2015年2月17日火曜日

『福島第一原発収束作業日記』/ハッピー



福島第一原発の作業員であるハッピーさんのつぶやきは、私のTLにも時々流れてきていました。

直接フォローして読むには気が重くなりそうで(ハッピーさんのつぶやき自体は大変前向きなものですけど)、単行本としてまとめられた時にも手を出す勇気がなく。

けれどもやっぱり読んでおかなくちゃなぁと思い、文庫化を機に手に取りました。

なんか、今買っておかないと禁書になるかもしれない、とか思っちゃったんですよね。実際ハッピーさんも「文庫化にあたって」という文章の中で、「特定秘密法案がらみでつぶやけなくなるかもしれない」とおっしゃってます。

特定秘密法案!!!

原発内の情報というのは、確かに「国家機密」に指定される可能性があります。事故を起こしたフクイチだけでなく、テロ防止その他のため全国の原発の情報が規制されることは大いにありうる。

この本に収められているのは2011年3月11日からの2年間の記録で、今となっては「過去の情報」だから、本の内容が今さら「特定秘密」になることはないだろうけど、事故後の国と東電の対応のまずさ・ひどさがひしひしと伝わってくる内容なので、なんか、「こんな本は出版するな!」という圧力がかかってきそうな……。

事故直後の「政府」は民主党政権ですから今の自民党政権にとっては「だから言ったろ、民主党なんかに国家が担えるわけないって」という材料になりそうだけど、今現在も「収束どころの騒ぎじゃない。何も改善してないどころか状況は悪化してるのでは」という話もあるので。

河出書房さん、簡単に絶版にせずに増刷し続けてくれるといいなぁ。

読んでると案の定気分がどーんと暗くなっちゃうし、この現実からは眼をそらして逃げたいという気になるんだけど、それでも、こういう本がちゃんと世に出たっていうのはなんかすごい気がするから、やっぱり読んでよかったと思うし、多くの人が読むべきだろうと思う。

うん、読んで下さい。

私の感想なんかどーでもいいので、本を手に取ってください。


汚染水タンクの問題とか、素人目に見ても「これどーするんだろ。絶対無理だろ、溜まる一方だろ」と思っていました。

「Under Control」なわけはないし、汚染水の対応だけで手いっぱいで、肝心の廃炉に向けての作業なんかまだ全然手がつけられてないんじゃないかと。

だって、まだ燃料デブリがどうなってるかもわからない状況ですよね?

東京新聞のWebサイトにフクイチの特集ページがあって、そこに1~4号機の現状をわかりやすく絵にしたものが掲載されているのですけど、3号機は内部の調査が手つかず、1号機2号機も内部の様子は推測で、もちろん人間が詳しく調査できるような線量じゃない。

私は知らなかったのですけど(というか、ニュースで聞いたのかもしれないけど耳を背けたのでしょう)、昨年の8月現在で1~3号機からは毎日平均2億4000ベクレルの放射性物質が大気中に放出され続けていて、海への流出も毎日80億ベクレルにのぼると……。

えーっと、だからといって「ただちに影響はない」なんでしょうか……。

事故直後から思ってましたけど、原発やその周辺の汚染された地域が「元に戻る」なんてこと、あるんでしょうか。多額のお金を使って「除染」することに、どれくらいの効果があるんでしょう。汚染水の処理が追いつかないのと同じで、除染しても除染しても、どんどん放射性物質が放出され続けていて、大きな地震や津波や台風の直撃を受ければ再び制御不能になってしまう原発がすぐそこにあるのに。

正直、東電も「無理」「できない」って言いたかったんだろうなぁと思います。東電も国も「無理だろ」って言いたいけど言うわけにいかないから、「とりあえず何か作業を続けて“やってるふり”してる」だけなんじゃ。

事故直後の対応が場当たり的なものになったのはしょうがないとしても、この日記を読んでると1年経っても2年経ってもずーっと「場当たり対応」しかしていなくて、「廃炉を見据えた本格的で長期的な対応」っていうのはまったくなされていないようです。

一つには、「お金がない」。

ハッピーさんも再三つぶやかれているように、東電という一民間企業に任せたら、そりゃ「安全よりコスト」になりますよね。

作業員の手当てがピンハネされて……みたいな話は一時期新聞にも載っていましたが、高い放射線量と「いつまた爆発するかもわからない」危険にさらされながら命がけで収束作業に当たっている方々の賃金は、全然安い。

「民間の事業」だから工事その他は全部入札で、孫請けまで含め色んな業者が入り乱れて……。

失敗すれば東日本どころか日本終了になるかもしれないプロジェクトなのに、なんでこんなその辺の道路工事みたいな仕組みで動いてるのか……。

オリンピック招致がらみで「国が前面に立つ」と言ったけど、東電に「ちゃんとしろ!早くしろ!」と圧力をかけるだけで、フクイチの収束/廃炉作業を「国家プロジェクト」と位置づけたわけじゃない。

なんか、本当にゾッとするんですけど……。

「とりあえず何かやってるふり」のおかげで、作業員の方々は今日も被爆して、それも「結局無駄だった」「二度手間だった」みたいな作業のために日々被爆して。

これからますます作業員不足になってくるだろう、ってハッピーさんおっしゃってるけど、そりゃそうですよね。命を削っても、賃金は安くて使い捨て、頑張っても政府や国民が評価してくれるわけでもない。

解説に書いてあったんですけど、チェルノブイリで事故処理に当たった作業員は「国家の英雄」として勲章を授与され、原発構内には記念碑が建てられ、退職後も住居や医療等の国家保障があったそうです。

……なんか、ごめんなさい……。

「国がやらないから」というのは言い訳で、つまりは国民がそういうことに無関心ってことですもんね。私も特に声を上げたことなんてないし。


この日記は「事故後」の話ですが、コラムの中で「事故前の、普通の状態の原発」のことにも少し触れられています。

ハッピーさんは20年近く原発で働いていらっしゃるベテラン作業員さんですが、初めて原発の中に入った時、その「レベルの低さ」に驚いたそうです。

原発っていうと最先端の技術が使われていて、なんかコンピュータ管理でハイテクで……って私もイメージしていましたが、「普通の建築現場よりレベルが低いところがあってびっくりした」と。

1999年に東海村で起きた臨界事故は「作業員がバケツでウランを混ぜた」のが原因だったらしく、この話を聞いた時も「原発の安全性って……?」と思ったものでした。

ローテクどころの騒ぎじゃないし、耐震とか耐津波とかハード面の安全基準をいくらクリアしても、根本のところで何か間違ってるんじゃないかという。

図面もいい加減で、古い原発だとあちこち改造や修理が施されてさらに図面の精度が悪くなる。フクイチでも、穴を開けたらその下に配管が通っていてびっくり、ということがあったそうです。

事故がなくても、今後古い原発は廃炉にしていくわけで、でもその廃炉作業は果たして順調に進むんでしょうか。放射性廃棄物の最終処分場が決まっていないのはもちろん、古くていい加減な図面、作業員の確保……。

「人間の手に負える代物じゃない」

はぁ。

そんな代物が、日本だけで54基もあるんだね……。

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