昨日は茂山家によるクリスマス狂言『シテやったり太郎冠者』を親子三人で見に行ってきた。3月の萬斎様に続く、二度目の狂言観劇。
生協のチラシにチケットの斡旋案内が出ていて、息子に「行く〜?」と訊いたら「行く!今度はパパも一緒に行こ!」ということで、嫌々ながら(?)夫も狂言初体験。

『日本語であそぼ』のおかげで狂言口調には慣れ親しんでいて、母子二人で“即興狂言ごっこ”(←普通の会話やクイズ、なぞなぞなんかを狂言風にしゃべるだけ)をやったりもしている。
この間息子は「僕、狂言師でも食べていけるな〜」などと、無茶苦茶なことを言っていた。その自信はどこから来るのだ、坊や……。

昨日の演目は創作狂言で、予想以上に時事ネタというか、世相を皮肉った部分が多くて、とっても現代的なコメディだった。
「クリスマス狂言」ということで、「お子さんでも楽しめます」とチラシに書いてあったせいか、うちの子だけじゃなく、かなりたくさんの子どもが見に来ていた。そんで、ちゃんとウケていた。

大人以上によく笑ってたかも。

物語は、わがままな主人に愛想を尽かした太郎冠者が「フリーエージェント宣言」をして別の邸に仕え、でも結局そこも追い出されることになって、トナカイに逃げられて行き倒れたサンタを助け、なぜかトナカイの代わりに橇をひかされ、「付き合ってられるか!」とまた逃げ出して、ひょんなことから金持ちになり、自分が「太郎冠者」を雇う身分になる……というもの。

狂言では「太郎冠者」というのは常に「召使い」の名前で、ほとんど「職業名」のようになっている、というところがミソなのだな。
せっかく金持ちになったのに、「太郎冠者!」と呼ばれるとつい返事してしまうし、新しい太郎冠者の掃除が下手くそだとついつい自分でやってしまうし……。

『シテやったり』というタイトルの「シテ」は、狂言では「主人公」のこと。
なるほどいかしたタイトル。

一度に場面に出てるのは二人か三人、全体でも役者は五人だけ。
それで80分のお話を退屈させることなく見せきってしまう。
あ、途中「歌のお稽古」(←トナカイさんが狂言に出てくる歌を教えてくれる。みんなでサンハイ♪)もあったか。10分ぐらい……。

狂言ってやっぱ、あの声の出し方がいいよねぇ。つい真似したくなる。
歌舞伎は何言ってんだかわかんないけど、狂言はちゃんと台詞がわかるしなぁ。
それにあの、ちょっと腰を曲げた、でも背筋の伸びた、なんとも不思議な姿勢……。あの姿勢はしんどくないのかな。

と。
伝統芸能に親しむアカデミックな親子かと思いきや。
往復の車中、開演前、しっかり『のだめ』を読む母と息子。
あっという間に二人とも3巻まで読破。
「4巻はママが先デスからネ!」って、何子どもとマンガの取り合いしてんだか……。