2017年10月4日水曜日

『ファウンデーションへの序曲』/アイザック・アシモフ



(※ネタバレありまくりなのでこれから本書を読む方はご注意ください!)

『銀河帝国(ファウンデーション)』シリーズ6作目です。

5作目『ファウンデーションと地球』の続きではなく、1作目以前の時代に遡り、ハリ・セルダンがその心理歴史学を確立して“ファウンデーション”を設立する過程を描く本作。

正直あんまり期待してなかったんですが(笑)。

ごめんなさい、面白かったです!!!

1作目の最初にファウンデーションを設立して以後、「伝説の英雄」のように扱われるセルダンですが、もとはヘリコンという辺境の星の数学者。この6作目の冒頭ではまだ若くて(具体的に何歳なのかは出てこなかった気がする)ほとんど世間に名を知られていません。

けれどもトランターで開催された「数学者大会」で「心理歴史学を応用した未来予言」について発表したことで、皇帝から呼び出されます。

「未来を予言できる」のが本当なら、その力を余のために使え――!

この誘いを、セルダンはあっさり断ります。なぜなら、まだ彼は「心理歴史学」を確立してはおらず、予言の力など持ってはいないからです。彼が数学者大会で発表したことはあくまで「そういうことができる可能性がある」ということで、「それをどう実現し、実用化するか」という話はまだ研究の緒にもついてない。

というか、「無理だ」とセルダン自身が思ってたりします。万一実用化できるとしても、それは自分の死後、次世代の研究者たちが成し遂げることだろうと。

だからさっさとヘリコンに帰って……と思っていたのに、ヒューミンという自称ジャーナリストに出会ってセルダンはトランターに留まることになります。トランターのあちこちを逃げ回りながら「心理歴史学」を確立するために奮闘することになる。

ヒューミンは、「帝国は今や死にかけている。人類を救うにはあなたの心理歴史学が必要なのだ。あなたは何としても心理歴史学を実用化しなければならない」と言って、逃亡中の費用と、ドースという若い歴史学者の女性を“保護者”としてセルダンに提供します。

反皇帝派であるワイ市長に「予言の力」を渡すわけにはいかない、とセルダンの動向を監視する皇帝。実質的には皇帝の側近デマーゼルが「一番の敵」なのですが、その目をくらますためにトランター上を転々とするセルダンとドース。

うん、構造は『ファウンデーションの彼方へ』や『ファウンデーションと地球』と同じですよね。主人公が相棒とともに「とある謎」を解き明かすためにあちこち転々とする。各地で危難に遭いながらも「謎へのヒント」を少しずつ手に入れ、最後には……。

今回の謎は「どうやったら心理歴史学を実用化できるのか?」ということで、数学者ではあるけど歴史には疎いセルダンが、「二千五百万もの世界から構成される帝国全体ではなく、まずはもっと小さい世界で心理歴史学を考えてみたら」と「帝国以前の、もしかしたら“単一の世界”だったかもしれない過去の伝承」を追い求めるのです。

あれ、それってもしかして……。

そう、それってやっぱり「地球」の伝承を探す旅なわけで、前作でトレヴァイズとペロラットが星々を旅したのと同じことを、トランターでやる。

トランターだけでもそれぞれに文化・風習の違う地区が何百とあり、「男女とも頭髪を完全に剃り、外部との接触を嫌う」マイコゲン地区、同じ地区の中に「貧民街」を作り、そこの住民を差別することで自分達の心の安寧をはかっているダール地区が主な舞台。

「我々には宗教よりももっといいもの、“歴史”がある!」と主張するマイコゲンの人々。そしてダールの貧民街に育ちながら数学を独学し、セルダンのもとへやってくる青年アマリルの言葉。

「何かが“遺憾だ”というのは容易です。あなたは賛成しないといい、それで良い人になれます。そして、自分の仕事に専念し、もう関心を持たなくなるんです。それは“遺憾”よりもずっと悪いです。(中略)われわれはみな、黄色い髪も、黒い髪も、背が高いのも、低いのも、東洋人も、西洋人も、南洋人も、外世界人も、すべて同じです。われわれはみんな、あなたもぼくも、皇帝さえも、地球の人々の子孫なんです。そうでしょう?」 (下巻 P134)

これ、すごいメッセージですよね。

「かつて地球という単一の世界があった」「今でこそ二千五百万もの世界に分かれているが、そもそも人類はたった一つの星で進化したのだ」ということをセルダンが知るきっかけになる言葉だけど、それ以上に、アシモフさんの強いメッセージを感じる。

最初の方で、ヒューミンがセルダンに「帝国は死にかけている。救うためにあなたの心理歴史学が必要だ」と説得するために、

「しかし平和だからといって、高給取りの軍人を減給にしたら怒るでしょう。(中略)だから、クレジットは相変わらず軍隊の方に――非生産的に――流れていき、社会福祉のきわめて重要な分野は劣化するままになります。それを、わたしは衰退と呼ぶのです」 (上巻 P111)

と言ったりするのも耳が痛い。

風習・文化の違う地区を自分の目で見、そこの人々と交流する中で心理歴史学実用化への「ヒント」を手に入れるセルダン。そしてヒューミンの正体にも気づく。

この、最後のヒューミンとセルダンの会話の部分、なんともたまりません。そしてこの「どんでん返し」を知ってからもう一度最初の方を読むと、ヒューミンのセリフが味わい深いんですよね。一粒で二度美味しい(笑)。

トレヴァイズの時代にも「人類が単一の星で発生したなんて信じられない」と言われていたんですが、セルダンの時代もそこからたった数百年(500年ぐらいでしたっけ?)遡るだけなので、「地球」は伝説。『鋼鉄都市』等で描かれた時代からはもう2万年経っている。

ダールの貧民街で「リター母さん」と呼ばれている女は言う。

「地球を助けた人造人間がいた。それはダ・ニーで、バ・リーの友達だった。彼は決して死なずに、どこかに生きていて、復帰の時を待っている。(中略)いつか彼は戻ってきて、偉大な昔の日々を回復し、あらゆる残酷、不正、悲惨を取り除く。それが約束だ」 (下巻 P168)

ふふふ。
『鋼鉄都市』から読んできた人間にはたまりませんね。「それはダニールで、ベイリの友達だった」

『ファウンデーションと地球』の最後でダニール、「心理歴史学の発達に手を貸した」って言ってましたもんねー、ふふふふ。

トレヴァイズとペロラットが旅の途中ですっかり「いい相棒」になったように、セルダンとドースも互いに「離れがたい仲」に。

二人のラブシーンで終わるの、素敵です。セルダンの告白が素敵なんですよ。

「それをいうつもりはない、なぜなら……ぼくはかまわないからだ」 (下巻 P348)

君がどんな存在でもぼくはかまわない。ただ君が欲しい。きゃー、もう、照れるわ、セルダンさんったら!


本編の前に「作者のノート」というのがついていて、アシモフさんご自身がロボット未来史作品を時系列に並べてくださっています。そして

いくらでも、わたしの好きなだけ――続編を書くことができる。もちろん、どこかに限界があるはずだ――永久に生きることはできないのだから。しかし、できるだけ長く書きつづける決意でいる。 (上巻 P9)

と書いていらっしゃいます。
残念ながら次の7作目で終わってしまうのですが……。

心して次の『ファウンデーションの誕生』を読みたいと思います。

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