぺんくらい真ん中に立ちたい思うたことないとでも思てんのか」とかいう台詞(うろ覚え)も……。
鳳月さんと風間さんのクライマックスのあの殺陣もほんと素晴らしかった。映画と違って毎公演ガチで生で大立ち回りしなきゃいけないんだもんね。すごいわぁ。
覚悟を持って、文字通りの“真剣”勝負、でも結局新左衛門は風見を斬れない。そして差し挟まれる「生きていたご家老様」。改訂稿の中で「城を枕に討ち死に、姫様も自害」と描かれていたのが、実は死んでなかった! 風見を斬れなかった新左衛門も、自害できなかった姫様も、「なさけない」と言うのだけど、武士の時代はもう終わったんだよね。仇を討つことも、自ら腹を切ることも、別に美談じゃない。「生きて新しい時代を見ること」こそ――。
最初は「よけいだ」と思ったご家老様たちのくだり、ちゃんと新左衛門の現在とオーバーラップして、強いメッセージになってるんだよなぁ。
一気にラストまで話飛んじゃったけど、改訂稿を読む「中打ち上げ」のところでいきなり宝塚レビュー(「すみれの花咲く頃」)が来るのがまた。打ち上げの余興として「特別に宝塚の皆さんに来ていただきました!」っていう体(てい)なんだけど、宝塚、そんな出張仕事も請けてくれるんですか!? 東宝ならまだしも東映の撮影所にも来てくれるの???
打ち上げにタカラジェンヌを呼ぶという豪腕を見せてくれる撮影所所長役、佳城葵さん。佳城さんこういう役ほんとハマるよね~。ちょっと“たよんない”感じがたまらないわ~~。
子どもの頃から時代劇好きで下敷きは暴れん坊将軍だった優子殿、ケータイの着メロも「ずっとマツケンサンバです!」(※節子さんの着メロは「必殺」だった気がする)ということで、本編中にみんなでマツケンサンバ踊るところがあって「うわぁ」と思っていたら、フィナーレ始まりもマツケンサンバ! しかも客席降り!!
舞台上にはハッチさん、汝鳥さん、梨花さんが登場、“マツケンサンバ・シャンシャン”(って言うのか?)を手に歌い踊る。ちょっと、このお三方のマツケンサンバ見られただけでライブ配信4,000円の元取れてません? もちろん本編も全部良かったけど、ハッチさん汝鳥さんのマツケンサンバ貴重すぎる。
が、衝撃はここで終わらない。
続けて流れてくる『銭形平次』のメロディー! 「男だったら~♪」と歌いながら風間さんがキメッキメに男役ダンスを!!!
こんなお洒落で格好いい銭形平次ある??? 振付めっちゃ良かったよね??? 最初階段にいなせに座ってるところから始まるし。
2コーラス目は輝月さんが歌ってらした気がする。
マツケンサンバ、銭形平次ときたら次は『水戸黄門』あたりか、と予想したとおり、おなじみのあのメロディーに乗せて鳳月さんもキメッキメ。「ああ人生に涙あり」はもともとがボレロ曲なので、男役大階段に使われてもおかしくはない……おかしくはないけどぉぉぉ! 楽しすぎてTVの前で悶絶。
水戸黄門は途中から心配無用ノ助(英さん)が歌ってらしたと思う。
さらに追い打ちをかけるように耳をうつ『大岡越前』のテーマ。ああー、なるほど、デュエットダンスに合うよねぇ、うん。いい感じにしっとりしてるもんねぇと見入っていたら、「チャララーン!チャチャチャチャチャチャチャ、チャララーン!」
『必殺』キタ━(゚∀゚)━!!!
「振り向くな~振り向くなと~♪」の「さよならさざんか」バージョンテーマ曲。うぉうぉあぉうぉあぁぁぁぁ。必殺仕事人の曲でデュエットダンスて、正気か!?
しかしこれまた振付が格好良くて、“宝塚”として見事に成立しているんですよね。もうあまりのことにTVの前で五体投地、「俺は今日まで、生きてきて良かった!」
これまでにも「魂のルフラン」とか「Anithing Goes!」とか秀樹とか、「まさかこれを宝塚で聞くとは」って曲があったけど、まさか「水戸黄門」や「必殺」で華麗に踊るフィナーレがあるとは。
宝塚おそるべし。
宝塚の懐の深さもさることながら、あの頃の時代劇の音楽それ自体がねぇ、良いですよねぇ。「水戸黄門がもともとボレロ」だったり、必殺のあのトランペットも、昭和の和洋折衷な音楽、宝塚の音楽と根っこはいっしょですもんね。『大江戸捜査網』の「江戸の夜明け」もすぐにBrass Jazzアレンジが思い浮かぶもんなぁ。『遠山の金さん』の「すきま風」とか、『暴れん坊将軍』のあのテーマ曲とか(※マツケンサンバはよく考えたら時代劇の曲ではないw)、今回使われなかった名曲たちも入れてぜひ再演を、大劇場で再演を!!!
生であの大立ち回りと時代劇メドレーフィナーレを浴びたい!!!
脚本/演出は小柳奈穂子先生。『Thunderbolt Fantasy』の舞台化も見事でしたが、今回も見事な「宝塚化」でした。
本当になんでこーゆーの、大劇場でやってくれないんすか……。うちのお母ちゃんも大喜びすると思うのになぁ。
※映画『侍タイムスリッパー』もまた観たくなる♪※

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※ついつい聞きたくなる♪※

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