『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーのマネジメントを読んだら』という書籍が大ヒットして『もしドラ』と略されていますが、こちらも略して『もしドラ』、むしろ日本人なら「ドラ」と言えば「ドラえもん」だろうという、タイトルのご本でございます。

本の構想は8年ほど前から考えていらしたそうなので、本家『もしドラ』、元祖『もしドラ』と言えるかも。

著者の藤野英人さんのTwitterをフォローしていてこの本のことを知り、図書館で借りてきたのですが(買わなくてごめんなさい)。

面白かったです。

あっという間に読んじゃいました。

全180ページという軽めの分量、対話形式の進行で読みやすく、何より「ドラえもんのひみつ道具」という馴染みやすい切り口でのお話。

小学6年生の息子もあっという間に読んでしまった。

感想を尋ねたところ。

「ドラえもんのひみつ道具を大人目線で見るとこんなふうになるねんな」

大人目線というか、経済学目線?

私も大人のはしくれですが、ドラえもんのひみつ道具をこんなふうに考えたことはありませんでした。

「タケコプターで読み解く経済入門」というサブタイトル通り、タケコプターやどこでもドアといったお馴染みの「ひみつ道具」10個を取り上げ、「もしもそれが商品として流通・普及したら生活はどう変わり、どのような経済効果が生まれるか」という議論がなされます。

一番最初に出て来てサブタイトルにも入ってる「タケコプター」がやはり一番衝撃的。

「もしタケコプターが実現したら」と言われても、「雨降ったら使えないんだろうな」とか、「スカートで飛ぶとやばいんじゃないか」とかいうのんびりしたことしか思いつかないんですけど、「商品」として普及したら、大勢の人が空を飛んじゃうわけで。

通勤・通学の時間帯にスーツ姿のサラリーマンやセーラー服の女子高校生が大挙して空を飛んでる図とか想像するとかなりシュールです。

当然「渋滞」とか「事故」とか予想されるので「タケコプター保険」が出てくるだろう、とか「景観論争」が起きるだろうとか、タケコプター関連で儲かる業種、逆に割を食う業種、予想される規制や生活そのものの変化。

綺麗な夕焼けだぁ、と思ってカメラを向けたら「雁が渡っていかぁ」ならぬ「サラリーマンが帰っていかぁ」ってタケコプター退社する人々がばーっと飛んできて写真どころじゃない、なんてことが起こるわけです。

「飛んでもいい場所」は決められるでしょうし、国立公園とか観光名所では飛ばないようにという規制もされるでしょうけど、普通の生活空間でもふと窓の外を見ると飛んでる人がいる(しかもいっぱい飛んでるかもしれない)っていうのは、けっこう問題を引き起こしそうな気がする。

写真を撮るのに邪魔だっていうだけなら、「タケコプター使用者は写らないカメラ」を開発してしまえば済むけど、現実に飛んでるものは飛んでるんだもんなぁ。

そもそも「みんなが飛んでるんじゃ“ひみつ道具”でもなんでもないじゃん」っていうね。

それが一番イヤかも(笑)。

新しい技術が生まれれば新しい価値観が生まれ、ただ「儲かる企業」「儲からなくなる企業」が出るだけでなく、古い価値観との利害衝突により「新しいモラルの確立」を必要とするようにもなる。

取り上げられた「ひみつ道具」10個のうちには「あったら便利だけどやっぱり実現はしない方がいいんじゃないか」と思ったり、ぜひ普及してほしいと思うものもあったり。

もっともっと色んな「ひみつ道具」について考察してほしいなぁ、と思ってしまいます。

まぁ、自分で考えてみればいい話で、あとがきで藤野さんが「ひとつの考え方の道筋を示したものであって、正解を示したものではない」と書かれている通り、取り上げられた10個に関しても、色々自分で「こーゆーこともある」「あーゆーこともある」と考えていくのが面白い。

これ、小学校でやったら面白いと思うけどねー。

「ひみつ道具」に関しては子どもの方が絶対詳しいし、大人が考えないような“使い方”を思いついてくれそう。

あと、読んでて思ったのは「藤野さんっていい人だなぁ」ってこと。

なんというか、こう、読んでると「人間に対する信頼」「未来に対する信頼」みたいなものがうかがえて。

「アンキパン」のところで語られる教育の話とか、「ほん訳こんにゃく」のところの「言葉の壁が取り払えても心の壁があったら」って話とか。

とてもバランスの取れた、まともな方だな、と。

なのでホント、子どもにも安心して「これ面白いよ」と手渡せる。

ちなみにうちの息子ちゃんは目次をぱっと見た時に、「ああ、カッカホカホカはいいよなぁ」と言いました。

ストレス溜まってるのか…(^^;)