僕僕先生』第2弾。

「そんなに好きでもない」とか言いながらちゃんと2冊目も買って(文庫になってたから)ちゃんと読みました。私って律儀。

いや、でも2冊目は面白かった。2冊目の方が面白かった。

前作の最後、5年ぶりに僕僕先生が王弁のもとへ帰ってきて、また二人で旅に出る。その旅の様子を6つのエピソードで描く連作短編。

先生と王弁の二人のキャラクター、関係性をもう読者も了解しているから、そこの説明によけいな労力をさくことなく、自由に、自在に、作者が世界の中で遊べている感じ。

かの川原泉さんが「番外編を書くために『笑うミカエル』本編を描いた」とかいう話を聞いたことがあるのだけど(真偽のほどは不明)、それってすごくよくわかるんだよね。

本当に描きたいことを描くためには、まずその設定・世界観を読者に納得してもらうためにめんどくさい「前段」を提示しなきゃならない。

もちろん『笑うミカエル』本編も、『僕僕先生』1作目も、ちゃんと面白く読めるようにできていて、さすがにプロの作家さんは違うな、なんだけど、その「前段」を読者に了解してもらった後の「さぁ、こっからが本番」という。

仁木先生がそのつもりで1作目を書かれたのかどうか、ホントのところは知らないけれども、古代中国を舞台に仙人や神様が登場するちょっと不思議な世界、人間模様がうまく、読みやすく、描かれています。

先生と王弁の二人がいなければ成り立たない物語だけど、決して二人がでしゃばらないというか、ある意味狂言回しのような立ち位置で、1作目で王弁の恋心がウザかった私には読みやすい(笑)。

今作でもしょっちゅう「恋心」は出てくるんだけど、でもメインはそれぞれのエピソードでゲストキャラが抱える問題を解決する、ってことだし。

まぁ私もいい加減慣れてきたけどね、二人のいちゃいちゃぶりには(笑)。

雷神の子と人間の子どもとの交流を描いた一篇、そして仇討ちのために女房を差し出す男の話が特に面白かったかなー。記憶喪失の男を治してくれ、ってヤツも「ああ、人間ってねぇ」って思った。最終的にどう決着したのかまで描かないところがいいよね。

3作目の文庫がもうすぐ(6月)刊行されるそうなので……しょうがない、買うかな。