4月25日、京都国立博物館まで『雪舟伝説』を見に行ってきました。
公式サイトの方に「※「雪舟展」ではありません!」と大きく書かれてあるのが印象的なこの展覧会、「雪舟」の作品をただ展示するのではなく、「主に近世における雪舟受容をたどる」ことが主眼になっています。

なので雪舟に憧れ、雪舟に学び、「雪舟十二世です」と勝手に名乗っちゃうような後世の画家たち――狩野派、等伯、若冲、蕭白などの作品をいっぺんに見ることができ、大変お得。

雪舟の「富士山」の絵(というか構図)を手本にした色んな画家の富士山の絵が並んでるところなど、「なるほど同じような構図で富士を描いても人によってずいぶん変わるもんだなぁ」と面白かったですし、「模本」とか「縮図」とか、手軽に「イラスト集」のようなものが売ってない時代の「流通の仕方」も興味深く。

雪舟の代表作である「四季山水図巻」の模本は複数展示されていて、「これさっきも見たやつだ」ってなるんですが、「忠実な模写」なのにやっぱりなんか印象が違うんですよね。タッチとか墨の濃淡とか違うし。
もちろん解説なしで並べられて「どれが本物か当てろ」と言われてもさっぱりだけど、「同じなのになんか違う」が面白い。

「模本」ですらも国宝だし、「模本」ですらも「見せると劣化するからさらにその模写を作らせてそっちを公開用にした」みたいな解説があって、「大事にされ方」がすごい。
「鑑賞用」と「保存用」と、同じもの2つ要るもんねぇ、うん、わかるわかる。

「イラスト集が売ってない」と書きましたが、江戸時代になると色々出版されてて、「明治にかけてのベストセラー」と解説されてるものもあって、江戸時代の文化水準すごいな、と改めて思ったり。
数々の名画の版木を彫る職人の腕がすごすぎる。

雪舟の国宝6点は2017年の『国宝展』でも見ているはずで、「慧可断臂図」はそれ以外でも何度か見て、めちゃくちゃ印象に残っていたんですが、他はあまり記憶がなく(^^;) 「天橋立図」はなんとなく覚えてるけど、「四季山水図巻」とか、見たことあったっけ……。

雪舟の作品では重要文化財の「四季花鳥図屏風」がとても良かったです。展覧会のポスターにも採用されている、あの鶴のやつ。
この作品にインスパイアされたものとして出展されている伊藤若冲の「松竹梅群鶴図」がまた素晴らしく良い! 力強い墨で表現された背景と、シュッとして美しい鶴。カラフルな細密画じゃない水墨画の若冲も素敵なんだよなぁ。

曾我蕭白の「富士三保図屏風」には虹が描かれていて斬新。水墨画で虹って、そういえばあまり見たことがないですよね。
蕭白は「富士三保清見寺図」も「月夜山水図屏風」もなんかこう、ちょっとイラストっぽいというか、現代風のデザインという感じがしてとても面白い。

たっぷり2時間、見応えありすぎて疲れました(^^;) すっかりスタミナがなくなっている。
以前は旧館の方で企画展を見て、さらに新館で名品ギャラリーを楽しんで帰っていたのに、企画展だけで疲れるとは。
今回はこの『雪舟伝説』自体が新館で行われていて、名品ギャラリーはお休み。いつも1階に展示されている大好きな仏像群にお会いできなくて寂しかったです。

旧館(明治古都館)の方は免震改修工事に向けて当分の間休館とのこと。
とにかく絵になる旧館、良い天気だったこともあり、やたらに写真を撮ってしまいました。
ツツジが満開でまた映えるのよねぇ。
何度も撮ってる「考える人」もツツジと一緒だとまた格別。

京都国立博物館のお庭は屋外展示場でもあって、石像や石碑などが点在しています。そのうちの一つ、鎌倉時代の地蔵菩薩様。

ちょうど『宝石の国』を一気読みしていた時だったので、この「地蔵菩薩は弥勒が世に現れるまでの間、この世を練り歩いて衆生を救う云々」のくだりに「おおーっ」となってしまいました。金剛先生の本名が「金剛大慈悲晶地蔵菩薩」なのはそういうことかー、みたいな。フォスフォフィライトが弥勒…閻魔と地蔵は同一……ぶつぶつ。


表門もめちゃくちゃ絵になるのですが、こちらからの退場はできなくなっていました。いつだったかはこっちから出られたのになぁ。

『国宝展』以来――なんと6年半ぶりだった京都国立博物館、楽しかったです。


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